簿記3級のメリットと勉強法(最新改定対応)

- 公開日:2020/05/07
就職活動を有利に進めるため、何らかの資格を取得したいと思う人は多いです。簿記の資格はそんな人たちに人気があります。
この記事では、簿記3級を取得したいと考えている人に向けて、試験の内容・資格取得のメリット・勉強方法などを紹介します。2019年度に改定された日商簿記試験への対策も解説しているので、受験する際の参考にして下さい。
簿記3級とは?
簿記3級とは、ビジネスに必要となる基本的な経理知識を証明できる資格です。簿記の知識があれば、会社の売上や支払いなどの経営活動の記録・計算を行い、経営状態を明確に表せるようになります。簿記検定試験の主催者は日商・全商・全経と3種類ありますが、日商の簿記検定が最も知名度が高く、就職にも有利です。
本記事では、日商簿記3級について解説していきます。
簿記3級は簡単?難しい?
簿記3級の合格率は毎回40~50%ほどであり、年間の受験者数は約30万人にも達しています。きちんと勉強すればほとんどの人が合格できる資格です。
日商簿記3級の試験科目は、商業簿記のみで入門レベルなので気軽に受験できます。2級は工業簿記が試験科目に加わるため、難易度が高くなります。
- 参考:3級受験者データ | 商工会議所の検定試験(https://www.kentei.ne.jp/bookkeeping/candidate-data/data_class3)
簿記3級の資格を取るメリット
簿記3級の資格を取ることで、どのようなメリットがあるのか解説します。
社会人としての一般常識が得られる
簿記3級の学習内容には、社会人として必要な経済に関する一般常識が多く含まれます。例えば、会社の経営状況をまとめた「財務諸表」の読み方が理解できるようになるので、取引先などの経営状況の把握に役立ちます。特に経理関係の部署で仕事をする場合には即戦力となれる可能性があります。
履歴書に記載できる
簿記3級は、履歴書の資格欄に記載できる資格です。経理の一般知識があることを履歴書で伝えられますので、就活の際により好印象を残せます。
自営業・経理の実務に役立つ
簿記3級は、自営業や経理の実務に役立ちます。簿記の知識があれば、財務諸表が読めますので、自社の経営分析ができます。会社経営に必要な知識も身に付くため、日々の会計処理や毎年の確定申告などをする際にも役立ちます。
上位の資格を目指せる
簿記3級を取得すれば、さらに上位の資格が目指しやすくなります。簿記3級は、2級や1級、税理士や公認会計士といった上位資格の基礎知識となるからです。簿記以外の資格を取得すれば、ダブルライセンスとしてキャリアアップもはかれます。
簿記3級合格の目安
簿記3級に合格するための目安について解説します。
独学でも合格できるのか?
簿記3級は、きちんとした学習計画を立てれば、独学でも合格を目指せる資格です。簿記の中では比較的難易度が低い資格ですが、独学では勉強をやり遂げる強い意志が求められます。また、勉強時間の確保と最適なテキスト選びも重要なポイントとなるでしょう。
しかし独学の場合、最新の情報を得るのが難しくなります。通信講座や専門学校の受講も検討してみましょう。直前模試を受けるなどの対策も必要となります。
計算が苦手だけれど合格できるのか?
計算が苦手でも、四則計算ができて、電卓が使えれば問題なく合格できます。難しい計算問題はなく、足し算や引き算などの簡単な計算で解けます。重要なのは、制限時間内に解くためのスピードです。
試験には計算問題が多く出題されますが、電卓の持ち込みは許可されていますので、速やかに解答できるように練習をしておけば問題ありません。普段から電卓を使いこなせるようにしておきましょう。
合格までの勉強時間はどれくらい?
