人材育成の課題5選 解決策と具体例を紹介

  • 人材育成の課題5選 解決策と具体例を紹介

    公開日:2023.04.24

    更新日:2024.01.26

    人材育成を進めているものの、人手不足やスキル不足で効率的に実施できていない企業は多いのではないでしょうか。この記事では、人材育成の目的や課題、人材育成の5つの手法、課題の解決策などを解説します。自社の人材育成への課題を感じている方は、参考にしてください。

人材育成の目的とは

人材育成の目的には、以下の3点が挙げられます。

  • ・生産性を向上する
  • ・従業員の定着率を向上する
  • ・業務スキルを定着する

※参考:人材育成とは?

生産性を向上する

人材育成は生産性を向上させ、自社の利益を最大にすることを目的の1つとして実施します。日本では労働人口が減少しており、2030年には約1,000万人もの労働力が不足するといわれています。現在も人手不足に悩む企業が多く、生産性を向上させ利益を最大にする取り組みは重要です。

限りある資源を有効活用して企業として成長を続けていくには、それぞれの従業員が最大限のパフォーマンスを発揮することが欠かせません。たとえば、1,000人の企業で1人あたりの生産性を5%向上させられれば、50人分の人材不足に対応できます。

生産性を高める方法やツールを用いつつ個々の強みや特徴に注目し、能力を引き出しましょう。

従業員の定着率を向上する

近年では定年まで1つの企業で勤め上げる従業員は減少しており、早期に退職することは少なくありません。スキルアップの機会を設けて従業員が自身の成長を実感できれば、退職を選択するケースが減少して、定着率の向上が見込めるでしょう。

定着率が向上するほど新規採用にかかる費用を削減でき、削減した費用を既存の従業員への人材育成に向けることが可能になります。人手不足が顕著な業界であるほど、定着率を上げて人材育成に注力する好循環を作ることが重要です。

業務スキルを定着する

社会人としての、基本的な知識や業務スキルを定着させることも目的の1つです。企業の利益を上げるために専門的なスキルや知識は重要ですが、基本的な業務スキルが不足していては専門的な知識は身に付きません。

まずはビジネスマナーやコミュニケーションスキル、社内のルールの理解、基本的な業務スキルを定着させましょう。日々の業務に影響するため、新人だけでなく中堅社員にも必要なスキルです。

人材育成と人材開発の違いは?

人材育成が社員に知識やスキルを習得してもらう目的だとすれば、人材開発は社員個々の能力を最大限まで高めることを目的としています。通常、人材育成は特定の階層や役職、入社時期の社員に対して行われます。一方の人材開発は時期や階層、役職に限定されず、すべての社員が対象となるものです。また人材育成は長期的なスパンで計画を立てて実施されますが、人材開発では特定のスキルを高めることから短期間で完了します。それぞれの違いを理解することで、企業に貢献できる人材の活用術が見えてくるでしょう。

人材育成と人材教育の違いは?

人材育成と人材教育は似たような意味で使われますが、教える内容や範囲に違いがあります。人材育成は新入社員や中堅、管理職などの階層や役職に合わせて、実務で必要なスキルや知識を教えるものです。一方の人材教育は倫理観や道徳性、一般的な仕事への価値観などの概念的な内容を教育します。つまり人材教育は社会人としての汎用的なスキルを学ぶもので、人材育成は社員の状況に合わせた実務的なスキルを学ぶものと考えればよいでしょう。
そのため、人材教育は人材育成の一部とも捉えられています。



予算を確保するには、経営層が人材育成にかかる予算を事前に織り込み、かつ経営目標に則した利益を確保できる中・長期的な経営計画を設定しましょう。育成により従業員の定着率が向上すると採用コストを削減でき、長期的な視点でみると人材育成にかかる費用は膨大なものではないはずです。

