マネジメントとは?意味や仕事内容、必要なスキルなどについて

マネジメントとは

マネジメント(management)とは、「経営」や「管理」の意味があります。企業におけるマネジメントとは「経営管理」や「組織運営」を指し、組織の成果向上のために経営資源を活用し、リスク管理をして効果を最適化することです。

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P.F.ドラッカーによる定義

P.F.ドラッカーは1909年にオーストリアのウィーンで生まれ、現代のマネジメントの基礎となる理論を提唱した人物です。
ドラッカーはマネジメントについて、著書「マネジメント【エッセンシャル版】基本と原則」で次のように定義しました。

「組織をして高度の成果をあげさせることが、自由と尊厳を守る唯一の方策である。組織に成果をあげさせるものがマネジメントであり、マネジャーの力である。成果をあげる責任あるマネジメントこそが全体主義に代わるものであり、われわれを全体主義から守る唯一の手立てである。」

上記の内容から、マネジメントとは「組織に成果をあげさせるもの」であり、同時に全体主義から自由と尊厳を守るための方策であると定義していることがわかります。
ドラッカーがマネジメントについてこのように定義した背景には、当時のドイツが全体主義に大きく傾いていたことが関係しています。
全体主義の閉塞感を打破し、組織が成果をあげるにはマネジメントが必須であり、組織に所属する人々が自由で、自律的に働くことで個々の能力を最大化できると考えたからです。

マネジメントの必要性

マネジメントが必要になる理由は、企業や組織が継続的に成長していくためです。企業は定期的に目標を設定し、それを達成するためにマネジメントを活用します。組織として成長するためには、内部で働く人材に活躍してもらい、一人ひとりに成長してもらうことが重要です。マネジメントでは人材育成の視点も重要とされており、社員の個別性にフォーカスした人材育成も必要といわれています。日本においては生産年齢人口が減少し、労働力不足が深刻化しています。労働力不足を解決するには、組織としてのあり方や働き方改革、社員の成長が不可欠です。そのためマネジメントは単に業務を管理して効率化を図るだけのものではなく、組織に貢献する人材を育てるという点でも重要性が増しています。

マネジャーとリーダーの違い

マネージャーとリーダーの違いは、組織としての成果に責任を持つか、組織・チームが目指すべき方向性を示すかどうかにあります。アメリカの経営学者であるドラッカーによると、マネージャーは「組織の成果に責任を持つ人物」とされています。この定義に当てはめると、マネージャーは企業の一部門だけでなく、組織全体の目標を設定し、人材の育成まで幅広く責任を持つのが役割といえるでしょう。
一方、リーダーはチームや組織の先頭に立ち、人を率いて目指すべき方向性を示すのが主な役割です。リーダーの役割は組織やチームが良い形で回り、業務効率化や生産性向上につなげることにあります。
例えば、企業として10年後に達成したいビジョンを設定し、社員全員が同じ目標に向かうよう働きかけるのがリーダーの存在意義です。そのため、リーダーが目標や組織の方針を示し、マネージャーはリーダーの示す方向性へ向かうために、組織全体を導いていくのが具体的な違いです。注意すべきなのは、リーダーもマネージャーも間違えることがある点です。
リーダーの示した方向性を誤って理解し、マネージャーが間違った方向に組織を導くこともあります。逆にリーダーの方針が間違っており、組織全体が疲弊してしまうこともあるでしょう。リーダーとマネージャーの違いを正しく認識し、それぞれの役割に合わせた働きをすることが大切です。

マネジメント能力とリーダーシップの違い

マネジメント能力とリーダーシップはどちらもマネジャーに求められる能力ですが、発揮する範囲や対象に違いがあります。リーダーシップとは目標達成に向けてメンバーを統率する能力で、「人」に対して用います。マネジメントは「人」に限らず、資源・資金・施設・商品といったビジネスに必要なあらゆるものを幅広く管理する能力です。

マネジメントの役割

マネジメントの重要な役割は3つあります。

・組織としての目標・ミッションの達成
・組織内の人材育成
・社会への貢献

マネジメントの基本となる目標は、組織としての目標・ミッションを全体に浸透させ、達成に向けて課題を解決していくことです。組織の発展において、マネジメントで意識すべき役割です。また組織内の人材育成を進め、社員一人ひとりが活躍できる場を提供し、自己実現やキャリアアップを目指せる環境を作る必要もあります。企業が継続的に成長していくには、ベテラン社員だけでなく、若手や中堅にも適した地位や役割を与えることが大切です。
そして、近年重視されているのが社会貢献の意識です。企業として社会課題にどう貢献できるのか、自社が求められている役割を社員すべてに理解してもらう必要があります。

