そもそも社内研修とは何か?
社内研修とは、社内の人間が講師役を担当して行う社員向けの研修です。人事部やマネジメント層が講師となるケースが多いようです。理由として、企業文化や独自制度などを、研修時に伝えられることが挙げられます。また、研修内容によっては、部署を横断して行うことで、部署間交流が促されるメリットもあります。
社内研修と混同されやすい用語とは
社内研修は、社内の従業員が講師となって行われます。ここでは、社内研修と混同されやすい用語について解説します。
1.外部研修
外部研修とは、外部企業や外部講師に委託して行われる研修です。外部研修は、自社の社員を集めて外部講師が研修を行う「インハウス研修」と、外部で開催されるセミナーや勉強会に参加する方法の2種類があります。
インハウス研修は、自社に知識を持った人がいない場合に行われます。外部セミナーなどへの参加は、自社で開催するには参加メンバーが少ない場合に選ばれます。
関連記事:https://www.u-can.co.jp/houjin/column/cl139.html
2.社員教育
社員教育は、社員が職務や業務を遂行する能力を高めるための教育機会です。仕事への姿勢や社会人としてのあるべき姿を、時間をかけて教えていきます。社員教育の最終的な目的は、将来的に企業を背負う人材の育成です。そのために、職務能力を向上させるだけでなく、企業が求める人材やあるべき姿も教えていきます。
社内研修の種類とは
社内研修にはいくつかのアプローチがあります。ここでは、以下の6つの研修方法について解説します。
- ・OJT
- ・OFF-JT
- ・オンライン研修
- ・階層別研修
- ・職種別研修
- ・テーマ別研修
場所と時間による分類
1.OJT
OJTは「On the Job Training」の略称です。実務を行いながら、必要な知識やスキルを身につける研修方法です。社員1名に対して1名の教育担当者をつけるのが一般的です。OJTは、実務に即した学びが得られるため、スキルや経験を効率的に身につけられます。デメリットは、OJTの質が教育担当者のスキルに依存することです。また、実務ベースで学んでいくため、知識や経験に偏りが生じ、体系的な知識が身につきにくい面もあります。
※参考:OJTとは?
2.OFF-JT
OFF-JTは「Off the Job Training」の略称です。主に座学で知識を身につける研修手法です。外部講師による講義や、社員によるグループワーク形式が一般的で、1回の開催で複数人の参加が可能です。また、実務から離れてゆっくり思考できるというメリットもあります。OFF-JTのデメリットは、座学がメインであるため、実務スキルを身につけるには不向きな点です。OFF-JTは、OJTの事前学習手段として取り入れられる場合もあります。
3.オンライン研修
オンライン研修は、動画コンテンツを利用し、各自で知識を身につけます。メリットは、視聴端末とネットワーク環境があれば、場所を問わず学習が進められることです。また、対面研修と異なり、会場や交通費が発生しません。コスト削減だけでなく、参加者の負担軽減にもつながります。近年注目を集める研修手法ですが、視聴学習がメインであるため、知識の習得が優先された研修手法です。
関連記事:https://www.u-can.co.jp/houjin/column/cl009.html
研修内容や対象による分類
4.階層別研修
階層別研修は、社員を年齢や職種など、階層別に分けて必要な知識やスキルの習得を目指します。階層によって研修内容は異なります。具体的には、入社したての社員向けに、新人社員研修を行ったり、社歴を区切って中堅社員向けの研修を行ったりします。階層別の研修により、立場ごとに必要な知識を明確にできます。5.職種別研修
企業にはさまざまな職種の人が働いています。それぞれの職種に特化した研修が、職種別研修です。例えば、営業職向けにはコミュニケーション研修を行ったり、経理職向けにバックオフィス研修を行ったりします。職種別研修の多くは、外部の企業に委託する、講師を招いて開催するなど、外部研修の形式で行います。6.テーマ別研修
テーマ別研修は、テーマが個別に設定された研修です。社員が不足を感じているスキルや、会社が社員に対して身につけてほしい技術などをテーマにして行います。具体的には、営業担当者へのスキル向上のため、コミュニケーション研修を実施し、コンサルティング営業としてのスキルを身につけるといった内容です。実施形式による分類
座学
座学研修は、参加者が着席して対面講義形式で行われます。社内研修でも外部研修でも取り入れられています。また、講義形式の研修は、知識のインプットに対して有効ですが、実践的な知識は身につきにくい側面があります。最近では、座学はeラーニング研修に代わることが増えています。グループワーク
グループワーク研修は、テーマに対して議論をしたりワークをしたりと、参加型であることが特徴です。グループワークは参加することで学習効果も高いといわれています。また、複数人でのやり取りが発生するため、自然とコミュニケーション力が高まります。社内メンバー同士で実施すれば、チームや部門間の交流が促されるきっかけにもなります。ロールプレイング
ロールプレイングは、実務に近いシチュエーションを用意し、模擬練習を行う研修です。実践的で実務に活かせるスキルを学べます。接客や営業といったコミュニケーション力を要する業務では、ロールプレイング研修が活用されています。ロールプレイングのデメリットは、社内メンバー間で行うと緊張感が薄れがちなことです。教える側も教わる側も、目的意識と緊張感を持って臨む必要があります。
eラーニング
eラーニング研修は、視聴端末を用いて行う研修です。eラーニングには、動画教材を用いた非同期型と、オンライン上でリアルタイムに行われる同期型があります。eラーニングの優れている点は、場所を選ばず受講でき、研修コンテンツを後から見返しやすいことです。ただし、自宅など場所を選ばず受講できることから、参加者のモチベーションに左右されるというデメリットもあります。
※参考:eラーニングとは?
