• 更新日:2023/12/06

様々なビジネスで役立つ簿記は、非常に人気がある検定の一つです。経理や財務の専門職を目指すなら、できれば簿記2級までを取得しておきたいものです。

とはいえ、日商簿記は級によって平均合格率がかなり異なります。簿記2級の難易度や合格率はどのくらいなのか、簿記2級試験について詳しく解説していきます。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 簿記2級は企業から最も求められる資格の一つ。知名度・信頼度が高く、時代に左右されにくい。
  • 高度な商業簿記・工業簿記を修得し、財務諸表の数字から経営内容の把握ができるレベル。
  • 簿記2級の合格率は20%程度と低く、難易度は高め。
  • 簿記2級の合格基準は100点満点中70点以上。配点は商業簿記が60点、工業簿記が40点。
  • 日商簿記2級・3級でネット試験(CBT方式)を導入。最新の合格率はネット試験の方がやや高い。

簿記2級について

経理のできる人材の証明となるのが簿記2級の技能です。企業規模だけでなくどんな業種からも必要とされるスキルのため、活躍のフィールドが広いのも特徴。サービス業やメーカー、販売会社はもちろん、医療関連分野や各種の個人事務所など、多くの業種で求められています。

日本商工会議所は簿記2級のレベルを以下のように位置付けています。

経営管理に役立つ知識として、企業から最も求められる資格の一つ。
高度な商業簿記・工業簿記(原価計算を含む)を修得し、財務諸表の数字から経営内容を把握できるなど、企業活動や会計実務を踏まえ適切な処理や分析を行うために求められるレベル。


知名度・信頼度ともにバツグンで、時代に左右されない高いニーズがある資格です。会社内での評価アップも期待でき、就職・転職にも有利にはたらきます。さらに自営業の方や家計を見直したい主婦の方にも役立つスキルです。一度取得すれば更新の必要もなく、一生モノの資格になります。

簿記3級との違い

簿記3級は経理業務の入門資格であり、経理・会計に必要な「基礎知識を持っていること」の証明となる資格です。2級は試験の難易度が高くなりますが、その分実務に沿ったより深くて広い簿記の知識・スキルが身につき、3級と比べ取得によるメリットも格段にアップします。

試験範囲は3級は「商業簿記」のみがですが、2級からは「工業簿記」が新たに追加されます。工業簿記の技能が身につけば、製造業における経理業務も可能になります。簿記3級を持っていなくても簿記2級の受験は可能ですが、試験では簿記3級の知識があることを前提に出題されます。簿記の学習は初めてという方は、まず3級からの学習がおすすめです。

簿記2級の難易度

簿記2級の合格率は平均して19.2%前後と低く、難易度が高い試験と言えます。簿記2級では商業簿記に加えて、工業簿記も試験科目となり、出題範囲が広まることが難易度が高い理由の一つです。
また、試験回によっても難易度が異なり、過去の合格率は一桁台の場合から、50%近く高くなった試験もあり、差が大きくなっています。

簿記2級の合格率は平均19.2%

日商簿記2級の合格率は過去10回の平均で19.2%です。これまでの最高合格率は第133回の47.56%で、最低合格率は第107回の5.69%と8倍以上の差があり、回によっては10%前後まで下がることもは珍しくありません。10人受験して2人しか受からないと考えると、難易度は高いと言えるでしょう。
簿記3級の合格率は約40〜50%、2人に1人は合格していることと比較すると、簿記2級は簿記3級よりも難易度が格段に上がっていることが分かります。

また、2020年12月からは従来の統一試験(紙)に加えて、ネット試験が開始され合格率も公表されています。簿記2級ネット試験の合格率は平均39.7%となっており、統一試験の2倍近い数値となっています。試験の難易度には変わりがないことが発表されていますが、大きく差がでています。

以下の表は、過去10回分の簿記2級試験(統一試験)と2021年4月以降の簿記2級試験(ネット試験)の合格率です。統一試験の合格率は「合格者数÷実受験者数」によって算出されています。申し込んでも受験しなかった人は除外されているので、より正確な数値といえるでしょう。

