傾聴力とは?ビジネスで活かすコツと鍛える方法を紹介!

  • 公開日:2023.11.01

    更新日:2023.11.01

    傾聴力とは、相手が話していることを集中して聴くことです。 心理学のカウンセリングで使われていたスキルですが、昨今ではビジネスシーンでも活用されています。この記事ではビジネスシーンで傾聴力が求められる背景とともに、傾聴力の概要や種類、活用するメリットなどについて解説するので、参考にしてみてください。

傾聴力とは?

傾聴力とは、相手が話していることを集中して聴くことです。アメリカの臨床心理学者であるカール・ロジャーズによって提唱された概念であり、従来は心理学のカウンセリングで使われるスキルでした。相手の話に興味を向けて、話の内容だけでなく、相手の感情や考えなどを推察することで、信頼関係や良好な人間関係を構築することを狙います。

傾聴力が重要視される背景

傾聴力は、心理学の分野で活用されていましたが、現在は信頼関係や良好な人間関係の構築が求められるビジネスシーンにおいても、欠かせないスキルといえます。

なぜなら、現代社会における企業の労働環境は目まぐるしく変化しており、働き方や従業員の価値観の多様化、上司と部下の1on1ミーティングの浸透、管理職にコーチングスキルの向上が求められているなどの背景があるためです。これらの労働環境において、相手の話に耳を傾ける傾聴力は、業務をスムーズに遂行し、良好な人間関係を構築するうえで欠かせません。

傾聴の目的

相手の伝えたいことを、正しく理解することが傾聴の目的です。傾聴の目的を達成するためにはただ話を聴くのではなく、相手や話自体に関心を持って接する、話の内容を理解しようという姿勢で臨むのがポイントです。

傾聴力がある人の特徴

傾聴力がある人の特徴は複数あります。具体例として挙げられるのは以下の通りです。

  • ・相手の話を聴いて理解することができる。
  • ・相手の姿勢や表情などから情報を得ることができる。
  • ・相手の話を簡潔に要約して伝えることができる。
  • ・相手の話や感情に共感することができる。
いずれの特徴も、話を聴く相手に関心を持って、相手のことや話の内容を理解しようという前向きな姿勢を持っています。

傾聴の種類

傾聴とひとくちにいってもさまざまな種類があり、それぞれの特徴や使うべきシチュエーションなども異なります。下記で解説するのは、傾聴の代表的な3つの種類と詳細です。

  • ・相手の話を聴くことに集中して、自発的な言動は控える「受動的傾聴」
  • ・相手が話していることを繰り返し、相槌を打ちながら聴く「反映的傾聴」
  • ・相手の言葉や話の内容に軽く返事をしたり、質問したりする「積極的傾聴」

受動的傾聴

受動的傾聴は、傾聴のなかでも最も基本的な姿勢です。相手の話を聴くことに集中して、自発的な言動は控えるのが特徴です。 相手が話すことを優先して自分は聴くことに徹する姿勢を示せば、「自分の話をちゃんと聴いてもらえている」という安心感を与えられます。相手がリラックスした状態で話せるようになると自然な会話を引き出せるでしょう。



こちらから意見せず相手のペースに合わせるため、沈黙の状況が生じる場合がありますが、無理に話題を提供したり話を引き出そうとする必要はありません。重要な問題を抱えている、言葉を選んでいる場合もあるため、相手が話を再開するまで待つのがよいでしょう。また、相槌やアイコンタクトで話しやすい雰囲気をつくることが重要です。

反映的傾聴

反映的傾聴とは、相手の言葉を繰り返し相槌を打ちながら、理解や共感に努める傾聴方法です。 心理学におけるカウンセリングの場で使われている方法です。反映的傾聴は、受動的傾聴のように聴くだけではなく、相手の言葉をオウム返ししたり、話を要約することで「話の内容を理解している」という安心感を与えます。



ただし、相手が話した内容と異なる内容の受け答えをすると、「理解していない」「否定された」と捉えられる場合があるので注意が必要です。

積極的傾聴

積極的傾聴では、相手の話を相手の立場に立って理解しようと努めることで、話し手の本心や思考を引き出します。 相手の話の内容に質問することにより、話が整理され、自身への理解が深まった結果、相手はさらに話を続けようという気持ちになるでしょう。



