マネジメント研修の実施内容と目的とは?

  • マネジメント研修の実施内容と目的とは?

    公開日:2023.11.28

    更新日:2024.04.26

    価値観の変化や働き方の多様化などによって、優秀な人材の確保が難しくなってきています。人材の流動化が進むなか、マネジメント層の不足に悩む企業は少なくありません。この記事では、マネジメント研修の概要や実施目的、効果、手段などを解説します。研修実施の注意点も合わせて参考にしてください。

マネジメント研修とは

例えば、新任管理職向けの研修やチームビルディング研修などは、現場での業務が多い係長クラスが対象になります。また、既にマネジメント研修を受けた経験のあるベテラン管理職であっても、既存の管理職向けの研修が有効です。管理職の階級や経験を含め、最適なマネジメント研修を選択することが大切です。

マネジメント研修の目的

マネジメント研修の主な目的は、優秀な管理職を育てることです。優秀な管理職とは、従業員を適切に育成・管理できる人材を指します。組織の成長を通じて、自社の業績向上を実現できる人材を増やすうえで、マネジメント研修は有用です。マネジメント研修を受けて、マネジャーとしての知識やスキルが深まると、組織の成長や企業の業績拡大の貢献につながります。研修の目的達成には、研修実施後に必ず振り返り、業務に反映させることが重要です。

マネジメント研修の対象となる管理職

マネジメント研修は、階層別に分けて実施することで研修の効果を高められます。各階層に向けて行う研修の狙いは以下のとおりです。

  • ・新任の管理職:管理職としての意識を高めてもらう
  • ・既任の課長クラス:現在のマネジメントスキルを向上させる
  • ・既任の部長クラス:経営層へのステップとして不足スキルを自覚してもらう

新任の管理職

新任の管理職を対象としたマネジメント研修は、一般従業員から管理職へ、気持ちの切り替えを目指します。研修内容は、管理職の意識改革や組織マネジメントなど、さまざまです。管理職に期待される役割を理解してもらうために、マネジメントの基本を落とし込みます。管理職としてスムーズに業務ができるよう、研修後にはベテラン管理職のフォローが必要です。

既任の課長クラス

課長や次長クラスを対象としたマネジメント研修では、新任の管理職を支えつつ、部長や経営層へ進言する役割を担うために、必要なスキルや知識を身につけます。研修の主な目的は、マネジメントスキルを伸ばすことです。課長クラスを対象とした研修では、部長候補としてのスキルを身につけることを目的に、研修を実施する場合もあります。

既任の部長クラス

部長クラスを対象としたマネジメント研修では、組織開発や経営数字を理解し、業務に活かせるスキルを身につけます。研修によっては経営層へのステップとして、自社のリーダー層を育成するといった重要な役割がある場合も少なくありません。研修では、今までのマネジメント業務のやり方を振り返り、課題や不足スキルを自覚してもらうことが重要です。

マネジメント研修で学習する内容

マネジメント研修では、主に以下のスキルを学びます。いずれも管理職にとっては必須のスキルです。

  • ・チームビルディングスキル:目標達成を実現できるチームを作るスキル
  • ・マネジメントスキル:経営資源を管理して最大化させるスキル
  • ・経営・数字に関するスキル:財務に関わる数字を理解しつつ事業戦略を立てるスキル

チームビルディングスキル

チームビルディングスキルとは、各従業員のスキルや経験を最大限に発揮させ、目標を達成できるチームを作るスキルです。 管理職には組織の目標達成のために、さまざまな人材を活用するスキルが求められます。研修では、マネジャーが従業員同士や他部署と連携できる流れを作り、チームとして機能させるために不可欠なスキルを学びます。
※関連コラム:チームビルディングとは?意味やメリット、実施方法やオンラインでの取り入れ方を解説

マネジメントスキル

マネジメントスキルとは「ヒト・モノ・カネ」の経営資源を管理し、組織の成果を最大化させるスキルです。マネジメント研修では一般従業員を育成・管理する、実践的な知識やスキルを身につけます。研修によってはコミュニケーションの姿勢や、フィードバックのコツ、リモートワークにおけるマネジメントのポイントを扱うケースもあります。

従業員を育成する方法は、Help型とAssist型の2種類です。Help型ではマネジャーが主導権を握って指示を出したり、答えを示したりします。Assist型は、マネジャーが従業員に問いかけることで、従業員自身の内省を促す支援方法です。