           
簿記2級受験者データ(統一試験)
回(実施年月日) 受験者数(人) 実受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
164(2023.6.11) 10,618 8,454 1,788 21.1
163(2023.2.26) 15,103 12,033 2,983 24.8
162(2022.11.20) 19,141 15,570 3,257 20.9
161(2022.6.12) 16,856 13,118 3,524 26.9
160(2022.2.27) 21,974 17,448 3,057 17.5
159(2021.11.21) 27,854 22,626 6,932 30.6
158(2021.6.13) 28,572 22,711 5,440 24.0
157(2021.2.28) 45,173 35,898 3,091 8.6
156(2020.11.15) 51,727 39,830 7,255 18.2
154(2020.2.23) 63,981 46,939 13,409 28.6

簿記2級受験者データ(ネット試験)
期間 実受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
2023年4月~2023年9月 48,996 18,124 37.0
2022年4月~2023年3月 105,289 39,076 37.1
2021年4月~2022年3月 106,833 40,713 38.1
2020年12月~2021年3月 29,043 13,525 46.6

簿記2級の合格基準

簿記2級の試験では、商業簿記と工業簿記の2科目を受験します。商業簿記が60点、工業簿記が40点配点の100点満点中70点以上が合格基準です。
簿記2級は合計点が70点以上に達しているかという絶対評価で合否が決まるため、問題の難易度によって合格率に開きが出るのです。

簿記2級の合格率が低い理由

簿記2級は、問題の難易度が回ごとに変わるため、合格率もかなり変動します。そのため、難易度が高い回のときは特に合格率が低くなります。

また、そもそもの試験の難易度が高いということも理由のひとつです。2級から工業簿記が科目に加わります。工業簿記とは、製造業に関する簿記を指します。そのため、モノづくりの取引に関する専門用語などの知識がないと、テキストを読んでもイメージがわきづらく、合格のハードルがより高くなると考えられます。

簿記2級の合格率が低い要因

簿記2級の合格率が低い要因は「工業簿記が出題される」「大幅な改定があった」ことが考えられます。

簿記2級は3級と比べ合格率が低く、難易度が高くなりますが、その要因について解説します。

工業簿記が出題される

簿記2級は、簿記3級にはない工業簿記が科目に加わります。工業簿記とは、製造業に関する簿記を指します。一般的な商業経営では、商品を仕入れてそのまま販売しますが、工業経営では材料を仕入れ、加工してから販売します。
そのため、工業簿記では、ひとつの製品をつくるのにかかった材料費・燃料費・人件費などの費用を記録して割り出す「原価計算」が必要となります。数学的な要素が強まり、苦手と感じる方が多いです。
しかし、試験では総得点の4割を占めるため、しっかり理解しておく必要があります。

大幅な改定があった

日商簿記2級においては、平成27年度に大幅な見直しが行われ、それに伴って平成28年度から3年間にわたり、出題区分が改定されました。また、続く令和元年度にも改定されています。

改定によって、簿記1級の範囲である「連結会計」や「外貨建取引」、「リース取引」などが簿記2級でも出題されることになりました。簿記2級試験は結果的に出題範囲が広くなったため、難易度が上がったことになります。

簿記2級の出題傾向

簿記2級の試験では、第1問~第3問までが商業簿記、第4問と第5問が工業簿記から出題されます。試験にはある一定の出題傾向があり、どのような出題形式が多いのか、部分点を獲得するために意識するべきポイントの把握が大切です。

ここでは連続する2回の試験で合格率が2倍に差がついた第152回(合格率25.4%)と第151回(合格率12.7%)と出題傾向を詳しく解説します。

合格率に差が開いた2回の試験ですが、2回連続で同じ項目の問題が出題された問題もありました。珍しくはないことなので、しっかりと過去問を復習しておきましょう。

第152回の出題傾向

全体的に普通レベルの出題でした。そのため、過去問を復習し、基礎をしっかり固めていればが合格できる回でした。

第1問は仕訳問題。第2問は頻出論点の銀行勘定調整表に関する問題が出題されました。表の作成と仕訳というオーソドックスなものですが、この出題形式はよく出るので覚えておきましょう。

もっとも難しいとされたのが、第3問の貸借対照表の作成問題です。しかし、税効果の処理さえ把握していればまったく太刀打ちできないというレベルではありません。続く第4・5問はそれぞれ部門別計算と標準原価計算に関する問題で、資料の読解力が試される問題でした。

第151回の出題傾向

仕訳問題では、初出題となる問題が出たため、解答に悩む人も多かったのではないでしょうか。第2問は、対策を立てていた人にとっては比較的簡単な株主資本等変動計算書に関する問題でした。

