コンサルタントの基本情報
そもそも、コンサルタントとはどのような職業なのでしょうか。基本的な情報を2つの観点から解説します。
- ・コンサルタントは企業の業績や効率改善に向けたアドバイスをする職業で、内容は多岐にわたる
- ・資格は必須ではないが、採用される場面やキャリアアップを狙う場面で有利になるケースがある
コンサルタントとは
コンサルタントとは、クライアントからの依頼を受けて企業の業績や効率の向上を目指す職業です。 経営状態の分析、事業再生の実施など、業務は多岐にわたります。ひと言でコンサルタントといっても、領域がいくつかに分かれています。
コンサルタントに資格は必要?
コンサルタントになるうえで、必須の資格はありません。応募要項に、有資格者であることがあげられているケースはほとんどありません。
ただし、資格があると一定以上の能力を有していると判断され、コンサルタントになる際やコンサルタントとして働く際に有利になり、キャリアアップにもつながりやすくなるでしょう。コンサルタントとしてどの領域を目指すかで、役立つ資格は異なります。コンサルタントに適した資格を、戦略系・財務系・IT系・英語系の4つに分けて解説します。
コンサルタント関連の資格を選ぶ際の基準
コンサルタント関連の資格を選ぶ際は、所属する企業や部署の専門性、自分の実務経験との適合性などが重要になります。資格選びの基準となるポイントを5点紹介します。
自分の専門分野・強みと適合しているか
コンサルタントには戦略、IT、人事、財務など多様な分野があります。そのため自分がどの領域で専門性を深めたいのかを明確にし、その分野に強みを持つ資格を選ぶことが重要です。専門分野と資格の内容が一致していれば、実務に直結した知識とスキルが磨かれ、より高い付加価値を提供できるコンサルタントを目指せます。
資格がキャリアパスに役立つか
資格を取得した後、どのようなキャリアを描きたいかを考えることも大切です。たとえば独立開業を目指すなら業界内で認知度の高い資格が有利な一方、企業内コンサルタントになるなら実務的なスキル重視の資格が役立ちます。取得する資格がキャリアビジョンに沿っているかを確認することがポイントです。
資格難易度と学習の負担が見合っているか
資格ごとに難易度と、合格までに必要な学習時間は大きく異なります。現在の仕事や生活スタイルを踏まえ、無理なく学習を継続できるかを見極める必要があります。あまりに学習面の負担が大きいと途中で挫折してしまうリスクがあるため、自分の現状と比較して適切なレベルの資格を選ぶことが成功への近道です。
資格の社会的認知度や評価は高いか
資格を取得しても社会的な評価や認知度が低いと、実務や転職で活かしにくい場合があります。そのため、業界内での認知度や信用性を事前に調べることが大切です。多くの企業やクライアントに評価されている資格を選ぶことで、キャリア形成や案件獲得に有利に働きます。
実務に活かせる実践的なスキルが習得できるか
資格を選ぶ際は、単なる知識の暗記型ではなく、実際のコンサルティング業務で活用できるスキルが身につくかも重要な基準です。中小企業診断士やMBA、ITストラテジストなどのように、課題解決力、提案力、分析力などを実践的に養える資格であれば、取得後すぐに現場で力を発揮しやすく、成長スピードも加速します。
コンサルタントに適した戦略系の資格5選
コンサルタントに適した戦略系の資格を5種類紹介します。
1.MBA
MBAはMaster of Business Administrationの略であり、日本語では経営学修士号、もしくは経営管理修士号と呼ばれる学位です。
MBAコースを設置する大学院(ビジネススクール)では、2年間の修士課程を修了すると学位が授与され、最終学歴も更新されます。 ビジネスリーダーとして求められる知識や実践力を身につけるために、経営管理に関する理論を体系的に学び、グループワークや課外授業なども実施されます。コンサルタントとしての土台を習得できるでしょう。
MBAコースを設置する国内の大学院が増えており、夜間や週末のみの通学で修了できたり、オンライン授業が実施されていたりするコースもあります。社会人でも働きながら取得を目指せるでしょう。
2.中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業が抱える経営課題を明らかにして助言する専門家です。中小企業支援法の第12条に基づく、国家資格となっています。取得するには、基礎的な知識を問う1次試験、筆記式と口述式で応用力を問う2次試験の両方に合格し、さらに実務補習・実務従事を受講しなければなりません。
コンサルティング能力に関する国家資格であり、取得すると一定以上のコンサルティング能力を有していると証明できます。
3.経営士
経営士とは年に2回実施される、もっとも長い歴史のある経営に関する資格です。一般社団法人日本経営士協会が認定する民間資格で、伝統があるため信用の高い資格とされています。経営士になるには5年以上の経営管理の実務経験が必要なため、経営実績を有する人におすすめといえます。
4.キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタント資格は、個人や組織の成長戦略を「人材」という観点から支援できる力を証明する資格です。企業向けコンサルティングにおいては、人材配置や育成、キャリアパス設計などが戦略実行の鍵となるため、キャリア支援の専門知識を持つことは非常に有効です。経営戦略と人材戦略を結びつける提案ができるため、組織変革や人事改革支援にも強みを発揮できます。
