• 更新日:2024/09/18

簿記2級の合格率は、実施回によって大きな変動が見られます。特に統一試験においては、合格率が3倍以上開くケースもあります。全体では20%台での推移が一般的ですが、数値の低さに不安を感じる受験者も少なくないでしょう。

しかし、正しい対策を講じれば、簿記2級は十分に合格を狙える資格です。適切な戦略を立てて臨んだ受験者の多くが合格を勝ち取っています。本記事では、簿記2級の合格率が20%程度にとどまる理由や、3級に比べて難易度が上がる理由、効果的な学習戦略について説明します。ぜひ参考にしてください。

簿記2級の合格率と難易度推移:なぜ20%台が多いのか?

簿記2級の合格率は、試験方式や実施時期によって大きく変動しますが、平均は20%台です。

まず、合格率が低い理由を整理しましょう。簿記2級の合格率が全体的に20%台にとどまる背景には、試験の難易度そのものが高いことがあります。

3級にはなかった工業簿記が試験科目に加わるうえ、2016年度から3年間かけて実施された試験範囲の改定により、かつて1級の範囲だった内容も2級の出題対象となりました。

さらに、2021年の制度改定で試験時間が120分から90分に短縮されています。記述式で解答する形式は変わらないものの、2級では問題数が3級より増加しており、時間内に最後まで解答できない受験者も少なくありません。

次に、試験方式による合格率の違いを見てみましょう。簿記2級の試験方式は、ネット試験と統一試験の2つがあり、ネット試験の合格率は、2020年12月~2021年3月の期間が46.6%、2023年4月~2024年3月の期間が35.2%と、ある程度の変動はあるものの比較的安定しています。一方、統一試験の合格率は実施回によって大きくバラつき、回によっては3倍以上の開きが生じることもあります。

合格率に差が生じる理由は、簿記2級が絶対評価制度(100点満点中70点以上で合格)を採用しているためです。統一試験では回ごとに同じ問題が出題されるため、難易度の高い問題が多い回は合格率が下がり、取り組みやすい問題が中心の回では合格率が上昇します。一方、ネット試験では受験者ごとに問題がランダムに生成されるため、合格率が安定する傾向です。

※参考:簿記2級受験者データ(統一試験)|商工会議所の検定試験(https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/candidate-data/data_class2

※参考:簿記 2級・3級受験者データ(ネット試験) | 商工会議所の検定試験(https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/candidate-data/data_class2-3

簿記2級合格のための過去問活用術!効果的な使い方を徹底解説

統一試験(ペーパー)合格率の大きな変動と要因

統一試験の合格率は実施回によって大きな差があり、近年は特に低下傾向が見られます。合格率低下のおもな要因は、出題範囲の拡大です。外貨建取引やリース取引など、以前は1級の範囲だった内容が2級に組み込まれたことで、学習負担が大幅に増加しました。

以下に、合格率が高いときの状況をピックアップしました。

実施回 実施日 合格率
133回 2013.2.24 47.6%
108回 2004.11.21 46.9%

一方、合格率が低かった回は以下のとおりです。

実施回 実施日 合格率
165回 2023.11.19 11.9%
157回 2021.2.28 8.6%
141回 2015.11.15 11.8%

統一試験は出題される問題の難易度にばらつきがあり、事前の難易度予測が困難です。

※参考:簿記2級受験者データ(統一試験))|商工会議所の検定試験(https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/candidate-data/data_class2

ネット試験の合格率と難易度(統一試験との違い)

ネット試験(CBT)が導入されたのは、2020年12月です。簿記2級・3級で開始され、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、より柔軟に受験できる仕組みとして導入されました。試験時間や出題範囲は統一試験と同じで、パソコン上で入力や選択を行う点のみ異なります。

ネット試験の合格率を以下にまとめました。

実施期間 合格率
2025年4月~2025年6月 37.5%
2024年4月~2025年3月 35.7%
2023年4月~2024年3月 35.2%
2022年4月~2023年3月 37.1%
2021年4月~2022年3月 38.1%
2020年12月~2021年3月 46.6%

統一試験と比較すると、全体的にネット試験の方が高い合格率を維持している状況です。日本商工会議所は両方式に難易度の差はないとしていますが、実際の合格率には明確な差があります。

両方式の合格率に差が生まれる理由として、ネット試験は随時受験が可能で結果がすぐにわかることから、モチベーションを維持しやすい点が挙げられます。また、すぐに再受験できる環境が整っているため、短期間で知識を身につけて再挑戦できる点も、ネット試験の合格率を押し上げる要因といえるでしょう。

