• 更新日:2026/09/25

通関士の仕事とは、物品の輸出や輸入に必要な書類の作成や手続きを代行することです。通関士として働くには、専門的な知識や語学力を身につけるだけではなく、年に1回行われる通関士試験に合格して資格を取得しなければなりません。

本記事では、通関士の仕事内容や就職先、仕事の魅力や大変なところ、どのような人が向いているのかなどについて解説します。また、必要なスキルや語学力、試験の概要なども紹介します。通関士の仕事に興味がある人は、ぜひ役立ててください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 通関士の仕事は、輸出入の際に税関を通過するために必要な業務を代理・代行すること。
  • 具体的には通関書類の作成や通関手続き、申告が許可されなかった場合の不服申し立てなどが主な業務。
  • 通関士に向いている人の特徴は、「責任感と集中力が高い」「海外情勢や国際取引などに関心がある」「コミュニケーション能力がある」など。
  • 通関士試験の受験に受験資格はなく、年に1回実施されるマークシート形式の試験に合格することで資格を取得できる。
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通関士の仕事内容とは?

通関士の仕事とは、簡単にいえば、税関を通るために必要な業務を代理・代行することです。具体的には通関書類の作成や通関手続き、申告が許可されなかった場合の不服申し立てなどを行います。

通関書類には輸出申告書や輸入申告書、仕入書などさまざまな種類があり、必要に応じて適切な書類を提出しなければなりません。通関士はこれらの書類を依頼者に代わって作成します。

さらに、書類のチェックだけではなく、取引する品物が法令や規制に反するものではないか、関税や消費税が発生するかどうかといった審査を行うのも通関士の仕事です。貨物の積み込みや保管のための申請を代行する場合もあります。

通関士と税関職員の違い

通関士は、民間企業(通関業者など)に所属する貿易の専門家であり、国家資格の保有者を指します。輸出入の際に税関を通過するために必要な申告・手続きを、荷主に代わって代理・代行する「代理人」としての役割を担っています。

一方、税関職員は財務省に所属する国家公務員です。主な業務には、輸出入貨物の検査や書類審査、密輸の取り締まりなどが挙げられます。

通関士が「代理人」として手続きをサポートする立場であるのに対し、税関職員はその申告内容を審査・確認する「審査官」としての立場にある点が、両者の最も大きな違いといえるでしょう。

なお、「税関士」という言葉を目にすることがあるかもしれませんが、そもそも「税関士」という職業や資格は存在しません。「通関士」と名前が似ているために誤って記述されたり、稀にテレビ番組などで税関職員を指して「税関士」と呼んだりするケースがあるようですが、これらは誤用ですので注意しましょう。

通関士の就職先と活躍の場

通関士の主な就職先としては通関業者が多いものの、貿易や流通に携わる会社など、さまざまな選択肢があります。

通関業務を行っている企業は、運送業や物流業、倉庫業を兼業している場合も多いです。また、航空会社や海運会社、輸出入を行っている商社やメーカーへ就職する人も少なくありません。

また、税務事務所やコンサルティング会社では、通関士の資格を持っている人が優先的に採用されるケースもあります。貿易のスペシャリストである通関士は、手続きを代理・代行するだけではなく、アドバイザーとしての需要も高いです。

税関職員との関わり方

通関士が作成した申告書類は、最終的に税関職員に提出され、審査を受ける流れになっています。通関士はクライアント(荷主)の代理人として、関税額等が正しく計算されているか、輸出入が禁止されているものが含まれていないかといった点について、税関職員への説明業務も担っています。

書類に不備があれば税関職員から確認が入るため、迅速かつ的確な対応が求められます。こうした緊張感のあるやり取りを経ながらも、貿易手続きをスムーズに進めるうえで、通関士と税関職員は良きパートナーともいえる関係といえるでしょう。

通関士の仕事の1日の流れ・勤務時間は?

