人事研修とは?果たすべき役割や必要スキル、研修の選び方を解説

  • 人事研修とは?果たすべき役割や必要スキル、研修の選び方を解説

    公開日:2024.04.01

    更新日:2025.12.04

    人事研修は企業に合う人材を確保、教育するとともに、組織全体の生産性を高める点でも役に立ちます。人事は会社の顔であり、外部からの評判にもつながる大切な存在です。この記事では人事向けの研修について、目的や人事の役割、求められるスキル、研修を実施する際のポイントなどを解説します。

人事研修とは?実施目的は?

企業の職場環境や企業風土、時代による意識の変化は人事研修にも大きな影響を与えています。 企業における人事研修では、会社内で必要な人材を育成し、業務遂行に必要な知識・スキルを身につけけてもらうことが目的です。 他にも、人事研修には社内での人材確保や教育体制の構築といった目的があります。

事研修を実施する目的

人事研修を実施する際は、時代に合わせて最適な知識・スキルを習得し、社員のキャリアアップと自発的な学習を支援することも重要な目的です。企業人事の課題は、人材確保と教育体制の構築です。企業に必要な知識・スキルを持った人材を外部から大量に雇用するのは難しく、採用しても定着しなければ効果は乏しくなります。一方、元々企業で働いている人材を教育すれば、離職するリスクは低いうえ、人事やマネジメント、法改正への対応、社会保険制度への理解も促せます。人事研修を実施することで時代の変化に適応し、企業体制を社会のルールに合わせましょう。

人事担当が果たすべき役割

人事担当は人材採用や部署異動、組織図の構築などさまざまな面で欠かせない役割です。

人事担当が果たすべき主な役割は以下の7つです。
・採用
・評価
・育成
・労務
・組織開発
・人事制度の設計・運用
・人員配置
7つの役割について解説します。

採用

人事担当の重要な役割の1つに、人材採用があります。
人材採用で果たすべき役割には、以下のものがあります。
・採用計画の策定
・求人広告の実施
・新卒者・中途採用者の面接
人事担当は企業に必要な人材を調査し、採用に向けた計画の策定を行います。
計画を策定したらハローワークや求人サイト、転職エージェントなどの媒体を通して求人広告も実施します。そして、一定数の応募者が集まった段階で書類選考、面接を実施し、必要な人材を選定するのが役割です。求職者と多く関わることから、人事担当者は会社の評判にも直結する重要な存在です。

評価

人事担当は社員の働きを評価し、人材を適材適所に配置する役割もあります。社内の人材には人それぞれ特徴があり、得意分野と不得意分野が違います。将来的な成長の可能性も考慮したうえで、企業内での社員の生産性や成果を評価しなければなりません。また社員によっては部署を変えることで、本来の実力を発揮することもあるでしょう。人事担当は社員の特性も把握し、企業内の人材を育成する視点を持つことも大切です。
※参考コラム:評価制度とは?導入の目的や方法、作成のためのポイントを解説!

育成

企業の各部署で社員の育成を行うのは上司や先輩社員ですが、人事担当も育成において重要な役割があります。新人研修や社員向けの研修を計画するのは、人事担当の役割になることが多いからです。そのため、人事担当が人材育成を行うことで、社員のスキルアップ、モチベーションアップにつながり、企業全体の生産性向上も期待できます。また、人材育成を通して業務に必要なスキルを身につけければ、社内のどの部署でも即戦力になる人材が確保できます。人事担当は将来的に企業を担う人材を育成し、より大きく発展していく基盤を作る重要な仕事です。
※参考コラム:育成とは? 指導との違いや失敗してしまう3つの原因、成功のポイントも解説

労務

労務とは、給与計算や社会保険の手続き、年末調整、交通費計算、入退社手続きなどのさまざまな事務仕事を指します。労務は会社の土台を支える仕事であり、社員全体のモチベーションを高めるためにも重要な役割があります。
特に人件費は企業の経費の大部分を占めることが多く、人件費を低く抑えつつ、社員の生産性とモチベーションを維持することが労務において重要です。そのため、人事担当は経営的な観点から労務管理を行う意識が不可欠です。

組織開発

人事担当は組織の人事について専門性があるため、組織開発における役割もあります。
組織開発では企業として必要なこと、今後必要になることを調査・分析し、適した人材の育成または採用を進めていきます。 また、組織開発に向けた研修や組織図の提案、働き方改革なども人事担当の仕事です。いかに社員のモチベーションを高め、生産性や業務効率を向上するかに、人事担当の手腕が問われるでしょう。

人事制度の設計・運用

人事制度の設計・運用は、社員の昇給・昇進、採用、福利厚生、入退社などの労働者の権利に関するものです。企業は社員を雇用する際、契約に伴ってさまざまな権利を付与します。しかし、制度設計で会社側が一方的に有利な内容になれば、すぐに社員は離れていくでしょう。人事担当が人事制度の設計・運用を行う場合、社員一人ひとりのキャリアビジョンからライフスタイルや特性までを考慮した仕組みにすべきです。 社員が自ら働く目標を設定し、会社として社員を支えられる制度設計にすることが大切です。