マネジメントの業務内容

マネジメントには、目標設定、人材の育成や指導、評価といった業務があります。業務内容について解説します。

動機付け・目標設定

組織として明確な目標を設定します。目標設定のために何をすべきか、どうすればうまくいくかといった方向性を示し、社内に周知して浸透させます。立てた目標に対してモチベーションを維持するための、動機付けをはかることも重要です。動機付けは金銭的報酬を用意するほか、やりがい・社会貢献といった非金銭的報酬も欠かせません。

人材の育成や指導

部下の能力を引き出すための、人材の育成や指導も必要です。能力を最大限発揮できるようにサポートや指導を行います。研修や通信教育、外部の勉強会の活用も有効です。ステップアップした将来を見据えて、計画的な育成や指導を行いましょう。人材育成に成功すれば、1人ひとりの生産性が向上するため、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

評価とフィードバック

仕事ぶりや成果について、査定基準をもとに評価とフィードバックを行います。がんばっていることを評価として認められると、従業員の意欲は向上します。よかった点、課題、改善点などを共有しましょう。評価とフィードバックが機能しないと、従業員に不満が溜まり、生産性低下につながる恐れがあります。

進捗管理

進捗管理は、目標達成や期限を守るために必要です。日別、週別、月別に業務の進捗度合いを管理し、必要に応じて業務のフォローやサポートをします。進捗が予定通りの場合は、さらに向上できるよう指導や声かけを行い、不調の場合には原因を洗い出して改善を促します。個々の状況把握により、組織全体の課題解決につなげます。

マネジメントに求められるスキル

マネジメントにはさまざまなが求められます。ここでは、代表的な4つのスキルについて解説します。

意思決定能力

重要な局面において判断や決断が必要になるため、意思決定能力が重要です。反対意見が出て、同意が得られないことは珍しくありません。意思決定や決断のためには、日頃から問題を理解し、根拠を持って決断できるよう状況を把握しておく必要があります。判断のぶれは部下に不信感を与えるため、慎重さも求められます。

コミュニケーション能力

部下との意思疎通や信頼関係の構築のために、コミュニケーション能力が必要不可欠です。コミュニケーション能力に長けている人は、部下の抱える不安や不満のヒアリングや、ふとした会話から部下の能力を引き出すことが可能です。上手にコミュニケーションを行うことで、相談や報告をしやすい良好な関係を築きましょう。

管理能力

管理能力は、目標に対する進捗や、状況を把握し分析する能力です。数値管理だけでなく、人員についての管理も行います。組織を適切に機能させるためには、優先順位を決めてください。適切な組織構成や業務の振り分けを行い、部下の強みを発揮できる環境を整えて業務の質を高めることが重要です。状況に応じて調整や改善を適宜実施しましょう。

分析能力

業務上の問題が生じた場合には、課題を正しく抽出し、把握する分析能力が必要です。経験や勘だけに頼っていては、組織を誤った方向に導く可能性があります。解決のためには、客観的な視点と分析が必要です。PDCAサイクルを回し、データ活用により検証し、成果を最大化しましょう。

※関連リンク:マネジメント能力とは?

「階層別マネジメント」と種類

マネジメントは組織の階層別に3つの種類があります。ここでは、マネジメントの種類について解説します。

トップマネジメント

トップマネジメントは企業・組織における役員のような最上位の個人、または経営層を指します。役割は経営方針の決定、戦略の立案・実行、組織全体の管理などを行うことです。トップマネジメントにおいて重要なことは、次のポイントを明確にすることです。

・事業の方向性を組織全体に浸透させる
・目標に向けて組織体制を構築する
・将来考えうるリスクを予測して対処する
・中長期的な事業の展望や構造を明確にする

トップマネジメントでは、経営層の意向で組織全体が動くことになるため、リターンとリスクを常に考えた管理が重要です。また経営層以下の管理職や一般社員に対しても、組織がどのような展望・将来像を思い描いているか、わかりやすく伝える必要があります。

ミドルマネジメント

ミドルマネジメントとは、経営層以外の管理職を意味します。組織の役職としては、部長・課長といった経営層以外の役職についている人を指します。ミドルマネジメントの役割は次の通りです。

