タレントマネジメントとは何?意味や導入のメリット・進め方・事例を徹底解説

  • 公開日:2023.11.01

    更新日:2025.07.31

    タレントマネジメントとは、従業員の能力を経営資源として捉え、活用しようとする取り組みです。近年では、タレントマネジメントを実践する企業が増えており、導入を検討している企業も多いでしょう。この記事では、タレントマネジメントとは何なのか、目的や実践するメリットなどを解説します。導入方法や注意点も解説するため、参考にしてください。

タレントマネジメントとは何?

タレントマネジメントとは従業員のスキルや経験、知識などを経営資源として考え、人材配置や育成、評価などに活用することです。 タレントは直訳すると、才能や資質となり人事領域においては従業員の能力を指します。

経営戦略を実現するために必要だと考えられており、人事に関係するすべての事柄がタレントマネジメントに関連します。たとえば、人材の採用や育成、評価などがタレントマネジメントと関わりがあるため、タレントマネジメントは人事戦略そのものともいえるでしょう。

タレントマネジメントが注目される背景

タレントマネジメントが注目される理由は主に4つあります。

  • ・労働人口の減少
  • ・働き方改革の推進
  • ・ビジネスのグローバル化
  • ・技術の発展

それぞれについて詳しく解説します。

労働人口の減少

タレントマネジメントへの注目が高まる背景のひとつに、労働人口の減少があげられます。日本では少子高齢化が進み、労働人口の減少が加速化しており、今後も人材不足が続いていくと予測されます。労働人口が不足するなか、人を増やして成果を上げることが難しいため、既存従業員の能力を活かす取り組みとして、タレントマネジメントに注目が集まっています。

働き方改革の推進

近年では、政府によって働き方改革の推進が行われています。働き方改革では、長時間労働の是正が求められますが、この目標を実現するためには、各従業員の業務効率を向上させることがポイントです。そのため、タレントマネジメントで業務効率の改善や、生産性の向上を目指す企業が増えています。

ビジネスのグローバル化

ビジネスがグローバル化していることも、タレントマネジメントが求められる理由のひとつです。近年、ビジネスは世界規模での競争となっており、日本国内だけでなく世界で戦える競争力を身に付けることが重要です。世界との競争力を持つためにも従業員の育成が急務です。効率的な人材育成のために、タレントマネジメントに注目が集まっています。

技術の発展

技術が発展したことで、タレントマネジメントを行いやすくなったことも、注目が高まっている理由です。従来、人材に関わるデータを数値化したり、見える化したりするのは難しいという傾向があり、今までは人事担当者の勘や経験に頼ってきました。しかし、近年では人事分野の技術が発展し、タレントマネジメントに役立つシステムも登場してきています。

タレントマネジメントの役割・目的

タレントマネジメントは社員の能力を最大限まで活かし、一人ひとりが活躍しやすい組織にするための重要な施策です。タレントマネジメントの具体的な役割や目的を紹介します。

経営目標の実現

タレントマネジメントの役割の1つは、経営目標の実現です。人事の領域から経営戦略をサポートし、人事戦略によって企業の利益を上げるという目的を実現するために、タレントマネジメントを行います。

タレントマネジメントを取り入れることで、従業員のスキル向上につながります。従業員のスキルが向上することで、全体的な業務効率の改善や生産性向上につながるため、企業の利益アップが期待できるでしょう。また、企業のリーダーを育成する際にも役立ちます。

社内の部署連携

スムーズな部署連携は、生産性を上げるために必要です。しかし、企業規模が大きくなればなるほど、部署同士の連携が希薄になりやすく、スムーズに連携できないという場合もあります。タレントマネジメントでは従業員のスキルが可視化されるため、部署の垣根を超えた連携がスムーズになるでしょう。

ハイパフォーマーの発掘

タレントマネジメントの重要な目的のひとつが、ハイパフォーマーの発掘です。企業の競争力を維持・強化するうえで、成果を継続的に上げる優秀な人材を早期に見つけ、戦略的に育成・活用することは不可欠です。タレントマネジメントでは、人事評価やスキルデータ、行動特性などを多面的に分析し、将来のリーダー候補や専門性の高い人材を特定します。また発掘した人材に対して、個別の育成プログラムやキャリアパスの提示を通じて、モチベーションと定着率を高めるよう働きかけると効果的です。こうした取り組みにより、企業は人材資源を最大限に活かし、持続的成長につなげることが可能になります。