第3問の連結精算表に関する出題は、過去に例を見ないほどの難易度でした。このような、明らかに難しい問題に関しては後回しにするか、仕訳などで部分点をとるという方向にシフトすることも大切です。続く第4問は第152回と同じく部門別計算、第5問は等級別総合原価計算の問題でした。

新たに導入されたネット試験(CBT方式)に関して

これまで日商簿記検定は統一試験と呼ばれるペーパー形式のみでしたが、2020年12月よりネット試験が開始して、どちらも受けられるようになりました。ネット試験はパソコンを使う試験を指し、受けられるのは2級と3級のみです。

統一試験(ペーパー形式)では、試験会場が決まっており、試験日も年に3回だったのに対して、ネットでの試験は随時、日本全国のテストセンターで受験が可能です。

試験時間・出題範囲・解答方法

ネット試験の試験時間や出題範囲は、統一試験(ペーパー形式)と変わりません。回答方法はネット試験の場合には、端末(パソコン)上で入力やプルダウンなどを行い問題に回答します。ネット上なので問題用紙への書き込みはできませんが、計算用紙は配られます。

ネット試験(CBT方式)のメリット・デメリット

ネット試験の場合は、随時試験が受けられるため、万が一合格点に足らず落ちてしまった場合でも、すぐに間違えたところを復習して、再度試験が受けられるメリットがあります。また、試験を受けた後すぐに合否がわかり、合格証も即日発行されるため、早く合格証が欲しい人にとってはネット試験がおすすめです。
一方、ネット試験はパソコン上で解とする必要があるため、パソコン操作に慣れていない方は注意が必要です。

最新の合格率はネット試験の方がやや高い

日商簿記検定ネット試験の合格率は2023年4月~2023年9月の期間で、簿記2級37.0%となりました。同じ時期に行われた第164回(2022年6月11日)統一試験の合格率は簿記2級21.1%となり、ネット試験の方が合格率が高くなっています。
難易度に差はないと日本商工会議所から発表されていまが、最新の合格率はネット試験の方が高くなりました。

簿記2級で押さえたい科目は工業簿記

簿記2級の合格には、得点源として工業簿記がカギ。出題傾向が安定しているため、過去問で傾向をしっかり押さえましょう!

工業簿記は製造業を営む企業で用いられる簿記です。工業経営の場合、原材料や部品を仕入れ、それを加工して製品にしてから販売活動に移ります。そのため工業簿記においては、材料や仕掛品など、製品の製造加工に関する特有の勘定科目も使用します。

また、商業簿記と工業簿記では財務諸表の表記が若干異なります。最終的にはどちらも財務諸表の作成が主な目的となりますが、表記の違いはしっかり覚えなければなりません。簿記2級では、3級にはない工業簿記を押さえることが必要です。

工業簿記は過去問で押さえる

工業簿記の出題区分は長い期間にわたり改定されておらず、出題傾向が安定しているともいえます。工業簿記は過去問から出題傾向を押さえることが可能です。

比較的に出題頻度の高い総合原価計算、差異の分析を行う標準原価計算、CVP分析を含めた直接原価計算の3分野を特に意識して押さえるといいでしょう。

簿記2級の勉強方法とスケジュール

難易度が上がる簿記2級の合格には、効率の良い勉強方法と適切なスケジュール管理がポイント!

簿記は2級から難易度が格段に上がるといっても過言ではありません。簿記2級を攻略するには、効率のよい勉強方法やスケジュール管理が大切です。ここからは、簿記2級に適した勉強方法やスケジュールの組み方について解説していきます。

効果的な勉強方法

簿記の基礎知識がない場合、まずは簿記3級の勉強から始めましょう。簿記の基本をマスターしてから2級の勉強を始めると、その後の理解も早まります。勘定科目や借方・貸方などの基礎知識を頭に入れるところからスタートすることが大切です。簿記の仕組みを全体で捉え、一連の流れの中でポイントを押さえていくと、勉強の効率も上がります。

おすすめの勉強スケジュール

まずは受験する試験の実施回を決め、今日から試験日までの日数を逆算してスケジュールを立てることが大切です。試験1週間前には最終調整の時間も確保しましょう。実際の試験時間と同じ時間で問題を解いたり、苦手な問題のポイントを押さえたりして、万全の状態で試験に臨みましょう。

そもそも簿記検定とは

簿記とは、企業の資金の流れを把握・整理するために必要なスキルです。具体的には、企業の経営活動における収支や、所有する資産などを帳簿に記録・計算して、資金の流れと財政状態を明らかにします。

