• 更新日:2025/07/09

ITパスポート試験はIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「情報処理技術者試験区分レベル1」に該当し、IT系国家資格では最も基本的なレベルとされています。一方でしっかりと学習計画を立てなければ、合格が難しいことも確かです。本記事ではITパスポート試験の難易度と他資格との比較、パターン別の難易度の感じ方などを詳しく解説します。

ITパスポート試験の難易度は「易しい」ってホント?

ITパスポート試験はIT系の国家資格(国家試験)の中では難易度が「易しい」とされています。実際に難易度が低いのか、過去のデータや試験内容から詳しく解説します。

過去10年の合格率から見る難易度

過去10年程度の合格率について見ていきましょう。

年度 受験者数(名) 合格者数(名) 合格率(%)
2015年度 73,185 34,696 47.4
2016年度 77,765 37,570 48.3
2017年度 84,235 42,432 50.4
2018年度 95,187 49,221 51.7
2019年度 103,812 56,323 54.3
2020年度 131,788 77,512 58.8
2021年度 211,145 111,241 52.7
2022年度 231,526 119,495 51.6
2023年度 265,040 133,292 50.3
2024年度 204,675 101,904 49.8
上記の結果とITパスポートの位置づけから、難易度は「比較的易しい」といえるでしょう。
・合格率が50%前後で安定している
・国家試験として入門レベルにあたる
・基礎知識があれば合格しやすい
・受験者数が増えても合格率は安定している

まず合格率が50%前後で推移しており、受験者数が大幅に増加した年度でも合格率は大きく変動していません。このことから、試験のレベル自体は大きく変わりはなく、しっかりとした基礎知識を持つ受験者であれば比較的合格しやすいといえます。またIPA(情報処理推進機構)によると、ITパスポート試験は「情報処理技術者試験区分レベル1」に該当するため、他のIT系資格に比べて合格しやすい難易度です。そのためITパスポート試験は簡単とはいえないものの、比較的易しいレベルの試験にあたります。

ITの基礎知識を問われる国家試験

ITパスポート試験は、ITに関する基礎知識を問う経済産業省所管の国家試験で、情報処理技術者試験の入門レベル(レベル1)に位置づけられています。ITの専門職だけでなく、すべてのビジネスパーソンが身につけるべきITリテラシーや、情報セキュリティ、ネットワーク、業務改善、会計などの基本を幅広くカバーしています。職種を問わず、現代の業務に必要な「ITの共通言語」を理解しているかを測る試験です。そのため専門知識の理解よりも、ITの基礎知識を理解しているかが問われます。

ITパスポート試験の難易度を他資格と比較

ITパスポート試験の難易度は比較的易しいレベルですが、他の資格と比べたときにどの程度の難易度なのかも比較していきましょう。

情報処理技術者試験内の他区分との比較

ITパスポート試験は、情報処理技術者試験の中で最も基礎的なレベル1にあり、他の区分と比べて難易度が低く合格しやすい試験です。直近の合格率を比較すると、ITパスポート試験の合格率は50~60%前後と比較的高く、毎年安定しています。一方で、同じ情報処理技術者試験の中でもレベル2の「基本情報技術者試験(FE)」は合格率が25~30%程度、レベル3の「応用情報技術者試験(AP)」は20%前後と、難易度が上がるにつれて合格率は大きく下がります。さらに上位の「情報処理安全確保支援士」や「システムアーキテクト試験」などになると、合格率は10~15%台にまで低下することから、非常に難易度が高いといえるでしょう。この合格率の差は、出題範囲の深さと専門性の違いによるものです。ITパスポートは、すべての社会人が身につけるべき基本的なITリテラシーやビジネス知識が中心で、専門的なプログラミングや高度な技術力を問われることはありません。対して基本情報技術者試験以上では、アルゴリズム、プログラミング、設計・開発、セキュリティなど専門性が高く、実務能力や応用力が求められます。

