成果主義とは?メリットデメリットや導入の失敗事例を紹介!

  • 成果主義とは?メリットデメリットや導入の失敗事例を紹介!

    公開日:2024.04.26

    更新日:2024.04.26

    成果主義とは社員が仕事で挙げた成果を評価し、それに応じて昇給・昇進などを決定する人事制度です。成果主義の導入によって人材の成長を促すほか、生産性やモチベーションの向上、チャレンジ意欲を高める効果が期待できます。本記事では成果主義の概要やメリット・デメリット、導入時のポイント、成功例・失敗例などを解説しています。

成果主義とは

成果主義とは、仕事で挙げた成果、成績によって昇給、昇格を決定する人事制度のことです。 戦後の経済復興期頃から日本で導入された年功序列制度とは違い、勤続年数や過去の働き、学歴、経験などに左右されず、会社の利益に貢献するほど昇進・昇給する仕組みです。元々は欧米で発展した考え方で、ダイバーシティが進むにつれて日本でも普及し始めました。

成果主義と年功序列の違い

成果主義と年功序列の大きな違いは、勤続年数や経験年数が昇進・昇給にあまり関係しないことです。年功序列制度は仕事での成果や成績とはあまり関係がなく、勤続年数と経験の豊富さで人事評価を行います。

長く1つの会社に尽くすほど待遇が良くなることから、安定した雇用を生み出しやすい点がメリットです。

しかし、年功序列は、成果を出していなくても、長く勤めるベテラン員であれば高く評価されることから、やや時代にそぐわない制度になりつつあります。その点、成果主義は会社に貢献するほど高く評価されるため、労働意欲やチャレンジ精神の高い若手社員のモチベーションアップに効果があります。

成果主義と能力主義の違い

成果主義に近い人事評価制度が能力主義です。しかし成果主義は仕事の成果に焦点を当て、能力主義は個人の能力に焦点を当てている点が大きな違いです。能力主義も個人の能力で挙げた成果は評価内容に入りますが、その人の持つ知識やノウハウ、資格などに評価の軸が置かれています。また成果主義は結果で評価するため、早い段階で昇進・昇給が期待できる点にも違いがあります。会社への貢献度によって昇進・昇給が決まるため、会社にとって利益になる人材は早期の出世も可能です。能力主義は成果だけでなく、社員の能力や経験などで判断するため、成果主義に比べると早期の出世は難しいでしょう。

成果主義の導入背景

日本では戦後の経済復興期頃から年功序列、終身雇用が導入されてきました。その流れが大きく変わったのはバブル崩壊です。戦後の高度経済成長を支えるためには、1つの会社で長く人材を雇用し、経済を安定させることが重視されていました。しかし、バブル崩壊後は多くの企業で業績が悪化し、年功序列による人件費の負担が拡大しました。そこで注目を集めるようになったのが成果主義です。1990年代は交通手段や通信手段が大きく発展し、人と情報の流通が活性化しました。さらに企業として人件費を削減するためには、優秀な人材をより多く雇うという考え方に移行しました。変化の激しい社会情勢の中で、働き方改革も進められ、終身雇用制度が崩壊したことも大きな転換点です。日本には派遣社員を含む非正規労働者が増え、正規労働者に比べると安い賃金と低い待遇で同じ業務をこなしています。雇用形態による待遇の違いを是正し、優秀な人材には正当な評価を行うことを重要視した結果が成果主義の導入です。企業経営を取り巻く社会環境や人々の意識の変化に伴い、成果主義を導入する企業は今後も増えていくでしょう。

成果主義のメリット

成果主義を導入するメリットは次のものがあります。

・人材育成・確保の効率化
・生産性の向上
・適正な評価制度の導入
・人件費負担の軽減

成果主義を効果的に運用するためにも、メリットを正しく理解しましょう。

人材育成・確保の効率化

成果主義を導入することで、人材育成と人材確保の効率化につながります。成果主義では昇進・昇給には成果を挙げる必要があり、成果を挙げるには社員のスキルアップが必要不可欠だからです。年功序列のように経験年数で評価されないため、社員自身の努力が必要になります。また、社員自身も自分の成長が成果につながり、将来的な評価が高まると理解すれば、前向きに仕事に取り組みやすくなります。一方で、年功序列を採用していると、成長意欲の高い人材や優秀な人材を逃す可能性が高いです。

