運行管理者とは?業務内容から資格取得に必要な条件・選任方法まで解説
運行管理者とはどのような資格でどのような仕事か、主な業務内容、資格取得に必要な条件などについて解説します。
運行管理者とは、自動車運送業者に必要な国家資格です。運行管理者試験に合格すると、自動車運送業者で働く際に有利になる可能性があります。この記事では、運行管理者試験の合格率などについて解説します。試験内容や合格の可能性を高めるためのポイントにも触れるので、ぜひ参考にしてください。
運行管理者とは、自動車運送業者の安全を確保するために設けられている国家資格です。試験を受けて合格した場合、運行管理者として業務にあたるために必要な「運行管理者資格者証」が交付されます。運行管理者の資格を取得すれば、自動車運送業で働くうえで有利になる場面が多くなります。
運行管理者の資格者証を取得する方法は、2つあります。ここでは、それぞれについて解説します。
運行管理の実務経験が5年以上あり、さらにこの間に運行管理についての講習を5回以上受講(このうち、少なくとも1回は基礎講習を受講)していれば、定められた書類を提出するだけで運行管理者の資格を取得できます。ただし、そもそも資格がない状態で実務経験を積むのは簡単ではありません。そのため、この条件を満たして資格を取得できる人は少数派です。
公益財団法人運行管理者試験センターが実施している試験に合格すれば、運行管理者の資格取得が可能です。試験には受験資格が定められているため、条件を満たしたうえで受験を申し込む必要があります。具体的な受験資格については、以下でくわしく解説します。
運行管理者試験を受験するには、2つの受験資格のうちのいずれかを満たしている必要があります。ここでは、それぞれの受験資格について解説します。
運行管理の実務経験が1年以上あれば、受験資格として認められます。実務経験として認められるのは、貨物軽自動車運送事業を除いた自動車運送事業者の事業用自動車、または特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車の運行管理です。特定第二種貨物利用運送事業者の事業用自動車は、緑色のナンバーの車両です。
実務経験がない場合でも、国土交通大臣が認定する講習実施機関で基礎講習を修了している人は、運行管理者試験の受験資格として認められます。対象となるのは、平成7年4月1日以降に実施された、試験の種類(貨物と旅客)に応じた基礎講習です。受験申し込みの際に修了していなくても、試験日の2週間前までに修了予定であれば問題ありません。
運行管理者試験はどのような内容になっているのでしょうか。ここでは、試験内容について解説します。
試験時期 | 2~3月と8~9月の年2回 ※上記日程より選択可能 |
---|---|
試験方式 | CBT ※パソコンを使って解答する方式 |
受験資格 | 以下のいずれかの条件を満たしている方 ・運行管理に関して実務経験が1年以上ある方 ・国土交通大臣が認定する「基礎講習」(貨物)を修了した方、もしくは修了見込みの方 |
試験形式 | 選択式:30問 |
合格ライン | 原則、総得点が全体の60%(30問中18問)以上。ただし、各分野1問以上(運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識及び能力については2問以上)の正答が必要です。 |
受験料 | 6,000円 ※別途、要手数料 |
運行管理者試験は、貨物と旅客の2つにわかれています。貨物は運送や物流を担うトラックが対象となるのに対し、旅客は人を乗せて運ぶタクシーやバスなどが対象です。いずれの試験でも合計30問が出題され、選択式となっています。総得点が満点の60%以上、30問中18問以上に正解すれば合格です。
ただし、出題分野ごとに最低限必要な正答数が決まっているため、全体について理解しておく必要があります。
貨物と旅客では、出題される内容にも違いがあります。具体的なそれぞれの出題内容は、以下のとおりです。
出題分野 | 出題数 |
---|---|
貨物自動車運送事業法関係 | 8問 |
道路運送車両法関係 | 4問 |
道路交通法関係 | 5問 |
労働基準法関係 | 6問 |
その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識・能力 | 7問 |
出題分野 | 出題数 |
---|---|
道路運送法関係 | 8問 |
道路運送車両法関係 | 4問 |
道路交通法関係 | 5問 |
労働基準法関係 | 6問 |
その他運行管理者の業務に関し、必要な実務上の知識・能力 | 7問 |
運行管理者試験の各科目では、さまざまな内容の問題が出題されます。ここでは、それぞれについて解説します。
