リーダーシップとは? マネジメントとの違いやPM理論なども解説

  • 公開日:2022.12.20

    更新日:2023.06.20

    会社やグループなどの組織にとってリーダーシップを持つ人材がいるかどうかは、重要なポイントです。リーダーシップの有無は、組織の目標達成を左右する1つの要素といえます。この記事では、リーダーシップの概要や、リーダーシップスキルの習得方法を解説します。リーダーシップ理論やリーダーシップの発揮に必要な行動も解説するので、社内の人材育成の参考にしてください。

リーダーシップとは?

リーダーシップは、組織を統率し、導く能力を指す言葉です。規模の大きさにかかわらず、会社のプロジェクトや企画、部署などで掲げる目標の達成に必要な能力になります。リーダーシップを持つ人材は、自ら目標設定を行い、組織が向かうべき方向に導ける能力があります。意見や考え方の違うメンバーをまとめるために、リーダーシップは必要不可欠です。

マネジメントとの違い

リーダーシップとマネジメントは意味合いが似ており、混同されることがあります。
リーダーシップは、向かうべき方向性・ゴールへのビジョンを明確にし、チームや仲間を率いて目標達成へと向かっていく能力のことです。チームを主導して引っ張っていく力がリーダーシップであり、新しいことへの挑戦、創造する際に発揮される力です。マネジメントは、方向性やビジョンを明確にするという点では同じですが、目標達成のための手段を提示し、チームや部下の働きを管理する点に違いがあります。マネジメントでは、目標達成のための具体的な戦術を提案し、確実に目標を達成するためにリソースの管理、役割分担などを決めます。リーダーシップは大きな目標に向かって、長期的な視点で物事を見据え、率先して人を引っ張っていく点が特徴です。一方、マネジメントでは長期的な視点はもちろん、短期的な視点も交えつつ、現実的な手順と手段を考慮して、物事を進めていく点が特徴です。チームを運営していくには、リーダーシップで周囲の味方を引っ張っていくと同時に、マネジメントで計画の細かな修正や変更を行いつつ、ひとりひとりが最大限の力を発揮できるようにサポートしていくという両輪の働きが必要となるでしょう。

※参考:マネジメントとは?|ユーキャンの法人向け人材教育サービス

リーダーシップの種類と各タイプの特徴

コンセプト理論とは?

コンセプト理論は、条件適合理論を前提として、ビジネスの環境・組織などの条件に応じて、リーダーシップの取り方を5つのタイプに分類した理論です。コンセプト理論におけるリーダーシップ論のタイプは以下の5つです。
  • 1.カリスマ型リーダーシップ
  • 2.変革型リーダーシップ
  • 3.EQ型リーダーシップ
  • 4.ファシリテーション型リーダーシップ
  • 5.サーバント型リーダーシップ

カリスマ型リーダーシップ

カリスマ型リーダーシップとは、高い行動力とカリスマ性で、組織やチームを牽引していくタイプのリーダーシップです。リーダーシップ研究者のコンガーとカヌンゴによると、カリスマ型リーダーシップには次の特徴があるとされています。

  • 1.ビジョンの表明
  • 2.環境への感受性
  • 3.型にとらわれない行動
  • 4.リスクをいとわない
  • 5.メンバーのニーズに対する感受性
  • 6.現状の否定

カリスマ型リーダーシップを発揮すると、想像力を発揮した前例のない方法もためらうことなく、それによって生じるリスクもリーダーが責任を取ります。一方で、リーダーの影響力次第で部下の依存度が高くなり、後継者が育たないこと、リーダー不在時の意思決定者がいなくなるといったデメリットもあります。躍進した起業家や一企業を大企業まで成功させたリーダーには、カリスマ型リーダーシップの方が多いです。

変革型リーダーシップ

変革型リーダーシップは、これまでの経営戦略では危機的状況に立たされる時に、経営方針の抜本的な見直しを行い、組織に所属する社員やメンバーに変化を働きかけるリーダーシップです。変革型リーダーシップの代表的な理論には、コッターのリーダーシップ論やティシーの現状変革型リーダー論があります。まずコッターのリーダーシップ論では、変革を実現するには8つのステップがあるとしています。