5.ビジネスアナリシス認定(CBAP🄬)
CBAP®(Certified Business Analysis Professional)は、ビジネス課題を分析し、最適なソリューションを導き出すスキルを証明する国際資格です。戦略立案において現状分析やニーズ定義を高い精度で行う力が求められるため、戦略系コンサルタントにとって非常に有用です。
コンサルタントに適した財務系の資格6選
コンサルタントにおすすめの財務系資格について6種類紹介します。
1.ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーとは、税金・投資・住宅ローン・相続・老後など、お金に関する専門家です。個人が抱えるお金に関する悩みを聞き、助言します。
ファイナンシャルプランナーには国家資格の「FP技能士」、民間資格の「CFP認定者」「AFP認定者」と、3つの種類があります。お金に関する総合的な知識が求められるため、自分自身の生活に加えてコンサルタントとしても役立つでしょう。
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2.公認会計士
公認会計士とは、監査及び会計の専門家です。公認会計士法に基づく国家資格で、企業の「監査業務」は独占業務になります。監査業務の他にも、会計や経理・財務・経営に携わる際に役立つでしょう。受験するために特別な資格は必要なく、誰でも自由に受験できます。
公認会計士を取得するには、マークシートの「短答式」と、記述の「論文式」で実施される公認会計士試験に合格しなければなりません。また、試験の前後に監査等の業務補助として2年以上の実務経験、もしくは3年間の実務補習講習と修了考査への合格も必要です。
公認会計士の知識はコンサルティングにも活用できるため需要は高く、キャリアアップを考えた際に役立つでしょう。
3.税理士
税理士とは、税務の専門家です。税理士法に基づく国家資格で、「税務代行」「税務書類作成」「税務相談」の3つは独占業務になります。税理士は公正な立場から、納税義務の適正な実現を図ります。取得するには、1年に1回実施される税理士試験に合格し、租税または会計に関する事務として2年以上従事しなければなりません。
難易度が高い資格の1つですが、取得すれば税理士法人や税務担当者として働く方法だけでなく、税理の知識を活用してコンサルタントとして働く選択肢もできます。
4.社会保険労務士
社会保険労務士とは、労働保険・社会保険の専門家であり、社会保険労務士法に基づく国家資格です。労務管理・労働保険・社会保険に関する書類作成の代行や相談・指導などを実施します。なかでも、労働法や社会保険に関する書類の作成・提出の代行は独占業務です。
取得するには、1年に1回実施される社会保険労務士試験に合格することに加え、2年以上の実務経験もしくは弁護士資格が求められます。 社会保険労務士は、労働者側からの視点で企業の状態を診断する能力を有しており、コンサルティングにも役立ちます。経営者側から診断する、中小企業診断士と異なる視点での助言が可能です。
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5.日商簿記1級・2級
コンサルタントにとって日商簿記1級・2級を取得することは、企業の財務状況を正確に読み解き、経営課題を発見・分析する力を高めるうえで非常に有用です。財務諸表や原価計算の知識を体系的に習得できるため、事業戦略や改善提案の裏付けとなる財務分析が可能になります。特に2級は実務レベルの基礎力、1級は高度な会計・管理会計の知識を証明でき、幅広いクライアントニーズに応えられるコンサルタントを目指すうえで強力な武器となります。
FASS検定(経理・財務スキル検定)
FASS検定(経理・財務スキル検定)は、実務に直結する経理・財務スキルを客観的に証明できる資格です。特に資金管理、決算業務、税務、管理会計など、企業経営に欠かせない分野を網羅しているため、コンサルタントとしてクライアント企業の財務課題を具体的に支援できる力を養えます。また理論だけでなく実務対応力をアピールできる点が強みであり、経営改善や業務効率化提案に説得力を持たせるためにも非常に有用です。
コンサルタントに適したIT系の資格6選
コンサルタントにおすすめのIT系資格についても6種類紹介します。
1.ITストラテジスト
ITストラテジストとは、情報技術を活用して事業を改革・高度化・最適化するIT戦略の専門家です。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が認定する国家資格であり、試験は4つの試験で構成され、3試験は100点満点の記述式、1試験は論述式で行われます。
2.プロジェクトマネージャ
プロジェクトマネージャとは、情報システムの開発に携わり、その後の運用にも携わる総合的な責任者です。 IPAが認定する国家資格であり、ITストラテジストによって作成された戦略の円滑な実行を指揮・監督する人材であることを証明します。I試験では、開発プロジェクトの計画を作成し、リソースを調達したり円滑に進行したりするための知識・スキルが問われます。
3.ITサービスマネージャ
ITサービスマネージャとは、ITシステムの運用管理責任者としての能力をIPAが認定する国家資格です。ITサービスを安定的に提供するにはリスクやコストの管理が必要であり、システム・ビジネス双方の知識が求められます。IT投資から得られる効果を最大にする存在といえます。
