新入社員研修を行う目的とは?
新入社員研修を行う際は、どのような目的を持って行うかが重要です。新入社員研修の代表的な目的を詳しく紹介します。
社会人としての意識付け
新入社員研修の1つ目の目的は、学生から社会人になるための意識付けです。新入社員研修は学生から社会人になったばかりの社員が対象になるため、社会人意識が乏しいことが多いです。そのため研修を通して学生気分から意識を切り替え、社会人として責任ある行動が取れるように指導を行います。学生と社会人の大きな違いは、課題に対する主体性が必要なことです。学生時代は、教員から出される課題をクリアするだけでいい評価を得られます。しかし社会人は自ら課題を発見し、課題解決に向けて努力したり、自分から周囲に声をかけて業務に取り組んだりできる人ほど評価されます。社会人としての意識を醸成し、企業にとって必要な人材を育成することが新入社員研修の大きな目的です。
ビジネスマナーの習得
新入社員研修の2つ目の目的は、ビジネスマナーの習得を支援することです。新入社員研修では、ほとんどの企業でビジネスマナーが実施されています。それだけビジネスマナーは社会人にとって重要であり、業務や人間関係の基本になっているともいえるでしょう。ビジネスマナーができているかどうかで、社内での評価だけでなく、社外からの企業イメージにも大きく影響します。一人ひとりの社員がビジネスマナーを実行できていれば、企業としての信頼度は大きく上がります。またビジネスマナーでは電話対応や名刺交換、ビジネス文書作成なども重要です。いずれも社会人にとっては基本となるものですが、新入社員にとっては初めてのものも多いです。組織内での人間関係構築や対外的な企業イメージを守るためにも、新入社員研修でのビジネスマナー研修が重要とされています。
業務への理解促進
新入社員研修の3つ目の目的は、自社の業務への理解促進です。新入社員のほとんどは企業に興味のある方や、企業理念に共感して入社しています。しかし伝え聞いただけの情報と実際の現場業務では、想像と全く違っていることは珍しくありません。特に事業の範囲が広く、複数の業務を分担していたり、業務内容がいくつかの工程に分かれていたりすると事業への理解が難しいことがあります。そうした企業へのイメージと現実のずれを修正し、企業の業務への理解を促進するためにも研修が重要です。一つひとつの仕事が何のために行われているか知ることで、自分の仕事への理解が深まり、モチベーションアップにつながります。業務への理解を早めるためにも、新入社員研修で自社の歩みや社会から求められる役割などを学んでもらうことが大切です。
コミュニケーションの活性化
新入社員研修の4つ目の目的は、新入社員のコミュニケーションの活性化です。ビジネスにおいて、報告・連絡・相談は業務遂行のために欠かせません。しかし新入社員の中には報告・連絡・相談の仕方や伝えるべき内容が判断できず、うまくコミュニケーションにつなげられない人もいます。そこで新入社員研修を実施することにより、伝えるべき内容や緊急性、重要度などの判断の仕方がわかるようになります。研修を通してビジネスシーンでのコミュニケーション方法が理解でき、組織やチーム内での交流が活性化するでしょう。新入社員研修で特におすすめなのが、ケーススタディやOJTです。さまざまな事例や実践での経験を通じて、社員間のコミュニケーションを活性化するのが新入社員研修の目的の1つです。
情報漏洩などのトラブルの防止
新入社員研修を行う目的のひとつは、情報漏洩などのトラブルを未然に防ぐための意識と知識を早期に浸透させることです。社会人経験の浅い新入社員は、情報管理やセキュリティに対する認識が十分でない場合が多く、適切な取り扱い方を学ばないまま業務に就くと、重大なトラブルを引き起こすリスクがあります。そのため研修を通じて社内規定やコンプライアンスの基本、個人情報や機密情報の取り扱いルールを徹底的に教育し「情報管理は社会人の基本である」という意識を新入社員に根付かせることが重要です。
新入社員研修の内容例〇選
新入社員研修の具体的な内容について、7つの研修例を紹介します。
企業理念や経営方針の研修
新入社員に企業のことを理解してもらうためには、企業理念や経営方針などの研修を行うのが効果的です。企業理念の研修では自社が何を信念としているか、社会に果たすべき責任は何かなどをかみ砕いて説明し、理解してもらうことを重視します。また経営方針の研修では企業理念に基づいて、企業がどのような経営を行っているのか、社員に求める働きや役割などを学んでもらいます。他にも新入社員には次のような内容を学んでもらうことが多いです。
・新入社員にどのような社員になってほしいか
・ビジネスマンとしての基本の習得
・社会人としての責任と役割
・仕事の価値と社会的意義
新入社員がスムーズに企業風土に適応できるように、企業のことを深く理解できる内容を研修に盛り込むことが大切です。
業務上必要な知識・スキルの研修
