レジリエンスとは?ビジネスでの意味や高めるメリット、折れない心を育てる方法を解説

  • 公開日:2023.09.29

    更新日:2026.07.03

    レジリエンスとは、逆境や困難な状況にしなやかに適応し、立ち直る力を指す心理学用語です。職場のメンタルヘルス不調や離職への対策として、社員のレジリエンスを高める取り組みが広がっています。

    本記事では、レジリエンスの意味や構成要素、社員のレジリエンスを高めるメリットと具体的な方法を解説します。研修の効果的な取り入れ方も紹介するため、人材の定着や生産性向上に課題を感じている人事・研修担当者の方は参考にしてください。

このページを簡潔にまとめると・・・
  • レジリエンスは逆境やストレスからしなやかに回復・適応する力で、後天的に鍛えられる。
  • 職場ストレスの深刻化やVUCA時代の環境変化を背景に、人材育成施策として重要性が高まっている。
  • 社員のレジリエンスを高めると、離職防止・パフォーマンス向上・変化対応力の強化が期待できる。
  • 心理的安全性の確保やeラーニング研修の導入など、組織的な取り組みが有効な施策。
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レジリエンスとは

レジリエンス(Resilience)は「回復力」「復元力」「弾力性」などと訳される言葉で、心理学では「精神的回復力」を指す用語として使われています。

語源は物理学にあり、外力による変形から元の状態に戻る力を表す概念でした。1970年代以降、心理学の領域でも用いられるようになり、現在ではビジネスや人材育成の文脈にまで広がっています。

アメリカ心理学会(APA)は、レジリエンスを「困難な経験にうまく適応するプロセスとその結果」と定義しています。ストレスを感じない強さではなく、困難の中で回復していくしなやかさこそがレジリエンスの本質です。

ビジネスでレジリエンスが注目される背景

レジリエンスがビジネスで注目される背景には、職場におけるストレスの深刻化と経営環境の不確実性という2つの要素があります。以下では、それぞれの要素がなぜレジリエンスに関係しているのかを解説します。

● 職場におけるストレス・メンタルヘルス不調の増加
● VUCA時代における環境適応力の必要性

職場におけるストレス・メンタルヘルス不調の増加

厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査」によると、強いストレスを感じている労働者は全体の68.3%を占めています。ストレスの内容は「仕事の量」が43.2%で最も多く、次いで「仕事の失敗、責任の発生等」が36.2%、「仕事の質」が26.4%という結果でした。

また、精神障害による労災請求件数は3,780件、支給決定件数は1,055件に上り、いずれも過去最多を更新しました。休職や離職は業務の属人化や採用コスト増を招くため、ストレスに適応できる人材を育てる取り組みが求められます。

レジリエンスの強化は、従業員の心身の健康を守りつつ、生産性向上を目指す健康経営の実践にもつながる施策です。

VUCA時代における環境適応力の必要性

現在のビジネス環境は、変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の頭文字をとったVUCA(ブーカ)時代と呼ばれ、技術革新や市場変動など予測困難な変化が常態化しています。

これに伴い、働き方や顧客ニーズが急激に変わるため、環境変化に対応する力として、社員のレジリエンスを高める取り組みの重要性は、今後ますます増していくでしょう。

なお、VUCA時代に求められるスキルや生存戦略について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

レジリエンスを構成する要素

レジリエンスは先天的な性格だけで決まるものではなく、後天的に鍛えられる複数の要素から構成されます。ペンシルベニア大学Positive Psychology Centerのカレン・ライビッチ博士は、レジリエンスの土台を以下の5つの要素で示しました。

要 素概 要
身体の健康(Physical Health)栄養・睡眠・運動など、身体のコンディションを整えること
自己認識(Self-Awareness)自分の思考・感情・身体反応・対処パターンに注意を向けること
柔軟性と自制心(Flexibility & Self-Regulation)思考・感情・身体反応・対処パターンを状況に応じて変えること
楽観性(Optimism)前向きな変化は可能であると信じること
つながり(Connection)他者や自分の価値観・目的・信念とつながること