人材の最適な配置

タレントマネジメントの目的のひとつに、人材の最適な配置があります。これは従業員一人ひとりのスキルや経験、価値観、キャリア志向などを把握し、最も能力を発揮できる職務や部署に配置するためです。適材適所の配置により、業務効率の向上だけでなく、本人のモチベーションや満足度の向上、生産性の拡大などさまざまなメリットが得られます。また、ミスマッチによる早期離職やパフォーマンス低下のリスクも軽減できます。タレントマネジメントでは、人材情報を一元管理し、経営戦略や事業ニーズに応じた柔軟な人材配置を実現することで、組織全体のパフォーマンス最大化を図ることが可能です。

タレントマネジメント実践による効果

タレントマネジメントを実践することで、従業員だけでなく企業や利益への効果も見込めます。従業員の場合は次のような効果があります。

  • ・スキル向上やクオリティアップ
  • ・モチベーションやエンゲージメント、満足度などの向上


また、企業への効果としては下記があげられます。
  • ・従業員が自社の魅力を再発見しやすくなる効果
  • ・従業員が高いモチベーションで業務に取り組めるようになり、企業全体の生産性や利益の向上も期待できる

従業員への効果

タレントマネジメントによって、従業員のスキル向上やクオリティアップが期待できます。従業員のモチベーションやエンゲージメント、満足度などが高まる可能性も高いでしょう。

タレントマネジメントでは、企業が従業員のスキルや経験、特性や貢献などに応じた目標の設定やキャリア開発を提供します。各従業員に対して適切な目標設定やキャリア開発ができるため、従業員はそれに応えたいと感じるようになり、エンゲージメントが上がりやすくなります。

また、企業から期待されている、しっかりと見てくれていると感じられるため、意欲が上がりやすくなるでしょう。さらに、タレントマネジメントでは、従業員に合わせた教育や適性に合った配置が可能です。

適切な教育や適材適所の配置によって従業員が能力を発揮しやすくなり、従業員満足度の向上が期待できます。人事においては人材のリテンションが重要です。リテンションとは人材流出を防ぐ施策のことで、タレントマネジメントはリテンションにも役立ちます。

企業への効果

タレントマネジメントに取り組むことで、従業員が自社の魅力を再発見しやすくなる効果があります。 そのため、自社への信頼感や愛着心が高まりやすくなるでしょう。従業員の特性に合わせた育成や目標設定などにより、企業と従業員の間に信頼関係を築けます。

従業員が仕事に対してやりがいを感じ、高いモチベーションで取り組めるようになるため、企業全体の生産性や利益の向上も期待できるでしょう。このように、企業が従業員に対して投資することで、従業員が成長するというプラスのスパイラルが描けます。

また、タレントマネジメントに注力することで、顧客満足度の向上も見込めます。従業員のモチベーションが上がるため、顧客に対して質の高いサービスを継続的に提供できるようになるからです。ただし、顧客満足度は数値として現れにくい指標のため、短期ではなく長期的に効果を測定する必要があります。

利益への効果

タレントマネジメントは、企業の利益に対しても効果があります。タレントマネジメントを取り入れることで、従業員のエンゲージメントや満足度が向上するため、離職率低下に役立つでしょう。自社への定着率が上がれば、採用コストが削減され、利益率の向上が可能です。

離職率が高いと、育成や採用にかけたコストが無駄になってしまいます。そのため、育成への投資に消極的になりがちですが、タレントマネジメントは離職率低下に役立つため、育成への投資がしやすくなり、社内で優秀な人材を育成しやすくなります。

また、タレントマネジメントによって戦略的な経営が可能です。具体性のある人事戦略が実行できるため、短期ではなく中長期的な人材育成やキャリア支援などもできます。自社で効率的な人材育成ができれば、適した人材を社内で探せるため、採用のミスマッチ防止にもつながります。