人材育成の課題とは

人材育成の課題は以下が挙げられます。

  • ・人材育成の時間を確保できない
  • ・育成する側のスキルが低い
  • ・育成される側の意欲が低い

人材育成の時間を確保できない

人材育成の際には、育成する側の業務量に注意が必要です。人手不足により、日々の業務に追われて人材育成の時間を確保できない企業は多くあります。育成する側が業務と育成を並行しなければならず、人材育成が後回しとなって指導される従業員の意欲が低下することもあるでしょう。企業が、人材育成に集中できる環境を整えることが求められます。

育成する側のスキルが低い

人材育成を実施する側のスキルが不足していると具体的な指導ができず、場当たり的になりがちです。育成の計画を立てても、人に教え、育てるスキルが足りていないと計画的に進められません。人材育成を成功させるには、育成される側だけでなく育成する側の意識、スキルの高さが必要です。

育成される側の意欲が低い

人材育成を成功させるには、育成される従業員の意欲が必要不可欠です。受け身で意欲が低いと、計画したような効果は得られません。意欲を高めるには、人材育成の目的や積極的に取り組むことが評価につながることを言葉にして伝え、仕事のやりがいを理解してもらいましょう。先輩の振る舞いがモチベーションに影響を与えるケースもあるため気をつけます。

社内の協力が不十分

就業時間中に人材育成の1つの手段である研修に参加するには、他の従業員の協力が欠かせません。ただし、現場が人手不足の状態で研修が何度も繰り返されると、モチベーションが低下します。企業は研修を実施するだけでなく、現場の状況をみて無理のない計画を立てることが大切です。

育成目的が決まっていない

なぜ人材育成を実施するのか、明確でないケースが少なくありません。育成目的が不透明だと従業員が、進むべき道筋を見失うことになりかねません。現在抱える課題の解消はもちろん、将来のキャリアプランまでを見据えて目的を決めましょう。ただし、1度決めたキャリアプランにこだわる必要はなく、場合によっては柔軟に変化させることも必要です。

計画的に行えていない

人材育成は目的を決め、計画的に実施することが大切です。場当たり的に不定期や単発で実施したり、継続的に実施すべき育成手法を中断したりすると、十分な効果が出なくなります。計画的に実施しないと費用や人手などのコストばかりがかかり、結果として人材育成への不信感に繋がる可能性さえあります。

人材育成の課題解決策

人材育成の課題解決策は、以下の4点が挙げられます。

  • ・現状を把握し課題を洗い出す
  • ・目標を明確にする
  • ・時間と予算を確保する
  • ・最適な育成手法を検討する

現状を把握し課題を洗い出す

部署やチームごとの業務量、担当者ごとの分担など自社の現状を把握して、課題をすべて洗い出しましょう。課題を理解することで人材育成で優先的に強化すべきスキルが分かり、適した計画を立てられます。

課題の洗い出しが進まなければ、スキルマップを作成するといいでしょう。スキルマップとは、在籍年数や職種ごとに業務に必要なスキルを一覧にまとめたものです。スキルマップを見ながら従業員へのヒアリングを実施すると、求めるスキルを可視化できます。

どのようなスキルが足りないのかや個人的な問題なのか、部署としての問題なのかなど、課題や向上すべきスキルが見えやすくなります。

目標を明確にする

ただやみくもに人材育成を進めようとしても、目標が定まらず非効率的になりやすく、トラブルになることも考えられます。部署や職種、年齢などに分けて企業として求める理想像を定めると、目標を明確にできます。いつまでにどの程度まで目標を達成すればいいのか、数値や状態で示せる基準にしましょう。

その際、従業員が真剣に取り組めば達成できる目標にすることが重要です。また、一方的に従業員の目標を定めるだけでなく、企業側の理念や目標も示しましょう。最終的な目標は理想とする人材へ成長することであるため、上司は管理とフォローを意識することが求められます。

時間と予算を確保する

人材育成の目標に合わせて、時間や予算を確保しましょう。効率的な育成には時間と予算が不可欠です。人材育成の時間を確保するためには、ITツールを導入したり研修のテンプレートを作成したりするなど、通常の業務を効率化する方法を検討しましょう。