生産性の向上

成果主義を導入すると、生産性の向上につながりやすい点もメリットです。昔ながらの年功序列制度では、勤続年数が長いほど高く評価され、昇進・昇給もベテラン社員が優先でした。しかし、年功序列の企業では若い社員のモチベーションが上がらず、ベテラン社員も生産性をあげる努力をする必要性は高まりません。その結果、生産性の低いベテラン社員が上司になり、若い社員にとっては正当な評価が得られず、不満につながりやすいという課題がありました。成果主義では勤続年数に関係なく、結果を残した人材や成果につながる人材ほど高く評価されます。自分の努力が正当に評価されやすいため、企業全体の生産性向上が期待できます。

適正な評価制度の導入

成果主義は社員の働きと成果を評価するため、適正な評価制度として機能する点もメリットです。年功序列の場合、どれだけ成果を出しても経験年数が壁になり、出世するのは難しいです。そのため、若い社員ほど働きに見合う評価がされていないと感じやすく、優秀な人材の流出につながります。成果主義は社員の出した成果に人事評価で応えるものであり、勤続年数が短くても昇進・昇給の壁にはなりません。また、年功序列のように人事担当者の主観や個人的な人間関係も介入しにくく、客観的な評価が実現しやすいです。社員にとっては努力が正当な形で報われるため、仕事へのモチベーションアップにもなります。

人件費の軽減

成果主義を導入する大きなメリットは、人件費を軽減できることです。従来の年功序列制度では、ベテラン社員は優先的に昇進・昇給され、勤続年数と役職に応じた賃金を支払う必要がありました。しかし、勤続年数が長くなるほど会社側の人件費負担が大きくなり、経営を圧迫する点が問題でした。また、能力や意欲の低いベテラン社員にも高い賃金が発生するため、生産性と人件費のバランスが崩れやすい点も問題です。

成果主義の場合は、成果を出せる人材が昇進・昇給するため、人件費の適正化が図れます。 人件費を軽減しつつ、生産性を高める効果があり、組織全体の生産性を高められます。

成果主義のデメリット

成果主義のデメリットには次のものがあります。

・モチベーション低下を招く
・個人主義になりやすい
・コンプライアンス違反が起こりやすい
・評価項目以外が疎かになる

導入時には、デメリットを理解したうえで、対策を立てることが大切です。

モチベーション低下を招く

成果主義のデメリット1つ目は、社員のモチベーション低下を招く点です。成果主義は社員を成果で評価し、生産性を高めることが目的の1つです。しかしすべての社員が成果を挙げられるとは限らず、すぐに成果を出せない社員も一定数います。社員なりに努力していても十分な評価が得られなければ、成果主義はモチベーション低下を招く要因にもなります。
評価されなければ仕事へのやりがいも失われ、さらに仕事の成果が出にくくなるという悪循環に陥るでしょう。

個人主義になりやすい

成果主義は成果で人事評価が行われるため、他者より優れた成績を残す必要があります。そのため、チームとしてよりも個人の働きを重視するようになり、組織のチームワークを乱す要因にもなります。特にチームでの連携が必要な業務では、個人主義が進むと組織全体が本来の実力を発揮できなくなるでしょう。さらに問題となるのが、自分の成果や評価を高めるために、他者の足を引っ張ろうとする人間が現れることです。必要な情報の共有を行わなかったり、他者の案件を邪魔したりするなど、チームが崩壊する危険もあります。

