ファシリテーターとは何か
ファシリテーターとは、会議や議論、研修などの場で進行役や意見調整役を務める人のことです。司会進行とは異なり、参加者同士の意見を引き出して議論が活性化するように支援しながら、目的に沿った結論を先に進めるのが役割です。
ファシリテーターと司会の違いとは
ファシリテーターと司会はどちらも会議やイベントの進行役ですが、その役割には明確な違いがあります。司会は主に会議やイベントの進行を管理し、プログラム通りに進めることが役割です。そのため、発言者の紹介や時間管理、次の議題の案内など、スムーズな進行に努めることが主な役割です。一方のファシリテーターは、議論の活性化や課題解決、合意形成を促す役割があります。参加者の意見を引き出し、異なる視点同士を整理しながら議論することで、最適な結論へと導くことが求められます。また議論の方向性を示したり、それぞれの意見を明確にしたりするなど、積極的に議事へ介入する点が司会との大きな違いです。
ファシリテーターとネゴシエーターの違いとは
ファシリテーターとネゴシエーターは、どちらも議論や交渉の場で重要な役割を果たしますが、目的やアプローチに違いがあります。ファシリテーターの役割は、会議やディスカッション、イベントの進行へと介入し、参加者全員が意見を出しやすい環境を整えることです。そのために議論の活性化や合意形成、意見の調整について考え、公平な立場で参加者の意見を整理しながら結論を考えることが求められます。一方のネゴシエーター(交渉人)は、交渉の場で特定の立場を代表し、自分や所属組織にとって有利な結果や合意を得ることが目的となります。例えば商談の場で自社の商品の優位性をアピールし、相手側から有利な条件を引き出すのがネゴシエーターの役割です。ネゴシエーターは相手側との利害調整を行い、譲歩や妥協をしながら交渉を進める点で、ファシリテーターとは目的・アプローチとも違いがあります。
ファシリテーターが果たす役割
ファシリテーターが会議やイベントなどで、どのような役割を果たしているのか、具体的な内容を5つ紹介します。
ゴールの設定と共有
ファシリテーターが果たす役割の1つに、ゴールの設定と共有があります。会議やワークショップでは、目的が不明確なまま進行すると、議論が脱線したり、結論がまとまらなかったりするリスクがあります。そのためファシリテーターがゴールを設定する際には「何を達成することが目的なのか」「どのような結論がゴールになるのか」を具体的に示し、参加者に理解してもらうことが重要です。ゴールの共有によって、参加者は議事や会議に目的意識を持ち、より効果的に議論を深められます。
話しやすい雰囲気の調整
ファシリテーターが果たすべき役割には、会議や研修の場での話しやすい雰囲気の調整もあります。会議やワークショップでは、意見を自由に発言できる環境が整っていないと参加者が萎縮し、活発な議論にならないことも少なくありません。そのためファシリテーターは場の空気を和らげ、誰もが意見を出しやすい雰囲気を作ることが重要な役割です。具体的には、タイミングを見計らってアイスブレイクを取り入れて雰囲気を作ったり、発言の少ない参加者に適切なタイミングで声をかけたりすることで、前向きな参加を呼びかけます。このような雰囲気の調整により、参加者は安心して発言できるようになり、より建設的で活発な議論を進められるでしょう。
相互の意見整理
ファシリテーターが果たすべき重要な役割には、参加者間の意見整理があります。意見整理はファシリテーターの役割でも特に重要なものです。会議やディスカッションでは、多くの参加者が自由に意見を交えることで、話の方向性が脱線したり、発言内容・意図が不明確になったりすることがあります。ファシリテーターはそのような状況を避けるために、参加者それぞれの意見を適切に整理し、全体の流れを整える役割を担っています。具体的には、発言内容を要約して共通点や論点を明確にし、意見の対立が生じた場合は議論を整理して合意形成に向けた進行をサポートします。ファシリテーターが役割を果たすことによりお互いの意見を整理でき、参加者の理解が深まりより建設的な議論につながるでしょう。
合意形成に向けたアプローチ
ファシリテーターには、合意形成に向けたアプローチを行う役割もあります。会議やディスカッションでは参加者の意見や立場が異なることが多く、それぞれが主観的な意見を出し合うだけでは結論に至らない場合もあります。そこでファシリテーターは、各意見の共通点や妥協点を明確にし、折案を提案したり、納得できる解決策を探すための質問を投げかけたりします。また一部の人の意見に偏りすぎないように、全員の意見が公平に受け入れられるよう調整することも重要です。ファシリテーターが正しく合意形成を進めることで、参加者の納得感が高まり、効果的な意思決定を行えます。