その結果、倫理観や価値観といった深層的な部分についても話してくれる可能性が高まり、より良好なコミュニケーションへとつながります。

傾聴力の向上に必要なロジャーズ3原則

アメリカの臨床心理学者カール・ロジャーズは傾聴力という概念を提唱したと共に、傾聴するために必要とされる要素も提唱しています。傾聴するために必要とされる要素は、下記の3つです。

  • ・共感的理解
  • ・無条件の肯定的関心
  • ・自己一致
これらはまとめてロジャーズ3原則と呼ばれます。ロジャーズ3原則がどういったものなのか、詳しく見ていきましょう。

共感的理解

共感的理解は、相手の考えや気持ち、立場や個性などに共感しながら話を聴き、理解しようとする姿勢です。ただし、相手の気持ちになろうとして感情移入しすぎると、自身の考えや感情を見失ってしまう場合があります。聴き手側の軸がなくなってしまうと、結果的に正しい理解へと発展しない場合もあるため、適切に共感することが大切です。

無条件の肯定的関心

無条件の肯定的関心とは、無条件の肯定的関心で、重要なのは相手の話や考えを自身の価値観や先入観、好き嫌い、一般的に見た際の善悪などで評価せずに聴く姿勢です。話をする側は、自分の話が否定されないと判断してはじめて、リラックスした状態で話せるようになります。

そのため、聴き手は相手の話を否定せずに、どんな理由や経緯があって現在に至ったのか、どのような価値観や考えの元にその話につながったかなど、背景にも肯定的な関心を持って聴くことが重要です。

自己一致

自己一致とは、コミュニケーションの際に、聴き手が感じていることと、話し手への言葉や態度が一致している状態を指します。たとえば、話が分かりにくいと思ったら、相手に分かりにくいと伝えて理解できるように努め、言葉の意図を正しく理解します。

表面上は理解しているようでも、実際には相手の話している内容を理解できていない状態は、嘘をついている状態になるため、傾聴とはいえなくなります。

ビジネスシーンで傾聴力を活用するメリット

ビジネスシーンで傾聴力を活用するメリットについて解説します。下記でそれぞれの詳細を解説するので、参考にしてビジネスシーンで活用してみてください。

  • ・顧客からの信頼を得やすくなる
  • ・ビジネスチャンスをつかみやすい
  • ・社内の心理的安全性が高くなる
  • ・自己理解が深まり改善点が分かる

顧客からの信頼を得やすくなる

ビジネスシーンで傾聴力を活用するメリットとして、顧客からの信頼を得やすくなるのが挙げられます。なぜなら、顧客は自分の話を聴いてもらえる、理解してくれるなどと感じると、聴き手へ好印象を持つからです。顧客からの信頼を得られれば、自社の製品の購入やサービスの利用、プロジェクトの依頼などさまざまなビジネスチャンスにつながりやすくなります。

さらに、顧客から信頼できる企業だと判断してもらえると、他の企業への紹介や取り次ぎを行ってくれる可能性も出てきます。さらなるビジネスチャンスを得て企業の発展につなげるためにも、従業員1人ひとりの傾聴力向上を促しましょう。

ビジネスチャンスをつかみやすい

傾聴力を意識しながら相手とコミュニケーションを取れば、相手側も気づいていない潜在的な需要や要望を見つけやすくなります。 潜在的な需要や要望が分かれば、それらを満たす製品やサービスの提案や、新たな製品やサービスの生産、開発の足掛かりになるなどビジネスチャンスをつかみやすくなるでしょう。

社内の心理的安全性が高くなる

心理的安全性とは、チームや組織など複数の人間が関わり合う環境において、他のメンバーの反応や批判を恐れず、誰もが安心して発言し、能力を発揮できる環境を指します。高い心理的安全性が確保された状態は、意思決定の質の向上やパフォーマンスの改善など、さまざまな効果が期待できます。

また、コミュニケーションの質が高くなり、互いの理解が深まると、信頼関係によって複数人で行う作業の効率や生産性も改善される傾向にあります。

自己理解が深まり改善点が分かる

傾聴力を高めることは、主に相手の話や考えを理解するために用いられるため、自己理解にはつながらないように見えます。しかし、対比によって自分と異なる点が分かり、結果的に自分がどんな考えや価値観をもっているかが明らかとなります。