新入社員のほとんどは社会人経験がなく、企業の業務に必要な知識やスキルが未熟なことが多いです。また新入社員はさまざまな部署に配属されるため、それぞれの業務の特性に合った知識とスキルも身に付けなければなりません。例えば営業職であれば電話やメールでのアポイントの取り方やビジネス文書の作成方法、事務職であれば顧客対応や経理知識などが必要です。そうした職種や部署の特徴に合わせて、新入社員研修も細かく実施すべきです。
基礎となる知識の習得はもちろんですが、技術力の向上も意識していく必要があるでしょう。生産職や技術職の場合、ベテラン社員と新入社員ではスキルに大きな差があります。
新入社員でもベテラン社員に近い技術が磨けるように、研修でポイントを学んでもらうことが大切です。企業にはそれぞれ独自の知識や技術があります。次世代の優秀な人材を育成するためにも、業務上で必要な知識・スキルの習得を促しましょう。
ビジネスマナーやコンプライアンス意識の研修
ビジネスにおいて信頼は非常に重要です。職場の人間関係も取引先との契約も、信頼関係がなくては成り立ちません。しかしビジネスマナーが身に付いていなかったり、コンプライアンス違反をしたりすれば、企業への信頼は大きく失墜します。信頼関係が崩れれば、そのまま企業の損失へとつながるため、信頼関係を維持することは企業にとって重要な課題です。そのため、新入社員に対してもビジネスマナーやコンプライアンス意識の研修を行い、社会人らしい立ち居振る舞いをマスターしてもらうことが大切です。企業に属する人間として正しい行動を学び、実践していくためにも新入社員研修でも優先的に取り組みましょう。
チームワーク・コミュニケーション研修
新入社員研修におけるチームワーク・コミュニケーション研修では、グループワークやディスカッション、ロールプレイなどの実践型プログラムを中心に行います。具体的な内容としては、課題解決型のワーク(例:グループで目標達成を目指すプロジェクト)や役割分担・意見調整を体験する演習、傾聴・伝達スキル向上を目的としたコミュニケーションゲームなどがあります。実施方法としては、少人数のチームに分かれて協力しながら課題に取り組み、最後に成果発表や振り返りを行うスタイルが効果的です。この研修により役割意識、協調性、情報共有の重要性を体感的に理解できる点が大きなメリットです。また入社初期に同期との信頼関係を築く機会にもなり、その後の職場適応や連携力向上にもつながります。主体的に動きながら学ぶことで、実務への応用力も育まれる有意義な研修となります。
ロジカルシンキング(論理的思考)研修
新入社員研修におけるロジカルシンキング(論理的思考)研修では、物事を整理し、筋道立てて考える力を養うことを目的とします。具体的な内容は「主張と根拠の整理」「因果関係の把握」「MECE(漏れなく、ダブりなく)思考」「ピラミッドストラクチャーの活用」など、ビジネスで必須となる論理展開の基本を学びます。実施方法としては、講義と演習を組み合わせ、ケーススタディやグループディスカッションを通じて実際に課題を整理・分析・発表する体験型プログラムが効果的です。体験型にすることで、座学だけでは身につきにくい「考え方の型」を実践の中で体得できます。研修のメリットとしては、課題解決力や提案力、報告・相談時の説得力が向上し、業務遂行のスピードと精度が高まることが挙げられます。新入社員が早期にビジネス思考を身につけられるため、非常に有効な研修です。
セキュリティ対策研修
新入社員研修におけるセキュリティ対策研修では、情報漏洩や不正アクセスなどのリスクから企業を守る意識と知識を習得させることが目的です。具体的な内容には「個人情報・機密情報の取り扱い方」「パスワード管理の重要性」「メールやSNS使用時の注意点」「フィッシング詐欺やマルウェア対策」などが含まれます。実施方法としては、座学による基本知識の講義に加え、過去の事例紹介やシミュレーション形式の演習を取り入れることで、危機感と具体的な対応力を養う形式が効果的です。新入社員は経験の少なさから具体的な場面をイメージしにくい傾向があるため、実際に起こり得るシーンを想定しながら学ぶことで知識の定着が進みます。研修のメリットとしては、新入社員によるうっかりミスや情報漏洩リスクを未然に防ぎ、組織全体のセキュリティ意識を底上げできる点が挙げられます。
目標設定・キャリアデザイン研修
新入社員研修における目標設定・キャリアデザイン研修では、自身の成長意識を高め、主体的なキャリア形成を促すことを目的とします。具体的な内容としては「SMARTな目標設定手法の習得」「短期・中長期のキャリアプラン設計」「自己分析」「理想のキャリア像を描く演習」などです。実施方法としては、講義による基本概念の理解に加え、個人ワークやグループディスカッションを通じて実際に目標やキャリアプランを作成・発表させる実践型が効果的です。上司や先輩社員からのキャリア体験談を共有する場を設けると、より現実的な視点が養われます。研修のメリットは、目の前の業務だけにとらわれず自ら学び成長する意欲を引き出し、早期戦力化や離職防止にもつながる点が挙げられます。入社初期からキャリア意識を醸成することで、長期的な組織力向上に大きな効果を発揮するでしょう。