関連記事:https://www.u-can.co.jp/houjin/column/cl225.html
社内研修を実施する目的とは
社内研修の効果を高めるには、目的を明確に設定して開催する必要があります。研修を実施する目的について、代表的なものを3つ解説します。
1.社員の企業理解を深める
新人研修などの多くは、企業理解を深める内容で行われます。新入社員が企業理解を深めれば、自分の業務が企業にとってどのような役割を持つのか、企業が何を目指しているのかが分かります。
企業理解を深める研修は、意外にも中堅社員や管理職などにも有効です。中堅社員や管理職は通常の業務に意識が向いています。企業理解を改めて深めると、働きがいの向上へと繋がり、離職率の低下が期待できます。
2.社員のスキルアップにつなげる
社内研修を行うと、社員のスキル向上につなげられます。新人研修であれば、ビジネスの基礎的なスキルアップが見込めます。中堅以上の社員であれば、受講を通じて実務に直結するスキルを身につけられます。大事なのは、社員の立場や業務に適した研修を行うことです。
社員のスキルアップを社内研修で行う場合、実務に即した研修内容にしやすいため、外部研修よりも効率的に目的が達成できると考えられています。
3.社内で連携が取れる体制づくり
社内研修を行うと、部署間の連携を強化する体制づくりが可能です。部署や個人が連動すると、パフォーマンスのさらなる向上が見込めます。研修中は業務から離れた状況で連携を求められるため、その後の実務でいい影響が生まれやすいでしょう。
また、コミュニケーションの活性化により、新しいアイデアの創出も期待できます。研修を通じて、他部署との連携を強化することは、プロジェクトチームを編成するといった別の機会で、スムーズなやり取りにも活かされます。
社内研修のメリットとデメリット
社内研修のメリット
社内研修のメリットは、企業や実務を深く理解したメンバーが講師を担当することにあります。研修内容は企業に特化した内容になるため、企業ならではの事情を理解したスキルを身につけることができます。
また、社内研修は準備にかかる工数や費用を削減できます。社内研修でも準備は必要ですが、負担が軽く済む傾向があります。
社内研修のデメリット
社内研修を行うデメリットは、自社内で企画も講師も行うため、内向きの内容になりがちなことです。外部講師を招いた研修は、最新のノウハウを得たり、社会情勢を加味したりといった内容が可能ですが、社内研修では実現しにくいとされます。
また、上層部の指示で行われる社内研修は、現場のニーズとかけ離れていることがあり、参加者のモチベーションダウンにつながります。
階層別社内研修の内容とは
社内研修は、階層ごとに適切な内容があります。それぞれの階層に適切な研修内容には、どのようなものがあるのかを解説します。
1.新入社員研修
新入社員研修は、入社してすぐの社員を対象に行われる研修を指します。社会人になりたての従業員も多いため、基本的なビジネスマナーや仕事をする上での姿勢など、基礎的な内容の研修が向いています。
また、研修時には同期や先輩社員と交流する機会もあります。こうしたやり取りを経て、業務へのヒントを得たり、仲間とともに成長する機会につながったりします。
2.若手社員研修
入社5年目程度までの若手社員に適した研修は、Excelなどの事務スキルや、コミュニケーション能力など、すでにある基礎的スキルの向上を目的としています。また、若手社員には、今後企業の中心を担い、成果を上げていくことが期待されています。
スキル習得と併せて、モチベーションの向上や主体性の発揮といった力も身につけられる研修が望ましいでしょう。
3.中堅社員研修
ある程度の実務経験があり、自立して業務を遂行できる中堅社員には、チームを率いたりマネジメントしたりするための研修が適しています。具体的には、リーダーシップを発揮する方法や、メンバーのモチベーションを維持・向上させる方法を学ぶ研修が向いています。
このような研修により、教えてもらう立場から、人を率いる立場としての意識転換ができると、より一層の成長と成果に繋がります。
4.管理職研修
管理職は未来の経営幹部として期待されています。研修内容も、個人やチームといった視点からさらに広がり、部署や会社全体を俯瞰して、組織マネジメントを行う方法を学ぶのが適しています。例えば、基本的なマネジメントの考え方や、事業計画の立て方と実行方法などです。他にも、企業ビジョンの浸透方法など、組織への働きかけを学ぶ研修もあります。
社内研修の実施手順とは
社内研修の成功には、適切な実施手順があります。成功のために押さえておきたいポイントを5つ紹介します。社内研修の成功の手順は以下のとおりです。