貨物では貨物自動車運送事業法、旅客では道路運送法に関する問題が出題されます。それぞれの基本となる法律であり、安全面に関わる内容についても理解しておく必要があります。人数や日数などの具体的な数字も含めて知識を身につけましょう。
業務で使用する車両の安全に関わる内容について出題されます。車両の登録、検査、点検、保安部品などに関する基準を把握しておきましょう。出題数は少ないですが、確実に得点できるよう勉強してください。
道路交通法のなかでも、運行管理に関連する部分について出題されます。特に、飲酒運転や過労運転に関する基準について出題される場合が多いです。最新の法改正についても正しく理解しておきましょう。
労働基準法のうち、運転を伴う労働に関する内容について出題されます。連続運転時間や休憩時間についてよく出題されるため、具体的な数字を覚えておく必要があります。拘束時間に関する出題も多いです。
運行管理者として取り組む業務に関する内容について出題されます。基本的に貨物自動車運送事業法・道路運送法に準ずる内容になっていますが、運行管理者の視点に立った問題が出題されるところが特徴的です。
運行管理者試験は例年、2~3月頃と8~9月頃の年2回実施されています。従来は筆記試験のみでしたが、2021年度(令和3年度)第3回試験からは、答案用紙ではなくパソコンを使って解答するCBT試験に全面移行されています。CBT試験は指定された期間から希望日を選んで受験します。
最新の令和6年度 第1回試験の試験日は令和6年8月3日(土)~9月1日(日)となっています。受験者はCBT試験専用サイトにて指定された試験会場、日時から選ぶことができます。なお、試験結果・合格発表は受検した日に関係なく9月18日に公表されました。
運行管理者試験はどのように実施されるのでしょうか。ここでは、試験の流れと申込方法について解説します。
運行管理者試験を受験する前に、16時間の基礎講習を受けておく必要があります。基礎講習は独立行政法人自動車事故対策機構のほか、認定を受けた全国の自動車教習所等で実施されているので、事前に問い合わせて確認しておきましょう。
基礎講習修了証または運行管理者講習手帳を添付して、受験の申し込みをして受験手数料を支払えば、手続きは完了です。試験日の2週間前になると、試験会場名が記載されている受験通知書が送付されます。受験通知書は、忘れずに試験会場に持参してください。
筆記試験の申込方法は、インターネット申請または書面申請から選択することが可能です。インターネット申請の場合、申請画面で、メールアドレスを入力したり、本人確認書類をアップロードしたりして手続きします。
書面申請の場合は運行管理者試験センター、各都道府県トラック協会、バス協会、ハイヤー・タクシー協会などで申請用紙(受験申請書)を購入し、必要事項を記入したうえで提出する必要があります。CBT試験はインターネット申請のみです。
運行管理者試験の合格率は、過去5年間の平均で貨物が34.4%、旅客が35.3%(令和6年度第1回試験では、貨物で32.9%、旅客で30.7%)でした。基本的に旅客の方が合格率が高くなっています。
くわしい過去10年間の運行管理者試験の受験者数、合格者数、合格率は以下のとおりです。
貨物、旅客別にご紹介します。
年度 | 受援者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和6年度 第1回 |
24,993人 |
8,224人 |
32.9% |
令和5年度 第2回 |
22,493人 |
7,701人 |
34.2% |
令和5年度 第1回 |
26,293人 |
8,805人 |
33.5% |
令和4年度 第2回 |
23,759人 |
8,209人 |
34.6% |
令和4年度 第1回 | 28,804人 | 11,051人 | 38.4% |
令和3年度 第2回 | 27,982人 | 9,028人 | 32.3% |
令和3年度 第1回 | 34,164人 | 10,164人 | 29.8% |
令和2年度 第2回 | 32,575人 | 14,295人 | 43.9% |
令和2年度 第1回 | 39,630人 | 12,166人 | 30.7% |
令和元年度 第2回 | 中止 | ||
令和元年度 第1回 | 36,530人 | 11,584人 | 31.7% |
平成30年度 第2回 | 29,709人 | 9,743人 | 32.8% |
平成30年度 第1回 | 35,619人 | 10,220人 | 28.7% |
平成29年度 第2回 | 29,063人 | 9,605人 | 33.0% |
平成29年度 第1回 | 37,774人 | 13,238人 | 35.0% |
平成28年度 第2回 | 29,621人 | 6,069人 | 20.5% |