  • 1.緊急課題であるという認識の徹底
  • 2.強力な推進チームの結成
  • 3.ビジョンの策定
  • 4.ビジョンの伝達
  • 5.社員のビジョン実現へのサポート
  • 6.短期的成果をあげる計画策定・実行
  • 7.改善成果の定着と更なる変革の実現
  • 8.新しいアプローチを根付かせる

    • 次にティシーの現状変革型リーダー論では、変革を実行するリーダーのあり方について定義を設けています。そしてリーダーが行うべき変革として、現状の受け入れ、自身の価値感によってメンバーを牽引すること、組織システムへの働きかけなどを挙げました。

      EQ型リーダーシップ

      EQ型リーダーシップは、人間関係に重点を置き、職場環境改善や部下のマネジメントなどを行うリーダーシップです。EQは「Emotional Intelligence Quotient」の頭文字をとったもので、日本語にするなら「感情的知能指数」となります。ここでいう感情的知能指数は、自分や他者の感情への機微、感情の適切な分類、感情を認知したうえで行動することの能力を指します。IQ(知能指数)の感情バージョンとも言えるもので、EQが高い人ほどビジネスにおける対人関係に優れ、良好な人間関係でビジネスを成功させやすいとする概念です。
      EQ型リーダーシップにおいても、組織やチームのメンバーとコミュニケーションを行うことが基本で、中でも次の4つのポイントが重要とされています。

      • 1.自己認識
      • 2.自己管理
      • 3.社会認識
      • 4.人間関係の管理

      • 4つのポイントをコントロールできれば、組織・チームとしての価値観を共有できるようになるとされています。

        ファシリテーション型リーダーシップ

        ファシリテーション型リーダーシップは、所属するメンバーの自発的な行動を促進し、意欲と成長を高めるタイプのリーダーシップです。ファシリテーション型リーダーシップでは、上下関係は一旦取り払い、同じ目線でコミュニケーションを行う点が特徴です。そもそもファシリテーションには、組織・チーム内での対立を解消し、メンバーが相互理解することを助け、効率的な運営を行うという意味合いがあります。
        ファシリテーション型リーダーシップでも、メンバー全員が共通の目標に向かうことを重視し、リーダーだけが指示を出すのではなく、メンバーがそれぞれの意見と情報を持って主体的に動けることを重要視します。このリーダーシップの下で上手く運営ができると、メンバーが高いモチベーションを維持し、自発的な成長のために努力することが可能です。一方でリーダーがメンバーの取りまとめ役を果たせないと、メンバー同士の衝突を招きやすいため注意も必要です。

        サーバント型リーダーシップ

        サーバント型リーダーシップは、リーダーはメンバーの業務をサポートする裏方になり、メンバーの業務効率を向上させるリーダーシップです。他のリーダーシップに比べるとリーダーの存在が目立ちにくいですが、最終的な意思決定権はリーダーにあります。リーダーがメンバーの業務を把握できるため、メンバーがそれぞれの業務に集中しやすく、思い切った行動や決断をしやすくなる点が特徴です。ロバート・K・グリーンリーフ・センターのラリー・スピアーズによると、サーバント型リーダーシップには、次の10属性があるとしています。

        • 1.傾聴
        • 2.共感
        • 3.癒し
        • 4.気づき
        • 5.説得
        • 6.概念化
        • 7.先見力・予見力
        • 8.執事役
        • 9.人々の成長への関与
        • 10.コミュニティづくり

        サーバント型リーダーシップでは、お客様の満足を第一に考え、上司は現場のスタッフを支えるべき存在と考えるのが基本です。

PM理論におけるリーダーシップの分類

PM理論では、P機能とM機能それぞれの発揮状態の大きさで、リーダーのタイプを分類しています。リーダーのタイプは、PM型・pM型・Pm型・pm型の4つです。理想的なリーダー像は、P機能とM機能の両方の発揮状態が大きいPM型として定義しています。

1.PM型

PM型は目標達成機能のP、集団維持機能のMのどちらも強いタイプのリーダーシップです。高い目標達成能力と集団維持機能によって、計画的に物事を進め、メンバーの管理も徹底して行えるタイプです。チームビルディングに特に強みがあり、チームで同じ目標を共有し、成功へと向かっていく理想的なリーダーシップがあります。PM型のリーダーは、プロジェクトがスムーズに進むと同時に高い成果も出やすいため、メンバーもやりがいと働きやすさを感じやすいという特徴があります。メンバー間で意見の対立があった場合も、上手く意見をコントロールして、最終的に納得できる結論を出してくれるのもPM型のリーダーです。

