• 更新日:2024/08/26

通関士とは、通関書類の作成や通関手続きの代行といった通関業務を請け負う財務省管轄の国家資格のことです。通関士を目指す人にとっては、年収も気になるポイントではないでしょうか。この記事では、通関士を目指す人に向けて年収の目安などを解説します。世代や勤務先の違いによる年収の差や、通関士として年収アップを目指す方法も紹介しますので、キャリアプランの参考にしてください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 通関士の平均年収は540万円程度、月々の給料に換算すると約38万円。
  • 通関士の年収は他の貿易業の職種とも差があり、通関士のなかでも性別、年齢層によって差がある。
  • 通関士になるには、財務省が管轄する国家試験である通関士試験への合格が必須。

通関士の平均年収

通関士の平均年収は540万円程度、月々の給料に換算すると約38万円です。これはあくまで平均であり、勤務先や年齢、スキルなどによって500万~1,200万円と差があります。

資格手当が支給されるケースが多い

通関士の平均年収は一般的な会社員と同じくらいです。ただし、通関士は資格が必要な職業であり、通関手続き業務を行う場合は資格手当の支給があるケースが多くなっています。資格手当の相場は5,000~1万5,000円ほどであり、職場や勤続年数によって差があります。そのため、資格取得は給料を増やしたい場合に有利といえるでしょう。

年収アップパターン

通関士の給料は年功序列であることが多く、勤続年数に応じて年収が上がる傾向にあります。勤務期間が長くなり年齢が上になってくると、役職につくこともあるでしょう。役職手当をもらうことによりさらなる年収アップが見込めます。

通関士の平均年収に関する「差」

通関士の年収は他の貿易業の職種とも差があり、また、通関士のなかでも性別、年齢層によって差があります。この差がどのくらいあるのかについて説明します。

他の貿易業の職種との差

貿易業には通関士以外にもさまざまな職業があります。商社の海外営業の平均年収は1,137万円、海運会社700万円、メーカーの海外営業は621万円、倉庫会社615万円、フォワーダー営業は551万円、貿易事務440万円が目安です。通関士と比べると、職種によっては700万円ほどの差になることもあります。

性別による差

通関士は女性でも男性でも同じように活躍できる職業です。性別による収入差はありません。しかし、女性は妊娠や出産による産休や育休、時短勤務などで平均年収が男性より低くなる傾向があります。その半面、一度キャリアから離れても復帰しやすい職業といえます。

世代による差

通関士の世代別の年収は、20代で300万~380万円、30代で420万~480万円、40代で530万~600万円、50代で600万~650万円です。通関士は年齢が上がるにつれて平均年収が上がる傾向にあり、20代と50代では倍近く差があります。

勤務先による年収の差

通関士は勤務先によっても年収に差があります。勤務先による差がどのくらいになるのか説明します。


国内の貿易・物流企業

国内の貿易・物流企業で働く通関士の平均年収は400万~500万円ほどです。一般的な会社員とほぼ同じで、資格手当がつく分、少し多くなります。


外資系企業・海外勤務

外資系企業や海外勤務の通関士の平均年収は600万~800万円ほどで、国内企業勤務の場合と比べ200万~300万円ほど差があります。国内企業勤務の通関士よりも平均年収が高くなる理由は、海外赴任手当、家族手当、危険手当などの支給があるからです。

通関士として年収1,000万円以上目指す方法とは?

国内の貿易・物流企業で働く通関士の平均年収は400万~500万円ほどです。ここでは、通関士として年収1,000万円を目指す方法を説明します。

海運業への就職

通関士の勤務先としては主に陸運業、空運業、海運業が挙げられますが、なかでも海運業は年収が高いケースが多いです。海運業の需要が高く、業績が上昇傾向にあるからです。海運は近年増加している新興国との貿易でよく利用されています。役職や勤続年数によっては年収1,000万円に近づくことができるでしょう。

外資系企業・海外勤務のある企業に勤務する

年収1,000万円を本格的に目指すのであれば、国内での勤務ではなく、外資系企業や海外勤務がある企業への就職がおすすめです。海外赴任手当や年齢による昇給、役職手当などが追加されれば、年収1,000万円は不可能ではありません。ただし、海外赴任手当が高額になるときは、治安が悪く危険な地域での勤務になる可能性もあります。

管理職を目指す

年収1,000万円を目指すのであれば、通関士としてキャリアを積み、重要な役職につくことも必要です。役職手当があれば年収1,000万円を目指すことができます。ただし、国内勤務だけではなかなか年収1,000万円に到達することは難しいため、海外勤務も視野に入れましょう。

