off-jtとは? OJTとの違いやメリット、デメリットを解説

  • 公開日:2023.06.07

    更新日:2023.06.07

    人材育成の場でよく耳にするoff-jtですが、具体的な内容や特徴、必要性を理解できていない人は少なくありません。この記事では、off-jtの基本や必要性、OJTとの使い分け、メリット・デメリットなどを解説しています。自社の人材育成に活用したいと考えている人は、参考にしてください。

off-jtとは?

off-jtとはどのようなものでしょうか。定義や種類、OJTとの相違点について解説します。

off-jtの定義

off-jtとは、「Off The Job Training」を略した言葉です。日本語に訳すと「職場外での訓練」となります。職場から離れ、研修やセミナーの形式で外部から講師を招いたり、通信教育やe-ラーニングを利用したりして実施します。講師は上司以外が務め、座学で理論を学習したり、ロールプレイングのような実践を想定した内容を学んだりします。

off-jtの種類

off-jtには、1か所に集合して実施する「集合型研修」と、パソコンやタブレットを通して受講する「e-ラーニング(非対面型)」があります。集合型研修は大人数を対象に、会場もしくはWeb会議ツールを通じて実施する研修です。研修の目的を定めて、それに適した従業員に対して行います。

階層や業務内容ごとに分けて実施されるケースが多いでしょう。たとえば、階層別では新入社員向けに実施される「ビジネスマナー研修」や「コンプライアンス研修」、中堅の従業員向けに実施される「キャリアデザイン研修」や「次世代リーダー育成研修」、管理職向けに実施される「マネジメント研修」や「コーチング・フィードバック研修」などがあります。

業務内容別では、「経理・財務・法務研修」や「語学研修」、「クリエイティブ研修」などが挙げられます。また、ビジネススキルに関する研修として、「コミュニケーション研修」や「メンタルヘルス研修」などを実施する企業も増加しているようです。e-ラーニングでは移動時間や隙間時間にも学べるため、手軽に受講できるでしょう。

OJTとの相違点

OJTとは「On The Job Training」を略した言葉で、off-jtと同様に人材育成の現場で使われる言葉です。上司や先輩から、実際の仕事を進めながら業務内容について教わります。今後日常的に行う業務について、実際に対応しながらアドバイスをもらい、その後に活かしていきます。

off-jtでは座学によって一般的に業務全般に求められる汎用性の高い知識を得られ、OJTではとある業務についてのノウハウを実践的に学べます。また、off-jtでは職場外で実施するのに対し、OJTは職場内で個別指導として実施することも異なります。

期間はoff-jtは1日~数日間と短期間に実施されるケースが多く、OJTは将来的な成長に向けて数日間~数か月と中長期的かつ継続的に実施されるケースが多くなっています。OJTでは、受講者の理解度によって期間が変更されることも少なくありません。OJTについては、以下の記事を参考にしてください。
※参考:OJTとは?(https://www.u-can.co.jp/houjin/column/cl001.html

off-jtの必要性

off-jtが必要な理由は、以下の3つです。

  • ・業務と指導の両立は難しい
  • ・業務に関する基礎的な知識を学べる
  • ・専門的な知識を習得できる

それぞれについて解説します。

業務と指導の両立は難しい

OJTは費用がかからず業務から離れる必要がないため、実施する企業が多くなっています。ただし、OJTのみを実施する場合、上司や先輩がすべての人材育成を実施しなければなりません。日常の忙しい業務と指導を並行することになり、現場にとって大きな負担となります。負担の大きさによっては、業務と指導のどちらとも集中を欠いてしまうこともあるでしょう。

また、全ての上司や先輩が指導のスキルを有しているとは限りません。教える人の考え方や力量に左右されやすく、OJTを受けても十分に習得できないケースも想定されます。off-jtで事前に基礎的な教育を終えておくことで現場の負担を減らせるため、導入する企業が増加しています。

業務に関する基礎的な知識を学べる

日々の業務が忙しいほど、従業員が成長するための機会を設けることが難しいという実情があります。off-jtであれば業務時間内に職場外で実施するため、業務のことを考えることなく集中して受講できるでしょう。集中力が高まることで、短期間で基礎的な知識の習得が可能になります。

