通関士試験の難易度・合格率は?難易度が高い理由、合格基準、試験対策を解説
- 更新日:2024/08/26
通関士試験は、例年の合格率が10~20%と難易度が高めの国家資格です。平均合格率は15.6%(第1回~第57回試験)。令和5年(第57回)の合格率は24.2%と比較的高めでした。
この記事では、輸出入の税関手続きを代行する通関士を目指す人に向け、通関士試験の難易度や難しい理由、合格基準、合格するために必要な勉強時間、他の資格試験との違いなどを解説します。難関試験を突破して、国際物流業界で活躍してください。
このページを簡潔にまとめると・・・
- 通関士は、物流業者からの委託を受け、輸出入の際に税関へ提出する通関書類の作成や、通関手続きを行う貿易のスペシャリスト。
- 通関士試験の平均合格率は15.6%で、難易度は高い。
- 合格に必要な勉強時間の目安は、400時間。
通関士とは?
通関士とは、物流業者からの委託を受け、輸出入の際に税関へ提出する通関書類の作成や、通関手続きを行います。また、税関の処分や対応に不服がある場合は、業者に代わって異議を申し立てることもあります。貿易に関連した国家資格は通関士のみであり、まさに貿易のスペシャリストといえる専門職です。
通関士の仕事内容
通関士は「輸出統計品目表」「実行関税率表」などを使って、法令上問題がないか確認しながら物品を分類し、税関に提出する書類を作成します。輸入において納税額を計算するのも通関士の仕事です。
通関士は通関業者または通関業務部門のある企業に所属して働きます。2017年の法改正によって、一部の会社では在宅勤務も認められるようになりました。そのため、家庭と仕事を両立させたい女性などからも人気が高まっています。
通関士試験の難易度と合格率
通関士試験の平均合格率は15.6%です。合格率が20%を超える年もある一方で、10%を割る年もあり、全体的にみて難易度は高いといえます。
令和5年(第57回)~平成27年(第49回)の合格率は以下のとおりです。
年 (開催回数) | 受験者(人) | 合格者(人) | 合格率(%) |
---|---|---|---|
令和5年(第57回) | 6,332 | 1,534 | 24.2 |
令和4年(第56回) | 6,336 | 1,212 | 19.1 |
令和3年(第55回) | 6,961 | 1,097 | 15.8 |
令和2年(第54回) | 6,745 | 1,140 | 16.9 |
令和元年(第53回) | 6,388 | 878 | 13.7 |
平成30年(第52回) | 6,218 | 905 | 14.6 |
平成29年(第51回) | 6,535 | 1,392 | 21.3 |
平成28年(第50回) | 6,997 | 688 | 9.8 |
平成27年(第49回) | 7,578 | 764 | 10.1 |
通関士試験の難易度が高いのはなぜ?
ここでは、通関士試験の難易度が高い理由について解説します。通関士試験のための勉強や準備の参考にしてください。
法律や貿易に関する専門用語が頻出する
物流や法律の知識が少ない人にとって壁になりやすいのが専門用語です。通関士試験の問題には、一度も聞いたことがないような法律用語、税関や輸出入に関する専門用語が出てくるので、一般にはなじみにくい内容といえます。具体的にイメージしにくい専門分野の勉強になるため、最初のきっかけがつかみにくいのが特徴です。
法改正があるごとに対応が必要
通関士試験の出題範囲になるのは、その年の7月1日現在で施行されている法律とその関係政令、省例、告示・通達です。これらが改正・更新されるたびに、勉強する内容も変わることになります。
自分で最新情報をチェックするのは手間がかかるうえ、法改正のタイミングによっては試験範囲に含まれるかどうかの判断も必要です。独学で資格取得を目指す人にとっては、出題範囲を把握するだけでも負担になるでしょう。
通関実務における「申告書作成」
通関士試験の3科目目「通関実務」では、実際の業務に関連した問題が出題されます。輸出入の申告に必要な「申告書作成」の問題では、計算や品目番号の記入が必要になります。この問題は知識を暗記するだけでは答えられません。繰り返し過去問題を解いて、早く正確に解くスキルを身につけることが必要です。
ユーキャンの通関士講座では、多くの人が苦手とする「申告書作成」についても、講義DVDと専用テキストでわかりやすく解説しています。解答時間を短縮するメモの書き方のアドバイスや添削指導など、講師一同、全力でサポートします。
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「答えがない」問題もある択一式
通関士試験は全科目マークシート方式ですが、勘やあてずっぽうで加点しにくい仕組みになっています。通関士試験の択一式問題は5択ですが、正解がない問題も含まれています。その場合は「0」を選ばなければなりません。しっかりとした知識が身についていないと、点が取りづらい問題形式といえます。
通関士試験とは?
