ファシリテーションとは何か
ファシリテーションは、会議や研修などを円滑に進めて参加者同士のコミュニケーションを促しながら目標を達成したり成果を得たりするためのサポートのことです。企業の会議にはさまざまな人が参加し、それぞれに異なる意見を持っています。意見を1つにまとめなければ目標達成は難しいでしょう。そこで必要なのがファシリテーションです。ファシリテーションでは、参加者の認知が一致しているかを確認しながら議論をします。参加者の方向性を全体で再確認できるため、目指す目標が明確になり事業がスムーズに進められるでしょう。目標を達成するには、参加者同士の理解を高めることが欠かせません。よりよいチームづくりには、ファシリテーションが必須といえるのです。
ファシリテーターとは何か
ファシリテーターは、会議の進行を担うまとめ役です。必要な資料を集めたり、会議で意見がバラバラになった際は助言をしたりなど、会議をスムーズに進めるための重要なポジションといえます。ファシリテーターには、臨機応変に対応する能力が求められます。たとえば説明が不十分な発言があった際は、質問役に回って的確な問いかけをします。ときには発言者の内容を深掘りし、参加者全員の理解につながるよう働きかけます。その場の空気を察しながら柔軟に対応できるファシリテーターが会議を進めることで、有意義なファシリテーションの実現が期待できるでしょう。
ファシリテーションが重要な理由
ファシリテーションの主な目的は、会議参加者それぞれの認識や意見のズレを解消し、全員が同じ目標に向かって進める状態を作ることです。個々の認知がバラバラなままでは、チームの一体感が生まれず、問題解決やプロジェクトの成功にも時間がかかってしまいます。ファシリテーションによって意見交換が活性化されることで、役職や立場に関係なく誰もが自由に発言できるオープンな環境が生まれます。 その結果、議論を通じて自分の考えを深めたり、他のメンバーの視点を取り入れたりと、多くの学びや気づきが得られるのです。自由に意見をぶつけ合える関係が構築されれば、チームの結束力は自然と高まり、信頼関係の構築にもつながります。さらに、チーム全体で考えることで、個人では思いつかないような斬新なアイデアが生まれる可能性も広がるでしょう。
ファシリテーションの重要な10のポイント
ファシリテーションを円滑に進めるには、話しやすい環境づくりや的確な時間管理など重要なポイントがあります。ポイントを押さえておけば、時間を有効に使いながらより円滑に会議を進められるでしょう。ここでは、ファシリテーターとしてファシリテーションを成功させるために重要となるポイントを紹介します。 ・話しやすい環境をつくる ・到達点(ゴール)を設定する ・意見交換のしやすさを考える ・発言を促す ・発言者の偏りを防ぐ ・常に中立を意識する ・的確に時間を管理する ・どんな意見にも耳を傾ける ・分かりにくい話は必要に応じて整理する ・今後に向けた決定事項をまとめる
話しやすい環境をつくる
ファシリテーションでは、話しやすさが重要なカギとなります。話しやすい環境をつくるには、以下の点を整理しましょう。
・資料の整理
・部屋のレイアウトの変更
・参加者の把握
事前資料は議論の材料になる大切な情報です。重要な情報はあらかじめピックアップし、整理しておきましょう。また、議論場のレイアウトも欠かせません。使い慣れた会議室ではなく、普段使用しない部屋を使うなどレイアウトに不安を感じる場合は、ほかのスタッフや会場の職員にアドバイスをもらいましょう。そして、会議の内容だけでなく「参加者がどんな人なのか」を把握するのも重要なポイントです。参加者同士の関係性やそれぞれの役職で、準備や進行が変化する場合があります。言語や認識など共通点があるか、相手はどんな性格かなどを把握しておけば、より有意義なファシリテーションとなるでしょう。
到達点(ゴール)を設定する