簿記3級合格に必要な勉強時間は、約100時間といわれています。基礎知識の有無や個人のレベルにより異なりますが、効率よく勉強を進められれば、もっと少ない時間で合格することも可能です。
初心者のための簿記3級の勉強方法
初心者のための簿記3級の勉強方法を解説します。試験日から逆算して、計画的なスケジュールを組みましょう。試験当日の雰囲気をつかんだり、情報収集をしたりするために、直前に行われる模試はぜひ受けておきたいものです。
参考書で勉強する
独学の場合は、参考書選びが非常に重要です。自分のレベルに合ったもので、見やすく、理解しやすい参考書を選びましょう。1冊の参考書を理解できるまで繰り返し読み、問題の傾向や全体の概要をつかんでから試験対策問題を解きます。
なお、参考書選び・過去問対策については、2019年6月に出題範囲が改定されたので注意が必要です。
アプリで勉強する
簿記の勉強用のアプリも数多くリリースされています。仕訳対策アプリなど、問題を何度も繰り返し解ける便利なアプリを活用しましょう。通勤時間や家事の合間など、隙間時間を有効に使えて便利です。
通信講座で勉強する
通学する時間がなく、独学でも勉強をやりきる自信がないという場合は、通信講座がおすすめです。通信講座ではテキストが用意されているので、自分で選ぶ必要がありません。また、いつでも、どこでも学習できます。
疑問点に対する質問がすぐにできるなど、合格のためのサポートも整っています。ユーキャンの簿記3級講座では、初心者が3カ月で合格を目指せるスケジュールが組まれているのでおすすめです。
専門学校で勉強する
時間とお金に余裕のある人には、専門学校に通うことをおすすめします。専門学校では、試験の最新情報が常に得られるのでメリットが大きいです。また、疑問点がその場で質問できるため、解決に時間がかからないのも魅力です。
しかし、授業時間が決められているため、欠かさず受講することが難しい人には向きません。さらに学費が比較的高額なことも難点といえます。
初心者が簿記3級の受験で気をつけるべきポイント
ここでは、簿記3級を受験するにあたり、気をつけるべきポイントを解説します。
70点以上取れば合格できる
簿記3級は、100点満点中70点以上取れば合格できます。試験問題は全部で5問あり、2時間以内で解答する必要があります。「仕訳問題(20点)」「試算表作成問題(30点)」「精算表・貸借対照表・損益計算書のどれか1つを作成する問題(30点)」の3問は必ず出題されると考えてよい問題です。
3問の合計は80点と獲得点数も高いので、重点的に学習しましょう。
問題演習中心の勉強をする
テキストで理解を深めたら、問題演習を中心に勉強を進めます。間違えた問題はテキストの解答・解説をよく確認し、間違えた原因もしっかり把握しましょう。間違えた問題は、必ず解き直し、次は確実に解けるようにしておく必要があります。
2019年6月に出題範囲が改定されていますので、過去問を解く際は改定前の内容を避けるなどの注意が必要です。
問題を解く順序を決めておく
簿記3級を受験するにあたり、問題を解く順序をあらかじめ決めておきましょう。試験問題は全5問で、出題パターンはある程度予想が可能です。自分の得意分野が何かを把握し、解く順序を決めておくことをおすすめします。
例えば、まず第1問の「仕訳問題」を最初に解きます。続いて「試算表作成問題」「精算表・貸借対照表・損益計算書(のどれか1つ)を作成する問題」など、解くのに時間がかかる計算問題に取組み、最後に、残りの2問を解くなどです。
この流れに限らず、自分流の解き方を見つけ、何度も実践しておきましょう。
使い慣れた電卓を使おう
本番の試験では、計算機(電卓)の持ち込みができます。普段から使い慣れた電卓を使いましょう。余計な機能は不要で、シンプルなものがおすすめです。メモリ機能(M+、M-、RM)や、グランドトータル機能(GT)、00キーがあれば充分です。
なお、機種によっては持ち込みが禁止されていることもあるので、事前にしっかり確認をしておきましょう。
簿記の資格取得に向いている人
どの級から受ければいいのか迷っている人に向けて、各級ごとに取得に向いている人を紹介します。
簿記3級に向いている人
簿記3級に向いている人は、就活に活用したい主婦・学生、商店・中小企業などの自営業の人などです。宅建士(宅地建物取引士)やFP(ファイナンシャル・プランナー)など他の資格も取得しようとしている人は、簿記3級の資格も取り、ダブルライセンスを目指すとよいでしょう。
簿記2級に向いている人
簿記3級より難易度が高めの簿記2級は、企業の経理や営業部門で活躍したい人、現職でのキャリアアップをはかりたい人などに向いています。試験には、商業簿記と工業簿記の両方の内容が含まれるので、製造業に携わる人にも役立ちます。