※参考:簿記2級・3級受験者データ(ネット試験)|商工会議所の検定試験(https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/candidate-data/data_class2-3

簿記3級との決定的な違い!難易度を押し上げる2つの要因

簿記2級は、3級に比べて出題範囲が広く、出題レベルも大きく上がるため、難易度が格段に高くなっています。難易度が上昇しているおもな理由には、次の2点が挙げられます。

・3級の商業簿記に加え、製造業の会計処理を扱う「工業簿記」が追加されるため
・基礎的なレベルが問われる3級とは異なり、2級では複雑な計算力や応用力が求められるため

要因1:初学者が苦戦する「工業簿記」の追加

簿記2級では、3級で扱う商業簿記に加えて「工業簿記」が出題されます。工業簿記とは、製造業を中心とした企業で、原材料の仕入れから製品完成までの過程を数値化・記録するための記帳技法です。

単純な暗記では点を取ることが難しく、全体像をイメージしながら体系的に理解する必要がある点が、初学者にとっての大きな壁です。工業簿記のおもな目的は財務諸表の作成であり、簿記2級の内容はより実務的です。原価計算の流れや勘定科目の構造を把握していなければ対応できません。

特に製造業にかかわりのない受験者にとっては、製品の製造過程や仕掛品、材料といった概念がつかみにくく、学習ハードルが高い分野といえます。

工業簿記への対策ポイントは、過去問演習です。工業簿記の出題傾向は長年大きく変化していないため、正しい対策をすれば着実に成果を上げられます。工業簿記の出題は全体の40%を占めるため、過去問演習で定番問題を押さえましょう。

要因2:商業簿記の「応用論点」の網羅性

簿記2級の難易度上昇の理由として、改正により商業簿記の内容がより実践的になったことも挙げられます。2019年以降の試験では、もともと簿記1級で扱われていたテーマの一部が2級にも加わりました。その結果、学習範囲が広がり、より深い理解が必要になっています。

例えば、2019年以降の試験でほぼ毎回出題されているのが、連結会計の処理に関する問題です。親会社が子会社の株式を持っている場合の処理や、グループ内での取引の調整など、複数の要素を同時に整理しながら処理を行う必要があり、理解力と正確さの両方が問われます。

さらに、外貨建取引やリース取引、税効果会計など、実務に近い論点も追加され、覚えるべき仕訳や会計処理のパターンが格段に増えました。内容の複雑化と、暗記量の膨大さから、簿記2級は以前よりも難易度が高くなっているといえます。

このような内容の高度化により、簿記2級合格に必要な勉強時間は約250~500時間といわれ、毎日2時間の学習を4~8ヵ月継続する必要があります。継続的な学習が、知識を身につける近道になるでしょう。

合格率20%台を突破する!簿記2級の分野別学習戦略

簿記2級の試験は、第1問から第3問までが商業簿記、第4問と第5問が工業簿記という構成になっています。

配点は第1問から第3問まで各20点、第4問が28点、第5問が12点の合計100点満点で、試験時間は90分です。合格基準の70点以上を確実に獲得するためには、戦略的な学習と時間配分が必要になります。

近年の出題傾向は以下のとおりです。

・第1問(商業簿記仕訳・20点):基本的な仕訳から連結会計に関連する仕訳まで幅広く出題される
・第2問(商業簿記・個別論点・20点):最も難易度が高く、株主資本等変動計算書と連結精算表の出題頻度が高い
・第3問(商業簿記・決算問題・20点):損益計算書、貸借対照表、本支店会計などの財務諸表作成が中心となり、比較的安定した得点が期待できる
・第4問・第5問(工業簿記・合計40点):商業簿記と比較して出題パターンが限定されており、基本的な原価計算の仕組みへの理解が求められる

簿記2級で確実に合格点を取るには、第1問、第4問、第5問で60点を獲得する戦略が効果的です。これらの問題は比較的パターン化されており、基礎をしっかり固めれば安定した得点源となります。残りの第2問と第3問で10点以上積み上げることで、合格ラインの70点に到達できます。

解答順序は「第1問→第4・5問→第3問→第2問」がおすすめです。まず第1問の仕訳問題で確実に得点し、続いて工業簿記でさらに点数を積み上げます。第3問は第2問より部分点を取りやすいため先に解き、最も難易度の高い第2問は最後に回すことで、時間が足りなくなっても致命的な失点を避けられます。

