管理職研修の内容と目的とは?研修の種類や注意点、実施する流れも解説

  • 管理職研修の内容と目的とは?研修の種類や注意点、実施する流れも解説

    公開日:2022.11.21

    更新日:2024.04.09

    管理職には、部下の育成や教育、会社の業務向上に向けた取り組みなどさまざまな役割があり、求められる役割が増えています。求められる業務に対応するためには、生産性の向上や部下や上司との関係性の構築につながる管理職研修が欠かせません。この記事では管理職研修の目的や内容について解説していますので、参考にしてください。

管理職研修の3つの種類とその目的

新任管理職研修

新任管理職研修とは、新しく管理職に就任した受講者を対象とした研修です。新任管理職は、プレイングマネージャーとしての役割を求められるポジションです。プレイングマネージャーには、業績アップに努めるプレイヤー視点と、チームの指揮や部下の指導などを担うマネージャー視点の両方を持ち合わせなければなりません。そのため、管理者として必要な意識や行動力といった基本的なスキルを習得することが研修の目的となります。

管理職研修

管理職研修とは、チームの責任者として必要なリーダーシップとマネジメントスキルの向上を目的としています。おもな受講者の対処は、新任管理職と上級管理職の間にあたる中間管理職です。具体的には、管理職の行動基準を学び、実践的なマネジメントスキルやコミュニケーションスキル、課題解決力の習得を目指します。この研修を受講すれば、新任管理職や上級管理職をサポートする貴重な存在として活躍することが期待できるでしょう。

上級管理職研修

上級管理職研修の目的は、受講者に新任管理職や中間管理職との違いを認識させることであり、経営者的な思考や行動を習得することです。一般的に部署を統括する部長職のようなポストが受講対象となっています。具体的な研修内容は、組織構築やリスク管理、業績拡大や新規事業などを適切にマネジメントできるようになることを目指し、最終的に「組織」「業務」「人材」「資金」を経営者の立場で捉える視点やスキルを身に付けることです。

管理職に求められるスキル

管理職に求められるスキルについて詳しく解説します。

業務管理

管理職には部下の業務を管理し、成果を出すためのスキルが必要です。管理職はチームのリーダーとして大きな権限がある分、その権限には大きな責任が伴います。チームで成果を出すために目標を設定、部下の業務量や担当者を調整、進捗の管理まで管理職が行わなければなりません。また、業務の進捗状況に合わせて計画を見直したり、プロセス改善したりする必要もあります。そうした業務管理の一つひとつが管理職にとって重要なスキルです。

部下の育成

管理職になってからは、部下の育成スキルも重要です。一般の社員時代であれば、自分自身のスキルを高めるだけでよくても、管理職になると同じようにはいきません。管理職はチーム全体での成果で評価されるため、部下の能力も重要になるからです。チームとして最大限の成果を出すには、部下を育成し、能力を発揮しやすい状況を整えることが大切になります。そのためには部下とのコミュニケーションをしっかり行い、アドバイスや相談、育成の支援にも力を入れることが管理職に求められます。

経営方針の浸透

管理職には自分自身が経営方針を理解し、チーム内で部下に浸透させていく役割も求められます。チームを運営していくうえで、管理職は組織の経営方針を基にした目標を設けることが大切です。個々の従業員が優秀であっても、それぞれが別方向を向いているのでは成果につながりません。そのため、管理職は経営層の考えや戦略、方針を踏まえて、部下にもわかりやすいように浸透させなければなりません。ただし、その土台として部下との信頼関係も必要になるため、日頃から緊密なコミュニケーションを取る必要があるでしょう。

影響力を発揮

管理職になる以上、自分の指示をすべての部下に伝え、目標に向けて一丸になる影響力も大切です。
部下にとって尊敬できない上司、信頼できない管理職では部下が指示に従わず、思うような成果を出せないことがあります。部下に信頼され影響力を発揮するには、部下の手本となるような行動を心がけるべきです。チーム全体のモチベーションを高め、業務効率を改善していくには、管理職として権限と影響力が発揮できるよう意識しましょう。

管理職研修で実施しておきたい内容

一般的な企業では、係長・課長・部長が管理職のポストにあたります。これら役職に就任した場合、どのようなスキルを身につけるべきでしょうか?ここからは、管理職研修で実施すべき具体的な受講内容をご紹介します。