基本情報技術者試験との違いと難易度

ITパスポート試験と基本情報技術者試験(FE)はいずれも情報処理技術者試験に分類されますが、対象者・出題内容・難易度に大きな違いがあります。まずITパスポート試験は情報処理技術者試験の「レベル1」に位置づけられ、IT初心者や社会人全般を対象とした基礎的な国家試験です。内容はストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系と広範囲ですが、基本的な知識が問われるため、難易度は比較的低く合格率は50~60%前後と高めです。一方の基本情報技術者試験は「レベル2」に位置づけられ、ITエンジニアの登竜門ともされています。出題内容にはプログラミング言語、アルゴリズム、データベース、ソフトウェア設計、ネットワーク、セキュリティなどが含まれ、より実践的かつ専門的な知識が求められます。また問題量や出題形式も複雑で、合格率は20~30%前後と難易度が高くなっており、一定の専門知識がなければ合格できません。このようにITパスポート試験は「ITリテラシーの証明」としてビジネスパーソン全般に適しており、基本情報技術者試験は「IT技術者としての基礎能力の証明」として、より専門職を目指す人向けの内容です。

ビジネス系資格との比較

ITパスポート試験は「IT×ビジネス」の基礎を問う国家試験であり、同じく社会人に人気の高いビジネス系資格(例:日商簿記3級、秘書検定2級、MOSなど)と比較されることがあります。ただしそれぞれの試験内容や合格率、難易度の特性には明確な違いがあります。まずITパスポート試験の合格率はおおむね50~60%程度で推移しており、一定の学習時間(平均して150時間)があれば独学でも合格が可能です。試験内容は広範で、ITだけでなく経営・マネジメント・会計・法律などを含みますが、いずれも基礎レベルであり「満遍なく基本を押さえる」ことが合格の鍵となります。一方の秘書検定2級も合格率60~70%と高めで、社会人マナーや敬語など常識に近い内容が中心です。MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)はスキル系資格であり、ソフト操作が得意な人にとっては比較的合格しやすく、合格率も70%前後(詳細は非公開)と高めです。

日商簿記検定、TOEICなど

ITパスポート試験は新社会人や学生に広く受験される国家試験であり、ビジネス現場での基礎的なITリテラシーを問う内容として、人気が高いです。同じく、新社会人や学生に人気の高い資格として日商簿記検定やTOEICなどがあります。たとえば日商簿記3級の合格率は40~50%前後で推移しており、ITパスポートと近い水準ですが、出題内容は会計・経理に特化しており、仕訳や帳簿など数字に慣れていない人には難しく感じられることもあります。簿記2級になると難易度はさらに上がり、合格率は20~30%台と、合格には継続的な学習が必須です。またTOEICはスコア型試験であり合格・不合格はありませんが、一般的に企業が求めるスコア(600~800点)を取得するにはかなりの英語力と長期的な学習が必要です。TOEICでは語学力の総合的な運用能力が問われるため、短期間で高得点を狙うのは難易度が高いといえます。このようにITパスポートは広範な分野を扱うものの、出題は基礎的で難解な専門知識は不要です。短期間でも合格が可能な「取得を目指しやすい国家試験」である一方、簿記やTOEICは専門性や習得までの学習時間が多く必要な点で、難易度の性質が異なる資格といえるでしょう。

【パターン別】ITパスポート試験の難易度をどう感じるか

ITパスポート試験は情報処理技術者試験の中では入門レベルの内容ですが、受験者によっても難易度は変わります。さまざまなパターン別に試験の難易度をどのように感じやすいかを紹介します。

ITパスポート試験合格は社会人が有利

2023年4月から2024年3月までの受験者数・合格者数・合格率をまとめてみると、社会人の合格率は53%、学生の合格率は40.2%で、社会人の合格率の方が高いことがわかります。