時間配分としては、得点源となる第1問に8分、第4問に15分、第5問に12分を配分し、まず35分で基礎点を確保します。残り55分で第2・3問と見直しに取り組んでください。具体的には、第3問25分、第2問20分、見直し10分という配分を意識しましょう。

重要なのは、完璧主義にならないことです。「7割の完成度で次の問題に移る」という割り切りが合格につながります。1つの問題に時間をかけすぎると、他の問題で取れるはずの点数を逃してしまいます。最後の見直し時間では、単純な計算ミスの発見に集中し、効率的に得点を回復させましょう。

第1問では、基本的な仕訳を確実に習得したうえで、応用問題に対応できる力をつけることが必要です。特に株主資本等変動計算書や連結会計に関連する仕訳は、第2問での出題頻度が高い論点と関わるため、学習では重点を置きましょう。

第2問は現在最も難易度が高い傾向にあります。完答を目指すのではなく、取れる部分を確実に得点する戦略が有効です。

第3問は比較的安定した得点が期待できます。決算整理事項の処理を段階的に進め、基本的な項目から丁寧に解答することで、着実に点数を積み上げられます。

第4問・第5問の工業簿記は、出題パターンが限定的です。基本的な原価計算の流れを理解し、典型的な計算パターンを習得すれば、安定した得点源となります。

簿記2級の過去問を解くと出題傾向を把握でき、本番の感覚がつかめます。ただし、簿記2級の過去問は一般には販売されていません。公式サイトで模擬試験が販売されていますが、1万6,500円(税込)と高額です。

費用を抑えたい場合は、出題傾向を分析して作られた予備校や、通信・オンライン講座の教材活用がおすすめです。

簿記2級合格のための過去問活用術!効果的な使い方を徹底解説

商業簿記の戦略:配点の高い論点の徹底対策

商業簿記で高得点を獲得するために、配点の大きい論点に注力しましょう。

第1問の仕訳は5問で20点分あり、1問あたり4点という高い配点効率を誇るため、ここでの失点は避けたいところです。仕訳は簿記の根幹をなすスキルです。繰り返しアウトプットすることで反射的に解答できる力を養いましょう。

第2問と第3問は各20点の配点ですが、近年は特に第2問の難易度が高まっています。全てを完璧に仕上げようとすると時間不足に陥る恐れがあるため、部分点を積み重ねる姿勢が求められます。合格ラインは70点であるため、30点分は捨てる覚悟も必要です。明らかに難しい設問に遭遇した際は深追いせず、確実に得点できる部分に注力しましょう。

また、計算ミスは合否に直結する要因です。正確性を保つよう常に意識してください。頻出テーマである有価証券・純資産・固定資産(リース含む)・債権債務は優先して対策しておくと安心です。

長文形式の問題では、単なる計算力だけでなく読解力も試されます。問題文から取引の本質を読み取る力を磨きましょう。仕訳の流れを詳細にイメージできるようになれば、解答スピードが格段に向上します。

工業簿記の戦略:得点源にするための考え方

工業簿記は確実に高得点を取りたい分野です。第4問は仕訳3問で12点、総合問題で16点の計28点です。第5問は12点で、工業簿記の配点はトータルで40点となります。

商業簿記と比較すると工業簿記は出題範囲が絞られており、基礎的な原価計算の知識があれば十分に対応可能です。第4問の仕訳部分は工業簿記の基本事項が中心となるため、ここは満点を目指したいところです。

第5問では直接原価計算(CVP分析含む)や標準原価計算(差異分析)といった論点が出題されますが、基本的な内容を押さえていれば高得点が狙えるでしょう。

工業簿記の特徴として、計算プロセスが論理的に構成されている点が挙げられます。そのため、途中でミスをしても比較的発見しやすく、各段階の意味を正しく理解していれば安定した得点につながります。

学習を進める際は、まず原価計算の全体像を把握しましょう。材料を投入してから製品が完成するまで、原価が積み上がる過程を理解することが重要です。その後、個別の論点を1つずつ丁寧に学んでいきます。知識を身につけたら、問題集や過去問演習を通じて実践力を高めてください。

過去問を「難易度対策」のために活用する分析法

簿記2級に合格するためには、出題傾向の正確な把握が欠かせません。過去問演習では、得点すべき分野において「なんとなく正解できた」で満足せず、しっかり理解した上で知識を身につけましょう。曖昧な理解のままでは本番で応用が利かないためです。

個別論点については、過去問を通じて既存の知識を丁寧に掘り下げましょう。特に工業簿記は苦手意識を持つ受験生が多い分野ですが、避けるのではなく、解答や解説をじっくり読み込んで理解を深めてください。工業簿記の40点分を着実に得点源にできるかどうかが、合否を大きく左右します。