2.pM型

pM型は目標達成機能は低く、集団維持機能が高いタイプのリーダーシップです。業務上の目標達成には重きを置かず、集団内の人間関係やチームワーク、メンバーのモチベーション維持に強みがあります。集団をまとめる能力は高いですが、一方で目立った成果が出にくいため、組織の利益にはなりにくいという特徴があります。一方で、組織内の風通しが良くなるため、メンバー個々の能力が高まるにつれて、高い生産性に繋がるでしょう。具体的な計画性を持たないことが多いため、いかに目標や計画を立て、生産性を高めるかという点が課題になるリーダーのタイプです。

3.Pm型

Pm型は目標達成機能は高く、集団維持機能は低いタイプのリーダーシップです。
Pmタイプのリーダーは、組織やチームとしての目標や計画達成に重点を置く一方で、メンバー同士の人間関係には深く関与しないタイプです。短期的プロジェクトでは成果を出しやすい一方、長期的な働きではチームワークが上手く機能せず、結果的にメンバーのモチベーション低下を招きます。メンバーにとっては働き甲斐のあるリーダーですが、信頼関係は築きにくい点がデメリットです。Pm型のリーダーが長期的な生産性アップに繋げるには、メンバーとのコミュニケーションや、人間関係構築のアクションを行う必要があります。

4.pm型

pm型は目標達成機能と集団維持機能の両方が低く、リーダーに不向きなタイプです。
目標達成能力や計画性がなく、メンバーへの関心も低いため、生産性・モチベーションともに低くなりやすい点が特徴です。リーダーとしては不向きなタイプですが、目標達成能力と集団維持機能を高めれば、リーダーとして成長が期待できます。ただし、短期的にも長期的にも組織にとって不利益になりやすいため、pm型のリーダーをそのままにしておくのはリスクが高いです。組織にとって必要なリーダーシップを発揮してもらうためにも、リーダーシップ研修が必要になるでしょう。

クルト・レヴィンが分類したリーダーシップとは?

クルト・レヴィンはアメリカの心理学者です。リーダーシップを3つの型に分類しました。以下でそれぞれの型を解説します。

1.専制型

専制型リーダーシップでは、組織やチームに所属するメンバーは、管理者の指示・命令に従って動くという考えの下、目標設定からスケジューリング、進捗管理まですべての意思決定にリーダーが関与します。
専制型リーダーシップは、リーダーがあらゆる決定権を持っているため、上意下達でスピード感のあるパフォーマンスを発揮できる点がメリットです。
一方でリーダーの権限が強くなりすぎるため、チームメンバーからリーダーへの不信感を強めたり、リーダーへの依存度を高めたりする弊害もあります。また専制型はリーダーの指示が絶対という企業風土になりやすく、ハラスメントを引き起こすリスクもあります。専制型リーダーシップは、組織として成長途中でメンバーの多くが未熟なケース、または緊急性が高い案件でリーダーの指示の下で動く必要があるケースで有効です。

2.放任型

放任型リーダーシップは、専制型リーダーシップとは真逆で、メンバーのスケジュールや作業工程、目標設定などにリーダーが関与しないタイプのリーダーシップです。メンバーの自発性や専門性が高く、それぞれのメンバーが自身の役割を明確に認識しているケース、または集団として目標を共有できているケースで有効なタイプです。一方で、メンバーの自発性や専門性に任せるという言葉は良さそうに思えますが、リーダーが的確な指示を出せない、または責任を放棄しているとメンバーに受け取られるリスクもあります。個人の能力が求められる集団であれば効果的ですが、チームとしての一体感が必要なケースでは、むしろ生産性を大幅に低下させてしまいます。また、まとまりのない集団で働くことで、メンバーのモチベーションが下がり、組織としての生産性と業務効率が大幅に落ちる可能性が高いことは理解しなければなりません。

