健康経営研修を行うメリットとは?内容や課題についても解説

  • ロールプレイング研修とは?メリットや実施方法について解説

    公開日:2025.04.11

    更新日:2025.04.11

    健康経営とは「従業員等の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えのもと、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」とされています。この記事では健康経営研修が求められる理由と実施するメリット、知っておくべき課題、具体的な研修内容について詳しく解説します。

健康経営を行う上で研修が必要な理由とは?

経済産業省の定義によると、健康経営とは「従業員等の健康保持・増進の取組が、将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」とされています。この定義を踏まえると、健康経営に研修が必要な理由としては、社員の健康意識を向上させ、具体的な行動へとつながることが大きいです。研修により社員の生活習慣改善、ストレスマネジメント能力の向上、正しい運動習慣や食事の知識を学び、社員が健康を維持するスキルを習得できます。 特にメンタルヘルス研修やハラスメント防止研修は職場環境の改善に効果が高く、社員の生産性向上につながります。また健康経営を行っている企業は健康経営優良法人や健康経営銘柄の申請が可能であり、取得することでホワイト500に認定されれば、投資家に対するアピールにもなる点も重要です。経営の安定化につながるという意味でも、健康経営と研修には密接な関係があります。
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html

健康経営を行う際の課題

健康経営を行う際の課題を3点紹介します。

効果が得にくい

健康経営の課題の一つは、効果が得にくい点です。健康経営は社員の健康状態改善・向上を目的としていますが、その効果は短期的には目に見えにくく、長期的な視点で追っていく必要があります。社員の健康管理やストレス対策が企業の生産性向上や医療費削減につながることを理解していても、それがどの程度の成果を上げるのか、数値で測るのが難しいことも珍しくありません。また社員の健康改善が企業全体に影響を与えるかどうかを客観的に示す指標は限られており、成果を測定する方法に工夫が必要な点も課題の難しさを助長しています。

社員の目的意識の欠如

健康経営の課題として、社員の目的意識の欠如も挙げられます。企業が健康経営の取り組みを進めても、社員がその意義を理解できていなければ、自ら積極的に取り組む姿勢にはつながらず効果も限定的なものになるでしょう。例えば健康診断やストレスチェックの実施、運動習慣の推奨などがあっても「会社がやれというから参加する」といった消極的姿勢では、健康改善の成果は期待できません。また健康経営の目的が明確に社員に伝わっていない場合は「なぜこの取り組みが必要なのか」「自分にどんなメリットがあるのか」が理解されず、参加意欲が低下する可能性もあります。

健康経営に必要な人材の不足

健康経営を推進する上での課題には、健康経営に必要な人材の不足もあります。企業が社員の健康を維持・向上させるためには、それを主導してくれる専門知識を持つ人材を確保しなければなりません。しかし多くの企業ではそのような人材を社内に十分に確保できておらず、結果として健康経営が十分に進まない状況があります。また健康経営の推進には、社内で社員の健康意識を高める役割を担う人材も必要ですが、その担当者のスキルや知識が不足していると、施策そのものが形骸化し十分な効果を発揮できなくなるでしょう。こうした課題を解決するためには、外部の専門家とも連携し、健康経営を担当する社内人材を育成することが重要です。

健康経営研修を行うメリット

企業が健康経営研修を行うメリットには、経営層・管理職・従業員のそれぞれの階層で違うポイントがあります。どのようなメリットがあるのかを詳しく紹介します。

経営層におけるメリット

健康経営研修を行うことで社員の健康を重視することにつながり、経営層にも多くのメリットをもたらします。まず研修を通して社員が健康への意識を高め、健康状態が向上することで業務効率が上がり、生産性の向上につながります。さらに健康な従業員が増えれば欠勤や休職が減り、安定した組織運営が可能です。また健康経営の取り組みは、企業のブランド価値を向上させ、社会的評価を高めることとなります。 特に健康経営優良法人認定などを取得すれば、企業の取り組みが世間的に高い評価を得やすく、採用活動や取引先との関係強化にも良い影響を与えられます。そして従業員の健康への配慮は、離職率の低下にもつながります。 従業員が長く働ける環境を整えることで人材の確保率が向上し、採用コストの削減にも貢献します。健康経営研修が経営層に与えるメリットには多くのものがあり、企業の持続的な成長を維持する重要な要素となるでしょう。

