生産性向上とは? 求められる背景や業務効率化との違い、具体的な施策まで解説!

  • 生産性向上とは? 求められる背景や業務効率化との違い、成功のポイントも解説

    公開日:2023.03.31

    更新日:2024.03.05

    生産性向上は、投資に対し、生産物の割合を増やすことです。企業においては従業員1人ひとりや組織全体で取り組む施策です。企業の生産性が向上すると、商品・サービスの生産量の増加や利益率の上昇、従業員や顧客の満足度の向上などにつながります。この記事では、生産性向上の概要や種類、メリット、実現する方法などを解説します。生産性向上の施策を実行する際に、ぜひ参考にしてください。

生産性向上とは

生産性向上とは、投資に対し、生産物の割合を増やすことです。企業の生産活動において、少ない投資で成果につながるほど、生産性の高さの証明となります。たとえば、Aが100の投資を行い、1,000の成果が出た場合を想定しましょう。Bが50の投資を行ってAと同じ成果が出た場合、Bの生産性はAに比べて2倍となります。

生産性向上とは、既存の従業員数と労働時間に対して、どの程度の生産性や成果が出せたかを表す指標です。
生産性の概念について、詳しくみていきましょう。

生産性とは

「生産性」とはその効率性を指す概念であり、これを定量的に表す指標の一つとして「労働生産性」が用いられている
上記の定義のもと、労働生産性には「付加価値労働生産性」と「物的労働生産性」の2種類があるとされています。計算方法は「労働によって生産される価値(アウトプット)÷従業員の働き(労働量)」です。この計算方法に当てはめて、付加価値労働生産性と物的労働生産性についてみていきましょう。

・付加価値労働生産性(付加価値額 ÷ 労働量)


付加価値労働生産性の計算方法は「付加価値額÷労働力」となります。付加価値労働生産性は労働者数と労働時間あたりで、どれだけの付加価値を生産したかを測る指標です。
この場合の付加価値とは、売上額から経費を差し引いたものを意味します。

・物的労働生産性(生産量 ÷ 労働量)


物的労働生産性の計算方法は「生産量÷労働量」となります。
物的労働生産性は労働者数と労働時間あたりに、どれだけの生産ができているかを測る指標です。実際の生産量を数値として明確化できることから、客観的な指標として有用です。

生産性向上と業務効率化の違い

生産性向上は従業員の成果を意識しており、業務効率化は作業時間や費用を改善することという違いがあります。
例えば、どれだけ業務効率化を実現させても、必ずしも従業員の仕事の成果につながるとは限りません。生産性向上を達成するための手段として、業務効率化があると考えればわかりやすいでしょう。そのため、生産性向上を狙うには業務効率化以外にも、意識改革や組織体質の改善、成果主義の導入などの施策を打つことが大切です。

生産性向上が求められる背景

生産性向上は、海外と国内の動向により必要性が高まっています。ここでは、生産性向上が求められる背景を解説します。

国際社会との競争が激化している

日本の国際競争力は、主要先進国のなかでも低い傾向にあります。「2021年のIMD国際競争力ランキング」によると、日本の順位は63カ国・地域のうち34位でした。日本が国際的な競争力を得るためには、海外市場に進出できるモノやサービスの価値向上を目指し、生産性を高める必要があります。

※参考:IMD World Competitiveness Ranking|IMD World Competitiveness Online

国内の労働人口が減少している

国内の労働人口は、少子高齢化の影響で減少傾向にあります。2022年の労働力調査によると、2022年の労働力人口は6,911万人で、前年比で6万人減少しています。今後も国内の少子高齢化は続くため、労働者の確保が難しくなるでしょう。企業が今までと同じ成果を出すには、生産性向上の施策が必要です。

※参考:労働力調査(詳細集計)2022年(令和4年)平均|総務省統計局

生産性向上のメリット

生産性が向上すると、以下のようなメリットがあります。

  • ・コストを削減できる
  • ・従業員のワークライフバランスを保てる
  • ・顧客の満足度が高まる

それぞれ解説します。

コストを削減できる

生産性向上は、コストの削減に直結する施策です。たとえば、1人あたりの生産量が増えたり、廃棄物の量や労働時間が減ったりすると、生産活動全体のコストを削減できます。生産性が高い企業は安定した利益を確保しやすくなり、削減したコストの分を新商品の開発や福利厚生などに投資ができます。

従業員のワークライフバランスを保てる

生産性の向上は、従業員1人ひとりが業務時間内に質の高い成果を出すことで達成できます。すると従業員はプライベートの時間を確保し、ワークライフバランスの実現もしやすくなります。従業員は成果が出ると仕事に対する満足度が高まるため、職場環境の改善にもつながります。

顧客の満足度が高まる

企業が質の高い商品やサービスを効率よく生産すると、顧客の満足度が高まります。価格の適正化や顧客への対応の質が向上し、新たな価値の提供が実現できるためです。生産性向上の施策によって、自社の生産の体制や従業員の働き方を見直すと、顧客の満足度の向上につながる結果が得られます。

生産性向上を実現する方法

生産性向上を実現するには、以下の方法があります。

  • ・現状分析と目標の設定
  • ・アウトソーシングを検討する
  • ・従業員の再配置・教育を行う
  • ・生産性向上の施策を実行・改善する
  • ・ツールの導入

それぞれ解説します。

現状分析と目標の設定

生産性向上の取り組みは、生産体制における課題を客観的に把握することから始めましょう。企業の業務を可視化するために、自社の従業員数や労働時間、従業員のスキルや実績などを洗い出します。生産性向上の担当者だけでなく現場の従業員から意見を聞き、改善策を提案する必要があります。企業のヒト・モノ・カネなどの資源の縮小や、売上高や利益率などの拡大を検討しましょう。