その結果、自分の考えや価値観との対比によって自己理解が深まるでしょう。自分の強みや弱みの把握にもつながり、それらに対して客観的かつ適切なアプローチができるようになります。

傾聴力を向上させるためのコツ

傾聴力を向上させるコツについて解説します。傾聴力の向上はビジネスシーンに限らず、さまざまなメリットをもたらすので、下記の手法や考えなどを参考にして、従業員の傾聴力向上を促してみましょう。

  • ・自分と相手の会話の割合を意識する
  • ・バックトラッキングを実施する
  • ・ミラーリングを実施する
  • ・ペーシングを意識する
  • ・表情や姿勢を適切に保つ
  • ・客観的に自分を見る

自分と相手の会話の割合を意識する

傾聴力を向上させるためのコツとして、自分と相手の会話の割合を意識する手法があります。 状況や相手との関係によって、自分と相手の会話の割合は変化しますが、傾聴を意識する際の会話のバランスは、「相手の話す割合:自分の話す割合=7:3」が理想とされています。



また、会話の割合を意識するだけではなく、相手の話す割合を多くするために、相手が話しやすい雰囲気作りを意識することも大切です。

バックトラッキングを実施する

バックトラッキングとは心理学用語で、相手の話に対する繰り返しを意味します。ただ相手の言葉の全てを真似するのではなく、重要な箇所を選んで真似して返すことがポイントです。以下のような具体例が挙げられます。

  • ・相手の話した事実を繰り返す
  • ・相手の話した感情を繰り返す
  • ・相手の話の要約を繰り返す
なお、バックトラッキングを多用したり、実行するタイミングや真似する箇所を間違えたりすると、相手に話を聴いていない適当な印象を与えてしまい、逆効果になってしまうため注意しましょう。

ミラーリングを実施する

ミラーリングは心理学用語の1つで、相手の仕草や行動、言動を真似ることを指します。姿勢や表情、声のトーンなどの要素が自分に似ているものに対して、親近感を覚えるという心理を利用する方法です。以下のような具体例が挙げられます。

  • ・相手が微笑んだら同じ程度に微笑む
  • ・悲しそうな声で話していたら、こちらもトーンを落とした声で返す
  • ・相手が飲み物を飲んだら自分も飲み物を飲む
  • ・相手が席を立ったときに自分も席を立つ
ただし、相手と同じ仕草を頻繁に行うと、不自然な印象を与えてしまうため多用しすぎないように注意しましょう。

ペーシングを意識する

ペーシングとは、声の大きさや高さ、話す速度や相槌の打ち方、呼吸のタイミングなどを相手に合わせる手法です。同じペースにすることで、相手に安心感を抱いてもらえる効果があります。

声の要素や相槌の打ち方などは、テンションや集中度などの状態を測る指標です。ペーシングを実施することで、自分と相手の状態が離れすぎるのを防ぎ、円滑なコミュニケーションを実現しやすくなります。

表情や姿勢を適切に保つ

傾聴力を向上させるために重要なのが、表情や姿勢を適切に保つことです。表情が硬すぎると、怒っていると勘違いされますし、姿勢が悪く威圧的な雰囲気をしているなどの状態では、相手にとって印象が悪く話をしづらくなります。

そのため、表情は無表情になりすぎないように意識して相手に関心を持っていることを示し、姿勢を正して柔和な印象を与えるように努めましょう。

客観的に自分を見る

傾聴力を向上させるためのコツとして、客観的に自分を見ることが挙げられます。 自分が傾聴を意識した行動や態度を取れているか、相手の話を本当に理解できているかなどを意識して自己判定します。 自己判定によって良かった部分や悪かった部分を把握できれば、それらに適したアプローチによって改善が望めるため、傾聴力を高めやすくなるでしょう。

まとめ

傾聴力の概要や種類、ビジネスシーンで傾聴力を活用するメリットや、傾聴力を向上させるためのコツなどを解説してきました。傾聴力は人と関わるうえで重要ですが、抽象的なスキルなので、深く理解するのは難しいと感じる方も多いでしょう。

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