管理職におけるメリット

健康経営研修は、管理職にとっても多くのメリットがあります。まず研修を受けることで社員の健康状態が向上し、チームの業務効率が上がり、生産性の向上につながります。体調不良による欠勤や業務パフォーマンスの低下が少なくなるため、安定した組織・チームの運営が可能になるでしょう。また健康経営を推進することで、職場環境の改善が図られ、管理職自身の業務負担も軽減されます。メンタルヘルス不調による相談やトラブルが減れば、部下のフォローやメンタルケアにかかる時間や精神的な負担も軽くなります。さらに健康経営に取り組むことで、管理職としてのリーダーシップが強化され、部下とのコミュニケーションが活性化し、知識や情報を共有しやすくなる点も強みです。健康経営研修は管理職の健康に対する認識を改善し、社員全員の健康を維持し、組織を活性化できる施策となります。

従業員におけるメリット

健康経営研修が社員にもたらすメリットにはさまざまなものがあります。まず健康増進の取り組みにより、身体的・精神的な負荷が軽減され、働きやすい環境が整えられます。定期的な健康診断や自己ストレスチェック、運動習慣の促進などが行われることで、病気の予防や早期発見につながり従業員の健康意識も高まるでしょう。また健康経営の推進により、職場の人間関係やコミュニケーションが活性化し、メンバー間での支援が促進されてストレスの軽減やモチベーションの向上が期待できます。例えば職場のメンタルヘルスサポートが充実すれば、心理的な安心感が生まれ、業務への集中力も向上するでしょう。さらにワークライフバランスが改善され、プライベートの充実度も上げられます。健康的な生活を維持しながら長期的に安定して働ける環境が整うことで、社員のキャリア形成にも良い影響を与えられます。健康経営研修は会社が行うものですが、主体となるのは社員であり、社員の仕事や生活に多くの恩恵をもたらすことになるはずです。

健康経営研修の内容

健康経営研修を成功させるには、組織の運営に関わる各階層に必要な研修を提供することが重要になります。経営層・管理職・従業員向けに行う研修内容について詳しく紹介します。

経営層が行う内容

経営層向けの健康経営研修では、組織全体のパフォーマンス向上につながるように、戦略的な視点を重視する内容を選ぶことが重要です。具体的には、以下のような研修内容が適しています。
・健康経営の全体像を学び、基本的な概念と企業価値に与える影響を理解できる研修
・成功事例とワークショップやディスカッションによる実践的な研修
・健康経営導入と推進に向けた組織体制のアプローチが学べる研修
・投資対効果(ROI)に基づいた健康経営計画策定について学べる研修
・リスクマネジメント研修
まず健康経営の全体像について経営層が知り、どのような概念で成り立っているか、企業価値にどのような影響力があるのかを知ることが大前提です。健康経営は福利厚生を充実させるだけではなく、企業の持続的成長や生産性向上に直結する施策であり、その点を理解することが本当の意味での健康経営につながります。例えば従業員の健康状態が離職率や医療費、労働生産性を考慮した影響をデータと一緒に学ぶことで、経営層が健康経営の必要性を実感しやすくなります。また競合他社の事例や社会的に成功した事例を学ぶとともに、自社の現状を踏まえた施策を話し合うことで、実践的な施策を提案することも大切です。さらに事例を学ぶことで、健康経営を実現するために経営層が主体となり、企業全体で取り組む体制を整える必要があります。健康経営責任者の役割、健康管理担当者の構成、社内のコミュニケーション戦略など、実行可能な組織づくりについて学ばなければなりません。他にも経営層として健康経営への投資対効果(ROI)やリスクマネジメントの視点など、組織経営を行ううえで考えるべきポイントについても学ぶ必要があるでしょう。