3.民主型

民主的リーダーシップは、組織の方針や目標などをメンバーの意見を元に決定し、作業手順や進め方についてもメンバーの裁量に任せるタイプのリーダーシップです。基本的に決定権がメンバーひとりひとりに委ねられるため、メンバー間の協力関係や協調性を高めやすく、全員で目標に向かう意識付けを行えます。所属するメンバーが自身の裁量で業務を遂行できるため、モチベーションは高くなりやすい一方、意思決定に時間が掛かりやすく、組織規模によっては生産性が低くなることが難点です。しかし、組織規模が大きくなるほど社員ひとりひとりの働きが重要となるため、所属するメンバーが大きくなるほど民主型リーダーシップの方が業務効率が高まります。

ダニエル・ゴールマンが分類したリーダーシップとは

ダニエル・ゴールマンは、リーダーシップを6つに分類したアメリカの心理学者です。以下でそれぞれの型を解説します。

1.ビジョン型

ビジョン型は、周囲の人を巻き込み、人や環境などに左右されない価値観と信念を持ったリーダーシップです。組織メンバーを強く導く特徴があり、組織の改革期に役立ちます。提示されたビジョンを組織全体で目指すため、帰属意識を高める効果があります。

2.関係重視型

関係重視型は、友好な人間関係を築き、組織行動を円滑にするリーダーシップです。組織メンバーだけでなく、組織との関係先とも信頼関係の構築を図れます。目標に進むための利害関係を整理し、協力的な行動が求められる場面で効果的です。

3.コーチ型

コーチ型のリーダーは、メンバー個々の性格や能力を活かした方法を実行します。主体性があり、能力も高い組織メンバーが揃う場合に、高い効果を発揮できます。組織メンバーの主体性を発揮させられるため、組織内の人材育成に効果的です。

4.実力型

実力型は、組織のなかでも現場で力を発揮しながら、組織メンバーをけん引するリーダーシップです。周囲のメンバーに実力と結果を示しながら、組織全体のパフォーマンスとモチベーション向上を促します。職種が1つに限られ、実力主義の組織に有効です。

5.民主型

民主型は、組織メンバーの視点に立ち、良好な人間関係を築き維持するリーダーシップです。組織に必要な意思決定に、メンバーの意見を取り入れ、合意を得ながら決断を下します。民主型は、自律性が高く優秀なメンバーが揃う場合に、効果を発揮できます。

6.強制型

強制型は、リーダーの立場から強制力の強い指示命令を行うリーダーシップです。短期的に業務効率を向上でき、成果を発揮しやすい特徴があります。緊急時の早急な意思決定を必要とする場面で、効果的です。

マネジメントシステム論とは?

マネジメントシステム論は、ミシガン大学社会調査研究所所長のレンシス・リッカートが確立した理論です。マネジメントシステム論では、組織をシステムとして捉え、次の4つのパターンに分類しています。

  • 1.権威主義・専制型
  • 2.温情・専制型
  • 3.参画・協調型
  • 4.民主主義型

権威主義・専制型

権威主義・専制型のリーダーは、徹底した課題志向のタイプで、メンバーの管理方法が権威主義的という特徴があります。リーダーはメンバーを信頼することがなく、意思決定にもメンバーが介入する余地を与えません。統制方法は恐怖・脅迫・懲罰によるものであり、時々与えられる報酬もわずかなものです。かつての日本では多かったワンマンタイプのリーダーですが、近年では珍しくなってきています。ベンチャー企業や中小企業など、成長しきっていない組織で多く見られるリーダーで、統制機能はすべてリーダーに集約されています。リーダーの能力次第では、組織として成功を収められますが、間違った方向に進んだ際に制御機構が働かないため、ハイリスクハイリターンなマネジメントシステムといえるでしょう。

温情・専制型

温情・専制型も専制型という名称の通り、統制の主体はリーダーです。ただし、権威主義・専制型との大きな違いは、リーダーからメンバーに対してある程度の思いやりを持ち、信頼もあるという点です。メンバーにある程度の裁量権や意見を認めており、メンバーの意思が反映される可能性があります。しかし、温情・専制型はリーダーからメンバーに恩着せがましさがあり、最終的な決定権がリーダーにあるという点は変わりません。また権威主義・専制型と同じく、報酬・懲罰をほのめかすことで、メンバーの動機付けを行います。そのためメンバー側からリーダーへの信頼感は弱く、代わりに恐怖心と警戒心が強い点が特徴です。一時的な成果は残せますが、長期的な視点ではメンバーとリーダーの繋がりが弱く、モチベーションも高まらないことから、成果を出しにくいタイプです。