いずれの要素も研修やトレーニングで強化することが可能で、企業の育成施策にも活用しやすい点が特徴です。それぞれの要素を鍛える具体的な方法は後述します。

レジリエンスが高い人・低い人の特徴

レジリエンスの高低は、日常の行動や思考パターンに現れやすい傾向があります。以下では、高い人・低い人それぞれに見られる共通点を紹介します。

● レジリエンスが高い人の特徴
● レジリエンスが低い人の特徴

レジリエンスが高い人の特徴

レジリエンスが高い社員の職場での行動や思考には、以下のような共通点が見られます。

・ 落ち込んでもメンタルの回復が早く、一時的な感情にとらわれずに仕事に向き合える
・ 失敗やトラブルを引きずらず、原因から改善点を見つけて次の目標を立てられる
・ 困難な状況でも「自分はできる」という見通しを持ち、周囲に助けを求めることをためらわない
・ 栄養・睡眠・運動など日常的に体調を管理し、ストレスへの対処法を身に付けている

上記の傾向を注視することで、社員のレジリエンスの状態を日常業務の中で観察しやすくなります。

レジリエンスが低い人の特徴

レジリエンスが低い社員には、以下のような傾向が見られます。

・ 一度の失敗を長く引きずり、自分を責め続けて次の行動に移れない
・ 問題に直面した時に「どうにもならない」と感じ、解決に向けた一歩を踏み出せない
・ 先が読めない状況に対して強い不安を感じやすく、新しい環境への適応に時間がかかる
・ 悩みやストレスを周囲に打ち明けられず、上司や同僚への相談をためらう

これらの傾向は生まれつき決まるものではありません。レジリエンスはトレーニングで高められるため、意欲の問題と決めつけず「育成で伸ばせる」という前提を組織内で共有しましょう。

社員のレジリエンスを高めるメリット

社員のレジリエンスを高めることは、個人の成長にとどまらず、組織全体の底上げにつながります。企業が得られる主なメリットは以下の4つです。

● 離職・休職の防止につながる
● 業務パフォーマンスが向上する
● 組織の変化対応力が高まる
● チームワークの向上が期待できる

離職・休職の防止につながる

離職・休職の主な要因の1つがメンタルヘルスの不調です。厚生労働省の令和6年調査では、メンタルヘルスの不調により休職者や退職者が発生した事業所は12.8%で、およそ8社に1社が該当するという結果でした。

レジリエンスが高い社員はストレス要因に前向きに対処しやすく、不調が深刻化する前に自身を立て直す力を備えています。社員のレジリエンスを高めることで定着率が向上すれば、採用・教育コストの削減にもつながります。

業務パフォーマンスが向上する

レジリエンスが高い社員は、想定外のトラブルや繁忙期のプレッシャーがかかる場面でも切り替えが早く、ワークエンゲージメントを保ったまま業務に取り組めます。その結果、コア業務に集中できるようになります。

個人の成果が安定することにより、結果として組織全体の生産性向上にもつながります。

組織の変化対応力が高まる

組織改編やDX推進、新規事業の立ち上げなどの大きな変化に直面した際、社員には新たな環境への適応が求められます。レジリエンスの高い社員が多い組織では、変化に伴う混乱や戸惑いが最小限に抑えられ、不測の事態でも業務を迅速に立て直すことが可能です。

外部環境の変化に合わせて体制や業務プロセスを柔軟に組み直す力は、事業継続性や競争力の向上に直結します。

チームワークの向上が期待できる

社員のレジリエンスが高まると、同僚や顧客との関係性も改善され、チームワークの向上が期待できます。同僚からの支援や上司との良好な関係がレジリエンスを強化し、高まったレジリエンスがさらに良好な関係づくりを促すという好循環が生まれます。

レジリエンスの高い人材が増えれば、組織内のコミュニケーションも円滑になるでしょう。


社員のレジリエンスを高める方法

社員のレジリエンスは、職場環境の整備と育成施策の両面から組織的に高めることが可能です。以下では、レジリエンスを高める代表的な方法を紹介します。

● 心理的安全性の高い職場をつくる
● 1on1ミーティングを定期的に実施する
● 強みを活かせる業務アサインを行う
● レジリエンス研修を導入する
● セルフケアを支援する仕組みをつくる