管理職が行う内容

管理職を対象に健康経営研修を実施する場合、組織全体のパフォーマンス向上を見据えて、部下の健康管理や職場環境の改善、管理職自身の健康維持などを重視した内容を選ぶことが重要です。 具体的な研修内容として、以下のようなテーマが適しています。
・健康経営の基本知識と管理職に求められる役割を学ぶ研修
・ラインケアについて学ぶ研修
・自社の戦略に基づいた職場環境の整備について学ぶ研修
・セルフケアについて学ぶ研修
管理職向けの健康経営研修では、まず健康経営の基本概念を学びながら、自らが推進役となる意識を持たせることが必要です。社員の健康が業績向上や離職率低下につながることを理解してもらうことで、健康経営の必要性を認識し、積極的に取り組む姿勢が養えます。また部下のメンタルヘルスを守るためのラインケアの知識と、管理職としてできることを学ぶのも重要です。職場におけるメンタルヘルス不調は、業務効率の低下や離職の原因となるため、管理職が早期に異変に気付き正しく対応できるスキルが求められます。研修ではストレスサインの見極め方、正しい声掛けやサポートの方法、不調の予防策などを学び、管理職が部下の健康を守る役割を果たせるようにしましょう。さらに健康経営を推進するには、職場のストレスを軽減し、快適な労働環境を整備することも重要です。業務の効率化や負担軽減の方法、ハラスメント防止、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けたマネジメントスキルを学び、社員の健康を支援できる環境づくりを学びます。そして、管理職自身の健康管理も欠かせません。健康経営において部下の健康を守ることは上司の役割ですが、その前提として管理職の健康があります。健康経営研修を行う際は、管理職と部下の健康、適切な職場環境づくり、迅速な支援体制構築を学ぶことがポイントになるでしょう。

従業員が行う内容

一般社員を対象に健康経営研修を実施する際は、セルフケアの促進や生活習慣の改善、ストレスマネジメント、職場環境の意識向上といったテーマを中心に選ぶことが重要です。一人ひとりの健康意識を高め、より良い働き方を実現することで、組織全体の生産性向上にもつながります。
・セルフケア研修
・生活習慣改善やストレスマネジメントを学ぶ研修
・職場環境改善を学ぶ研修
一般社員向けの健康経営研修では、健康診断の重要性や正しい睡眠や休養の取り方、感染症予防など、日常的に実践できる健康管理の方法を学ぶのが基本です。これにより病気の予防や早期発見が可能となり、長期的な健康維持につながります。さらに食事・運動・睡眠といった生活習慣の改善は、社員のセルフケアと健康維持に直結します。研修で栄養バランスとれた食事や運動習慣の重要性、デスクワーク中の姿勢やストレッチ法などを学ぶことにより、日々の生活で無理なく受け入れられる健康習慣を構築していく手助けになるでしょう。そして職場環境の改善を意識することにより、社員自身が職場の健康経営に貢献できるようになります。 ハラスメント防止やチームワーク向上のためのスキルが習得でき、より働きやすい職場を実現につながります。

健康経営研修実施時のポイント

健康経営研修実施時の重要ポイントについて3点紹介します。

研修参加率を高める対策を行う

健康経営研修を実施する際は、社員の参加率を高める対策を行うことが大切です。まず、健康経営研修の重要性を周知徹底することが必要です。研修自体が社員の負担になると、結果としてストレスや疲労の原因となり、かえって健康を害するリスクがあります。また、スケジュールを意識することも大切です。業務の繁忙期を避けて業務時間内で短時間のうちに受講できるような内容にすると、研修意欲を高めるほか集中力の維持という観点でも効果的です。また参加意欲を高めるには、研修参加によるメリットも提供するのがよいでしょう。例えば受講した研修によって人間ドックの費用補助、健康診断の無料化、福利厚生の範囲拡大など具体的なメリットがあると参加率向上に役立ちます。社員が健康経営研修参加への意義を見出すには、まず会社からメリットを明示することで研修への外発的動機付けとなります。