参画・協調型

参画・協調型のリーダーシップは、リーダーが部下をかなり信頼しており、統制主体の多くの部分がメンバーに委ねられています。メンバー同士のコミュニケーションも活発に行われており、メンバー同士の相互作用による生産性向上、モチベーション向上が期待できます。リーダーからメンバーへの動機付けは、報償と懲罰が使い分けられ、時には最終意思決定にメンバーの参画もある点が特徴です。また目標達成に向けての課題志向は、組織内の人間関係志向とほぼ同程度で捉えられるため、人間関係に大きな比重を置いたリーダーシップといえます。リーダーはメンバーとのコミュニケーションにも積極的で、部下からの信頼も得ることで、円滑な業務遂行が可能です。最終的な決定権はリーダーにありますが、メンバーの意見も反映されやすいため、部下が不満を持ちにくいというメリットもあります。

民主主義型

民主主義型のリーダーシップは、リーダーが部下を全面的に信頼しており、全般的な決定権や個別の問題など、全階層で部下に権限委譲されています。組織としての目標達成や課題志向よりも、人間関係志向を非常に重視しているため、メンバー同士はもちろん、上下関係でのコミュニケーションも活発です。民主主義型はリーダーを含むメンバー全員で目標決定、プロセス構築、アクションプラン作成も行うため、所属するメンバー全員のモチベーションを高い状態で維持できます。所属する全員が働きやすい環境を提供されるため、生産性も高くなりやすいリーダーシップのタイプです。ただし人間関係志向に偏りすぎると、課題志向・目標達成志向が弱くなりやすく、企業としての運営に支障をきたす可能性もあります。

マネジリアル・グリッド論とは?

マネジリアル・グリッド論は、テキサス大学教授のロバート・ブレイクとジェーン・ムートンによって提唱された行動理論です。この理論では、リーダーシップのスタイルを分析したうえで「人の関心(人間関心度)」と「業績への関心(業績関心度)」から次の5つのパターンがあるとしています。

  • 1. 1.1型(消極型)
  • 2. 1.9型(人間中心型)
  • 3. 9.1型(仕事中心型)
  • 4. 9.9型(理想形)
  • 5. 5.5(中庸型)
今回は1~4までのタイプについてご紹介します。

1.1型

1.1型は消極型と呼ばれ、人間関心度も業績関心度も低いパターンです。リーダーはチーム目標にもメンバーにも関心が低く、放任的で責任感がなく、与えられた仕事を淡々とこなしていく傾向があります。モチベーションが低く、仕事では保身を優先するため、トラブルが発生しても見なかったことにすることも多いでしょう。リーダーシップを発揮することもほとんどないため、向上心やより良い結果に繋げようと努力することもありません。リーダーとして自分の意見を出すこともなく、あくまで中立的な意見しか持たないため、リーダーとしての存在感も薄いです。リーダーの存在感が薄いせいでチームの統制が取れないため、生産性が極端に低下しやすく、組織としても崩壊する危険性が高いです。

1.9型

1.9型は人間中心型と呼ばれるパターンで、人間関心度が高く、業績関心度が低い点が特徴です。1.9型は組織やチームの業績達成よりも、人間関係構築や信頼関係に重点を置いており、リーダーとしての指示・命令は少ないタイプのリーダーです。業務よりもメンバーの意思を優先するため、仕事の円滑化や効率化よりも人間関係や職場の雰囲気を重視します。所属するメンバー内での人間関係は良好になりますが、悪く言えば企業の経営を圧迫する危険性も孕んでいます。企業は営利を目的とする団体であり、人間関係だけに重点を置くリーダーでは、結果的に社員の生活を窮地に陥れてしまうでしょう。