内容①業務の管理や改善

管理職研修では、マネジメントするチームが担う業務管理や改善提案をおこなう具体的な方法を身につける必要があります。特に受講者が新任管理職の場合、必須の実地項目です。これは部下へ業務に関する説明・分担・期日などを明確に指示し、その進捗や結果を管理するスキルです。また業務の遂行中に生じた問題や課題に応じて、迅速かつ的確に改善をかける対応力を養うことも、管理職研修で実施すべき重要なポイントです。

内容②部下の教育や指導

部下の実践的な教育・指導方法の習得も、管理職研修で実施しておきたい講義のひとつです。年齢や価値観、スキルなどが違う部下を教育・指導する場合、個々の置かれた状況や抱える課題を適切に捉え、部下の目標達成に向け、明確なアドバイスをおこなわなければなりません。そのためにも「傾聴力」「伝達力」を鍛えたうえで、正しい「褒め方」「叱り方」を身につけることが重要です。講義対象は、新任管理職や中間管理職です。

内容③チームマネジメント

チームマネジメントは、組織の大小や種類を問わず、すべての管理職に必要とされる重要な能力です。具体的には企業・部署などのチームが目標達成に向け、適切な管理及び調整をおこなうスキルです。またチーム内の問題や課題を特定し、それを解決する能力も求められます。チームマネジメントを習得するためには「目標設定」「進捗管理」「業務遂行」「意思決定」などの能力を養う講義を、管理職研修で実施するべきでしょう。

内容④コミュニケーションスキル

管理職が業務の管理・改善や部下の教育・指導、チームマネジメントをおこなう場合、欠かせない能力としてコミュニケーションスキルが挙げられます。どれもチームのメンバーと円滑に情報伝達や意思疎通を図る対話力がなければ、実行できない業務だからです。また経営陣や他部署とやり取りする際、フレキシブルな調整力・折衝力・交渉力が求められます。この観点からも、コミュニケーションスキル習得に向けての研修が必須です。

内容⑤コンプライアンスの知識

社会的な良識やルールに従い、遵守することがコンプライアンスです。企業や組織の場合、社員が就業規則や社内規程などのルールを守り、企業倫理や社会的規範、社会道徳に沿った行動をとることもコンプライアンスに含まれます。近年このような知識を管理者が習得しておかなければ、自身や部下の行動・発言・思想次第で企業に大きな損失を与えかねません。法令遵守するためにも、管理職研修でコンプライアンスの知識を学ぶ必要があります。

内容⑥戦略策定

管理職が部下を率いていくためには、目指すべき目標と戦略を策定し、同じ方向性に向けて進んでいく必要があります。現在置かれている状況を把握し、部下にかみ砕いて説明し、未来に目指すべき姿を提案しつつ、方向性を決定するのが戦略策定です。チームレベルでは現場の状況を踏まえた戦略策定、経営に関与する管理職では組織全体の状況まで踏まえた戦略策定が求められます。自社の状況と取引先の状況、社会情勢の変化なども総合的に検討したうえで、戦略策定能力と実行力を持った管理職を育てましょう。

内容⑦組織マネジメント

組織マネジメントは組織が円滑に運営され、人的資源や資産、リスク、コンプライアンスなどを含めて管理することを指します。経営マネジメントでは経営に必要な資源の流れを把握し、適切に配分していくバランス感覚が大事になります。また既存の資源を配分するだけでなく、将来の変化まで予測したうえで新部門の設立や製品開発、それによって得られる利益を考えることも組織マネジメントの一部です。会社という大きな組織を円滑に動かすために、何が必要か常に考えながら業務や資源などを管理する能力が求められます。

内容⑧コーポレートガバナンス

コーポレートガバナンス(企業統治)は、組織内での不正や不祥事を未然に防止し、経営層が公正な判断と運営を行うように監視する仕組みを指します。コーポレートガバナンスができている企業では、株主や顧客、従業員からの信頼を得やすく、自社の利益を最大限に享受しやすくなります。そのため企業イメージの向上と信頼性を高めるために、大企業では監視役として監査役や社外取締役を置くのが一般的です。管理職も経営に携わる人材の1人として、コーポレートガバナンスへの理解が求められます。