人員配置

人事担当は部署毎の人材を検討し、適材適所な配置にすることも役割です。 人員配置を誤れば、トラブルが起こりやすくなったり、社員個人だけでなく部署全体の生産性が低下したりすることもあります。社員が最大限の実力を発揮できるように、各社員の特性も考慮した人員配置を進めてください。

人事部に必要なスキル

人事部は、企業の経営目標と従業員の働きやすさを両立させる重要な役割を担っています。そのため法制度の理解から人材育成、社内外との調整力まで、幅広いスキルが求められます。ここでは、人事担当者に必要とされる代表的なスキルを6つ紹介します。

雇用・労働に関する法的ルールの理解

人事業務では、労働法やマイナンバー法、若者雇用促進法など、雇用・労働に関する法制度の理解が欠かせません。これらの法令は定期的に改正されるため、最新情報を常に把握し、社内制度や運用に反映させる力が求められます。従業員の雇用契約や労働条件の整備、就業規則の策定など、実務に直結する場面で法的知識が活かされます。法令遵守は企業の信頼性にも直結するため、人事担当者には高い専門性と実務対応力が求められます。

コミュニケーションスキル

人事は、社員・経営陣・求職者・社労士など、社内外の多様な関係者と関わる機会が多い職種です。そのため相手の話を丁寧に聴く「傾聴力」と、自分の意見を分かりやすく伝える「発信力」の両方が重要です。採用面接や人事面談、社内調整など、場面に応じた柔軟な対応力が求められます。信頼関係を築き円滑な連携を図るためには、単なる会話力ではなく、相手の立場を理解しながら対話できる力が欠かせません。

コンプライアンスの知識

ハラスメントや情報漏洩などの不祥事は、企業の信用を一瞬で失うリスクを伴います。人事は社内のコンプライアンス体制を整備し、違反が起こらない環境づくりを担う立場です。法令や社内規定の理解はもちろん、従業員への教育や啓発活動も重要な役割です。全社員がコンプライアンスを意識し、安心して働ける職場を維持するためには、人事が中心となって継続的な取り組みを行う必要があります。予防と定着の両面から支える姿勢が求められます。

人材マネジメントスキル

人事は、企業の経営目標に向けて人材を適切に配置し、育成・評価・管理を行う役割を担います。従業員の能力を最大限に引き出すためには、個々の特性を理解し適材適所で活躍できる環境を整える必要があります。また、モチベーションの維持や職場環境の改善も人材マネジメントの一環です。戦略的な視点で人材を活かすことで、組織全体の生産性や定着率の向上にもつながります。

プレゼンテーションスキル

人事は企業説明会や採用イベント、社内研修などで「会社の顔」として情報を発信する機会が多くあります。求職者に自社の魅力を伝えたり、従業員に制度や方針を説明したりする場面では、分かりやすく構成された資料と説得力のある話し方が必要です。聞き手の関心を引きつけ理解を促すプレゼンテーションスキルは、採用力や社内浸透力を高める重要な要素です。伝える力を磨くことで、人事の影響力はさらに広がります。

企画・戦略の立案スキル

人事は、経営戦略と連動した人材戦略を立案する役割も担います。採用・育成・配置・評価などの施策を、経営目標に基づいて企画・実行する力が求められます。単なる制度設計ではなく、組織の未来を見据えた戦略的な視点が必要です。また、施策を実行に移すための調整力や推進力も重要です。経営陣との連携を図りながら、現場の声を反映した実効性のある人事戦略を構築できる人材が、企業の成長を支えるキーパーソンとなります。

人事研修の種類と内容

人事研修は、企業の人材戦略を支える人事担当者が必要な知識やスキルを体系的に習得するために設計されています。採用、制度設計、法令理解、研修企画、マインドセットなど、幅広いテーマに沿って複数回にわたり実施されるのが一般的です。

採用関連研修

採用関連研修では、企業に最適な人材を見極め、確保するための知識と技術を習得します。研修では採用活動の流れや面接の基本、求人票の書き方、選考基準の設計などを学びます。特に、自社のカルチャーや職務内容に合った人材を見極める力が重視され、面接官としての質問力や評価力を高める内容が含まれます。採用は企業の未来を左右する重要業務であり、担当者の判断力と対応力が成果に直結します。

人事制度研修

人事制度研修では、評価制度・報酬体系・等級制度などの設計と運用に関する知識を習得します。制度は従業員のモチベーションや企業への貢献度に大きく影響するため、適切な制度設計が求められます。研修では制度の目的や構造、評価基準の作り方、報酬との連動方法などを学びます。また制度改定時のポイントや、社員への説明・納得形成の方法も扱われます。