新入社員研修の目的を達成する3つのポイント
新入社員向けの研修を成功させるには、研修を計画・実施するために考えるべきことがあります。新入社員研修の目的を達成するために、3つのポイントを紹介します。
・中途採用者とは違うことを理解する
・アウトプット学習も活用する
・社内での交流の場を設ける
中途採用者とは違うことを理解する
新入社員研修では、新入社員と中途採用者では全く違うことを理解したうえで、研修内容を計画していく必要があります。そもそも中途採用者はほとんどが他社での社会人経験を持ち、一定のビジネスマナーやスキルを持っています。一方、新入社員はアルバイトを除けば社会人経験がほとんどなく、基本的なビジネスマナーも身に付いていないことが多いです。
新入社員と中途採用者では、土台から違っているため、違いを理解して研修計画を練らなければ失敗につながります。新入社員研修では基本からしっかり学んでもらうことを大切にしましょう。
アウトプット学習も活用する
新入社員研修でありがちな失敗として、インプット学習に偏りすぎてアウトプット学習を疎かにするというパターンがあります。インプット学習中心の研修だけでは、学んだ知識を実践で十分に発揮することができず、研修失敗につながる可能性があります。そのため、研修ではインプット学習をすぐ実践できるように、アウトプット学習を支援することが大切です。具体的な方法の1つとしてOJTがあります。例えば、研修でビジネスマナーを学んだのであれば、それを実践で活用し、OJTで先輩社員と振り返りを行います。こうすることで研修での学びをアウトプットすると同時に、理解度を高められるでしょう。インプット学習だけでは失敗につながることもあるため、インプットとアウトプットのバランスを大事にすることが大切です。
社内での交流の場を設ける
新入社員研修の目的を達成するには、社内で先輩や同期との交流の場を設けることもポイントです。新入社員の業務上の指導者は先輩社員ですが、仕事中には聞きにくい質問や話の内容もあるでしょう。プライベートな悩みを相談するケースもあるため、お互いを知る機会を設ける意味でも交流の場は大切です。また新入社員の同期同士でコミュニケーションを取ると、先輩社員や職場では聞けない話を聞く機会にもなります。先輩社員に相談できないことでも、同期の社員なら話せることがあります。知識を詰め込むだけではストレスになりますから、適当なタイミングで砕けた場を設け、新入社員がリフレッシュして研修に臨めるように配慮しましょう。
新入社員研修に関するQ&A
新入社員研修でよくある質問とその回答を紹介します。
新入社員研修では何をしますか?
新入社員研修では、社会人として必要な基本スキルやマインドを習得することを目的に、さまざまなプログラムを実施します。具体的にはビジネスマナー(挨拶、名刺交換、電話応対)、コンプライアンスや情報セキュリティ対策の基本、業務に必要な基礎知識、ビジネス文書作成、ロジカルシンキングなどを学びます。またチームワークやコミュニケーション力を高める演習も行うことで、組織の一員として働く意識を醸成すると同時に、社会人への意識転換を図る大切な機会となります。
新入社員研修のゴールは何ですか?
新入社員研修のゴールは、社会人としての基本的なマナーやスキルを習得し、組織の一員として自立して行動できる土台を築くことです。具体的にはビジネスマナーやコミュニケーション力、コンプライアンス意識、情報セキュリティ知識などを身につけ、実務にスムーズに適応できる状態を目指します。また会社の理念や文化を理解し、自ら考え主体的に行動する意識を養うことも重要なゴールのひとつです。
新入社員研修で失敗しやすい例はどのようなものですか?
新入社員研修で失敗しやすい例としては、受講者が受け身になり、積極的に発言や質問をしないまま終わってしまうケースが挙げられます。また指導側が一方的な座学中心にしてしまい、受講者の理解度を確認せずに進めることも失敗要因です。このようなケースでは研修内容が実務に結び付かず、現場配属後に戸惑いやギャップを感じやすくなります。そのため双方向のコミュニケーションを意識し、実践的な学びを重視することが成功の鍵です。
まとめ
新入社員研修は、入社後にスムーズに業務を遂行できるようビジネスマナーや知識が身についたり、社会人としての意識を高めたりする目的で行われます。目的や課題に合わせて、座学やグループディスカッションなどの方法で実施します。プロ講師による受講が可能、自社社員の負担が減らせるなどの点から、新入社員研修は外部への委託がおすすめです。
法人向け人材育成のユーキャンでは、丁寧なヒアリングで課題を選出し、企業に適した提案を行います。ぜひお気軽にご相談ください。