最適な育成手法を検討する

自社に適さない育成手法を選んでは従業員が取り組みにくく、目的の達成は難しくなります。現状を把握したうえで自社の人材育成の問題点を洗い出し、部署やチームごとに目標を明確にすることが正しい手法の検討につながります。

目標設定や人材育成をする理由を考えるとゴールを定めることができ、ゴールが定まれば自然と育成手法も定まるでしょう。また、教育を担当する経営陣や上司と育成される従業員が同じ方向を向くことにもつながります。人材育成の計画を細かく立てやすくなり、効率よく実践できるでしょう。

面談やフィードバックの機会を作る

面談やフィードバックの機会を作り、自分の行動を振り返ってみることも大切です。
人材育成を進めていくには、社員の持つ強みと弱みを把握し、弱みを克服していく必要があります。面談やフィードバックを通じて、個人の認識と他者からの客観的な評価の違いを埋め、課題を再認識することで成長につながります。面談では最終的にどのような成長をしてほしいのか伝え、企業としてのコア人材になるよう人材育成・開発を共に進めていくことがポイントです。

面談で確認するべき項目

面談では次のポイントを確認することが重要です。

・社員の考えているゴール
・企業として求めるゴールとのギャップ
・キャリアプランと自身の現状
・成果につながる行動・目標
・タスクの確認
・社員の抱えている悩み・不安

上記は一例ですが、社員の成長を促すうえで重要な内容です。 特に面談では社員がどのようなゴールを設定しており、企業の設定したゴールとどのようなギャップがあるか確認することが大切です。 あまりに非現実的なゴールを考えているなら、面談の場で上司とともに現状を把握し、軌道修正していく必要があります。 またキャリアプランも単一のものではなく、複数の候補を選択肢に入れ、どのような行動・目標があれば到達できるか一緒に考えていきます。 注意したいのは、面談は評価を下す場所ではなく、社員の成長を褒める場所であると理解することです。面談で頭ごなしに否定すれば、社員のモチベーションは著しく低下します。 面談では褒めること、現在の状況を鑑みてアドバイスすることを意識しましょう。

人材育成の5つの手法

人材育成の5つの手法を紹介します。

1.OJT
2.Off-JT
3.人事評価制度
4.メンター制度
5.eラーニング

1.OJT

OJTとは「On the Job Training」を略した言葉です。具体的には、実際の業務を通して、人材育成することです。OJTは実際の業務を題材にすることで、迅速に成果を出せる特徴があります。また、マンツーマンで指導するため、個々の習熟度に合った育成を進められます。

ただし、育成する側の教える能力が成果に直結しやすく、期待した成果が出ないこともあるでしょう。成功するには、育成する側への教育も求められます。

※参考:OJTとは?

2.Off-JT

Off-JTは「Off the Job Training」を略した言葉です。研修やセミナーといった、職場以外で教育する方法です。OJTが実務に関する知識が身につく一方、Off-JTは汎用性の高い知識を身につけることに適しています。部署や職種ごとに分けて教えられるため、内容を体系的に伝えやすいでしょう。

ただし、職場の外で育成するため、将来活用できる知識が身につきやすいものの、現在の業務では活用できない可能性があります。

3.人事評価制度

人事評価制度とは、従業員を能力や成果で評価し成長を促す制度です。従業員を評価するだけでなく、人材育成の手法としても役立ちます。従業員の課題や現在の能力から目標を決めるため、人材育成の目標が分かりやすくなります。ただし、実現可能かつ確実に達成できるわけではない目標を設定することは難しいでしょう。

人事評価講座はこちら

4.メンター制度

メンター制度とは、異なる部署の従業員や上司より近い立場の先輩をメンター(サポート役)に設定し、育成される側のフォローをしてもらう制度です。同じ部署の相手には相談しにくい内容も異なる部署の相手であれば相談しやすいケースがあり、人材育成とともに離職率の低下にもつなげやすいでしょう。社内のコミュニケーションが活発になりやすい特徴もあります。

ただし、メンター(サポート役)は通常の業務をしながらフォローするため、負担になりやすいことに注意が必要です。

※参考:メンター制度とは?