ただ問題を解くだけではなく、取引や原価の流れを具体的にイメージしながら学ぶことで、他の問題への応用力が身につきます。独学で行き詰まったときは、予備校やオンライン講座の活用も効果的です。また、試験時間が120分から90分に短縮されたことを踏まえ、時間を意識した実践演習が欠かせません。本番を想定したタイムマネジメントを習慣づけましょう。

なお、基礎理解に不安がある場合や、3級合格から時間が経っている方は、3級の復習から始めることをおすすめします。貸借の関係や勘定科目の性質といった根本的な理解が曖昧だと、2級の複雑な論点に対応できません。土台が固まると、2級の内容がスムーズに理解できるようになります。

まとめ

簿記2級の合格率は20%台と決して高くありません。合格率が低いおもな理由は、試験範囲の拡大や工業簿記の追加による難易度上昇などです。しかし、合格率の低さに怖気づく必要はありません。出題傾向を正しく把握し、戦略的に学習を進めれば、着実に合格ラインへ到達できます。

合格を勝ち取るポイントは、全ての問題を完璧に解こうとせず、第1問・第4問・第5問で確実に60点を確保する姿勢です。その上で第2問・第3問から部分点を積み上げることで、70点という合格ラインは十分に狙えます。時間配分を意識し、解答順序を工夫することも合格への近道となるでしょう。

また、過去問演習を通じて出題パターンを把握し、曖昧さを残さないよう丁寧に知識を身につけることも大切です。

ユーキャンの簿記2級講座は、出題傾向を徹底分析したテキストで無駄なく学習を進められる上に、質問対応や添削指導などのサポート体制も整っています。図解やイラスト、動画解説も充実しており、つまずきやすいポイントも丁寧にフォローします。

自分に合った学習環境を整えることで、合格の可能性は大きく高まります。独学に限界を感じたら、ユーキャンの簿記2級講座の活用を検討してみてください。

生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

簿記2級の難易度は?

日商簿記2級の合格率は20%前後と低く、難易度が高い試験と言えます。商業簿記に加えて、工業簿記も試験科目となり、出題範囲が広まることが難易度が高い理由の一つです。

独学でなかなか学習が進まない場合、どうしたらいいでしょうか?

独学でスムーズに学習が進められない場合は、他の勉強方法を検討した方がよいでしょう。独学では、わからない点を放置しやすく、一度つまずくと勉強が進まなくなってしまいます。
そうした状況への解決策として、簿記の通信講座を検討するのもよいでしょう。

初学者が、いきなり簿記2級の合格を目指すことは可能?

簿記2級は、3級と比べると難易度が高く、数ヵ月から半年程度の学習が必要です。しかし自分に合った勉強方法で効率よく学習していけば、初心者でも合格は可能です。
ただし、簿記2級は、出題区分の改定により年々難易度があがっているといわれており、地道で効率的な学習と戦略が不可欠。適切なテキストと電卓選び、学習スケジュール設定、直前対策も重要です。

スマホですぐに確認できる!無料資料請求
ユーキャンが選ばれる理由

簿記2級講座

ユーキャンの簿記2級講座は、開講実績40年以上を誇る信頼の講座!
過去10年間で1,162名もの合格者を輩出しています。添削・質問などのサポート体制も万全で、6ヵ月でムリなく合格が目指せます。 当講座には、着実に合格力が身につくヒミツが満載!選ばれる5つの理由をぜひご覧ください。

経理の仕事には、会計処理や帳簿作成、決算処理があり、経理のできる人材の証明となるのが簿記2級の技能です。企業規模や業種を問わず、経理は必要不可欠。そのため、簿記2級の資格保有者は企業から求められ、重宝されます。
簿記2級は知名度・信頼度ともにバツグンで、時代に左右されない高いニーズがある資格。会社内での評価アップが期待でき、就職・転職にも有利にはたらきます。自営業の方や家計を見直したい主婦の方にも役立つスキルです。
ユーキャンの「簿記2級講座」では、わかりやすい教材・テキストをご用意。ここ数年で段階的に行われてきた試験範囲の最終変更に対応しています。ストーリー漫画や図解、イラストなどが理解を助けるので学習もスムーズに。つまづきやすいポイントも丁寧に解説しています。なおペーパー試験を受験する場合、記述対策が合格のポイントになります。解答の様子を撮影した動画で、理解がよりスムーズになります。
充実のカリキュラムで、あなたの合格を全力でバックアップいたします!