- 1.課題抽出
- 2.ゴールの検討
- 3.研修方法の検討
- 4.研修計画の作成
- 5.効果測定と改善サイクル
1.課題抽出
研修を行う前の段階で、課題の抽出を行います。企業にとって解決すべき課題を明確にすると、その先の研修におけるゴールや方法が具体的にみえてきます。
2.ゴールの検討
研修を行うことで、得たいゴールを決めます。ゴール設定のポイントは、参加者が研修前後でどのように変化するかということです。何のために何が行われたら参加者が変化するかを考えることで、次の研修方法も明確になります。
3.研修方法の検討
ゴールが明確になったら、課題や期待する成果に繋がる研修方法を決めます。研修方法には、OJTやOFF-JT、オンライン研修などさまざまな種類があります。それぞれ特徴があるため、ゴールに適した研修方法を選びましょう。
4.研修計画の作成
研修形式を決める際は、実施時期や行う期間、場所や手法などを具体化した計画を作成します。計画をきちんと立てることで、使用する機材や事前の打ち合わせなど、必要な準備が明確になります。このように、研修計画の作成段階で、研修の準備を進めておくとスムーズです。
5.効果測定と改善サイクル
研修効果の測定には、参加者アンケートや理解度テスト、業務成果の変化などが活用されます。これをもとに、PDCAサイクル(Plan→Do→Check→Act)を回し、目的設定・実施・効果検証・改善の各段階を繰り返すことで、研修の質を継続的に向上させることが可能です。データに基づいた改善が、実効性ある研修運営につながります。
社内研修の効果を最大化するポイント
社内研修の効果を最大限まで高めるには、研修の目標や参加者自身の学ぶ姿勢、研修後まで考慮した仕組みが重要です。どのようなポイントを押さえるべきか、4点紹介します。
明確な目標設定と期待効果の共有
社内研修の効果を最大化するには、事前に研修の目的を明確にし、参加者と共有することが重要です。目的が曖昧なままでは学習意欲が高まらず、成果にもつながりにくくなります。たとえば「リーダーシップ強化」や「業務効率の向上」など、具体的な到達目標を明示することで、受講者の理解度と行動変容が促進されます。また、成果を可視化するためにKPIを設定することも有効です。具体例として研修後の「スキル習得率(テスト等による測定)」「業務改善率(改善提案の増加や業務時間短縮)」「生産性向上率(出力や売上の増加)」などが挙げられます。こうしたポイントを守ることにより、研修の効果を定量的に把握し、継続的な改善にもつなげることができます。
参加者の主体性を引き出す工夫
社内研修の効果を最大化するには、参加者の主体性を引き出すことが重要です。研修の大前提として、受動的に講義を聞くだけでは定着しにくいため、能動的な学びを促す工夫が求められます。たとえばグループディスカッションを通じて意見交換を促すことで、自ら考え、他者の視点を吸収する力が養われます。ケーススタディでは、実際のビジネス課題を題材にして判断力や応用力を鍛えることが可能です。さらにアクションラーニングでは、実際の業務課題をチームで分析・解決するプロセスを通じて、学習と実践の融合が図られます。こうした手法により、参加者が当事者意識を持ち、学んだ内容を現場で活かしやすくなります。
研修後のフォローアップ体制
社内研修の効果を最大化するには、研修後のフォローアップ体制が欠かせません。研修で得た知識やスキルを現場で活用・定着させるには、継続的な支援が必要です。具体的には、学びを振り返る「フォローアップセッション」や「レポート提出」を通じて理解を深め、実際の業務での「実践機会」を意図的に提供することが効果的です。また先輩社員や上司が支援役となる「メンタリング制度」を導入することで、日常業務の中での気づきや相談の機会が生まれ、研修内容が定着しやすくなります。このような多層的なフォロー体制が学びを行動へとつなげ、組織成果への還元を促進します。
講師選定のポイントと効果的な研修実施法
社内研修の効果を最大化するには、講師選定と実施後のフォロー体制が重要です。社内講師を選ぶ際は、実務経験の豊富さや受講者との信頼関係を築けるコミュニケーション力が重視されます。一方、外部講師は専門知識や研修実績、自社の課題に対する理解力が選定基準となります。効果的な研修実施には、社内外を問わず講師との事前打ち合わせで目的や期待効果を共有することが必須です。さらに受講者の反応や学びの活用状況を確認するフォローアップアンケートや振り返り面談を行うことで、研修内容の定着と改善に役立ちます。こうした講師の質と継続的なサポートが、研修の成果を高める鍵となります。