ITサービスマネージャは、安全性と信頼性とともに高度なITサービスを提供するために指揮・管理する人材です。ITシステムを安定して稼働しつつ継続的に改善し、障害が発生した際の対応や品質管理などを行います。
4.PMP®
PMP®とは、Project Management Professionalの略で、PMI(アメリカのプロジェクトマネジメント協会)が認定する国際資格です。プロジェクトを管理して成功に導ける人材であることを証明します。
PMPは、プロジェクトマネジメントについての知識に加えて実務力も必要であり、取得できればマネジメントスキルを保証してくれます。PMP取得後は3年ごとの更新が必要であり、常に学び続けなければなりません。
5.情報セキュリティマネジメント試験(情報処理技術者試験)
情報セキュリティマネジメント試験は、企業における情報セキュリティリスクの把握と適切な管理策を提案できるスキルを証明する国家資格です。コンサルタントにとって、顧客企業のセキュリティ対策やリスクマネジメント支援は必須領域のひとつであり、この資格を持つことで組織全体の安全性向上に向けた具体的な助言が可能になります。IT活用が進む現代において、クライアントからの信頼を高めるうえでも非常に有用な資格です。
AWS認定ソリューションアーキテクト
AWS認定ソリューションアーキテクトは、クラウドサービス「AWS」の設計・運用に関する専門知識と実践力を証明する資格です。コンサルタントがこの資格を取得することで、クラウド移行支援やシステム最適化、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進において、具体的かつ効果的な提案ができる強みとなります。AWS活用は多くの企業にとって経営課題であり、高度なクラウド戦略支援が求められる中、取得する価値は非常に高いといえます。
コンサルタントに適した英語系の資格4選
コンサルタントにおすすめの英語系資格についても4種類紹介します。
1.TOEIC
TOEICとは、Test of English for International Communicationの略で、世界中で活用されている英語のスキルを評価する試験です。試験は5種類ありますが、いずれも知識というよりも実践的なコミュニケーション能力がスコアで評価されます。
一般的には、マークシート形式で990点満点の「Listening & Reading Test (TOEIC L&R)」が使用されます。 英語のスキルを採用基準に含める場合、「どのような状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」とされる730点以上が条件となるケースが多いでしょう。
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2.TOEFL
TOEFLとは、Test of English as a Foreign Languageの略で、非英語圏から英語圏に留学したい人を対象に、学問的な英語のスキルを評価する試験です。
TOEFLは120点満点で、口頭で回答する問題や自由形式で回答する問題もあるため、マークシート形式のTOEICとは異なる対策が必要です。海外MBAの出願要件にされることが多く、目標は80点以上が1つの目安とされています。
Linguaskill Business
Linguaskill Businessは、実践的なビジネス英語力を短時間で測定できる国際的なテストであり、コンサルタントにとって非常に有用です。特にリーディング、リスニング、ライティング、スピーキングの4技能をバランスよく評価できるため、グローバル案件や外資系クライアントとのコミュニケーション力を客観的に証明できます。試験結果も迅速に出るため、即戦力としての英語力アピールやスキルの棚卸しにも適しています。
英検準1級・1級
英検準1級・1級は、高度なビジネス英語や国際社会で通用する英語力を証明できる資格です。特にコンサルタントにとっては、英語での提案資料作成やプレゼン、海外クライアントとの交渉に対応できる実力をアピールするうえで非常に有用です。資格勉強を通して幅広いビジネスシーンや時事問題にも対応できる読解力・表現力が身につくため、グローバル案件への参画やキャリアの幅を広げる大きな武器となります。
資格を取得する際の注意点
コンサルタントに関する資格の取得を検討したり、自社の従業員に取得を促したりする際は、目指す仕事の領域と資格との整合性が取れているかを確認しましょう。難関資格を取得しても、今後就きたいと考えているコンサルティング企業の業務内容と離れていては、あまり役に立ちません。
また、難易度が低い資格を数多く取得するよりも、自分自身の専門性を示せる資格を1つ取得したほうがアピールにつながります。 コンサルタントにとって資格は必要不可欠なものではなく、重要なのは業務を遂行できることです。業務を安定して進めるには、論理的思考力やコミュニケーション力が求められます。
資格はあくまでも、専門性や能力を客観的に評価するものです。コンサルタントは資格以上に、スキルや実務経験が重視されるケースが多いことを理解して、希望する仕事に就くうえで役立つ資格の取得を検討しましょう。
まとめ
コンサルタント業務には明確な必要資格の定義はありませんが、顧客からの信頼性を高め、高度な知識とスキルを活用して実務で活躍するには資格の存在は欠かせません。またコンサルタントとしてキャリアアップを目指す場合にも、資格を保有していることで有利になる場面は多数あります。