コンプライアンス違反が起こりやすい

成果主義は社員の成果を評価基準にするため、成果を優先するあまり、コンプライアンス違反が発生するリスクもあります。例えば、部下を管理するために高圧的な態度を取ったり、過剰なノルマを課したりすることが考えられます。成果主義は個人主義につながりやすい面があるため、自分に続く人材の育成が後回しになりやすい点も課題です。 成果主義を導入する際は、コンプライアンス意識を高めるとともに、人材育成への理解を高めることがポイントになります。

評価項目以外が疎かになる

成果主義の評価基準は企業によって異なります。多くは成果に対する評価項目を設けており、項目をどの程度達成できたかを判断基準としています。しかし、業務のすべてが評価項目になるわけではありません。成果主義では評価されない部分を切り捨てて、評価項目の部分にだけフォーカスする社員も現れるでしょう。その場合、評価項目以外の業務は疎かになり、他の社員の業務負担が大きくなります。

成果主義を成功に導くポイント

成果主義を成功に導くには、次のポイントに気を付けましょう。

・明確な評価基準の設定
・公平な評価方法の実現
・定量評価と定性評価のバランス
・昇進・昇給・報酬体系の整備

明確な評価基準の設定

成果主義を導入する際は、どのような評価基準を設けるのか、評価において重視されるのはどの点になるのかを明確化する必要があります。明確な評価基準を設定することで、評価を受ける社員も仕事のどこを重視すべきか優先順位を判断しやすくなります。 基準設定では、誰が評価しても同じ評価になる再現性の高さと、現実的な評価基準になっているかを考えることが重要です。 評価者によって捉え方が変わる基準は、再現性が高いとはいえません。そのため主観的な評価項目をできる限り減らし、数値を基に判断すると客観性と再現性の高い評価基準になります。組織内にはさまざまな部署があり、業務内容も異なります。一部の部署では容易に達成可能な評価項目でも、別の部署では困難なケースもあるでしょう。現実的に達成可能な評価項目と基準を設定することで、社員からの不満も出にくくなります。そして評価項目と評価基準は、社員の意見も取り入れながら修正していくことも意識すべきです。不満や改善案が出た場合、必要に応じて柔軟に対応することが大切です。

公平な評価方法の実現

成果主義を導入する際は、可能な限り公平な評価方法を実現することが鍵になります。評価者が人間である以上、主観的な評価や評価される社員との相性、価値観が反映される部分は少なからずあります。しかし成果主義はすべての社員を公平に、成果で評価する人事制度です。評価者による評価の揺れをなくすためにも、評価者自身の教育と揺れが生まれにくい評価方法を採用することがポイントです。例えば、評価者が複数人いる場合は、評価者同士で情報共有しておくのがよいでしょう。お互いにどのポイントを見ているのか、会社の評価基準から社員をどのように評価しているのか知るだけでも効果的です。また評価者視点の評価だけでなく、組織内の他の社員から見た評価、外部からの評価を参考にするのもおすすめです。成果主義に360°評価を取り入れている会社もあります。360°評価とは、組織内だけでなく、他の部署やクライアント、顧客などの評価も取り入れることです。組織に属する人間以外の評価も入ることで、より客観的で公平な評価方法になります。

定量評価と定性評価のバランス

成果主義を成功させるには、定量評価と定性評価をバランスよく設定することも意識しましょう。 定量評価とは数値で測れる評価項目のことです。例えば、月のアポイント件数10件、部署売上を年間1,000万円上げる、新商品を1万個売るなどがわかりやすいでしょう。定性評価は数値で測れない評価項目を指します。これは知識や技術、ノウハウ、コミュニケーション能力といった数値では表現できないものです。定量評価は数値で客観的な判断がしやすく、定性評価は評価者の主観が入りやすいという特徴があります。成果主義は可能な限り客観的な評価が求められますが、人を評価するには定性評価が必要な場面もあります。マネジメント職や人事担当、研究・開発職など、長期的な視点で人材育成していく仕事もあるからです。部署や役職によって定量評価と定性評価のバランスを見直し、長期的な視点で人材育成と企業の成長が両立できる仕組みを作る必要があります。