ファシリテーションは、会議の到達点(ゴール)をしっかりと定めてから進めることが大切です。会議の最終的な目標は、議論の方向性を明確にし、参加者が納得できる形にすることです。どこまで話し合うか、どこまで会議で決めるかなどを、事前に明確にしておきましょう。目的の共有は会議の論点のズレをなくせるため、共有しないで話し合うよりも議論が進めやすいです。到達点の設定は、会議の参加者全員が同じ認知を持って話し合えるため、有意義な時間の形成につながるでしょう。また到達点へ向けて、会議前に目的や話し合う内容などの情報を共有し、事前にアイデアを準備してもらうのも方法の1つです。意見交換の時間の確保は新たな発想を生み出せ、よりよいアイデアを引き出すことにつながります。
意見交換のしやすさを考える
意見交換の場がスタートしたら、ファシリテーターは参加者が話しやすい環境づくりを心がけましょう。ファシリテーションは、多くの意見や考えを交換することが目的です。お互いの意見交換によって、よりよいアイデアはもちろん相手の意見に理解を示しやすくなるなどの効果が得られます。意見交換がしやすい環境づくりとして、はじめの空気感に着目しましょう。たとえば最近の話題や参加者の興味につながる話で、場の空気を盛り上げてから話し合いをスタートするのもテクニックの1つです。そして話し合いがスタートしたら、個々の意見をつなぎ合わせ、誰も置いてきぼりにならない環境づくりを心がけましょう。ときにはファシリテーターが質問を投げかけ、参加者同士で質問がしやすくなるよう促すのもよい方法です。
発言を促す
参加者がなかなか発言しないときは、ファシリテーターがそっと発言を促してあげましょう。会議では積極的に発言する人もいれば、なかなか意見を言えない人もいます。発言しない人のなかには、しっかりとした意見を持ち合わせている人もいるでしょう。まだ出ていない貴重な意見を引き出せれば、新しいアイデアにつながるかもしれません。そこでファシリテーターは、発言しない人に対してそっと呼びかけて発言を促しましょう。人前で話すのが苦手な人がいれば、意見を聞き要点をまとめてあげるのもおすすめです。参加者へ「あなたの意見が大切」である態度を示しましょう。ただし、参加者に無理をさせてまで発言を促す行為には注意が必要です。発言を促す際は、発言者や参加者の意見を尊重するのも大切なポイントです。会議に参加する全員が、気持ちよく発言ができる環境づくりを意識しましょう。
発言者の偏りを防ぐ
ファシリテーションにおいて、ファシリテーターには「参加者全体を俯瞰する力」が求められます。会議には、発言力のある参加者だけでなく、控えめな人や発言の機会をうかがっている人もいるため、誰か一人に意見が偏ると議論のバランスが崩れてしまいます。発言力の強い参加者に議論が集中すると、他の参加者が意見を言いにくくなり、会議の雰囲気や成果にも悪影響を与える可能性があります。そのため、ファシリテーターは意識的に発言の偏りを防ぎ、誰もが安心して発言できる空気をつくることが大切です。具体的には、参加者全員に順番に発言の機会を与えたり、発言の前に意見を整理する時間を確保したりする工夫が有効です。このように場を整えることで、立場や役職に関係なく、全員が自由に意見を交わせる「本来のファシリテーション」が実現します。会議を建設的で実りあるものにするためには、意見の多様性を引き出すファシリテーターの存在が欠かせません。
常に中立を意識する
ファシリテーターは、中立な立場で会議の司会進行をし、発言を促しましょう。たとえば、ファシリテーターが参加者の一部の意見に強く賛同するのはいいファシリテーションとはいえません。反対意見を支援する態度を見せるなどの行為も同様で、どちらかの意見に傾くのは避けるべきです。会議の司会進行役であるファシリテーターが議論に熱くなると、周りの状況の把握が困難となるおそれがあります。また、参加者のファシリテーターに対する信頼度の低下にもつながるでしょう。会議は、参加者同士が意見を交換しお互いの理解を深め合う場です。そのため、会議の主役はファシリテーターではなく参加者にあります。ファシリテーターは、中立な立場で参加者間の意見を冷静に判断しながら会議を進めましょう。常に中立な立場でまわりを観察する力が求められます。
的確に時間を管理する
