プレイングマネジャーとは何か
プレイングマネジャーとは、組織をマネジメントする役割を持ちながら、現場で働くプレイヤーとしての業務もこなす立場のことです。プロ野球チームのヤクルトで、古田敦也氏が監督と選手のプレイングマネジャーをこなしたことは一時期話題になりました。
プレイングマネジャーと管理職(マネジャー)との違い
組織や企業において、管理職であるマネジャーは目標達成のために現場で働く社員を管理し、必要に応じて担当を変更したり、指示を出したりするのが役割です。
そのため組織の管理に注力でき、組織の利益や売上を最大化するマネジメントが一番の目的になります。
一方、 プレイングマネジャーは、通常業務を遂行しながら、マネジメントも行い、業務を兼任するため、個人としても組織の利益に貢献する点が大きな違いです。 現場で社員として業務に取り組む分、部下の適性や能力を把握しやすく、適材適所の人員配置がしやすくなります。
その分、一般的なマネジャーよりも業務が多岐にわたり、チームのかじ取りが難しくなるため、業務負担をどのようにして軽減するかが課題でもあります。
プレイングマネジャーが増加している背景
プレイングマネジャーは1990年代頃から登場しましたが、それまではそれほど一般的ではありませんでした。しかし近年は社会情勢の変化に伴い、プレイングマネジャーは増加しつつあります。どのような背景があるのか、2つの背景を紹介します。
バブル崩壊
プレイングマネジャーが登場し、増加する理由になった1つ目の背景は「バブル崩壊」です。それまでの好況が一気に反転し、日本企業に不況の波が押し寄せました。コスト削減が叫ばれるなかで、大きく削りやすかったのが人件費です。人件費を抑えつつ売上を伸ばすには、管理職をおくより、売上に貢献する社員にマネジメント業務を任せることが有効な施策となり、プレイングマネジャーのような人材が必要とされるようになりました。
人手不足
もう1つの背景は、近年多くの企業で課題となっている人手不足です。団塊の世代が定年退職し、日本の生産年齢人口は減少しています。また、少子化の影響でどの企業も人手不足に困っているなか、管理職はマネジメントだけに専念することが難しくなっています。どの企業もプレイングマネジャーを増やしたいのではなく、増やさなければ組織を維持できない状態と見るのが正しいでしょう。
プレイングマネージャーの役割と必要なスキル
プレイングマネージャーは管理職でありながら、実務でも活躍する人材です。そのため通常の管理職とは違い、実務面での役割とスキルも求められます。どのような役割とスキルが必要となるのか、それぞれを具体的に紹介します。
プレイングマネージャーの役割
プレイヤーとしての業務遂行
プレイングマネージャーは、自らも一担当者として実務に携わり、目標達成に貢献する役割を担います。プレイングマネージャーには営業や開発、企画など各分野で結果を出しながら、現場感覚を保つことが求められます。業務の最前線に立つことで、課題の把握や改善提案に即応できる柔軟性と実行力が特徴です。ただしプレイヤー業務に偏りすぎるとマネジメントがおろそかになるため、バランスのとれた行動が求められます。
チームマネジメントと目標管理
プレイングマネージャーは、チーム全体の目標設定や進捗管理を通じて、組織としての成果を最大化する責任も担います。メンバーの業務状況を把握し、必要に応じてサポートやリソースの調整を行いながら、チームが一丸となって動ける環境を整えることも役割です。また成果の評価やフィードバックを行うことで、モチベーション維持や成長促進にも寄与することになります。
部下育成と人材開発
プレイングマネージャーには、部下一人ひとりの成長を促す人材育成の役割もあります。OJTをはじめ日々の業務の中で指導・助言・フィードバックを行い、部下の能力を引き出す役割が求められます。自身の実務経験をもとに具体的かつ実践的な支援ができることから、部下に信頼されやすく、育成効果も高まりやすい点も特徴です。管理職としての視点では、人材育成は中長期的な組織力向上にも直結する重要なマネジメント課題となります。
プレイングマネージャーに必要なスキル
高いコミュニケーション能力
高い成長意欲
業務におけるバランス感覚
プレイングマネジャーの状態における問題点
プレイングマネジャーの状態では、さまざまな問題点が生じます。どのような問題点があるのか紹介します。
プレイングマネジャーの負担が大きい
プレイングマネジャーの問題点の1つ目は、負担が大きいことです。プレイングマネジャーは、マネジャーとしての管理業務を行いながら、プレイヤーとしても業務を遂行することになります。閑散期には問題なくても、繁忙期になれば業務量が多くなり、業務過多に陥る可能性が高くなります。プレイングマネジャーの負担を減らすには、上司やメンバーのサポートが欠かせません。 プレイングマネジャーがマネジメント業務に集中できるように、個人としての成果、チームとしての成果、どちらも出せるように、業務を分担しつつ、チームとして成長していくのが理想的な形です。
評価基準があいまいになりやすい
プレイングマネジャーの問題点2つ目は、評価基準があいまいになりやすいことです。プレイングマネジャーはマネジメントとプレイヤー、両方の目標を設定し、それぞれの達成度を評価しなければなりません。しかしマネジメント業務に比重を置けば、プレイヤーとしての目標を達成しにくくなります。
逆もまた然りで、個人目標は達成できたが組織の実績としては未達成という場合もあり、目標設定と評価基準が明確になるように、企業側も配慮する必要があります。どちらに比重を置くかでも評価基準は違うため、組織全体の評価制度見直しを進めましょう。
マネジメントの課題に気づきにくい
プレイングマネジャーの問題点3つ目は、マネジメントの課題に気づきにくいことです。