簿記1級に向いている人
簿記1級は、税理士・公認会計士を目指している人に向いています。簿記1級では、2級の試験内容に、会計学や原価計算が加わります。より専門性が高い分析や管理が行えるようになるため、就活ではかなり有利となります。
それぞれの試験範囲・難易度・想定勉強時間
簿記1級~3級それぞれの試験範囲・難易度・想定勉強時間は以下の通りです。
試験範囲
3級 | 「商業簿記」 |
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2級 | 「商業簿記」「工業簿記(原価計算を含む)」 |
1級 | 「商業簿記」「会計学」「工業簿記」「原価計算」 |
難易度
3級 | 基本的に足し算・引き算の組み合わせなので、難易度はさほど高くなく、基本的な計算方法さえ身につければ問題ありません。初学者の方や、「数字が苦手…」という方でも十分に合格が狙えます。 |
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2級 | 工業簿記は、ものづくりにおける原価計算などの知識が必要です。商業簿記も中小企業の経理業務が行えるレベルに。難易度は3級より格段に上がり、初心者にはハードルが高めの資格です。 |
1級 | 商業簿記・工業簿記に加えて会計学・原価計算の知識が求められます。難易度は高く、簿記1級に合格すると税理士試験の受験資格が得られることから、国家資格への登竜門とも呼ばれます。 |
想定勉強時間
3級 | 約100時間(3ヵ月程度) |
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2級 | 簿記3級の知識がある場合:150~350時間(4~6ヵ月程度) 簿記初心者の場合:350~500時間(6~8ヵ月程度) |
1級 | 独学の場合:1,000~2,000時間 通学・通信講座を利用した場合:500~800時間 |
改定された日商簿記3級の対策
簿記3級は、2019年6月に出題範囲の改定が行われました。使用する教材・学習内容・出題範囲の変更点についての対策を解説します。
独学する人は使用する教材に気をつけよう
独学で合格を目指す場合は、使用する教材選びに気をつけましょう。参考書は必ず、改定後の出題範囲に対応した最新版を選んでください。
また、過去問題集についても、改定前の出題範囲となっている場合があります。範囲外の過去問で時間を浪費しないよう、事前の確認が大切です。
「株式会社」を意識した学習をしよう
改定前の簿記3級では、「個人商店」を意識した問題が出題されていましたが、2019年6月から「小規模な株式会社」に改定されています。株式会社を意識した学習を行いましょう。
実務を重視して追加された内容
改定前の簿記3級試験では、実際の実務に即していない内容が数多くありましたが、改定後はより実務を重視した内容が追加されました。今回の改定で追加された内容は、以下の通りです。
- 株式会社の設立
- 剰余金の配当
- 増資
- 債権の譲渡
- 純損失の繰越利益剰余金勘定への振替
- 法人税・住民税及び事業税
簿記3級の試験から削除された内容
今回の改定により、簿記3級の試験から削除された内容を紹介します。
実務に即さない内容として削除されたもの
- 繰越試算表
- 6桁精算表
- 当座借越勘定を使った期中処理
- 資本の引き出しに関する処理
- 売上値引、仕入値引
- 消耗品購入時の資産処理
- 「見越し」「繰延べ」という表現など
個人商店特有の内容として削除されたもの
- 個人商店を前提とした資本金・引出金の処理
- 所得税
- 純損益の資本金勘定への振替
2級以上に繰り上げとなった内容
- 有価証券の購入・売却
- 減価償却の直接法
- 手形の裏書譲渡・割引など
重要度が高く2級から3級に移行された内容
今回の改定で、実務上の重要度が高いと判断された内容が2級から3級へと移行しています。3級に移行された主な内容は以下の通りです。
- 電子記録債権
- 電子記録債務
- クレジット売掛金
- 月次決算
- 貯蔵品処理
まとめ
簿記3級は、さまざまな資格への足がかりともなる資格です。比較的取得しやすい初心者向けの資格なので、しっかりと学習計画を立てて臨めば合格できるでしょう。ただし、独学の場合には、参考書の選び方が非常に重要なポイントとなります。参考書を選ぶ際は、2019年6月に出題範囲が改定されていることに留意して選ぶようにしましょう。
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