9.1型

9.1型は仕事中心型と呼ばれ、業績関心度が高い一方で、人間関心度が低いパターンです。9.1型のリーダーは、組織の業績を上げるためなら、組織やチームの人間関係が犠牲になってもよいと考えており、業績向上を何よりも重視する傾向があります。人間関係を気にすることがなく、業績を重視するため、メンバーに対してトップダウン式の指示・命令を好み、権威服従型のリーダーになります。企業としては一定の業績を残せますが、職場内でコミュニケーションは少なく、メンバーを育成するという視点もありません。しかし業務効率を優先するあまり、メンバーを権威で押さえつけようとする傾向があり、メンバーからの信頼は非常に低いです。またメンバーから主体性を奪うことになるため、長期的なモチベーションも低下し、結果的に生産性が低下するおそれがあります。

9.9型

9.9型は理想形と呼ばれ、人間関心度も業績関心度も高く、マネジリアル・グリッド論では最も理想的なリーダー類型です。9.9型のリーダーは、組織やチーム内の人間関係を常に良好に保つ努力を行いながらも、仕事の管理やメンバーの業務マネジメントもしっかりと行うため、組織が最も安定的な成長を続けられます。リーダーは業績を向上させるために、メンバーとも積極的にコミュニケーションを行い、協力して組織を運営していきます。またメンバーへのサポートも献身的に行うことから、後継者の育成もスムーズに進む点が特徴です。信頼関係はメンバーのモチベーションを高める効果もあり、協調性・生産性の全てが高く、リーダーとして理想的なパターンです。

SL理論とは?

SL理論は「Situational Leadership Theory」の頭文字を取った略称で、ハーシィとブランチャードによって提唱されました。SL理論では「仕事志向」と「人間志向」の強さで、次の4つのカテゴリーに分類されています。

  • ・M1型(指示型)
  • ・M2型(説得型)
  • ・M3型(参加型)
  • ・M4型(委任型)

M1型

M1型は「指示型」と呼ばれ、主に新入社員を対象に行うリーダーシップで、リーダーから具体的な指示を出して管理するタイプです。リーダーとメンバーの人間関係よりも、指示的な面を重視する点が特徴です。リーダーは組織やチームの目標達成に向けて、ノウハウを熟知した人物である必要があります。仕事の習熟度が未熟なメンバーに対しては効果的で、リーダーの支援は少なめにして、メンバー自身に仕事を完了してもらうことで、成長を促進する効果が期待できます。ただし仕事を一定程度習熟したメンバーに対しては、リーダーからの指示が不信感や反発を招くリスクもある点には注意しなければなりません。基本的に短期で完了する仕事の指示しか行わないため、短期的な視点しか持っていないリーダーとして、メンバーからの信頼を失う可能性があります。

M2型

M2型は「説得型」と呼ばれ、指示と協労のどちらも高いという特徴があります。M2型はコーチングや指導要素が強いタイプで、コミュニケーションを行って人間関係を構築しながら、メンバーに何をすべきか導いていくリーダーシップです。メンバーへの指導の要素の強さから、仕事の目的や期限、すべきことを細かく指示していく点も特徴です。チームとして1つの目標を達成する際に、連帯感を生み出す能力が高いというメリットがある一方で、メンバーに必要以上に介入して不快感を生じさせるリスクもあります。そのため基本的には相手の同意を得ながら、コミュニケーションを取りつつ、目標に向けて進んでいくことになるでしょう。

M3型

M3型は「参加型」と呼ばれ、指示の程度は低く、協労が高い点が特徴です。仕事に習熟したメンバーに対して力を発揮し、メンバーが自立して行動できるようにサポートするタイプのリーダーシップです。例えば、スキル自体は高いレベルで保有していても、メンバー自身でやるべきことを決められない、または自信が持てないという場合に必要となります。
M3型では、リーダーがメンバーのことを信頼し、その信頼関係のもとで組織やチームの目標達成に向かいます。M3型のリーダーは人間関係を重視し、意欲を失いかけているメンバーには声掛けを行い、より高い目標を達成できるようにサポートする点も特徴です。
仕事そのものの指示を出すのではなく、そのメンバーにとって重要な点、意思決定を行う際の基準などを指導するため、メンバー自身が意思決定を行い、モチベーションも高められるでしょう。