簿記の技能スキルを習得することによって、財務諸表の読解力が身につき、基本的な経営管理までも理解できるようになるのです。企業の財政状態がわかれば、経営成績なども把握できます。

簿記はその汎用性の高さから、多くの企業が取得を推奨している資格です。国家資格などそのほかの資格も併せて取得し、キャリアを積もうと考える人も多くなっています。簿記検定の種類は複数ありますが、なかでも「日商簿記」は年間で約60万人が受験するほど社会的な信頼と評価の高い資格です。

日商簿記2級試験の概要

日商簿記2級試験の試験概要について確認しておきましょう。

資格名称 日商簿記2級
認定団体 日本商工会議所
受験資格 どなたでも受験可能
受験料 4,720円(税込)
  • 2024年度(2024年4月1日施行分)から受験料が5,500円(税込)となります。
試験会場(予定地) 全国の商工会議所
(詳細は試験実施機関のホームページにてご確認ください)
受験月 統一試験(ペーパー試験):年3回(6、11、翌年2月の日曜日)
ネット試験:随時
合格基準
100点中70点以上
(商業簿記60点、工業簿記40点。トータル70点以上取れれば合格)
合格率 令和5年6月:21.1%/令和5年2月:24.8%/令和4年11月:20.9%
出題数・解答形式 大問5問(計算問題)
第1~第3問:商業簿記、第4、5問:工業簿記
その他 統一試験(ペーパー試験)の実施の有無は各地の商工会議所によって異なります。

まとめ

簿記2級は、3級と比べると難易度が高く、数カ月から半年程度の学習時間が必要となります。しかし、自身に見合った勉強方法で効率よく学習していけば、初心者でも合格できる資格です。ぜひチャレンジしてみてください。

ユーキャンの簿記2級講座なら、出題傾向を徹底的に分析したテキストと丁寧な添削指導で、効率的に学習できます。また、問題の解き方を動画でわかりやすく解説してくれるデジタル学習サイトも好評です。工業簿記が苦手な人でも学習しやすいでしょう。無料で資料請求できるので、ぜひ受講を検討してみてはいかがでしょうか。

生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

簿記2級に独学で合格するためのポイントとは?

独学で簿記2級合格を目指すには、適切なテキストと電卓選び、学習スケジュール設定が必須で、直前対策も重要です。
独学で簿記2級に合格するポイントは3つ。1.商業簿記・工業簿記をマスター 2.戦略を立てて得点を狙う 3.試験時間の配分が挙げられます。

簿記2級取得者が転職するのに適した時期は?

簿記2級取得者への需要が高まるのは、決算期の1~2ヵ月前頃。経理・財務部門は繁忙期を前に即戦力の人材の採用を検討することも多く、好条件で転職できる可能性が高まります。
日本の年度末は3月が多いため、1~2月頃がチャンスです。また、株主総会が終わる6~7月も忙しくなるため、4~6月頃もいい時期でしょう。

簿記検定はネット試験と統一試験どちらを受けるべき?

ネット試験でも統一試験でも合格すれば履歴書に記載でき、資格の価値に優劣はありません。
ネット試験は好きな時に試験が受けられるため、早く資格が欲しい場合はおすすめです。ただし、パソコンに慣れ親しんでいない人は、前もって操作の留意点を把握して試験に臨みましょう。
なお、ネット試験に対応しているのは日商簿記2級・3級のみで、1級は対応していません。

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簿記3級や経理初心者からのステップアップに!

経理の仕事には、会計処理や帳簿作成、決算処理があり、経理のできる人材の証明となるのが簿記2級の技能です。企業規模や業種を問わず、経理は必要不可欠。そのため、簿記2級の資格保有者は企業から求められ、重宝されます。
簿記2級は知名度・信頼度ともにバツグンで、時代に左右されない高いニーズがある資格。会社内での評価アップが期待でき、就職・転職にも有利にはたらきます。自営業の方や家計を見直したい主婦の方にも役立つスキルです。
ユーキャンの「簿記2級講座」では、わかりやすい教材・テキストをご用意。ここ数年で段階的に行われてきた試験範囲の最終変更に対応しています。ストーリー漫画や図解、イラストなどが理解を助けるので学習もスムーズに。つまづきやすいポイントも丁寧に解説しています。なおペーパー試験を受験する場合、記述対策が合格のポイントになります。解答の様子を撮影した動画で、理解がよりスムーズになります。
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