適切な時間管理
ファシリテーターが果たす役割として、適切な時間管理も重要です。会議やディスカッションでは、限られた時間の中で議論を進め、結論を出すことが求められます。しかし議論が脱線したり、一部の参加者の発言が長くなりすぎたりして、時間内に目的を達成できなくなる可能性があります。そのためファシリテーターは事前に議題ごとの時間配分を決め、会議の進行をコントロールするよう努めることが重要です。例えば各テーマの開始時に「この議題は〇分で議論します」と伝え、時間の経過に応じて適宜リマインドを行うことで、活性化した議論となります。正しい時間管理を行うことで、効率的かつ生産的な会議を実現し、スムーズな意思決定を行うことにつながります。
ファシリテーターに向いている人の特徴
ファシリテーターに向いている人には、一定の特徴や共通点があります。どのような特徴を持つ人が向いているのか、4つのポイントを紹介します。
参加者からの信頼感が高い
ファシリテーターに向いている人の特徴の1つとして、参加者からの信頼感が高いという点があります。ファシリテーターは会議やディスカッションの進行役として、参加者が安心して意見を出しあえる環境を作ることが求められます。 そのため周囲から冷静、かつ公正な立場で進行できる人として信頼されていることが重要です。 公平で信頼感が高い人は、参加者の意見を偏らずに受け入れ、誰もが公正に発言できるように配慮できます。さらに過去の経験や知識に基づいて考えた質問を投げかけ、議論が迷走しそうな時は適切な方向へ誘導することもファシリテーターの役割です。参加者から信頼されており、十分な経験を持っている人をファシリテーターに選ぶのがよいでしょう。
物事に中立な立場から意見を出せる
ファシリテーターに向いている人の特徴の1つに、中立的な立場から公平な意見を言えるという点があります。ファシリテーターは会議やグループワークの進行役であり、個人的な意見や特定の立場に偏ることなく、客観的で中立な観点で関与できる人が適しています。また中立的な視点から意見を出すことで、対立が生じた場合にも冷静に状況を整理し、適切な合意形成を進めることが可能です。特定の意見に偏らず事実や論理に基づいて議論を進めることで、参加者全員が納得できる結論を導き出せることから、中立的な立場を取れる人はファシリテーターに向いています。
さまざまな意見を聞きながら自分の考えをまとめられる
ファシリテーターに向いている人は、参加者から出る意見を聞きながら自分の考えを上手くまとめられるという特徴があります。会議やグループワークの場では、参加者それぞれが異なる立場や視点から意見を出します。そしてファシリテーターの役割は多様な意見を公平に聞きながら、議論の方向性を整理し、最適な結論を先導することです。そのため参加者一人ひとりの意見をしっかりと理解しながら、自分の考えをまとめて正確に伝えるスキルが求められます。また異なる意見が出た場合にも、それらを否定するのではなく、共通点や妥協点を模索し、お互いに最良といえる結論を考えられる人はファシリテーターに向いています。
場の雰囲気を陰から支えられる
ファシリテーターに向いている人の特徴には、会議やグループワークの雰囲気を陰から支えられるという点もあります。ファシリテーターは会議や議論の主役ではなく、円滑な進行と活発な議論をサポートするのが役割です。そのため人前で発言して注目を集めることよりも、参加者同士の対話をスムーズに進めることに注力できる人が適しています。また場の空気を観察し、参加者が発言しやすいように話したり、意見が対立した際の緩衝材となったりすることで、会議の雰囲気を良くする人であることも大切です。発言が少ない人にもさりげなく話しかけて意見をもらうなど、全員が意見を言えるような環境を整える気配りができる人に向いている役割といえます。影からの仕事をサポートできる人は、ファシリテーターとしての資質があり、議論の質を高める役割を果たせるでしょう。
ファシリテーターの課題
ファシリテーターは議事進行や円滑なグループワーク運営に欠かせませんが、取り巻く状況には課題もあります。ファシリテーターの重要な課題について、2点紹介します。
ファシリテーターの質にバラつきがある