M4型

M4型は「委任型」と呼び、指示も協労も低いパターンです。チームメンバーの人間関係やコミュニケーションなどの人間関係志向、組織目標といった課題志向のどちらにもならず、リーダーとしての責任を放棄しているタイプです。一方で自信やモチベーションが高く、業務への習熟度も高いベテラン社員が多い組織では有効で、仕事への細かな指示や管理をしなくても円滑に組織運営ができます。また捉え方によってはリーダーらしさがないため、メンバーが自由な発想で働きやすく、メンバー次第では高い効果を発揮するでしょう。M4型ではリーダーからメンバーへのアプローチよりも、メンバーから積極的にアプローチやコミュニケーションを取れる場合に、チームワークを発揮できます。

リーダーシップに求められる主な行動

リーダーシップを持つ人材には、リーダーとして必要とされる行動があります。以下で詳しく解説します。

明確な目標を示す

リーダーシップに求められる行動としては、メンバーに向けて組織としての方針や目標を示すという行動がわかりやすいでしょう。組織の抱える経営課題や業務課題を理解し、解決に向けてどのような行動が必要か、明確なビジョンを提案できれば、メンバーからの共感も得やすくなります。また、目標を提案できれば、目標を達成するために職場でできること、環境づくり、業務の効率化など、変化すべきポイントが明確化できます。リーダーとして明確な目標を示せば、メンバーも「この人なら信頼できる」という前向きな気持ちで進んでいけるでしょう。

円滑にコミュニケーションをとる

リーダーシップのある行動には、メンバーとの円滑なコミュニケーションをとるという点も挙げられます。コミュニケーションとは単に声を掛けるだけでなく、メンバーの気持ちを理解しようと寄り添う姿勢、相手の話しを傾聴する力も必要です。また、リーダーはメンバーの声に耳を傾けることで、組織として取り組む課題も見えてくることがあるため、積極的にコミュニケーションを取ることが重要です。そして、自分の担当する部署だけでなく、他部署とも連携し、協力体制を作っていくこともリーダーの役割と言えます。

発想力がある

リーダーシップとは、人を導いていくことだけでなく、組織として達成すべきビジョン、進む方向性を提示することも含まれます。そして、メンバーに向けて目標やビジョン、方向性を提案するには、新たなアイディアを生み出す発想力、想像力が欠かせません。
ただし、目標やビジョンを提案する際は、「頑張れば達成できる」という内容を提案することがポイントです。夢物語のような内容を提案しても、現実感のなさでメンバーのモチベーション低下を招いてしまうからです。

精神的に安定している

どれほど優秀なリーダーであっても、日によって気分が浮き沈みしやすく、メンバーとの接し方や言っていることが二転三転するようでは、信頼関係を構築することはできません。
安定したリーダーシップを発揮するために、どのような状況でも安定した精神状態を維持すること、自分や組織に対する批判も冷静に受け止められる度量が必要です。リーダーの役割はメンバーを率いるだけでなく、後継者を育成するというものもあります。常に安定した精神状態を保つことで、リーダーとして余裕のある態度を見せることができ、後継者にも良い影響を与えられるでしょう。

誠実である

リーダーであること以前に、人として不誠実なタイプの人はリーダーになるべきではありません。リーダーはメンバーを導く立場であり、責任ある立場です。そのため、嘘をつかないこと、言ったことはきちんとこなすこと、約束を守ることなど、人の模範となる誠実さが求められます。また、いざという時はメンバーの行動に責任を持ち、自分の失敗でなくても頭を下げる必要もあります。誠実なリーダーであれば、メンバーからも高い信頼を得られるでしょう。

決断力がある

リーダーは最終的な意思決定権を持っているケースも多く、いくつもある選択肢の中からより良いものを選ぶ決断力も必要です。例えば、メンバーから色々なアイディアが出たとしても、その中から最も良いと考えるものを1つ選ばなければならない場面もあるでしょう。
また、メンバー全員が納得できない結果であっても、リーダーとして決断を迫られることもあります。決断力のあるリーダーはメンバーからの強い信頼を得られるはずです。

微細な変化に気づく観察力がある

リーダーは業務の円滑な遂行のため、日々メンバーの細かな変化にも気付ける観察力が必要です。メンバーに色々な人がおり、仕事へのモチベーションや持っているスキル、性格も様々です。その日の体調や仕事上でのミス、環境の変化などでメンバーの表情やパフォーマンスはわずかに変わります。そうした細かな変化にもすぐに気づき、必要に応じて声掛けを行えるリーダーは、メンバーのモチベーションを高め、業務を円滑に進められます。リーダーとして、メンバー一人ひとりを気に掛け、それぞれの特性に合わせた関わり方を大切にしてください。