通関業者に勤務する通関士の勤務時間や1日のスケジュールの例を以下で紹介します。

・8:00 出勤
通関士の仕事は税関の開庁時間にあわせて進行する場合が多いです。開庁時間の30分前を目安に出勤し、開庁までにメールや申告書の確認を行います。

・8:30 税関開庁
税関が開庁したら、前日に審査した案件の申告を行います。

・9:00 打ち合わせ
営業や税関担当者が出社したら、提出書類の内容や検査の段取りを確認します。その後、緊急度の高い案件から順番に審査や申告を進めます。

・12:00 昼休み

・13:00 書類作成・審査・申告
午後は書類の提出や検査の立会いのために、税関へ赴くことがあります。同時に、翌日分の案件も処理しなければなりません。

・17:30 税関閉庁
税関が閉庁すると、その日の業務は終了です。案件の処理が終わっていない場合は、閉庁後も作業を続ける場合があります。

・18:00 退勤

通関士の仕事の魅力・大変なところは?

以下では、通関士のメリットやデメリット、魅力、大変な点などを紹介します。

通関士の仕事の魅力・メリット

輸出入の手続きを円滑に進めるうえで、通関士は重要な役割を担っています。貨物を輸出入する際には、税関への申告をはじめとする通関手続きが必要になるためです。

通関業務を通じてさまざまな商品を取り扱うことで、貿易に関する専門知識やスキルに加え、幅広い商品知識も身につきます。

なお、会社によっては、通関士の有資格者に資格手当を支給したり、管理職への昇進条件として資格の保有を求めたりする場合があります。また、資格手当や昇進による収入の増加が期待できる点も、通関士資格を取得するメリットです。

通関士の仕事の大変なところ・デメリット

通関業務では、申告書類や手続きに不備があると、訂正対応や通関の遅延が生じるため、高い正確性が求められます。重大な法令違反や不適切な業務があった場合には、勤務先の通関業者が監督上の処分を受ける可能性もあるため、法令に基づいて正確かつ慎重に業務を進める必要があります。

また、申告件数や審査への対応が集中すると、一人当たりの業務量が増え、労働時間が長くなる可能性があります。繁忙期には、休憩を取る時間帯が不規則になったり、残業が増えたりする場合もあるでしょう。

通関士にはどんな人が向いている?

通関士の仕事が気になるものの、自分に合っているか気になる人もいるでしょう。以下では、通関士に向いている人の特徴を紹介します。

・責任感と高い集中力で仕事に取り組める人
・海外情勢や国際取引などに関心がある人
・細かい事務作業が得意な人
・コミュニケーション能力・交渉能力のある人

責任感と高い集中力で仕事に取り組める人

通関士の仕事は、たとえ小さなミスでも貨物の流通に影響を及ぼし、依頼主に迷惑をかけてしまうリスクを伴います。さらに、ミスが重なると税関から営業停止などのペナルティを科されてしまい、大きな損失を生むおそれがあります。

そのため、責任感が強く、高い集中力を持って仕事に専念できる人が求められます。

海外情勢や国際取引などに関心がある人

通関士は輸出入に関する手続きや書類作成の代理・代行をすることが多いため、海外情勢や国際取引に関する知識も求められます。貿易に関する規制や世界情勢は変化し続けているため、通関士は常に最新の情報を入手し、知識を広げていく努力が欠かせません。

国際的な仕事に関心がある人なら、収集した情報や知識を生かして、通関士の業務にあたれるでしょう。

細かい事務作業が得意な人

通関士の業務は関税額等の計算や書類のチェックなど、緻密な作業が多いです。数字を一つ間違えただけでもトラブルにつながるおそれがあるため、極力入力ミスをしないよう気を配り、書類を隅々まで確認するなどの地道な作業も欠かせません。

そのため、デスクワークや正確さが求められる仕事が得意な人は、通関士に向いています。

コミュニケーション能力・交渉能力のある人

通関士の仕事は依頼人や営業担当者、税関の職員など、さまざまな人と連携しながら進めていく必要があります。そのため、ある程度のコミュニケーション能力が欠かせません。

人と関わることが好きな人や、営業や販売などコミュニケーション能力が求められる仕事を経験している人は、通関士として働く際も能力を生かせるでしょう。

通関士の仕事の需要や将来性は?