経営層が研修の目的や意義を発信する

健康経営研修の実施を支えるには、経営層が自ら研修の目的や意義を組織全体に周知し、理解を得ることも欠かせません。経営層から社員全員に対して心身の健康を重要視すること、それに伴って企業の持続的成長が期待できること、今後の具体的な施策などをメッセージとして伝えましょう。また健康経営に関する具体的な目標も提示し、社員全員が組織の目標を共有し、個人目標とも関連付けるよう働きかけると効果的です。加えて経営層も健康経営研修に参加することで、企業のトップとして率先して取り組んでいる姿勢をアピールできます。社員が健康経営研修へと前向きに取り組む姿勢を引き出すためにも、まずは経営層が率先して行動し、模範となることを意識すべきです。

外部の専門機関と連携する

健康経営研修を効果的に進めるには、外部の専門機関との連携も重要になります。社内だけで健康経営研修を行うとしても、知識やスキルを持つ人材が必要であり、研修の質が低下してしまう懸念があります。そこで専門知識と実績の豊富な外部機関に相談し、医師や保健師、健康経営コンサルタントなどと研修内容を相談することで、自社の実態に合わせた研修プログラムが構築できるでしょう。また外部機関と連携することで、健康診断やストレスチェックを地続きで実施できるようになり、研修だけでなく研修後のフォローアップまで考慮できます。経営層・管理職・一般社員がそれぞれ必要な健康経営の知識を学ぶことにより、組織全体の健康意識が改善し、生産性向上へとつなげられます。

健康経営研修の事例

健康経営研修に取り組んだ企業の事例2社を紹介します。
・コニカミノルタ
・SOMPOヘルスサポート
参考:健康長寿産業連合会健康経営ワーキング 健康経営 先進企業事例集
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/008_s05_00.pdf

コニカミノルタ

コニカミノルタは健康経営の先進企業事例として経済産業省からも紹介されており、経営上の課題解決策に健康経営を活用しています。社員の成長とそれを実感できる職場環境の創出、組織全体の活力と生産性向上を図ることを目標にしています。コニカミノルタで行なった施策としては、ストレスチェックやメンタル不調者を早期発見するため、産業医がさまざまなテーマで作成したeラーニングを管理職に提供し、振り返りも実施しました。また一般の社員にはヘルスアップWEBと呼ばれる動画配信サービス、健康に関する相談会、アプリを利用したポケットセラピストでのプログラム提供なども行いました。このほかにも食事習慣改善のアドバイスや福利厚生も充実させ、社員の生活習慣とフィジカルハイリスク者数も大幅に改善しました。組織全体での健康度も2020年から2022年までの2年間で28%から32%と上昇しており、健康経営への取り組みが中長期的に継続し、改善の見られた好例といえるでしょう。

SOMPOヘルスサポート

SOMPOグループでは「お客さまの安心・安全・健康に資する最高品質のサービスを提供し、社会に貢献する」という経営理念を掲げています。その実現のために社員の一人ひとりの健康保持・増進に向けた取組として、社員への健康リテラシー向上を目的とした自社基準の保健指導や研修、情報提供を実施しました。具体的には社内保健指導による健康リスク保有者へのアプローチのほか、eラーニングサービス「LLax forest」による自主学習、健康データ一括管理システム「Growbase」による健診データの一元化などを推進しました。またラインケア研修を行うことで管理職の健康に対する意識を高め、メンタルヘルス不調者の早期発見・対応につなげるよう取り組んでいます。これらの施策により2021年度のメンタルヘルス不調者は新規発生の1件のみに留まっており、健康経営研修が高い成果を残した企業事例となっています。

まとめ

健康経営研修について、必要な理由や課題、メリット、具体的な内容などを解説しました。健康経営は企業の経営課題解決に役立つ施策として、大企業のみならず中小企業でも取り入れる事例が増加しています。社会的に社員の働き方改革が叫ばれる中、健康経営による社員の健康維持と生産性向上はどの企業にとっても喫緊の課題といえるでしょう。今回紹介した健康経営と研修内容を参考に、自社独自の健康経営計画の策定を目指してください。

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