5.eラーニング

eラーニングとは、インターネットを使用して従業員を育成する方法です。インターネットを使いパソコンやスマートフォンから学べることで場所や時間を選ばず、気軽に人材育成を進められます。従業員が広い範囲に在籍していても、まとめて知識を身につけられます。ただし、知識を得るには向いているものの、実技を学ぶには適しません。

※参考:eラーニングとは?

適した育成手法を選択するには

人材育成を効率的に進めるには、自社の目標や状況に応じた育成手法を選択しなければなりません。たとえば、現場が多忙であるにも関わらず、Off-JTやメンター制度を導入したり、一斉に研修を実施したりすると従業員の不満につながります。現場の状況を見極め、自社に適した育成手法を採用しましょう。

人材育成の成功事例をご紹介

人材育成に成功した企業について、3つの事例をご紹介します。
・アメリカ大手コーヒーチェーン
・国内大手飲料メーカー
・国内電機メーカーグループマーケティング会社

アメリカ大手コーヒーチェーン

自ら考える接客


全国にコーヒーショップを展開するこの企業は、従業員が自ら考えて実行する接客で人材を育成しています。コーヒーを含めたドリンクのレシピ、品質などはマニュアルに厳しく定められている一方、接客に関してはマニュアルを策定しませんでした。その背景にある考えとして、マニュアルに従った心のない接客ではなく、従業員自らがミッションを考え、それを実行することを推奨しているからです。

自ら行動・実践する従業員の育成


店舗での業務を学ぶ際、正社員もアルバイトも同じ教育プログラムを受講できます。実務では立場の違いこそありますが、教育の段階でも社員が自ら考えることを重要視しているからです。そしてこの教育方針によって社員は上司からの指示がなくても、自ら行動するようになり、最善の接客を行うようになりました。多忙な時間でも上司の指示がなくても行動できるようになり、社員の業務効率化とエンゲージメントの向上につながっています。

国内大手飲料メーカー

企業内に大学を設立


この企業では2015年4月に人材育成の一環として企業に大学を設立しました。元々人材育成に中長期の計画を立てており、所属するすべての社員に成長する機会を与えることを重視してきました。大学では、さまざまなプログラムを開設しています。
その一例として、2023年4月には「100年キャリア学部」を設立し、人生100年時代に対応するマインドセット・スキルセットを身に付けてもらうことを目的にしています。
この他にも若手からミドル・シニア層まで、年齢も国籍も関係なく活躍できる社員育成に力を入れている点が特徴です。

有言実行やってみなはれ大賞


この企業の創始者の「やってみなはれ」の言葉から、社内では「有言実行やってみなはれ大賞」が創設されています。2015年から開始されており、社内でチャレンジングな取り組みをしたチームに対し、大賞が送られるというものです。2022年には世界中のグループ企業500チーム近くがエントリーしており、グループとしてのチャレンジ精神がわかります。

国内大手電機メーカーグループマーケティング会社

新入社員の合同研修


この企業ではグループ全体で新入社員を集めて合同研修を行っています。新入社員は入社から1ヶ月間を研修期間とし、社会人としての基礎スキルの習得、同期との関係構築の機会にしています。この合同研修では、学習状況や様子を個別に判断して担当者がアプローチしたり、受講者である新入社員同士で相互評価したりすることで、お互いの連携意識を高めるのが目的です。

社会人としての意識の醸成


どの企業でも共通することですが、新入社員は大学生からある日突然社会人へと変化します。しかし社会人になってすぐに意識が変わるわけではなく、仕事や経験を通して社会人の意識が芽生えていくのが普通です。この合同研修で、1ヶ月の研修期間を通して社会人意識の情勢を促し、1人のビジネスマンとして働けるようになります。また個人プレーよりもチームとして行動することの重要性を学び、成果へとつなげる社員教育にもなっています。

まとめ

人材育成は生産性の向上、定着率の向上、スキルの定着を目的として行われます。ただし、多くの企業は時間が足りなかったり、育成する側のスキルや育成される側の意欲が低かったり、社内の協力が不十分だったりと課題を抱えているのが実情です。

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