心理的安全性の高い職場をつくる

失敗の報告や助けを求めることに不安がある職場では、社員がストレスを1人で抱え込んでしまいます。管理職がミスを学びの機会として扱い、率直な発言を歓迎する姿勢を示すことが、チーム内の心理的安全性を高めるうえで大切です。

心理的安全性が確保された環境では、社員が学び合う行動が活発になり、困難からの立ち直りを周囲が支えやすくなります。
心理的安全性を高める方法についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

関連コラム:心理的安全性とは? 効果やメリット・高めるためのポイントなど解説

1on1ミーティングを定期的に実施する

上司と部下が1対1で対話する場を定期的に設けると、部下の状態変化を早い段階で把握できます。業務の進捗だけでなく、悩みやキャリアについても話し合うことで信頼関係が深まり、困難があった時に相談しやすい土壌をつくることができます。

週1回や月1回など頻度を決めて継続し、上司側は「聴く姿勢」を意識しましょう。

1on1の進め方やテーマ例について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

関連コラム:1on1ミーティングとは?目的と効果的な進め方、内容のテーマ例を解説

強みを活かせる業務アサインを行う

困難な場面でも「自分なら対処できる」と思える感覚(自己効力感)は、レジリエンスを支える土台となります。自己効力感を高めるには、少し頑張れば達成できる目標を設定し、成功体験を積み重ねることがポイントです。

管理職は日頃から部下の得意分野を把握し、適切な難易度の業務を任せて成功体験の機会を意図的に設けましょう。

レジリエンス研修を導入する

レジリエンスの構成要素を体系的に身に付けるには、研修やeラーニングを活用するとよいでしょう。代表的な学習手法としてABCDE理論があり、出来事(A)→信念(B)→結果(C)→反論(D)→効果(E)の5つのステップで思考を整理します。

たとえば、「上司に注意された(A)」→「自分はダメだ(B)」→「落ち込む(C)」という流れに対し、「改善点を指摘されただけでは?(D)」と問い直すことで、「次は改善しよう(E)」という前向きな行動につなげられます。

なお、ユーキャンでは、法人向け講座として「レジリエンス講座」があります。「基礎力」「適応力」「回復力」をeラーニングで学べる構成で、ワーク学習を通じて実践スキルの定着に役立てられます。

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セルフケアを支援する仕組みをつくる

レジリエンスを高めるには、日常的にセルフケアを実践するための環境整備も欠かせません。具体的には、ストレスチェックの集団分析結果を部署単位の改善計画に反映すること、相談窓口を周知して利用しやすくすること、ワークライフバランスを確保することなどの施策が挙げられます。

個人の意識付けだけでなく、組織として支える仕組みを整えることが重要です。

レジリエンス向上に取り組む際の注意点

レジリエンスは困難を我慢して耐え抜くことではなく、つらさを経験しながら立ち直るプロセスを指します。「我慢すべき」と誤解されると不調を抱え込んでしまう社員が増える恐れがあるため、研修導入時には「つらい時は助けを求めてよい」と必ず伝えましょう。

また、長時間労働やハラスメントが常態化した環境では、個人の回復力に頼るだけでは限界があります。レジリエンスは個人と組織の双方で支えるものと捉え、研修の導入と職場環境の改善をセットで進めることが重要です。

まとめ

レジリエンスとは、逆境やストレスにしなやかに適応し回復する力で、後天的に鍛えられるスキルです。職場ストレスの増加やVUCA時代の変化を背景に、人材育成施策としての重要性が高まっています。

社員のレジリエンスを高めれば、離職防止やパフォーマンス向上、変化対応力の強化が期待できます。心理的安全性の確保や研修の導入など、個人と組織の両面からのアプローチでレジリエンスを高めましょう。

ユーキャンの「レジリエンス講座」では、eラーニングを通じて、実践的なスキルの習得をご支援します。ぜひご検討ください。

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