グローバル化や越境ECの広がりにより、日本ではさまざまな貨物が国境を越えて取引されています。こうした国際物流を支えるうえで、適正かつ円滑な通関手続を担う通関業者は、欠かすことのできない存在です。

通関業者は、営業所ごとに、取り扱う貨物の数量や種類、通関書類の数・種類・内容に応じて、必要な人数の通関士を置かなければなりません。国際物流の多様化に伴い、専門知識を活かして通関手続を支える通関士の活躍の場は、ますます広がっています。

通関業者に限らず、輸出入を行うメーカーや商社など、さまざまな企業から通関士の求人が出されています。しかし、現状、日本国内の通関士は需要に対して人数が少ないといわれています。通関士の資格を取得していれば、就職や転職にも有利に働くでしょう。

今後も国際物流が社会や経済を支えていく中で、専門知識を備えた通関士は、適正かつ円滑な貿易を支える人材として、継続的な活躍が期待されます。

AIの普及によってなくなる可能性はある?

AIの進化によって通関士の仕事がなくなるのではないかと不安に感じる方もいるかもしれません。確かに、単純なデータ入力作業などは自動化が進む可能性が高いといわれています。

結論からいうと、通関士の需要そのものがなくなるとは考えにくいでしょう。近年、越境EC(海外通販)の急速な普及や、主要国とのEPA(経済連携協定)の拡大に伴い、グローバルな貿易量と手続きの複雑さは増加傾向にあります。税関に提出する通関書類の審査などを適切に行うためには、法律を正しく解釈できる「人間の通関士」による判断が不可欠といえます。

また、通関士は税関職員への各種説明を代行する業務も担っており、こうした専門知識に基づくコンサルティング業務は機械的な自動化が難しい領域です。AIが普及する時代だからこそ、高度な専門性や現場で求められるその場の判断力の価値はさらに高まっていくと考えられます。

通関士になるには「通関士」の資格取得が必須

通関士になるには、まず通関士試験を受けて、資格を取得しなければなりません。ここからは、通関士の資格取得に関する基礎知識を紹介します。

「通関士」の資格とは?

通関士になるためには、「通関士試験」の合格が必要となります。通関士とは日本で唯一の貿易に関する国家資格です。

なお、資格を取得した直後から通関士として働けるわけではありません。試験に合格したうえで通関業者へ就職すると、通関業者から通関士として届出がされます。実務に携われるようになるのは財務大臣による確認が完了した後です。

また、通関業者や通関業務部門のある企業以外の商社やメーカーなどに勤務する場合は、通関士と名乗ることはできません。

通関士試験の概要・合格率は?

ここからは、通関士試験の概要や合格率について紹介します。


受験資格

通関士試験を受験するにあたり、受験資格は特に設けられていません。年齢や学歴、国籍などの制限はなく、誰でも受験できます。


試験の時期

試験は年に1回行われます。日程はその年により異なるものの、10月の第1日曜日が試験日に設定されることが多いです。


試験地

試験地は、北海道・新潟県・東京都・宮城県・神奈川県・静岡県・愛知県・大阪府・兵庫県・広島県・福岡県・熊本県・沖縄県の全国13カ所です。試験会場の詳しい所在地については、税関のホームページにて案内されています。


試験科目・合格基準

試験科目は以下の3科目です。

  • 1)通関業法
  • 2)関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)
  • 3)通関書類の作成要領その他通関手続きの実務
なお、各科目の合格基準は満点の60%以上となる傾向があります。ただし、受験する年度によって若干異なる場合があるため、受験前に最新の情報を確認しておくとよいでしょう。