経営・数字に関するスキル

マネジメントでは経営関連の知識のみならず、アカウンティング(会計)や与信管理など、財務に関わる数字を理解できるスキルが欠かせません。現状の経営状況について、数字をもとに正確に把握し、客観的かつ根拠のある将来予測をしながら、事業戦略を立てることも管理職の業務の1つです。マネジメント研修では、目標に対する進捗管理や予算管理など、数字を活用するスキルが身につきます。

マネジメント研修を実施する企業の割合

実際にマネジメント研修を実施している企業の割合をみてみましょう。HR総研の調査によると、アンケートを実施した企業の62%が「何らかの管理職研修を実施している」という結果が出ています。全体の6割以上が管理職研修を実施しており、企業にとっては必須レベルの研修といえるでしょう。
ただし、調査結果で注目すべき点は、企業規模が小さくなるほど管理職研修の実施割合も減少している点です。特に300名以下の中小企業においては、実施割合は46%となっています。300名以下の企業で割合が低い原因には、次の点が挙げられます。

・予算の確保が困難
・研修を実施できる人材が少ない
・管理職が研修を兼任しているため時間がない
・マネジメント研修を行えるほどのノウハウが足りない
・マネジメント研修の重要性への理解が低い

マネジメント研修は既存の管理職の成長だけでなく、次世代のリーダーを育成するためにも重要な研修です。企業が長く活動を続けていくためにも、体系的かつ論理的なマネジメント研修の実施は課題になるでしょう。
引用:HR総研 人材育成「管理職研修」に関するアンケート調査 結果報告(2019年)

トレンドのマネジメント法

マネジメント法やマネジメント理論は、時代とともにトレンドが変化します。近年のトレンドになっているマネジメント法には、以下のものがあります。

・ゴールデンサークル理論
・マイクロラーニング
・Will Can Mustフレームワーク

ゴールデンサークル理論

ゴールデンサークル理論は、「なぜ(WHY)」からスタートし、「どうやって(HOW)」「何が(WHAT)」の順で物事を説明するという考え方です。ゴールデンサークル理論に基づいた説明は、聞いた人に納得感を与え、共感を得やすくなる効果があります。
世界的に知られるApple社のiPhoneを例にします。

・なぜ(WHY):現状に挑戦し、他者とは違う考え方をする。それが私たちの信条です。
・どうやって(HOW):製品を美しくデザインし、操作方法をシンプルにし、取り扱いを簡単にすることで、私たちは現状に挑戦しています。
・何が(WHAT):その結果、すばらしいコンピュータが誕生しました。一台、いかがですか?

上記はApple社が実際に打ち出したマーケティングの言葉です。
ゴールデンサークル理論を用いて、見聞きした人の共感を呼び、誰もが知る商品へと成長してきました。

マイクロラーニング

マイクロラーニングはeラーニングによる学習方法の1つで、1回あたり数分程度の学習を繰り返すスタイルです。従来の研修や学習方法は、1回あたり30分以上かかることも普通で、学習できる場所も限定されてきました。近年はスマートフォンでいつでもeラーニングを利用できるようになったことで、マイクロラーニングへの注目度も高まっています。
マイクロラーニングで学ぶ内容は限定されておらず、業務に関係するものや資格取得、スキルアップに関するものまで様々です。また、学習内容も講義形式やクイズ形式まで幅広く、自由に学び方を選択できるのが特徴です。マイクロラーニングはごく短時間の学習方法であり、次のメリットがあります。

・通勤・通学、小休止などの合間でも学習できる
・短時間で終わるので集中力を維持しやすい
・短時間で学べるので繰り返しの学習に適している
・教材の修正や変更が簡単

従業員のスキルアップにも活用しやすく、学習効果の向上が期待できます。
ただし、専門的な内容を学ぶには時間が少ないため、別途学習方法を用意する必要があるでしょう。

Will Can Mustフレームワーク

Will Can Mustフレームワークとは、Will・Can・Mustの3つの要素に分けて、目標達成に必要な要素を整理するマネジメント方法です。具体的な内容は次の通りです。

・Will:目指すべき目標や理想、あるべき姿などを示す要素。リーダーがチームとしての目標を共有する際、考えていることを具体化するために役立ちます。
・Can:チームの状況や個人の能力、連携の状態などを踏まえ、現時点でできることを明確にする要素。
・Must:チームや個人が目標を達成するために不可欠な要素。チームのリソースや人材、スキルなどを意味します。