タレントマネジメント実践のメリット

タレントマネジメントを実践することで得られるメリットは3つです。

  • ・公正で戦略的な人事の実現
  • ・効果的な人材育成
  • ・目標管理の整備

ここでは、それぞれのメリットを解説します。

公正で戦略的な人事の実現

タレントマネジメントを取り入れることで、公正な人事評価を実現しやすいというメリットがあります。人事評価では明確な基準が必要です。評価者によって評価にばらつきが出ると、従業員からの不信感を招きやすくなるものですが、、タレントマネジメントにより各種データがスコアリングされるため、主観的ではない公正な人事評価が可能です。

また、戦略的な人事にもつながります。タレントマネジメントは人材管理や育成、採用と密接な関係があるからです。従業員の能力や経験などをデータ化することにより、適材適所の人材配置なども行えるようになります。

効果的な人材育成

タレントマネジメントでは各従業員の情報を可視化できるため、人材の強みや弱みを把握することにもつながります。各従業員の課題を洗い出すことができるため、課題の改善がしやすくなり人材育成が効率的に進められるでしょう。

また、経営目標に沿って育成を進められることも大きなメリットです。自社が求める人材を育成しやすくなるため、新たに人材を採用しなくても効率的に業務を行えるようになります。従業員のモチベーションも向上しやすくなり、育成に対して積極的に取り組んでくれるなど、従業員が成長しやすい環境づくりにもつながります。

目標管理の整備

タレントマネジメントは、目標管理の整備ができることもメリットです。従業員それぞれに寄り添った目標設定ができるため、高いパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
従来は、部署単位で目標管理をしていた企業も、タレントマネジメントの導入により、各従業員に合った目標設定や管理などが可能です。従業員の適性や特性に合わない目標設定をしてしまうと、モチベーション低下の原因となり、成長を妨げる要因になる可能性もあるため注意しましょう。適切な目標の管理ができれば、中長期的な目標の達成やキャリア支援も可能です。

タレントマネジメント実践のステップ

タレントマネジメントを実施する際には、次の5つのステップを意識しましょう。

  • 1.導入目的・目標の設定
  • 2.人材の選定
  • 3.人材の活用
  • 4.人材の育成・評価
  • 5.リテンションの実施

ここでは、タレントマネジメント実施の流れについて解説します。

1.導入目的・目標の設定

まずは、タレントマネジメントを導入する目的や目標を設定しましょう。目的が明確になっていないと、導入自体が目的になり効果的なタレントマネジメントがしにくくなります。自社のマネジメントを分析し、現状を把握することが大切です。現場にもヒアリングして課題を洗い出し、解決すべき目標を決めましょう。

2.人材の選定

導入目的を設定した後は、目的に沿った人材の選定を行いましょう。目標を設定することで、必要とする人材の具体像を把握できるようになります。人材を選定するために、従業員の情報をデータ化して整理しましょう。従業員のスキルだけでなく、これまでの経験やキャリアプラン、保有資格などさまざまな情報を参考にします。

3.人材の活用

従業員を選定したら、適切なポジションに配置します。部署と連携して、従業員の状況を把握してデータ化し、適切な人員配置を行いましょう。この際、従業員のキャリアプランも踏まえて、中長期的に判断することがポイントです。経営戦略を実現するための配置を意識することで、マネジメントの効果が高まります。

4.人材の育成・評価

タレントマネジメントの目標に沿って人材の育成を進めましょう。人材育成の際には、従業員を目的に沿って育成できる環境や仕組みを整えることが大切です。また、研修プログラムを取り入れるなど、人材開発の機会を積極的につくりましょう。評価についても部署と連携して、適切な評価を実施することが大切です。

5.リテンションの実施

リテンションとは、人材を確保し継続的に活躍できるようにすることを意味します。具体的には、育成した人材が企業に定着するように、モチベーションの維持やコンディション管理などを行います。従業員の悩みやモチベーションなどのデータを収集・分析して、さらなるタレントマネジメントに活用していきましょう。

タレントマネジメント実践で気をつけること

タレントマネジメントは人材育成および活用において優れた手法ですが、実践する際は気をつけるべきこともあります。どのような点に気をつけるべきか紹介します。

タレントマネジメントを目的にしない

タレントマネジメントを行う際には、目的や目標の設定が欠かせません。 タレントマネジメント自体が目的になってしまうと、思ったような効果が出ずにタレントマネジメントが浸透しません。そのため、タレントマネジメントによってどのような課題を解決したいのか、どのような結果を得たいのかを明確化させましょう。