プレイングマネジャーに選ばれる人は、自分の業務遂行能力が高い分、現場での業務を率先してしまい、マネジメント能力の不足を補うことでマネジメントの課題に気づきにくいことがあります。周囲もその状況に気づきにくいため、問題が起こってから対処する意識になるでしょう。プレイングマネジャーとしてのスキル停滞を防ぐためにも、一度現場のすべてを部下に任せ、自分のマネジメント能力を客観的に把握しておくことが重要です。
プレイングマネジャーを配置する場合のポイント
プレイングマネジャーを配置し、円滑にチーム全体が業務を遂行するには、次のポイントが重要です。
・1人に負担がかからない環境整備
・OJTや上司のサポートを積極的に行う
1人に負担がかからない環境整備
プレイングマネジャーを配置する際は、1人に過剰な負担がかからないよう環境整備を行いましょう。まずメンバーそれぞれが自律して行動し、マネジャーに負担をかけないことが最重要です。未熟なメンバーが多くなるほどプレイングマネジャーの負担は大きくなり、マネジメント業務に支障が生じるからです。またプレイングマネジャーを配置する部署には、さまざまな状況を想定したマニュアルや人員のサポート体制構築も進めましょう。
プレイングマネジャーが常に現場にいるとは限らないため、不在時でも円滑に業務遂行できる体制を作ることが重要です。ほかにも教育システムやメンバーの権限拡大、コミュニケーションツールやタスク管理ツールの導入などで働きやすい環境を整えてください。
OJTや上司のサポートを積極的に行う
プレイングマネジャーを配置する際は、プレイングマネジャー向けのOJTや上司からのサポートも必要です。プレイングマネジャーにすべての業務を任せると負担になるため、指導者や統括する管理者が率先して、業務のマネジメントや部下指導・育成に取り組める環境構築を進めましょう。特にプレイングマネジャーになって間もない場合、円滑なチーム運営が難しいことが考えられます。プレイングマネジャーの成長を促し、負担に感じないようにする配慮が大切です。
プレイングマネジャーのスキルアップを支援する方法
プレイングマネジャーのスキルアップを支援する方法は、次のとおりです。
・チーム・組織内での情報共有
・コミュニケーション能力向上の支援
・マネジメント経験を積み、知識を習得してもらう
・業務効率への意識を高めてもらう
・ロールモデルをおく
チーム・組織内での情報共有
プレイングマネジャーに対しては、日常的にチーム・組織内で情報共有を行い、必要なら支援を行いましょう。例えばコミュニケーションでは、チャットツールでグループ内で情報共有を行うなどの方法があります。タスク管理ツールで進捗状況をリアルタイムで確認し、必要ならサポートに入るのもよいでしょう。プレイングマネジャーは部下の管理と現場業務で手一杯になり、相談できない状況になることもあります。組織内で頻繁に情報共有を行うことで、組織としてスキルアップ支援につなげることができます。
コミュニケーション能力向上の支援
プレイングマネジャーはチーム内でのコミュニケーションが必須であり、円滑な業務遂行には部下との信頼関係が大切です。 しかしプレイングマネジャーになったからといって、誰もがすぐにコミュニケーションスキルを習得できるわけではありません。人間関係を構築するには、ある程度の時間が必要です。そこで組織として支援を行う場合は、プレイングマネジャーとメンバーが話しやすい環境を整備したり、場をセッティングしたりするのが支援になります。お互いに気楽に話せる雰囲気があれば、自然と会話も生まれ、お互いへの理解が深まるでしょう。
マネジメント経験を積み、知識を習得してもらう
プレイングマネジャーの経験が浅い方に対しては、マネジメントの経験を積ませたり、知識を得るための研修を開催したりする必要があります。プレイングマネジャーは通常の業務をこなす能力は高くても、マネジメントの経験が少ないケースが多々あります。組織として支援する際は、OJTやOff-JTを実施し、実践に基づいた経験と知識を積み重ねてもらうことを意識しましょう。経験と知識が身に付けば、業務遂行もマネジメントもこなせる万能のプレイングマネジャーへと成長する期待が持てます。
業務効率への意識を高めてもらう
プレイングマネジャーを育成する際は、業務効率への意識を常に持ってもらうことも重要です。メンバーとして自分の目標を立て、業務をこなすだけで良かったときと、プレイングマネジャーになってからでは意識すべきポイントが違います。自分の業務遂行や効率を意識するのはもちろんですが、チームとして業務効率を高め、生産性を向上させることが重要になります。組織・チームとして業務の優先順位をつけ、効率を優先することが成果へとつながっていくでしょう。
ロールモデルをおく
プレイングマネジャーを望む方向に成長・スキルアップさせるには、ロールモデルをおく方法もよいでしょう。 ロールモデルとはお手本になる人物のことで、業務の進め方やマネジメントの手法などを学ぶ機会になります。全く同じように行動することはできなくても、プレイングマネジャーの先輩として模範となる社員を目指すことが成長に繋がるでしょう。業務の進め方やメンバーとの関わり方、マネジメントの方法などをロールモデルから学ぶことで、自分なりのマネジメント手法が身につけられるはずです。
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まとめ
今回はプレイングマネジャーについて、求められる役割や増加の背景、スキルアップの支援方法などを解説しました。人手不足の深刻な企業にとって、プレイングマネジャーは経営上欠かせない存在です。しかし、誰もがプレイングマネジャーに就任してすぐ活躍できるわけではなく、実践経験や知識を積みあげて成長していくものです。そのため、 組織が理想とするプレイングマネジャーを育成するには、支援体制の構築や働きやすい仕組みを作っていく必要があります。 どのようなプレイングマネジャーになってほしいか求める人材像を定め、組織に貢献してくれる人材に育てましょう。将来は管理職・経営層となって活躍するプレイングマネジャーを育成しましょう。