これは、ITそのものの知識だけでなく、ビジネス用語や経営に関する知識も問われるため、すでに実務の経験がある社会人の方が有利だから、と考えられます。ですから、学生がITパスポート試験を受験する際には、ビジネス分野の勉強に力を入れれば合格の可能性が上がるでしょう。

社会人と学生の合格率

受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
社会人 208,912 110,750 53
学生 56,128 22,542 40.2

社会人の合格率

社会人 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
IT系 27,167 15,549 57.2
非IT系 181,745 95,201 52.4

学生の合格率

学生 受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
大学院 2,766 1,927 69.7
大学 32,317 15,260 47.2
短大 521 137 26.3
高専 1,014 346 34.1
専門学校 6,784 1,591 23.5
高校 11,420 2,792 24.5
小・中学校 346 116 33.5
その他 960 373 38.9

2024年4月時点

IT初学者・文系出身者の場合

IT初学者や文系出身者にとって、ITパスポート試験は最初は用語や概念に難しさを感じることがあります。特にアルゴリズムやネットワーク、情報セキュリティなどの専門用語は、聞き慣れない内容が多いため戸惑いやすい分野です。ただし出題内容は基礎的であり、テキストや解説付きの過去問を活用すれば、初学者でも十分に合格できます。

IT業界経験者・理系出身者の場合

IT業界の経験者や理系出身者にとって、ITパスポート試験の内容は比較的容易に感じることが多いです。特にテクノロジ系の分野(ネットワーク、システム開発、情報セキュリティなど)の試験内容にも馴染みがあり、学習の負担も軽く済みます。ただしストラテジ系(経営・会計)やマネジメント系(プロジェクト管理)には慣れていない場合もあるため、その部分は対策が必要です。もともとの経験や知識を活かし、全体としては短期間の学習でも十分に合格が見込める難易度といえます。

学生・新社会人の場合

学生にとっては初めて学ぶ用語や分野が多く、やや難しく感じることもあるでしょう。しかし継続的に学習すれば、十分に合格可能です。一方の社会人は業務経験と結びつく内容が多く、特にマネジメント系やストラテジ系で理解が進みやすい傾向があります。ただしIT未経験の社会人はテクノロジ系で戸惑うこともあるため、バランスの取れた学習が必要です。

ITパスポート試験に「落ちる人」と「受かる人」の特徴

ITパスポート試験に「落ちる人」の特徴は、過去問をあまり解かず、知識の暗記だけに偏っている点です。また、苦手分野を放置したまま試験に臨むケースも多く見られます。一方「受かる人」は、過去問演習を繰り返し、間違えた問題をしっかり復習しています。インプットとアウトプットのバランスを保ち、計画的に学習を継続している点が特徴です。

ITパスポート試験に落ちる人の特徴

ITパスポート試験において「落ちる人」の特徴は、主に3つの傾向に集約されます。
・勉強時間が不足している
・過去問の演習が不足している
・特定分野への苦手意識が強く、対策が不十分になっている

ITパスポートは基礎的な国家試験とはいえ、出題範囲はストラテジ系(経営・会計・法務)、マネジメント系(プロジェクト管理)、テクノロジ系(IT基礎)と非常に広範囲です。これらを網羅的に学ぶには、初学者であれば180時間程度の学習が必要とされます。短期間の詰め込みや断片的な学習では知識の定着が不十分になり、合格は難しくなります。過去問を解くことで出題傾向や問題形式に慣れ、得点力を高めることができますが、過去問をあまり活用しないまま本番を迎える人は、実践感覚が養われずにミスを重ねがちです。特に選択肢のひっかけ方や時間配分への感覚は、過去問演習を通じて身につける必要があり、必須の対策といえます。また文系出身の人がテクノロジ系を避けたり、IT経験者がストラテジ系を軽視したりするケースも落ちやすいパターンです。ITパスポート試験では3分野すべてからバランスよく出題され、それぞれの分野で満たす必要のある評価点があるため、1つでも大きく失点すると合格できません。