管理職研修の流れ

1.現状を把握したうえで研修の目的やゴールを設定する

管理職研修を実施する場合、最初のフローとして自社の現状を把握しなければなりません。具体的には、自社の管理職に就く社員それぞれのスキルや思考、行動規範といった項目を事前にリサーチすることです。これによって自社の管理職が抱える問題や課題といった実情が見えてきます。そのうえで管理職研修をおこなう目的やゴールを設定しましょう。このとき自社が求める理想の管理職像をしっかりと決め、それを具現化するために管理職が習得すべき要件を明確にイメージしておけば、その後の研修カリキュラムの構築もスムーズに進めることができます。

2.ゴールに到達するために必要な要素を洗い出す

ここでのフローは、管理職研修をおこなう目的やゴールに到達するうえで必要とされる要素をしっかりと洗い出すことです。そのためには、理想の管理職像と前フローで把握した自社の管理職に就く社員の実像を比較し、乖離しているポイントを見極めなければなりません。具体的には、管理職が実際に担っている業務や役割、これまでの成果、スキルとキャリア、長所と短所などを分析し、理想と現実のギャップがどの程度のものなのかを認識します。このギャップこそが管理職の改善すべき課題であり、研修内容を定める指針となるでしょう。

3.研修内容を作成する

前フローで自社の管理職が抱える課題をピックアップできたら、理想の管理職像を目指すための具体的な研修内容を作成します。研修内容を設計・開発する際、必ず「学習目標」と「行動目標」を設定してください。学習目標とは「何を目指せば良いのか」「何を習得するのか」など、研修の最終的なゴールを指すものです。行動目標とは「研修のゴールに到達するための必要なアクション」を指します。この目標を明確にすることで、研修に対する受講者の心構えが整い、理解度も深まるようになるでしょう。管理職研修をおこなう場合、数多くの実績やさまざまな活用例を備えた外部研修サービスを利用する選択肢も、効率的な研修成果を得られる方法のひとつです。

4.スケジュールを調整する

実施する管理職研修の内容が決定次第、その研修内容に沿った社内調整をおこないます。具体的には、管理職研修に必要な日数や1日当たりに費やす時間の確定、参加する受講者の人数や日程、場所などの調整をおこなう研修スケジュールの作成です。研修を受講する管理職は、それぞれの立場や担う業務などが異なるため、参加予定となっている社員の状況を考慮し、実務に影響が出ないようバランスを図りながらスケジュールを調整しましょう。

5.実施後の効果を測定する

最後のフローでは、管理職研修実施後の効果を測定します。この効果測定も研修をおこなううえでの重要なポイントであり、研修の効果が管理職のスキルアップやチームの業務改善などに反映されていなければ、研修を実施する意味がないからです。具体的な測定方法には、世界的に有名な「カークパトリック4段階評価法」が挙げられます。これは習熟度を反応・学習・行動・業績に分類して適切に評価するものです。また受講者から研修内容に対するフィードバックを集め、今後の研修実施における改善点として活かすことも忘れてはいけません。

管理職研修の実施時期

管理職研修の実施時期は、企業の規模・方針・目的、携わる業界などによって異なります。一般的に1月・4月・10月に管理職研修の実施が集中しています。これは新年を迎えるタイミングや春や秋の新年度など、人事異動が多くなる時期を見計らい、管理職の再教育やスキルアップを狙ったものです。しかし自社の管理職が抱える課題を洗い出せている場合、管理職のモチベーション低下や社員の離職に歯止めをかけるためにも、人事異動時にこだわらず、できるだけ早めの実施をおこなうべきです。年間通じて、定期的に研修を実施している企業も少なくありません。また、目的ごとに研修の実施時期を選定することもポイントです。

管理職研修の実施ポイント

管理職研修を実施する際は、ポイントを押さえた内容にしなければ成果につながりにくいです。管理職研修の実施ポイントは次の3つです。

・ケーススタディも入れて具体的に行動化する
・業務内容が把握できてから研修を実施する
・フィードバックを次の研修に活かす

ケーススタディも入れて具体的に行動化する

研修で学んだ内容を実践で活かそうとしても、インプット学習だけでは実力を発揮できないことがあります。具体的に行動化するには、何から始めればよいのか、どのようなプロセスを踏むべきか、目標達成に必要な要素は何かなどを考えることがポイントです。そして具体的な行動に移すには、ケーススタディで実践と同じ状況を想定し、アウトプットしていくことで理解を促進できます。自分の役割と部下に任せる業務、予測される課題やトラブルなどをケーススタディで学び、実戦に近い経験を積んでもらうことが大切です。何度もケーススタディを繰り返すことで思考プロセスが磨かれ、現場でも活躍できる管理職へと成長するでしょう。

