金融教育とは? 必修化の理由や実施方法、社会人に行う重要性も解説

  • 公開日:2022.10.24

    更新日:2023.01.05

    2022年4月から、高校3年生の家庭科において金融教育の授業が行われるようになりました。また、成人年齢の18歳への引き下げも相まって、金融教育への注目度が高まっています。この記事では、子どもだけではなく、社会人にも求められる金融教育について解説をしています。金融教育の基礎を知りたい場合や、研修を行う際などに役立ててください。

金融教育とは?

金融教育とは、具体的に何を指すのでしょうか。金融教育の定義と大切な理由、始めるべきタイミングについて解説します。

金融教育の定義

金融教育とは、お金についての教育ですが、お金や金融商品のみが対象というわけではありません。金融に関する広報活動を行う金融広報中央委員会では、金融教育を「お金や金融のさまざまな働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活やよりいい社会づくりに向けて、主体的に行動できる態度を養う教育」と定義しています。

金融教育が大切な理由

社会の中で生きる力として、お金に対する正しい知識や判断力(金融リテラシー)が必要です。世の中のお金の仕組みや金融商品、お金の使い方や運用、管理に関して知ることが、安定した生活につながります。金融教育を受けていないと、リスクを理解しないまま投機的な金融商品に手を出したり、金利の高いローンを組んだりするなど、損失を招きやすくなるでしょう。

金融教育を始めるべきタイミング

金融教育を始めるべきタイミングは、早いほどいいとされています。子どもの性格にもよりますが、お金の使い方によくない習慣がつく前がいいでしょう。また、子どもだけではなく大人も、税金や資産形成などライフステージに応じた知識が必要になるため、年齢に応じた内容の金融教育を受けることが大切です。

高校で金融教育が必修になった要因

なぜ高校で、金融教育が必修となったのでしょうか。おもな要因を4つ解説します。

成人年齢の18歳への引き下げ

2022年(令和4年)4月より、20歳から18歳へと成人年齢が引き下げられました。18歳になれば、親権者の同意がなくてもクレジットカードが作れたり、銀行口座を開設したりできるようになりました。これまでより早いタイミングで金融教育を受けて、お金にまつわるトラブルを未然に防ぐことが重要です。

日本の金融教育の遅れ

2019年(平成31年)、現状把握のために「金融リテラシー調査」が行われました。この調査によって、日本は欧米に比べて、金融教育が遅れていると明らかになっています。また、米国FINRA(金融業界監督機構)や、OECD/INFE等の海外機関が国民に行なった共通問題の正答率において、日本は60%でした。この数字は、イギリス(63%)・ドイツ(67%)・フランス(72%)と比べ低くなっています。

晩年の資金不足への対策

日本では少子高齢化の進行により、公的年金の財政状況が徐々に悪化しています。退職金の額は減少傾向で、決まった額を運用したものを受け取る、確定拠出年金への移行が進んでいます。そのため、年金だけでは老後の生活資金は足りない可能性が高いとされており、金融教育で知識を深め、自分で資産形成する必要があります。

金融教育へのニーズの上昇

2022年の「金融リテラシー調査」では、71.8%が学校で金融教育を「行うべき」と回答しています。金融教育を受けていない人の大部分が賛成していることからも、この数字は金融教育に対するニーズの表れといえるでしょう。金融教育を受けた人のほうが金融リテラシーの正誤問題の正答率が高く、他の金融機関や商品と比較するなど、望ましい金融行動をとる割合も高いため、金融教育は重要です。

学校の金融教育で学ぶ範囲

学校の金融教育ではどのような内容を学ぶのでしょうか。4つの分野を解説します。

生活設計・家計管理

生活設計・家計管理の分野で学ぶ範囲は、以下のとおりです。
・資産管理と意思決定
使える資源には限りがあり、そのなかで生活する意義を理解し実践できるようにする
・貯蓄の意義と資産運用
なぜ貯蓄が必要であるかを理解して、貯蓄の習慣を身につけ、金融商品の基本について理解する
・生活設計
ローンや年金、社会保障制度を理解する
・事故・災害・病気などへの備え
日常生活の危険から身の安全を確保できるようにする

金融や経済の仕組み

金融や経済の仕組みの分野で学ぶ範囲は、以下のとおりです。
・お金や金融の動き
金利、金融機関や中央銀行の役割、キャッシュレスについて理解する
・経済把握
お金や人・モノの流れ、市場経済の意義を理解する
・経済変動と経済政策
政府や中央銀行の役割、景気・物価・金利・株価等の関係を理解する
・経済社会の諸課題
経済社会が抱える問題や解決策を理解する

消費生活・金融トラブル防止

社会経験が多くない時期の金融トラブルを避けるために大切な、消費生活・金融トラブル防止の分野で学ぶ範囲は以下のとおりです。
・自立した消費者
契約の意味や重要性、消費者保護、消費に関する情報収集の基礎知識を身につける
・金融トラブル・多重債務
金融トラブルの事例や対処・相談方法、多重債務問題を理解する

キャリア教育

キャリア教育の分野で学ぶ範囲は、以下のとおりです。
・働く意義と職業選択
職業選択や労働条件といった働き方や生き方への理解を深める
・生きる意欲と活力
将来の夢の実現、企業の経営努力の必要性などを理解する
・社会への感謝と貢献
社会でのルール遵守や協力の意義を理解する

金融教育の実施方法

金融教育の授業は、先生が話すだけではありません。興味と理解を深めるために使用されているツールについて解説します。

動画やデジタル教材の活用

コロナ禍で動画・デジタル教材が積極的に活用されるようになり、学生にとって親しみのあるものとなっています。金融教育においても、金融庁や民間金融機関の業界団体、企業が作成した動画や、デジタル教材を利用可能です。インターネット上で公開されているため、ダウンロードすることで手軽に学べます。

ゲームの活用

ゲーム機やスマートフォンなどの影響で、現代の子どもの多くはゲームに興味を持っています。ゲームであれば、小学生でも積極的に取り組めるでしょう。経営者が借り入れと投資をしながら企業を発展させるゲームなど、無料でできるゲームを活用することで、楽しみながら学べます。

金融庁のツールの活用

金融庁は、授業で使える教材を無料で配布しています。PDFやパワーポイント、動画など、さまざまな形式があり、インターネット上でダウンロードできます。資産形成、借金、家計管理、ライフプランのスマートフォンシミュレーターもついているため、年齢に合わせた学習ができるでしょう。

ニーズが高まる社会人への金融教育

学校での金融教育が本格的に始まり、大人も知識を身につけておく必要があります。大人に金融についての十分な知識がなければ、家庭で子どもに教えることはできません。また、社会人への金融教育も、社員に対し金融教育の研修を行う企業が増加するなど、ニーズが高まっています。大人が家計全体を管理できる力を身につけ、人生を通して経済計画を養っておくことは、人生をよりよくするために重要です。

まとめ

2022年4月から高校生への金融教育が義務化され、大きな注目を集めています。成人年齢の引き下げや、老後の資金不足への不安もあり、子どもだけではなく、年齢に応じた金融教育へのニーズが高まっています。

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