・トップマネジメントのサポート
・ロワーマネジメントの指揮
・各マネジメント層同士の調整役
・プレイングマネジャーとしての働き
・部署間の連携

ミドルマネジメントにおいて重要なことは、トップマネジメントの意思や決定を理解し、現場レベルで実現を目指すことです。ロワーマネジメントとともに現場で働いているからこそ、トップマネジメントには見えない課題にいち早く察知し、必要に応じた対応ができます。現場レベルでの対応が難しい場合は、トップマネジメントとも協力しながら解決策を検討するのがミドルマネジメントの役割です。

ロワーマネジメント

ロワーマネジメントは、現場で働く社員のまとめ役のことです。組織にもよりますが、係長以下の主任、現場監督、プロジェクトリーダーなどがロワーマネジメントにあたります。ミドルマネジメントの決定した目標や指針を元に、現場で社員の指揮や業務・タスク管理などのマネジメントを行うのが役割です。現場レベルでの意思決定権を持っており、リーダーとして1つの目標に向けて動くことになります。トップマネジメントやミドルマネジメントに比べ、マネジメントスキルよりも実務的な能力が求められる点が大きな違いです。ロワーマネジメントは現場の生産性向上や業務効率改善に関与することが多く、職場環境・人間関係を良好に保ちつつ、現場が円滑に動けるよう立ち回ることを求められるでしょう。

「業務別マネジメント」と種類

業務別マネジメントとは、従事する業務内容によってマネジメント手法を変えることです。
業務別マネジメントには次の3種類があります。

・組織運営
・人材管理
・メンタルヘルス

3つのマネジメント手法について、それぞれ解説します。

組織運営

組織運営におけるマネジメント手法には、次の3種類があります。

・チームマネジメント
・プロジェクトマネジメント
・ナレッジマネジメント

チームマネジメントは、主に中堅以上の社員が行うマネジメントです。
部下や後輩、チームメンバーを育成し、コミュニケーションの円滑化・生産性の向上などを目指します。
プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを成功させるために最適化されたマネジメントです。計画立案・目標設定・進捗管理・人員管理まで、幅広くマネジメントを行います。
ナレッジマネジメントは、属人化しやすい業務スキル・経験に基づくノウハウ・情報などを組織内で共有するマネジメントです。若手からベテランまで組織全体のスキルを底上げし、パフォーマンスの向上に役立ちます。

人材管理

人材管理におけるマネジメント手法には、次の3種類があります。

・タレントマネジメント
・モチベーションマネジメント
・パフォーマンスマネジメント

タレントマネジメントは近年注目を浴びるマネジメント手法の1つで、社員の持つスキルやパフォーマンスを把握し、最適な人材配置・育成を行うことを目的にしています。社員のモチベーションアップにつながるとされ、業務効率化に貢献するマネジメント手法です。モチベーションマネジメントは社員のモチベーションの源を追求し、外発的・内発的動機付けを支援するマネジメント手法です。社員が自発的に考え、成果を出すための行動を促す効果があるとされています。パフォーマンスマネジメントは、上司とのフィードバックを通して社員のスキルとモチベーションを高め、生産性の向上を目指すマネジメント手法です。

メンタルヘルス

メンタルヘルスにおけるマネジメント手法には、次の3種類があります。

・メンタルヘルスマネジメント
・ストレスマネジメント
・アンガーマネジメント

メンタルヘルスマネジメントは、社員の心の健康を把握し、セルフケア技術を身に付けられるように支援するマネジメント手法です。職場環境がメンタルヘルスに及ぼす影響が注目されており、メンタルヘルスマネジメントも注目を浴びています。
ストレスマネジメントは職場でのストレスに着目し、社員がストレスをコントロールする技術を身に付けてもらうことを重視しています。社員の心身の健康を維持することで、業務でのパフォーマンス向上を目指すマネジメント手法です。
アンガーマネジメントは怒りの感情をコントロールする技術を学ぶマネジメント手法です。上司の言動への怒り、部下の態度への怒り、顧客からぶつけられた理不尽な言葉への怒りなどをうまく整理することを目指します。
感情的な行動をとらず、自分自身を客観視する技術が身に付くマネジメント方法です。

まとめ

マネジメントとは経営管理のことで、企業の発展に欠かせません。適切に機能すれば自社の目標達成や働く人の自己実現のサポート、社会貢献につながります。マネジメントには意思決定能力・管理能力などが求められるため、スキルや知識の習得が有効です。

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