業務内容が把握できてから研修を実施する

管理職に任命されると同時に、それまでの部署とは違う部署に配属されることは珍しくありません。元々慣れた環境で管理職になったのなら業務への理解も深いですが、別部署に異動するなら新しい業務を理解する必要があります。そのため管理職になると同時に研修を実施しても、具体的なイメージを持ちにくく、研修内容も理解しにくくなります。管理職としてある程度業務に慣れた時期に実施すれば、現場の状況をイメージしながら研修できるでしょう。具体的には管理職になって3か月前後が建ち、仕事への慣れと気持ちの緩みが生じやすい時期に行うのがおすすめです。

フィードバックを次の研修に活かす

管理職研修を実施する際は、実施して終わりでは改善につながりません。研修を実施後、受講者に研修内容の評価やフィードバックをもらい、次の研修に向けた課題として改善を目指しましょう。受講者から研修期間や頻度、内容、指導方法、カリキュラム、講師の質などを細かくヒアリングして課題発見につなげることが大切です。改善点を次の研修で活かせば、より効果的な研修が実施できるからです。

管理職研修の実施事例

管理職研修の具体的な事例から、研修を通してどのような変化があったのかみていきましょう。

伊勢半グループ

化粧品総合メーカーの伊勢半グループでは、管理職登用にあたって社内テストを実施し、その結果で判定していました。しかし試験の公平性や作問、試験監督、採点などに課題がありました。そこで管理職になる前に対象者の不安を軽減するため、eラーニングによる研修を行い、現在は管理職のマインドセットを学んでもらう方法を取り入れています。研修では細かな章に分けたスモールステップ学習により、段階的に知識の習得を促しました。一つひとつの知識の定着を検証しながら進めることで、管理職としてのマインドセットだけでなく、必要とされるスキルの習得も効率化されています。また管理職研修の難易度はいくつかにわかれており、学習期間や選考期間に合わせたテーマを選べるようになっています。対象者はケーススタディも含めて、現場で「何をすべきか」が理解できるようになり、行動の具体化ができるようになりました。管理職のレベルに合わせて細かな研修をいくつも用意することで、成長段階に合わせた教育が実施できた例といえるでしょう。
参考:ユーキャン 「管理職登用のためのeラーニングパッケージ活用事例」 伊勢半グループ

一般社団法人KEC関西電子工業振興センター

一般社団法人KEC関西電子工業振興センター(以下、「センター」)は、EMC試験や製品安全試験、技術情報提供や技術者育成を行う一般社団法人です。センターでは従業員個々の技術は高められているものの、管理職のマネジメント能力の向上が課題になっていました。
加えて従業員は多くの業務を抱えており、集合研修のような方式での学習も難しいという課題がありました。そこで実施したのが、個々のスキルを診断したうえでeラーニングで学習できる「スキル診断付課長級マネジャー講座」です。
この講座ではそれぞれのスキルとパーソナリティを診断し、レポート結果から自身の強み・弱みを把握することができます。また診断結果に基づいて適切な講座内容を選定することも可能で、自分が何を学べばよいのか明確になる仕組みになっています。
導入後は従業員間のコミュニケーションが活性化しただけでなく、報連相の重要性を認識し、マネジメントへの意識の変化も現れました。特に大きいのが、学びを実践にアウトプットできたことです。学びを仕事で活かす楽しみを一人ひとりが発見し、積極的な研修参加につながった事例です。
参考:ユーキャン 「スキル診断付課長級マネジャー育成講座 活用事例」 一般社団法人KEC関西電子工業振興センター

まとめ

管理職は、部下の育成や管理を行うだけでなく、経営者と現場との橋渡しの役割を担ったり、全体的な視点でPDCAサイクルを回したりするなどさまざまな役割が求められます。管理職としてのノウハウを学び、任された業務をバランス良くマネジメントするためには管理職研修の受講も効果的です。

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