通関士になる方法

通関士になるには、財務省が管轄する国家試験である通関士試験への合格が必須となります。通関士試験を受けるための受験資格は特になく、学歴や年齢、特定の業務経験などでの制限もありません。日本国籍ではない人でも受験可能です。通関士試験に合格したあと、勤務先の通関業務を行う企業が申請し財務大臣の確認を受ければ、通関士として働けます。

通関士の勤務先

通関士の資格を活かせる職業は通関業者です。通関業者とは輸入や輸出に必要な書類の作成や手続きなどをする業者です。通関業者は輸入や輸出に関する業務を行うため、港や空港に近い場所が勤務先となることが多くなっています。また、通関士は業務の特性上、個人で資金や物品の保管場所を用意するのは困難なので、独立するのは難しいといえます。

通関士の勤務形態

通関士の勤務時間は、基本的には税関が開いている時間に合わせて8時30分~17時30分が多いです。輸出入申告は24時間可能なので、場合によっては夜勤がある企業もあります。一般的に休日は土曜・日曜・祝日ですが、お盆、ゴールデンウィーク、クリスマスシーズンなど、輸出入が活発になる時期には休日出勤することもあります。

通関士の資格取得のための「通関士試験」

通関士の資格は、財務省が管轄する通関士試験に合格することで取得できます。ここでは、通関士試験について説明します。


試験概要

通関士試験は年に1回、10月上旬に行われることがほとんどです。7月上旬ごろに試験日程が発表されます。出題形式はマークシートによる選択式ですが、計算問題や細かい点を問われる問題もあり、しっかりと知識を身につける必要があります。


試験科目

試験科目は「通関業法」「関税法等」「通関実務」の3つです。それぞれの試験時間は50分、1時間40分、1時間40分となっています。午前中に「通関業法」と「関税法等」、午後に「通関実務」の試験が行われます。


受験資格

通関士試験の受験資格は特になく、誰でも受験できる資格試験です。学歴、就労経験、年齢、国籍などによる制限はありません。通関業者や官庁で特定の業務に通算15年以上従事していると通関業法のみでの受験、通算して5年以上従事していると関税法等、通関業法の2科目だけの受験も可能です。


合格基準

合格基準については事前には発表されず、合格発表のときにわかるようになっています。3つの科目でそれぞれ60%以上正答すれば合格となることが多いです。令和5年に行われた第57回通関士試験でも、各科目60%以上が合格基準でした。


合格率

通関士試験の合格率は平均して15.6%(第1回~第57回試験)です。20%に達する年もありますが、10%に満たない年もあり、全体的に難易度は高めです。1科目だけ合格点に達する人の割合が60~70%で、3科目の試験範囲をすべて網羅するのは難しい傾向にあります。

通関士の資格取得のメリット

通関士を目指すなら通関士試験の合格、資格取得が必須です。資格を取ると、資格手当が給料に上乗せされる場合があります。また、通関業者は、最低でも1つの営業所につき1人は通関士を雇わなければならないため、比較的就職しやすい資格です。通関士の資格取得によってキャリアアップに有利になる可能性も高いといえるでしょう。

まとめ

通関士の平均年収は大体540万円ほどです。資格が必要な職種なため、資格手当がもらえる場合もあります。

ユーキャンの通関士講座では、通関士試験を熟知しているプロが作成、毎年の出題傾向を分析し、改良を重ねたテキストを使用しています。実戦力がつく「セレクト過去問題集」などもあり、実践的な勉強が可能です。通関業に関する知識ゼロから始めても、試験を突破できる合格力が身につきます。通関士を目指すなら、ぜひ検討してみてください。

生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

通関士試験の難易度は?

通関士試験は、例年の合格率が10~20%と難易度が高めの国家資格です。

通関士は独学でも合格できる?

法律の知識がある人や物流・貿易関連の仕事で実務経験がある人なら、独学での合格も可能でしょう。しかし、未経験者には理解が難しい法律についての知識も必要なため、独学での合格難易度は高くなってしまいます。

通関士の就職先は?

通関士の主な就職先としては通関業者が多いものの、貿易や流通に携わる会社、航空会社や海運会社、輸出入を行っている商社やメーカーへ就職する人も少なくありません。

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男女ともに活躍!貿易関連で唯一の国家資格

国境を越えてモノのやりとりをするには、税関に申告して検査や審査を受けなければなりません。通関士は、通関手続きの代行や提出書類の作成を一手に引き受ける貿易のスペシャリストです。通関業者では原則として各営業所ごとに通関士を置く義務があるため、ニーズは安定しています。また、資格取得によって、輸出入に関連した企業、通関業を兼業している倉庫業や航空会社の貨物部門、運送・物流会社など、専門性の高い部署への就職・転職やキャリアアップにも役立ちます。通関士は貿易関係の唯一の国家資格であり、受験制限はありません。輸出入手続きを担う存在として日本経済の発展に貢献できる、将来性の高い注目の資格です。
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