ファシリテーターがファシリテーションを行ううえでの課題の1つに、ファシリテーターの質にバラつきがあるという点があります。ファシリテーターの役割は、議論の進行や意見の整理、合意形成の促進など多岐にわたります。しかし経験の浅いファシリテーターでは、参加者の意見を十分に引き出せず、一部の人の発言内容に偏る可能性が高くなります。また議論を正しくまとめられないと、結論が曖昧になり会議の生産性が低下することもあります。このような課題を解決するためには、ファシリテーションのトレーニングを幅広い人を対象に行い、スキルの均一化を図ることが重要です。
ファシリテーター1人あたりの負担が大きい
高度なファシリテーションスキルを持つ人材はすぐに育成できるものではなく、ファシリテーター一人ひとりにかかる負担の大きさも課題です。特に参加者が多い場合や、意見が対立する場面では、スムーズな進行に細心の注意を払う必要があり、精神的・肉体的な負担が増します。また適切なタイミングで質問を投げかけたり、議論を活性化させたりするスキルも求められるため、集中力を維持しながら複数のタスクをこなさなければなりません。こうした負担を軽減するためには、必要に応じてアシスタントを配置し、ファシリテーションの役割分担を検討するのがよいでしょう。
ファシリテーターに求められる能力
ファシリテーターはあらゆるビジネスシーンで求められる存在ですが、ファシリテーションを円滑に行なうにはさまざまな能力が求められます。どのような能力が必要になるのかを4点紹介します。
目標設定の能力
ファシリテーターには議論の結論へと導くために、議題に合わせた目標(ゴール)設定を行う能力が必要です。議論が進む中で、参加者の意見が広がりすぎたり脱線したりすることは珍しくありません。そのためファシリテーターは事前に目的や期待される成果を明確にし、適切な進行を行うことが求められます。また目標を正しく設定することで、参加者が論点の意義を理解しやすくなり、議論がスムーズに進む効果も期待できます。適切な目標を設定する能力の高いファシリテーターは、議論を円滑に進めるだけでなく、議論を通じてより高い成果を上げることが可能です。
コミュニケーション能力
ファシリテーターには高いコミュニケーションも求められます。ファシリテーターのコミュニケーション能力が高いと、幅広い参加者の意見を取り入れ、自由な意見と発想を導き出すことが可能です。意見を持っていても発言をためらう人は少なからずいるため、質問を投げかけたり、発言を促して相槌を打ったりすることで主体的な参加を促せます。またコミュニケーション能力を高めると異なる立場の意見を調整し、対立を避けながら合意形成へ主導する力も高まり、参加者全員が納得できる結果を得やすくなるでしょう。
論理的思考力
ファシリテーターは議論の結論や意見を効果的にまとめるために、高い論理的思考力も求められます。議論では多様な意見が交わされるため、それぞれの意見と根拠、論点を整理し、要点を明確にする必要があります。さらに複雑な課題は細かく分解し、段階的に解決策を見出すことで、参加者の納得感を高め、合意形成をスムーズに進めることが可能です。こうした分析と論点整理、合意形成に向けたアプローチには高い論理的思考力が必要であり、ファシリテーター育成では論理的思考力をベースにした育成プログラムが必要になるでしょう。
時間管理能力
ファシリテーターは限られた時間の中で議論を深め、ゴールへと導く必要があることから、時間管理能力を高めることも重要です。会議やワークショップでは、話し合う内容が多岐にわたるため、適切なタイムマネジメントが必要不可欠です。参加者が特定の議題に時間をかけすぎたり、議論が脱線したりしないように、ファシリテーターが進行状況を調整する必要があります。また各議題ごとに適切な時間配分を設定し、必要に応じて軌道修正を行うことで、効率的に議論を推進し目的を確実に達成することが求められます。そのため会議における時間を正確に把握し、必要に応じて次の議題に入ったり、結論を出したりする能力が必要となります。
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まとめ
ファシリテーターについて、果たすべき役割や向いている人の特徴、求められる能力について詳しく解説しました。ファシリテーターが会議やワークショップに参加することで、参加者の活発な議論や意見の調整、画期的なアイデアの創出など多くの恩恵が期待できます。一方でファシリテーターには高いスキルと多くの経験が必要になるため、しっかりとした育成計画を立てて育てることが重要です。既存人材を優秀なファシリテーターへと成長させるために、人材育成の実績が豊富なユーキャンをご活用ください。