業務が忙しかったり、費用を負担に感じたり、家事や育児との余裕がなかったりする従業員の成長を促せる貴重な機会となります。また、企業側から率先してコストを負担し成長の機会を用意することで、従業員のモチベーション向上にも繋がりやすいでしょう。

専門的な知識を習得できる

off-jtは業務に関する基礎的な知識を学ぶものが一般的ですが、階層別や目的別、職能別に実施することで専門的な知識を習得することも可能です。専門的な知識であるほど、業務内で都度習得するよりもoff-jtで集中的に学ぶほうが適しています。

専門的な知識やノウハウを有する従業員は、企業にとって重要性が高い人材です。知識やノウハウを持つ従業員の退職や引退を経験して業務への支障を体感し、継承を課題に掲げる企業は多くあります。off-jtを継続的に実施することで、専門性の高い人材の育成が狙えます。

OJTとの使い分け

off-jtとOJTの使い分けは、以下の3つを意識しましょう。

  • ・off-jtはインプットに向いている
  • ・OJTはアウトプットに向いている
  • ・どちらかでなく、組み合わせることが重要

それぞれについて解説します。

off-jtはインプットに向いている

off-jtとOJTは役割が異なります。off-jtは座学が中心であり、基礎的な知識または専門的な知識のインプットに効果的とされます。業務に向かううえで習得しておくべき知識について、学習できるでしょう。

OJTはアウトプットに向いている

OJTは実際の業務を通じて習得するため、off-jtよりも実践的です。実践のなかで実務で役立つスキルを身に付けられます。off-jtで基礎的な知識を得たのち、OJTで実践を通して技能を習得すると効率的です。

どちらかでなく、組み合わせることが重要

業界によってoff-jtとOJTのどちらを重視するか分かれますが、どちらかだけを実施すればいい訳ではありません。OJTで関わる現場の上司や先輩に、研修やセミナーの内容をあらかじめ共有しておきましょう。off-jtで学んだ知識を実際の業務に活用することが重要です。

off-jtのメリット

off-jtのおもなメリットは、以下の3つです。

  • ・対象の従業員全体で知識を習得できる
  • ・従業員同士の繋がりが増加する
  • ・業務に左右されずに学習できる

それぞれについて解説します。

対象の従業員全体で知識を習得できる

off-jtでは研修やセミナーによって、対象の従業員をまとめて指導できます。入社したばかりの従業員でも、順序立てて学ぶことで一定の知識やノウハウを身に付けられるでしょう。研修の目的や内容をを適切に選ぶことで、従業員全体の知識やノウハウをばらつきなく、底上げできます。OJTの場合、成長度は上司や先輩の育成スキルに左右されやすくなります。

従業員同士の繋がりが増加する

off-jtの研修やセミナーは、1度にまとまった人数に実施することが一般的です。ワークショップやチームで作業をすると、参加した従業員同士の繋がりができやすくなります。階層ごとに実施した場合は近い世代が多く、交流を深めやすいでしょう。定期的に実施することで、企業の一体感を高める効果が期待できます。

業務に左右されずに学習できる

繁忙期のように業務が忙しければ忙しいほど、日常的に学習する時間を作るのは難しいものです。人手が足りていないと、現場での指導も難しいでしょう。off-jtであれば業務時間内に実施するため、学習の機会を確実に設けられます。

off-jtのデメリット

off-jtのおもなデメリットは、以下の3つです。

  • ・学ぶ内容が実務と異なることがある
  • ・参加者のモチベーションが低くなりやすい
  • ・業務が停止する

それぞれについて解説します。

学ぶ内容が実務と異なることがある

off-jtは座学が多く、業務で必要な知識や社会人としてのマナーを学ぶため、内容によっては現在の実務と関連性がない場合もあるでしょう。長期的な成長が目的になり、短期的な成長に繋がりにくいケースも見られます。効果が表れにくく、時間や予算を減らされる恐れもあります。長期的だけでなく、短期的にも成長できるという計画を示すことが大切です。

参加者のモチベーションが低くなりやすい

座学が中心であり、受講者がただ話を聞くだけになるケースがあります。ただ聞いているだけでは参加意識が薄くなってモチベーションや、学習効率が低下しやすいでしょう。ワークショップやチームでの作業などを含めた研修であれば、興味を強めモチベーションを上げられるでしょう。