社内研修の成功事例と失敗から学ぶポイント
社内研修の成功事例とその成功要因と、失敗事例とその原因についてを紹介します。
成功事例-効果的な社内研修の実例
効果的な社内研修の成功事例は、業界ごとに多様です。IT業界ではサイボウズがチームワーク強化を目的とした対話型研修を実施し、心理的安全性の向上と離職率低下を実現しました。製造業では、トヨタ自動車がQCサークル活動と連動した現場改善研修を通じて、自主的な問題解決力と生産性向上を達成した成功例もあります。またサービス業では星野リゾートが現場スタッフ向けにコミュニケーション研修を実施し、顧客満足度と社員満足度の双方を向上させました。これらの成功要因には「研修目的の明確化」「業務との連動」「継続的なフォロー体制」が共通しています。これらのポイントは他業種にも応用可能であり、自社の課題と現場に即した設計・運用が研修効果を最大化する鍵といえるでしょう。
失敗事例-避けるべき落とし穴
社内研修における失敗事例としてよく見られるのが、次のパターンです。
・目標が不明確なまま実施されるケース
・一方通行の講義型研修なケース
・フォロー体制が不十分なケース
たとえば「とりあえず実施する」という形式的な研修では、受講者の学習意欲が低下し、実務に結びつかない結果となります。また一方通行の講義型研修も失敗の典型で、講師の話を聞くだけの構成では参加者が受け身になり、内容の定着や実践への活用が難しくなるでしょう。さらにフォロー体制が不十分な場合、研修後に学んだ内容を実務に活かせず、効果が一過性で終わってしまいます。たとえば研修後に振り返りや上司との面談がなかった企業では「研修内容が業務にどう関係するか分からない」との不満の声が上がりやすいです。これらの失敗を防ぐには、目的・設計・実施後のフォローを一貫して見直すことが不可欠です。
DX時代における社内研修の最新トレンド
DX時代の社内研修では、デジタル技術を活用した新たな手法が注目されています。たとえば短時間で学べるマイクロラーニングは、業務の合間にスマートフォンなどで手軽に知識を習得でき、継続的な学習を促す効果が期待できます。さらにVR/ARを活用すれば、接客や製造など実践的スキルを仮想空間で体験でき、研修効果を高めることが可能です。またAIパーソナライズは、個々の学習履歴や理解度に応じて最適な教材や進行を自動調整し、効率的な習得を支援する効果があります。こうした手法を取り入れることにより、時間・場所にとらわれず一人ひとりに合った学びが実現でき、社員の自律的成長と組織の競争力強化につながります。
ハイブリッド型研修の設計と実施方法
ハイブリッド型研修は、対面とオンラインの利点を組み合わせた効果的な学習手法です。設計のポイントは、目的に応じて最適な形式を使い分けることです。たとえば知識のインプットはeラーニングやオンライン講義で行いつつ、ディスカッションやロールプレイなど相互作用が求められる内容は対面で実施します。オンラインはZoomやMiroを使ったリアルタイムの共同作業が可能で、対面は非言語的な反応や信頼関係構築に強みがあります。それぞれの強みを生かす方法が、ハイブリッド型研修の特徴といえるでしょう。また受講者の進捗を管理するためにLMS(学習管理システム)を活用すれば、研修後のフォローアップをオンラインで実施でき、学びの定着と継続的な支援が可能となります。こうした設計により、柔軟性と実践性を兼ね備えた高品質な研修が実現します。
データ活用による研修効果の可視化
研修効果を可視化するには、適切なデータ収集と分析が不可欠です。まず、研修直後のアンケートや理解度テストを通じて研修後の理解度を測定しましょう。次に一定期間後に上司評価や自己評価を実施し、行動変容度(学んだ内容の実践度)も確認します。さらに業務改善提案数や売上・生産性の変化などを指標とした業績向上度も重要なデータです。これらの数値をLMS(学習管理システム)や人事システムで一元管理・分析することで、研修の効果を定量的に把握でき、次回研修への改善にもつなげられます。可視化によって投資対効果(ROI)の説明がしやすくなり、経営層への説得力も高められます。
まとめ
社内研修は実施するのが目的ではなく、課題意識やゴールを明確にした上で行うことが、成果の最大化につながります。自社の課題や各階層に対して身につけてほしいスキルを挙げ、この記事で解説した手順に沿って進めましょう。
ユーキャンの法人向け人材教育サービスは、丁寧なヒアリングで課題を抽出し、法人様にフィットするご提案をいたします。ぜひ貴社の人材育成にご活用ください。