ITパスポート試験に受かる人の特徴

ITパスポート試験に「受かる人」の特徴は主に3つあります。
・計画的な学習を実践している
・過去問を徹底的に活用している
・苦手分野を克服している

まず、受かる人は試験日から逆算して学習スケジュールを立て、毎日30分~1時間でも継続して勉強しています。学習の目標や進捗を可視化し、メリハリのある学習を続けることで、長期間にわたるモチベーションを維持している点が特徴です。またITパスポート試験は過去問の傾向が非常に役立つ試験であり、受かる人は最低でも3回以上同じ問題を繰り返し解いています。特に間違えた問題を重点的に復習し、なぜ間違えたのかを分析することで、知識の定着と応用力を養っています。過去問を通じて時間配分や問題形式にも慣れることで、本番での対応力も高くなり、結果として合格につながるためです。そしてITパスポート試験はストラテジ系、マネジメント系、テクノロジ系の3分野から出題されるため、バランスよく得点することが求められます。受かる人は、自分の弱点を早い段階で把握し、参考書や解説動画などを活用して理解を深めています。

ITパスポート試験の難易度に関するよくある質問 (FAQ)

ITパスポート試験は非常に受験者の多い国家試験です。多くの方が疑問に感じている質問と回答について、具体的に紹介します。

Q: 文系でもITパスポート試験に合格できますか?

文系の方でもITパスポート試験には十分合格可能です。試験では基礎的なIT用語やビジネス、会計、マネジメントなどの幅広い知識が問われます。そのため文系出身者でも、テキストや過去問を活用して計画的に学習すれば理解を深めながら合格を目指せます。特に図解付きの教材や解説動画を活用することで、初学者でも安心して取り組めるでしょう。

Q: 独学でITパスポート試験に合格できますか?

ITパスポート試験は独学でも十分に合格可能な試験です。出題範囲は広いものの、基礎的な内容が中心であり、通信講座や市販のテキストや過去問、無料の学習サイトやスマホアプリなどを活用すれば効果的に学習を進められます。特に過去問演習を繰り返すことで出題傾向に慣れ、得点力を高めることができます。

Q: ITパスポート試験は本当に意味ないと言われるのはなぜですか?

「ITパスポート試験は意味がない」と言われることがあるのは、内容が基礎的であり、IT業界での即戦力資格とは見なされにくいためです。特に高度なスキルを求められる職種では、基本情報技術者試験など上位資格が重視される傾向があります。一方で、ITパスポートはITリテラシーやビジネス知識を体系的に学べる国家試験であり、IT初心者や文系出身者、学生にとってはITスキルの基礎固めや就職活動でのアピール材料として十分に価値があります。

Q: 合格率が変動する原因は何ですか?

ITパスポート試験の合格率が変動する主な原因は、受験者層の変化と出題傾向の影響です。たとえば学生や初学者の受験者が増えると、全体の平均点が下がり合格率も低下する傾向があります。また年度によって出題内容や難易度に若干の違いがあるため、その点も影響します。ただし大きな傾向として合格率は50〜60%前後で安定しており、しっかり対策すれば十分に合格可能な試験です。

まとめ

ITパスポート試験はIT系の資格の中では入門レベルに相当し、初学者でもしっかりと学習計画を立て、必要な知識をしっかりと学べば合格できる試験です。学生や新社会人、リスキリング目的の社会人など幅広い層に人気が高く、ITリテラシーを高めたい人には最適といえるでしょう。保有することでIT企業への就職・転職でも有利に働きますから、通信講座などを活用し、効率的な学習で合格を目指しましょう。

生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
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ITパスポートとは、ITに関する基礎的知識を証明する、経済産業省認定の国家試験です。パソコンやインターネットを使うのが当たり前の時代。技術者だけではなく幅広い層に正しい知識が必要であることから、2009年4月に新設されました。Iパスとも呼ばれ、年齢、性別、職種を問わず人気資格です。