研修内製化研修

研修内製化研修は、外部委託に頼らず自社内で研修を企画・実施するためのスキルを習得する研修です。研修設計の基本から目的設定、コンテンツ構成、講師スキル、受講者の反応分析まで、実践的なノウハウを学びます。自社の文化や戦略に即した研修を柔軟に設計できるため、現場に密着した教育が可能になります。また講師を務める人事担当者自身のスキルアップにもつながり、社内の教育力が底上げされます。内製化はコスト面でもメリットがあり、継続的な人材育成の基盤となります。

労働基準法に関する基礎知識研修

労働基準法に関する研修では、労働契約・就業規則・労働時間・休暇制度など、企業運営に必要な法的基礎知識を学びます。人事担当者は法令遵守を前提に制度設計やトラブル対応を行う必要があるため、正確な理解が欠かせません。研修では最新の法改正情報や判例、実務での注意点なども取り上げられ、実際のケーススタディを通じて対応力を養います。法令違反は企業の信用を損なうリスクがあるため、人事部門が中心となって予防・対応する体制づくりが求められます。

人事部としての心構え研修

人事部としての心構え研修は、新卒や中途入社の人事配属者向けに、人事業務の基本姿勢や社会人としての意識を育てるために実施されます。研修では企業の理念や人事の役割、コンプライアンス意識、社内外との関係構築の重要性などを学びます。特に従業員の信頼を得るための誠実な対応や、経営層との橋渡し役としての責任感が強調されます。またコミュニケーションの基本や傾聴力、情報発信力など、人事業務に欠かせない対人スキルも習得します。

これからの人事に求められること

これからの時代は、人事に求められることも変化していくことが予想されます。

今後の人事に求められることを紹介します。

人的資本経営の整備

人的資本経営とは、名前の意味する通り、人材を「資本」と考えて投資や教育を行い、中長期のビジョンで経営上の利益につなげていく経営手法です。人的資本経営は投資家からも注目されており、成長する企業と伸び悩む企業を判断する評価材料になっています。
またプライム市場では人的資本の開示が義務化されており、企業経営においては重要な戦略の1つです。
日本は生産年齢人口の減少局面に入っており、特に中小企業では人材不足が顕著な状況です。このような日本社会全体の課題を解決する手段の1つとしても、人的資本経営は多くの方から重要なものと捉えられています。

経営視点を持った人事戦略の進行

現代は急激な変化が次々と起こる時代であり、1年先の未来でさえ予測困難とされています。しかし 企業の人事に求められることは、不測の事態も予測した経営視点を持ち、人事戦略を推進していくことです。そのためには、単に人事の視点だけで物事を捉えるのではなく、経営に携わる人間としての視点を持つことが重要です。
例えば、最高人事責任者(CHRO)がわかりやすいでしょう。
CHROは企業の人事における最高権限を持つ役職であり、経営幹部としての役割も担っています。経営層の立場で人事の計画と目標を設定し、人事課題を解決することも役割です。
企業の大小を問わず、人事担当者にも経営に参加する権限を持たせれば、経営者の視点から必要な戦略を打ち出しやすくなるでしょう。
※参考コラム:人的資本経営とは? 注目されている背景や実践する手順まで解説

人事への研修を実施する際のポイント

人事向けに研修を実施する際は、どのようなスキルが不足しているかを分析し、必要な内容を重点的に学んでもらうのがポイントです。 人事向け研修には、大きく以下の6種類があります。

・採用担当者向け研修
・研修内製化研修
・人事制度研修
・労働基準法・労働衛生に関する研修
・コミュニケーション研修
・コンプライアンス研修

これらの研修の受講を前提に、自社の人事に身につけてもらいたい知識・スキルを検討しましょう。例えばコストを抑えるために研修の内製化を進めるなら、進め方やノウハウを学ぶ研修を受講してもらうことで、社内研修により高い効果が期待できます。人事に研修を用意する際は、企業側が一方的に押し付けるのではなく、人事のニーズを把握することもポイントです。自社の人事に必要なスキルを見極め、最適な研修を企画しましょう。
参考コラム:社内研修の目的と実施方法とは? 種類や講師の選び方についても解説

人事研修ならユーキャンにおまかせ

企業の人事研修を企画するなら、ぜひユーキャンへご相談ください。貴社の人事に必要なスキルを身につける研修をご提案します。研修に加え、eラーニングとの組み合わせも可能です。eラーニングを活用すれば、リモートワーク中も効率的な学習が実現できます。社員のスキルアップにご活用ください。

まとめ

今回は企業の人事向けの研修について、目的や必要なスキルなどを紹介しました。企業の経営戦略を考えるうえで、人事の存在は必須といえます。 企業の活動を支える土台である人事に適切な知識を学んでもらうため、研修には重要な意味があります。人的資本経営が注目される中で、人事担当の果たす役割は大きいものです。社会の変化に対応していくためにも、人事研修を活用して最新の情報を手に入れましょう。

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