会議を円滑に進めるうえで、時間の管理は欠かせません。ファシリテーターの進行だけでなく、参加者の発表の準備や話が長くなると、貴重な時間がどんどん減っていきます。また聞いている人の集中力が切れたり何を伝えたいのか理解しにくかったりなど、さまざまなデメリットにつながるでしょう。そのためファシリテーターは、事前に進行準備をするのはもちろん、会議の目的の説明や各議論、まとめなどに必要な所有時間をあらかじめ考えておくことが大切です。また進行途中で参加者に所有時間を共有しながら進めれば、ファシリテーターだけでなく参加者も時間の把握ができ、効率よく会議を回せます。ファシリテーターが会議の進行と時間管理を同時に担うのが難しい場合は、ほかのスタッフにタイムキーパーを依頼するのもおすすめです。発表や報告の時間を設ける際は、発表者にまとめを簡潔に話すようにあらかじめ伝えておきましょう。ストップをかけて議論や発表の時間を止めるのもファシリテーターの役目です。常に時間の管理を徹底しましょう。
どんな意見にも耳を傾ける
ファシリテーターは、会議参加者のさまざまな意見に耳を傾けながら会議を進行しましょう。会議には立場や価値観の異なる人が参加します。そのため、自分にはないさまざまな角度の意見が飛び交うでしょう。ファシリテーターは、参加者のどんな意見も否定せずに受け止める必要があります。参加者の思い思いの意見にじっくりと耳を傾けましょう。また議論が白熱すると、意見が対立したり会議の雰囲気が悪化したりする場合があります。ファシリテーションは対立するのが目的ではなく、よりよいアイデアづくりのための意見交換の場であることを伝え、軌道修正を図りましょう。そして聞く姿勢を態度で示すために、発言者の目をしっかりと見て聞いたり、顔や体を向けてときどき相槌をうったりする行動も大切です。参加者の意見に耳を傾けながら、発言しやすい雰囲気づくりを徹底しましょう。
分かりにくい話は必要に応じて整理する
ファシリテーションにおいて重要なスキルの一つが、会議中の発言を整理しながら議論を前に進める「話の要約力」です。会議には、人前で話すことに慣れていない参加者や、発言が長くなったり要点が伝わりにくかったりする人もいます。そのため、発言内容が分かりづらいときには、ファシリテーターが要点をかみ砕いて要約し、全体に共有することが求められます。こまめに議論を整理することで、参加者全員が同じ認識のもとで話を進めやすくなり、会議の生産性も向上します。要約するときは、発言者の意図を尊重しつつ、できるだけわかりやすい表現に置き換えることが大切です。「分かりにくい」といった否定的な言葉は避け、安心して意見を出せる空気を保ちましょう。 また、話が論点から逸れそうなときには、さりげなく軌道修正する力も必要です。役職や立場の異なる人が集まる会議では、参加者の緊張感も高まり、思考を整理しながら話すのが難しい場面も少なくありません。そうした場面では、ファシリテーターがサポート役となり、発言を補ったり議論の方向性を整えたりすることで、会議を円滑に進行できます。 ファシリテーターの気配りとサポートが、参加者全員の意見を引き出す原動力となり、より実りある会議につながります。
今後に向けた決定事項をまとめる
議論の終わりには、参加者の意見をまとめて決定事項を伝えるのもファシリテーターの大切な役割です。どんな意見が出たのかを改めて振り返り、結論を共有しましょう。そして、会議のはじめに全体で認知した「ゴール」に到達できたかを確認します。目標とした到達点に達している場合は、今後の具体的なアクションをはっきりさせましょう。会議のはじめに設定した目標まで到達しなかった場合は、どこまで決まったのか、決まっていないのは何かなどを明確にします。意見をまとめる際はホワイトボードなどを活用し、出た意見を可視化しながら共有するのがおすすめです。連絡ツールで会議の結論をまとめて情報共有をすれば、各自で会議の振り返りができます。ファシリテーションは話し合って終わりではなく、今後の行動につなげるための大切な意見交換の場です。出た意見を今後に活かせるよう、ファシリテーターは会議のまとめ役もしっかりと果たしましょう。
ファシリテーションに求められるスキル
ファシリテーションに求められるスキルの把握は、会議をスムーズに進めながらまとめる能力を持ち合わせたファシリテーターの形成につながります。ファシリテーションに求められるスキルは、主に以下の4つの力です。