Will・Can・Mustに基づいて現状を分析することにより、目標に向けた具体的なアクションプランの設定がしやすくなります。
また、チームだけでなく、メンバー個人のWill・Can・Mustも分析することで、それぞれの役割や必要なスキルも明確化できます。
行動の優先順位もはっきりするため、業務上やるべきことに迷わなくなる点も大きなメリットです。

マネジメント研修の実施方法

マネジメント研修は、自社に適した手法を導入することで効果を最大化できます。主な手法は以下の3つです。

  • ・オンライン研修:Web会議ツールを使って離れた場所から参加する手法
  • ・集合研修:1つの会場に集まり集中的に学ぶ手法
  • ・社外研修・セミナー:他社の受講生と一緒に学ぶため異業種間交流もできる手法

オンライン研修

オンライン研修とは、Web会議ツールを使った研修の手法です。離れた場所から参加できるメリットがあり、交通費の削減もできます。研修を録画すれば、都合が合わずに参加できなくても、後から見返すことが可能です。

パソコンやスマートフォンと、Web会議システムの環境さえあれば、従業員がどの場所にいても平等に研修が受けられます。ただし、参加人数が多い場合は、参加者同士がディスカッションしにくい点がデメリットです。

※参考:オンライン研修のメリット・デメリットとは?実施のポイントや注意点も解説

集合研修

集合研修とは、研修を受ける従業員が1か所に集まって、対面で行う研修の手法です。集合研修は直接的なコミュニケーションが取れるため、グループワークやディスカッションが簡単に行えます。また、自社に不足している部分を集中的に研修できる点もメリットです。

ただし、特定の場所と時間の制約が生まれるため、スケジュール調整が難しい傾向にあります。研修期間中は、管理職が業務から離れてしまう点もデメリットです。

社外研修・セミナー

社外研修・セミナーとは、他社の受講生と一緒に研修を受ける研修の手法です。異業種間の交流ができるため、社内とは異なる価値観に触れることで、新たな気づきが生まれやすい傾向にあります。ただし、研修内容が自社のニーズに必ずしも合っているとは限りません。社内研修とは違い、状況に応じたスケジュール変更はできない点にも注意が必要です。

マネジメント研修の実施における注意点

マネジメント研修を実施する際に、注意すべき点は次の3つです。

  • ・研修の実施が目的にならないようにする
  • ・研修の講師は自社のニーズに合わせて選ぶ
  • ・研修後に行動報告書を提出してもらいフォローアップする

研修の目的を明確にする

マネジメント研修そのものが目的になると、研修の効果が期待できません。たとえば、次のように研修目的を参加者と共有しましょう。

  • ・管理職に必要なマネジメントスキルの基本を身につけるため
  • ・チームの生産性を上げるため
  • ・部下とのコミュニケーションスキルを高めるため
研修前に管理職にヒアリングをすると、ニーズに合った研修が実施できます。

自社のニーズに合わせて講師を選ぶ

研修では社内や社外から講師を選びます。具体的には以下のポイントを踏まえて、講師を絞り込みましょう。

  • ・研修に参加する対象は誰か
  • ・研修の目的は何か
  • ・研修はどのように実施するか
  • ・研修はどこで開催するか
  • ・研修にかけられる費用はどのくらいか
たとえば、新任管理職を対象にしたマネジメント研修では、管理職の知識やノウハウをもった講師を選ぶ必要があるでしょう。自社のニーズに合わせた講師の選定が大切です。

研修後のフォローをする

研修は実施して終わりではなく、研修後には必ずフォローを行いましょう。マネジメント研修後にフォローすると、研修に参加した管理職にどのような気持ちの変化が生じたか、確認しやすくなります。 研修の成果や課題が明らかになると、次回の研修の教訓として活かせるでしょう。フォロー方法は、参加後のアンケートや研修の行動報告などがあります。しかし、参加後のアンケートは、受講した感想や今後の意気込みの確認に留まりかねません。「研修前後でどう変わったか」の視点でフォローアップする場合は、研修の行動報告書を提出してもらう方が研修の前後の変化を把握しやいため効果的です

まとめ

マネジメント研修を実施する際は、目的を明確化し、自社のニーズや研修対象者の状況を踏まえた、取捨選択が必要です。 経営状況を数字化して把握し、正確な事業戦略を立てるスキルは、企業が成果を出すうえで欠かせません。意思決定や従業員の育成に数字を使い、効果的にアプローチするスキルを高めるには、数値化マネジメントに特化した研修の受講をおすすめします。

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