ここでは、通関士試験の日程や科目、受験資格、合格基準、受験手数料、試験会場について紹介します。
試験日程
試験日程は例年7月上旬に官報で発表され、おおむね10月上旬に実施されています。受験願書の配布期間は7月上旬から8月上旬、受付期間は7月下旬から8月上旬の約2週間です。
試験科目
試験科目は「通関業法」(45点)、「関税法等」(60点)、「通関実務」(45点)の3科目です。各試験はいずれもマークシート式の筆記試験で行われます。出題形式は択一式、選択式、計算式(通関実務のみ)、選択式・計算式の4つです。
試験科目の一部免除制度
通関業者の通関業務または官庁における関税その他通関に関する事務の経験が通算15年以上ある人は、通関実務と関税法等の2科目が免除になります。通関業務または官庁における通関事務の経験が通算5年以上の場合は、通関実務のみが免除されます。
受験資格
受験資格は特にありません。学歴、年齢、国籍などを問わず誰でも受験できます。実務経験も不要なので、これから通関業者で働きたい人も受験可能です。
合格基準
合格基準についての事前の公表はなく、合格発表時に公表されます。ただし、一般的には3科目5項目のすべてで満点の60%以上を獲得することで合格といわれています。
受験手数料
受験手数料は3,000円です。収入印紙を税関に持参するか、収入印紙を貼付した願書を郵送して支払います。通関業者で働いている人は、NACCSを介して電子納付(この場合は2,900円)することもできます。
試験会場
試験会場が設置される都道府県は、北海道、新潟県、東京都、宮城県、神奈川県、静岡県、愛知県、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県、熊本県、沖縄県です。試験会場の詳細は官報または税関のWebサイトに掲載されています。
通関士試験に合格するために必要な勉強時間
通関士試験に合格するために必要な勉強時間の目安は、400時間程度です。400時間という勉強時間は、1日平均2時間余りとすると6カ月程度で達成できます。勉強時間を確保できない日があったとしても、土日などの休日にまとめて勉強して取り返しましょう。
すでに通関業務の経験がある場合は、もっと短時間で合格できる可能性もあります。また、独学を選ぶか通信講座を選ぶかなど、学習スタイルによっても必要な時間は変わります。
通関士試験と他の資格試験を比較
他の国家資格よりも難易度が高いのか知りたい人もいるでしょう。ここでは、通関士試験と税理士、宅建士の資格試験の難易度や勉強時間を比較します。
税理士試験と比較した場合
通関士試験と税理士試験を比較した場合、税理士試験のほうが難易度は高いです。税理士試験に合格するには一般的に2,000時間程度が必要といわれており、通関士の約5倍勉強する必要があります。税理士になるには、法律だけでなく簿記や財務諸表に関する勉強も必要になるなど、幅広い知識が求められます。
宅建士(宅地建物取引士)試験と比較した場合
通関士試験と宅建士試験を比較した場合、通関士試験のほうがやや難易度が高めです。通関士試験の合格に必要な時間が400時間程度なのに対し、宅建士試験は300時間程度といわれています。同じ法律系の資格でも、税関や輸出入といった一般にはなじみのない知識が必要な分、通関士試験のほうが難しいと感じる人は多いです。
通関士試験の勉強は独学、通信講座のどちらがおすすめ?
通関業務の経験がある人や法律の知識がある人は、独学でも合格できる可能性はあります。一般の社会人や家事・育児などで時間が取りづらい人、勉強する場所が限られてしまう人には通信講座がおすすめです。
通関士試験の問題は専門用語が多く、法改正によって出題範囲が変わるため、通信講座で勉強したほうが効率的に勉強できます。動画解説や最新の出題傾向を分析した問題集などがあり、効率的に知識を身につけられるでしょう。また、不明点を質問できるなどサポートも充実しています。
まとめ
通関士試験は難易度が高く、しっかりとした知識を身につける必要があります。しかし、きちんとした対策と計画を立てて準備していけば、十分に合格できる資格試験です。グローバルビジネスが拡大する今こそ、輸出入のスペシャリストとして羽ばたいてください。
ユーキャンの通関士講座は、知識ゼロから始めても6ヵ月で合格力が身につけられます。出題傾向を細かく分析して作成した「セレクト過去問題集」や図解、色分けを使った理解しやすいテキストなどが特徴です。多くの人が苦手とする「申告書問題」も、講義動画と専用テキストにより短期間でマスターできます。
ベテラン講師や専門指導スタッフによるサポートも充実しているので、ぜひご検討ください。
- この記事の監修者は生涯学習のユーキャン
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。
よくある質問
- 通関士は独学でも合格できる?
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法律の知識がある人や物流・貿易関連の仕事で実務経験がある人なら、独学での合格も可能でしょう。しかし、未経験者には理解が難しい法律についての知識も必要なため、独学での合格難易度は高くなってしまいます。
- 通関士の年収は?
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通関士の平均年収は540万円程度、月々の給料に換算すると約38万円です。これはあくまで平均であり、勤務先や年齢、スキルなどによって500万~1,200万円と差があります。
- 通関士の就職先は?
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通関士の主な就職先としては通関業者が多いものの、貿易や流通に携わる会社、航空会社や海運会社、輸出入を行っている商社やメーカーへ就職する人も少なくありません。
国境を越えてモノのやりとりをするには、税関に申告して検査や審査を受けなければなりません。通関士は、通関手続きの代行や提出書類の作成を一手に引き受ける貿易のスペシャリストです。通関業者では原則として各営業所ごとに通関士を置く義務があるため、ニーズは安定しています。また、資格取得によって、輸出入に関連した企業、通関業を兼業している倉庫業や航空会社の貨物部門、運送・物流会社など、専門性の高い部署への就職・転職やキャリアアップにも役立ちます。通関士は貿易関係の唯一の国家資格であり、受験制限はありません。輸出入手続きを担う存在として日本経済の発展に貢献できる、将来性の高い注目の資格です。
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