昇進・昇給・報酬体系の整備

成果主義の成功には、昇進・昇給・報酬体系の整備も重要です。成果を出せる社員を育成するには、成果に見合う報酬が必要になるからです。せっかく成果を出しても、それに見合った報酬がなければ社員のモチベーションは低下します。昇進・昇給はもちろんですが、インセンティブの支給、賞与の増額、部署の予算配分を増やすなどさまざまな報酬体系を整備しましょう。報酬だけでモチベーションを維持し続けるのは難しいですが、生産性・業務効率化の重要な要素にはなります。社員の努力を何らかの形で返すことにより、組織に貢献する意欲を高められるでしょう。

成果主義導入の成功事例と失敗事例

日本において成果主義を導入し、成功した事例と失敗した事例をそれぞれ2例ずつ紹介します。

成果主義導入の成功事例

・大手化学メーカーA
日本企業の成果主義での成功例として、有名なのがA社です。
A社は1960年代頃から成果主義の前段階となる能力開発支援に力を入れており、2000年頃からは本格的な成果主義に移行しました。A社の成果主義は「役割等級」と「職群制度」の2つを評価軸にしています。役割等級は管理職毎に数字で評価し、全社共通の基準と称号を設けています。また 曖昧になりがちな評価基準を適正化するため、職群制度によって成果や評価の仕方を変更し、適正な評価付けを実現している点が特徴です。 2つの軸を相互に作用させることで、一律では設定しにくい評価基準を補完しあう仕組みを導入しています。

・大手自動車メーカーB
自動車製造で知られるB社では、管理職への成果主義を導入しています。
1992年から開始された制度で、管理職の年俸制導入や定期昇給の廃止を進めています。一般社員には年功序列制度が残っているものの、管理職には成果に対して細かな基準が設けられました。その結果、30代で管理職になる社員も現れ、努力や成果が評価されやすい仕組みになっています。また、一般社員には年功序列が残っているため、安定した雇用が続いている点も成功の背景にあるでしょう。

成果主義導入の失敗事例

・大手ファストフードチェーンC
C社は2006年に成果主義を導入し、定年制の廃止も決定しました。
「若手社員を伸ばし実力本位の企業文化を構築する」という目的でしたが、結果として失敗に終わり、定年制も復活しました。成果主義が失敗した原因は、ベテラン社員が自分の成果ばかりを優先してしまい、後進の人材育成が疎かになったことです。
本来の目的とは真逆の状況に陥ってしまったため、C社は成果主義を廃止し、元の人事・賃金体系に変更しました。

・大手電器メーカーD
D社は1993年に成果主義を導入し、日本企業の先駆けになりました。
D社の評価制度は社員一人ひとりに目標を設定させ、その達成度を上司に評価させる仕組みでした。しかしこの仕組みでは 達成度のみで評価されることから、新しい企画や事業にチャレンジしても、目標が未達成の社員は評価が低くなってしまいます。 一方で、無難であっても目標を達成した社員は高評価が得られるため、達成しやすい低めの目標を設定する社員が多くなるといった現象につながりました。その結果、社員の働く意欲が低下し、企業の成長の低迷、通常業務にも遅延が発生するなど、さまざまな弊害をもたらしました。社員からの不満の声が大きくなったことで、現在の富士通では成果主義に基づく評価制度は撤廃されています。

まとめ

この記事では成果主義について、年功序列や能力主義との違い、メリット・デメリット、導入を成功させるポイントなどについて解説しました。 成果主義はうまく運用すれば若手人材にも活躍のチャンスを与え、組織全体の成長を促す起爆剤になります。一方で、うまく機能しなければチームワークが乱れ、社員のモチベーション低下を招く諸刃の剣でもあります。優秀な人材を育成・確保し、生産性を高めるには効果的な人事制度ですから、自社で運用する際はポイントを押さえて導入しましょう。

お気軽にお問合わせください

ページトップに戻る