業務が停止する

off-jtは一般的に、多くの人数を集め、業務時間内に実施します。そのため、参加している間は通常の業務が停止することもあります。off-jtを実施する際は、その時間に見合う成果が求められるでしょう。

off-jtの注意点

off-jtの注意点は、以下の2つです。

  • ・目的を明確にしよう
  • ・実施後が大切だと理解しよう

それぞれについて解説します。

目的を明確にしよう

ただoff-jtを受講するだけで終わりではありません。長期的な成果に繋げるには、実施する目的を明確にすることが重要です。受講する従業員に対し、業務で役立つ部分や位置付けを詳しく伝えると、目的意識を持てるようになるでしょう。研修の成果というゴールを明確に設定すると、振り返りやすくなります。

実施後が大切だと理解しよう

off-jtの成果を大きくするには、研修やセミナーのあとが大切です。研修やセミナーで見聞きした内容を、業務で実践する過程がないと身に付かないためです。上司や先輩がフィードバックできる体制を整え、効果を高めましょう。

off-jtをうまく活用するポイント

off-jtをうまく活用するポイントは、以下の2つです。

  • ・off-jtでの学びをOJTで実践するサイクルをつくる
  • ・SD(自己啓発)を促す仕組みをつくる

それぞれについて解説します。

off-jtでの学びをOJTで実践するサイクルをつくる

off-jtで知識を蓄えるだけでも、OJTでやみくもにトレーニングだけをしても、実際の業務で活用できなければ意味はありません。off-jtで知識を習得したうえでOJTで実践して、不足していると感じられた部分を再びoff-jtで補足していくサイクルをつくることが重要です。

短期的な視点で効果は得られにくいため、人事担当者が長期的な視点を持ち、進捗を追うようにしましょう。

SD(自己啓発)を促す仕組みをつくる

off-jtとOJTでは違いは多いものの、教わる場のため従業員は受け身になりやすいでしょう。しかし、成長の幅を大きくするには自発的な学びも重要です。

SD(自己啓発)を促すために業務に関する資格取得にかかる費用をサポートする仕組みを作ったり、学習スペースを用意したりすると、従業員の学びへのモチベーション向上に繋がります。企業としても、専門的な知識とスキルを持つ従業員を育成できるためメリットは大きいでしょう。

off-jtの取り組み事例

総合商社Aの事例

総合商社Aでは、off-jtとOJTの両方を活用した人材育成を実施しています。階層別の研修を実施しており、おもな目的は自社の事業精神の浸透です。当該企業はは国際的な企業です。off-jtは成長の場であることはもちろん、各国で仕事をする従業員の交流の場にもなっています。

グループ会社に教育専門の子会社を持ち、年間約250ものoff-jt研修を開催しており、それぞれのフィールドで求められる知識やスキルを学べる環境を構築しています。また、グローバル人材開発センターを施設を設置し、グローバル人材育成の強化と多様な人材の活躍促進に取り組んでいます。

大手ファストフードチェーンB

大手ファストフードチェーンBは、明確なピープルビジョンとピープルプロミスを掲げています。ピープルビジョンは「世界中どの街でも、ベストな雇用主となる」というもので、ピープルプロミスは「従業員の皆さんとその成長および貢献を、価値のあるものとして大切にします」というものです。

そのためのoff-jtとして特徴的なのは社内にビジネスカレッジを設け、全従業員に企業ビジョンを正しく伝えることで各店舗でのオペレーションの最大化が得られるための人材を育成することを役割として、階層や役職に応じたカリキュラムをWebやDVDなどで提供しています。

まとめ

off-jtとは、職場から離れた場所で、研修やセミナーの形式で実施される指導方法です。実際の業務のなかで上司や先輩から教わるOJTと組み合わせることで、知識やスキルの習得と実践を繰り返し長期的な成長が期待できます。

ユーキャンの法人向け人材教育サービスでは、法人取引実績5,000社以上を誇り、丁寧なヒアリングで課題を抽出し、その法人にフィットする提案をしています。off-jtを取り入れて人材育成に力を入れたいと考えている企業は、60年以上の歴史があるユーキャンの講座を検討してはいかがでしょうか。

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