生産性向上の目標は、具体的に数字として設定します。数字で目標を設定することで、生産性向上の施策の効果測定ができます。

アウトソーシングを検討する

アウトソーシングは、従業員をコア業務に集中させるために実施します。コア業務とは利益に直結する業務のことで、直接利益を生まない非定型の業務をノンコア業務と呼びます。企業の人的・時間のリソースをコア業務に活用するため、業務のアウトソーシングの検討が必要です。従業員が行う業務の質や量を比較して、アウトソーシングの導入を検討しましょう。

業員の再配置・教育を行う

従業員を適材適所の部署やポジションに配置するには、適性を考慮する必要があります。従業員は1人ひとりの適性が異なるため、得意不得意を把握したうえで、各従業員のパフォーマンスが高まる配置を検討することが重要です。

従業員の配置は、現状のスキルや実績だけでなく、本人の意向やポテンシャルにも配慮して決めます。企業は定期的な研修や意見交換会などを開催し、従業員の教育やスキルアップも行いましょう。

生産性向上の施策を実行・改善する

生産性向上の計画を立てた後は、スケジュールや期日を決めたうえで実行します。施策を実施する際は、時間当たりの生産量や利益率などの指標を立て、実行と改善を繰り返しましょう。目標を達成するためには、実行した結果の効果測定を行い、達成できなかった原因を見つけて適宜目標の修正を行います。施策の効果が低い場合は、取り組みの変更を検討します。

ツールの導入

生産性向上のためにツールを導入すると、業務負担の軽減や作業効率の向上に役立てられます。ITツールは自動化やペーパーレス化など、さまざまな業務の効率化に活用できます。ただし、ツールは企業の全社員が使うことを前提に導入しなければなりません。ITツールはITのスキルやリテラシーの低い社員がいることを想定して、誰でも使いやすいものを選びます。

自社の業務を効率化するために、必要な機能が揃っているかどうかも確かめましょう。ツールを導入する際は、マニュアルやサポート体制が整っているものを選ぶことが重要です。ツールに無料トライアルがある場合は利用し、自社の働き方に合うかどうかを確認しましょう。

生産性を向上させる際の注意点

生産性向上の成功には、従業員と企業の協力が必要です。ここでは、生産性を向上させる際の注意点を解説します。

PDCAを回す環境をつくる

生産性向上の取り組みは、すぐに効果が出るわけではありません。施策を実施するなかで、自社に合う方法を探す必要があります。自社に合う方法が見つかった後は、PDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)を回す環境を構築しましょう。自社内で情報共有がしやすい体制を構築し、PDCAサイクルを高速で回します。

PDCAサイクルを上手く回す方法を学ぶにはこちらの講座をご活用ください。

PDCAサイクル実践講座

生産性全体を最適化させる

業務効率化のみに取り組むと、業務全体の生産性の向上につながらない場合があります。コスト削減や人員削減など、削減が中心の施策には長期的な視点が欠けるためです。部署や部門ごとの最適化を行う際は、企業全体の利益を考慮して生産性向上の施策を実施しましょう。業務を行うなかで、生産性を改善するポイントの見極めが必要です。

目標を明確にする

生産性向上の指標は、企業の業種や業態によって異なります。自社にとって必要な生産性向上は、定量的に判断できる目標を設定することが重要です。事業の成果をKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)で管理し、変化が数値でわかるように設定します。生産性向上の前例がない場合は、現状を把握したうえで仮の目標を設定するといいでしょう。

生産性向上に成功した事例

生産性向上によって、企業は顧客満足度や業務効率などを向上させられます。ここでは、生産性向上に成功した事例を解説します。

専門家の業務フロー見直しによる顧客回転率の向上

とある飲食業の店舗は、接客の業務フロー(オペレーションマニュアル)がないことで、接客の質の均一化ができていませんでした。しかし、マニュアルの導入によって接客の質が向上し、注文から提供までの時間の10%短縮に成功しました。店長の負担軽減により、マネジメントに注力できる体制を構築でき、店舗の収益性を向上させています。

※参考:生産性向上の事例集|厚生労働省

顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務効率化

中古車販売・整備業を行う企業は、顧客管理や在庫管理をエクセルで行っていましたが、入力ミスや漏れが多発しており、複雑な業務に対応できていませんでした。そこで顧客管理・在庫管理・帳票作成を一元的に行うことができるシステムを導入しました。事務処理の時間が短縮し、販売活動や顧客フォローに注力する体制の構築に成功しました。

※参考:生産性向上の事例集|厚生労働省

ウェブ会議システムの導入による高付加価値業務へのシフト

物品賃貸業の企業は、毎週本社にて営業会議を開いていました。しかし、従業員は営業所から本社までは往復3時間かかっています。同社は移動時間の短縮のために、パソコンやタブレット上で会議に参加できるウェブ会議システムを導入します。従業員の移動時間を削減し、営業業務の時間が増えたことで、スピーディーかつ細やかな顧客対応が可能となり、生産性が向上しました。

※参考:生産性向上の事例集|厚生労働省

まとめ

生産性向上は、少ない投資で成果を最大限に高める施策です。企業と従業員1人ひとりの協力によって、利益の向上や業務効率化などにつながります。自社の現状を把握し、適切な施策を行うことで、生産性向上の目標達成が可能です。生産性向上に取り組む際は、質の高いカリキュラムを使った研修を実施して、施策の効果を高めましょう。

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