リーダーシップのある人材を育成する方法

組織をけん引するリーダーシップを持つ人材の育成には、主に2つの方法があります。以下で解説します。

的確な決断力を身につけさせる

リーダーの立場になると、組織やチームの最終決定権を持つことになります。
リーダーは常に複数の選択肢の中から、企業の利益になることやメンバーの成長、チームの成果に繋がる選択をしなければなりません。
そして、決断をする以上はそれぞれのメリットとデメリットを分析し、どちらが有益になるかという決断を下すべきです。自分で重要な決断をした経験が少ない人は、選択した結果、何が生じるか予測できていないケースが多々あります。リーダーシップのある人材を育成するには、リーダーとして決断する際、何を重視すべきか、決断の基準は何かなどを明確にすることが重要です。リーダーシップを育成する際は、多くの経験を積ませると共に、決断する基準を持たせることを意識させましょう。

研修を行う

リーダーシップのある人材を育成するには、ただ業務をこなすだけでは足りません。どの企業でも行っていることですが、リーダーに必要な資質を理解してもらうためにも、リーダー研修を行うべきです。座学やワークショップのような研修を行い、リーダーに必要な知識のインプットを進めましょう。ただし、ただ詰め込めばリーダーシップが磨けるわけではなく、インプットした知識を現場でアウトプットしなければ意味がありません。そして、実践を通して学んだことを振り返り、その中で反省と改善案を考え、再び実践して身に付けていくサイクルを作ることが重要です。リーダーシップ研修を受けて終了ではなく、実践と振り返りまでを1セットとして、リーダーシップを磨く環境を作りましょう。

日常的に意思決定を繰り返す

リーダーシップを発揮するためには、意思決定する力と自ら実行する力が重要です。リーダーはメンバーを引っ張っていくために、重要な意思決定をする決断力が必須です。決断力を高めるには、日常的に意思決定を繰り返すことで、決断力を高めておくことに大きな意味があります。その決断が成功か失敗かを問わず、自ら実行することが大切な経験になります。成功したのならそのまま継続すればよいですが、失敗した場合は何が原因なのか分析すべきです。そして、分析した結果が自分の経験になり、将来的にリーダーとなる時にも役立ちます。また、意思決定する際は、自分だけでなく「チームにとって良いかどうか」を考えて意思決定すれば、危機管理能力やマネジメント能力も鍛えられます。

個々人にリーダーシップ行動を促す

リーダーシップを磨くには、組織やチームに所属する個々人がリーダーシップのある行動を取ることが重要です。ただし、いきなりリーダーシップを取るように促しても、簡単に実行することはできません。例えば、月に1回程度チーム内でカンファレンスを行い、毎回違うメンバーに決定権を持たせ、リーダーシップを促してみる方法があります。メンバーの中には率先してリーダーシップを取る人もいれば、他のメンバーに同調し、調和を重視する人もいます。しかし、一部の人だけがリーダーシップを発揮しても、他のメンバーの成長には繋がりません。最初は強制的にでもリーダーを指名し、そこからそれぞれが自分の考えるリーダーシップを発揮できる仕組み作りをしていくことが重要です。

ポジティブ思考を身に付ける

ビジネスにおいて、リーダーは色々な事態を予測して、良い結果も悪い結果も両方を想定しなければなりません。ですが、リーダーシップのある人材を育成するには、ポジティブ思考を身に付けてもらうことが重要です。なぜなら、ポジティブな思考は行動するエネルギーとなり、リーダーとしての成長を促してくれるからです。また、リーダーがネガティブ思考では組織運営が停滞し、組織とメンバーの成長になりません。逆に、ポジティブ思考のリーダーなら組織が成長しやすいだけでなく、メンバー同士が活発な意見交換を行い、新たなアイディアも創造されるでしょう。そのため、次世代のリーダーを育成するなら、ポジティブ思考を身に付けるように教育することが大切です。

まとめ

リーダーシップは、メンバーやチームを統率し、目標に向けて導く能力です。リーダーシップを持つ人材には、メンバーに向かうべき目標を示し、組織全体で円滑なコミュニケーションを取る能力が求められます。

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