育成へのコミットメントが重要

タレントマネジメントの効果が出るかどうかは、対象となる従業員の上司が大きなカギを握ります。上司や指導者、マネジャーの力量によって人材育成の成否がわかれるため、上司のスキルにも注目しましょう。現場の人材に人材育成のスキルを身に付けてもらうことで、タレントマネジメントの効果が出やすくなります。

雇用慣行から脱却する

日本の年功序列制度では、タレントマネジメントがうまく機能しにくいというデメリットがあります。年齢や勤続年数によって自動的に昇進できる制度では、スキルアップへの意欲が高まらないからです。日本の雇用慣行から脱却し、従業員が意欲的にスキルアップに取り組める環境をつくることが、タレントマネジメントを成功させるコツです。

評価制度の公平性・透明性を確保する

タレントマネジメントを実践するうえで重要なのが、評価制度の公平性・透明性の確保です。評価基準が不明確または偏っていると、従業員は不信感を抱き、モチベーションやエンゲージメントの低下につながります。特定の人材だけが優遇されると感じさせないためにも、評価基準は事前に明示し、納得感のあるプロセスを整えることが必要です。また定量的・定性的な視点をバランスよく取り入れ、成果だけでなくプロセスや行動も評価対象に含めることが望まれます。さらに評価結果はフィードバックを通じて丁寧に共有し、成長支援につなげることが、公平で信頼されるタレントマネジメントの基盤となります。

継続的な見直しと改善を行う

タレントマネジメントを効果的に運用するには、継続的な見直しと改善が欠かせません。組織の人材ニーズや経営戦略、市場環境は常に変化するため、導入時の仕組みや基準をそのまま使い続けると実態に合わなくなり、効果が薄れるおそれがあります。定期的に人材配置や育成状況、評価制度の運用実態を振り返り、客観的なデータや現場の声をもとに制度やプロセスを柔軟に見直すことが重要です。またテクノロジーの進化や働き方の変化にも対応できるように、改善サイクル(PDCA)を組み込んだタレントマネジメント体制を構築することで、継続的に組織力を高められます。

タレントマネジメントの実践事例

ここでは、タレントマネジメントを実際に導入した事例を2つ紹介します。

総合商社の事例

ある総合商社では、若手従業員の早期成長が課題となっていました。しかし、縦割りの組織運営がベースにあることで、既存の人材マネジメントでは課題解決が難しく行き詰っていました。そこでタレントマネジメントを導入し、従業員情報の一元化やデータベースの構築、定性的なデータ収集などを行い、課題解決につなげています。

フランチャイズ型チェーンの事例

全国展開するあるフランチャイズ型チェーンでは、店舗売り上げが店長の力量に依存しており、優秀な人材の確保が課題となっていました。そこで、パートなどの非正規雇用から店長候補を登用する際に、タレントマネジメントを取り入れることにしました。

タレントマネジメントでは、パフォーマンスの高い人材の特性を収集して分析できるため、効率的に店長候補を探せます。適切な人材の選定が行えるようになり、課題解決を実現しています。

タレントマネジメント導入の手段

タレントマネジメントを導入する手段としては、「タレントマネジメントシステムの導入」「タレントマネジメント研修の実施」が挙げられます。

タレントマネジメントのシステム導入

タレントマネジメントのシステムを導入することで、従業員のデータ管理などを効率的にできるようになります。タレントマネジメントでは多くのデータが必要ですが、人力でデータの管理や分析をするのは困難です。近年では多くのタレントマネジメントシステムが登場しているため、自社に合ったシステムを選定しましょう。

タレントマネジメント研修の実施

社内でタレントマネジメントの必要性や意義を周知するために、研修を実施しましょう。システムを導入するだけでは、タレントマネジメントに対する理解が深まらず、浸透しない可能性があります。また、従業員が自分の特性を把握することも大切です。たとえば、ストレングスファインダーを活用することで、従業員が自分の強みや長所を把握できるようになります。

まとめ

タレントマネジメントは従業員一人ひとりの能力、経験、個性を活用し、組織全体のパフォーマンスを高めるマネジメント手法です。まずは組織側が働きかけ、従業員の持つ能力や特性、強みを引き出すことが大切です。

お気軽にお問合わせください

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