・理解力
・傾聴力
・論理的思考力
・質問力
それぞれの特徴について詳しく紹介します。
理解力
ファシリテーションでは、理解力のあるファシリテーターが欠かせません。ファシリテーションにおける理解力とは、会議の内容や参加者の気持ちを理解する能力があるかを示します。会議にはさまざまな人が参加するため、予測できない多様な意見が飛び交います。ファシリテーターはそれぞれの発言に理解を示し、ときには整理をしながら進行しなくてはいけません。発言者の意見を踏まえて分かりやすく要約したり、進行の流れを理解したりしてファシリテーションを実行しましょう。また次に求められる行動を、想像する力も問われます。
傾聴力
ビジネススキルのなかでも重要といわれるコミュニケーションには話す力と聞く力がありますが、とくに大切なのは聞く力です。傾聴力ともいわれており、相手の発言に耳を傾けることをいいます。傾聴力を会議で示すには、発言者に対してアイコンタクトを取りながらうなずいたり、顔を向けて話を聞いたりなど、行動に表すのも大切です。ファシリテーターの傾聴力が高いと、参加者は「私のことを理解してくれている」と感じ、信頼関係を築きたいと考えるでしょう。傾聴力は、参加者の発言意欲を高めるうえで欠かせないスキルの1つです。
論理的思考力
ファシリテーションには、論点を理解し把握する力を備えたファシリテーターが必要です。話し合いの場で論点にズレが生じた場合は、軌道修正をする必要があります。そのまま議論が進むと、誤った着地につながる可能性が高まるためです。軌道修正には、論理的思考力のあるファシリテーターが欠かせません。問題について整理し、より議論を繰り広げる必要があるかを判断するスキルが求められます。参加者の発言に理解を示しながら、シンプルで分かりやすい結論に結びつけるためにも、論理的思考力が重要となるでしょう。
質問力
ファシリテーターは、必要に応じて相手に質問を投げかける役割も担います。会議における質問力とは、参加者が発言した内容に疑問点や不明点があった場合に質問をする能力です。会議の参加者は、お互いにすべての状況を理解できているわけではありません。そのためファシリテーターは中立な立場として、説明が不十分な発言内容を指摘し補足を促す必要があります。発言者へ質問する際は、場の雰囲気を壊さずによりよいファシリテーションができるよう心がけましょう。
人材育成のことならユーキャンへ
人材育成にお困りの場合は、ユーキャンにご相談ください。効果的な研修プログラムを設けているため、ファシリテーションに欠かせない人材の育成にも期待できます。ユーキャンの人材育成プログラムでは、以下の階層に合わせたeラーニング学習が可能です。
・内定者や新入社員
・若手や中堅社員
・主任や係長などのリーダー
・管理職
各階層に求められる行動や必要なスキルが学べるため、効率的に研修が実施できます。理解力や傾聴力の高いファシリテーターの育成や各階層のレベルを上げるためにも、ぜひユーキャンをご活用ください。
まとめ
今回は、ファシリテーションの重要性や、ファシリテーターに求められるスキルについて解説しました。 ファシリテーションとは、会議を円滑に進行し、チーム全体で目標達成を図るための支援スキルです。その中心となるファシリテーターには、進行力だけでなく、傾聴力や質問力、参加者の意見を引き出す力など、総合的なコミュニケーション能力が求められます。
ファシリテーターの存在により、会議が活性化し、誰もが意見を出しやすい環境をつくることが可能になります。これにより、社員同士の信頼関係やチームワークが深まり、組織の結束力が高まるでしょう。また、さまざまな立場からの意見を取り入れることで、今までにない視点や新しい発想が生まれやすくなるというメリットもあります。
組織全体のパフォーマンス向上を目指すためには、人材育成の一環としてファシリテーションスキルを高めていくことが不可欠です。 会議の質が変われば、組織の文化も変わります。ぜひ、自社に合ったファシリテーター育成や、会議の進め方の見直しを通じて、より実効性のあるチーム運営を実現していきましょう。