出題形式

試験はマークシート形式で行われ、出題形式は「選択式」「択一式」「計算式」「選択式・計算式」に分かれています。

上記の試験科目のうち、1)と2)は「選択式」と「択一式」のみ、3)は、上記4つの形式で出題されます。計算式の問題では電卓を使って、関税額や課税価格を計算します。


受験手数料

通関士試験を受験するには、受験手数料3,000円が必要です。受験手数料は収入印紙を願書に貼付する形式で納付するため、現金や郵便切手などで支払うことはできません。


合格率

令和7年(第59回)の受験者数は6,322人、合格者数は954人でした。合格率は15.1%です。

「通算5年以上」の通関業務経験で受験科目の免除がある

通算5年以上、通関業者での通関業務や官庁での特定業務の経験があれば、3科目のうち、「3)通関書類の作成要領その他通関手続の実務」が免除されます。

さらに、業務経験が通算15年以上であれば、「2)関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)」もあわせて免除となります。

そのため、1)の通関業法に絞った試験対策が可能です。

受験者のなかには、通関業者に就職してから試験に臨む人もいます。

通関士は語学力が高い方がいい?どんな場面で語学力が必要になる?

通関士の仕事では、貿易に関する手続きや書類の確認・作成を行うため、英語を中心とした外国語の読解力があると、業務を円滑に進めやすくなります。

たとえば、英語で記載された仕入書(インボイス)や保険証券、商品カタログなどを確認し、商品の素材やサイズ、価格などを調べることがあります。そのため、貿易や商品に関する英単語を理解できる程度の読解力があると、書類の内容を把握しやすくなります。

ただし、業務で頻繁に使う英単語や表現は、実務経験を積むなかで徐々に覚えられる場合があります。語学力は業務に役立ちますが、通関士として働くうえでは、関税法をはじめとする法令や通関実務の専門知識を身につけることも重要です。

通関士を未経験から目指す際の勉強方法

通関士になるには、国(財務省・税関)が実施する通関士試験(国家資格)に合格する必要があります。試験では通関業法や関税法などの法律知識がメインとなるため、専門用語を体系的に理解することが求められるでしょう。

専門用語が多岐にわたるため、独学では途中で挫折してしまうケースも少なくありません。そのため、通信講座などを活用して体系的に学ぶことが、合格への近道といえます。

なお、ユーキャンの通関士講座では、初学者でも無理なく学習を進められるカリキュラムが整っており、未経験から資格取得を目指す方にも適した環境が用意されています。

まとめ

通関士の仕事は、通関業者のほか、さまざまな業界で高い需要が見込める仕事です。国際的な仕事に興味がある人や、転職や就職に有利な資格を取りたい人は、通関士試験の受験を検討してみましょう。

通関士を目指すのであれば、ユーキャンの通関士講座がおすすめです。使用するテキストは通関士試験に精通したプロが、毎年の出題傾向を細かく分析したうえで作成しています。添削や質問などのサポートも行き届いており、知識ゼロから始めても合格を目指せる実力が身につきます。ぜひ検討してみてください。

加藤 佑喜
この記事の監修者は加藤 佑喜

船会社、輸入商社、通関業者での勤務経験を有する。
輸入商社では薬品・香辛料、通関業者では主に食品分野を担当し、貿易実務、輸入手続、通関実務に携わる。

よくある質問

通関士は独学でも合格できる?

法律の知識がある人や物流・貿易関連の仕事で実務経験がある人なら、独学での合格も可能でしょう。しかし、未経験者には理解が難しい法律についての知識も必要なため、独学での合格難易度は高くなってしまいます。

通関士の合格に必要な勉強時間は?

通関士試験の合格には、400時間程度の勉強時間が必要です。

300時間程度で合格する人もいますが、その場合は、すでに法律や貿易に関する知識があるケースが多いです。法律、貿易分野の勉強が初めての場合は、最低でも400時間は必要だと考えましょう。

通関士の年収は?

通関士の平均年収は591万円程度、月々の給料に換算すると約42万円です。これはあくまで平均であり、勤務先や年齢、スキルなどによって500万~1,200万円と差があります。

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