平成28年度 第1回 | 36,028人 | 10,868人 | 30.2% |
平成27年度 第2回 | 29,520人 | 8,582人 | 29.1% |
平成27年度 第1回 | 32,699人 | 7,402人 | 22.6% |
運行管理者試験(貨物)過去5年間の合格率の平均は34.4%となっております。3人に1人は受かる計算となるため、合格率が10%ほどの試験と比較すると難易度は比較的易しく感じますが、油断は禁物です。運行管理者試験の受験者は実務経験1年以上の方に限定されます。つまり、実務経験から得られるある程度の知識が身について状態で受験して、3人に1人しか受からないとも言えるのです。
年度 | 受援者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和6年度 第1回 | 6,469人 | 1,984人 | 30.7% |
令和5年度 第2回 |
5,434人 |
1,984人 |
36.5% |
令和5年度 第1回 |
5,158人 |
1,780人 |
34.5% |
令和4年度 第2回 |
4,675人 |
1,651人 |
35.3% |
令和4年度 第1回 |
5,403人 |
2,167人 |
40.1% |
令和3年度 第2回 | 5,787人 | 1,999人 | 34.5% |
令和3年度 第1回 | 6,740人 | 2,196人 | 32.6% |
令和2年度 第2回 | 7,610人 | 3,604人 | 47.4% |
令和2年度 第1回 | 9,714人 | 3,026人 | 31.2% |
令和元年度 第2回 | 中止 | ||
令和元年度 第1回 | 8,263人 | 2,624人 | 31.8% |
平成30年度 第2回 | 7,605人 | 2,868人 | 37.7% |
平成30年度 第1回 | 8,998人 | 2,856人 | 31.7% |
平成29年度 第2回 | 8,588人 | 2,928人 | 34.1% |
平成29年度 第1回 | 10,462人 | 3,694人 | 35.3% |
平成28年度 第2回 | 8,028人 | 2,085人 | 26.0% |
平成28年度 第1回 | 8,169人 | 2,876人 | 35.2% |
平成27年度 第2回 | 7,027人 | 2,269人 | 32.3% |
平成27年度 第1回 | 6,889人 | 1,205人 | 17.5% |
運行管理者試験(旅客)過去5年間の合格率の平均は35.3%となって、貨物と比べると少しだけ高い数値となっております。過去の各回の試験の結果を見比べても基本的には旅客の方が合格率が高くなっています。受験者数を比較すると旅客の受験者数は貨物の4分の1から5分の1ほどとなっています。貨物の方がニーズが高いことの表れでもあります。
運行管理者試験の難易度とCBT方式の試験の導入によりパソコンに慣れる必要があることについて紹介します。
運行管理者試験は働きながら合格を狙う方が多いこともあり、その人の環境や学習の仕方、学習にかけられる時間が様々なため、受験者の環境による合否の差が生まれているようです。
運行管理者試験の合格率は20~30%前後で、近年、試験は難化傾向にあります。一夜漬けの学習で合格することは困難と言えるでしょう。出題傾向を押さえ、重要ポイントに絞った学習が合格のカギとなります。
CBTとはComputer Based Testingの略で、PCを利用したテストのことです。
従来は筆記試験のみでしたが、2021年度(令和3年度)第3回試験より、パソコンを使って解答するCBT試験に全面移行されています。 日常でパソコンをあまり使い慣れていない人は、あらかじめ操作に慣れておく必要があります。また、公益財団法人 運行管理者試験センターのWEBサイトにCBTのサンプルテストが掲載されているため、事前にテストを受けCBT方式の試験にも慣れておきましょう。
運行管理者試験の受験手数料は6,000円(非課税)です。
CBT試験に伴い、システム利用料が660円(税込み)で別途かかるほか、
その他希望者のみ、試験結果レポート手数料が140円(税込み)かかります。
また、再受験の場合には上記に加え事務手数料として200円(税込み)がかかりますので注意しましょう。
運行管理者試験は貨物と旅客の2つにわかれているため、それぞれの資格を取得するには別々に試験を受ける必要があります。いずれの資格にも一定の需要がありますが、旅客よりも貨物のほうがニーズは高い傾向があります。貨物では営業所ごとに1名以上の運行管理者の配置が義務付けられており、求人数も圧倒的に多いです。
そのため、貨物と旅客のどちらを受けるか迷っているなら、貨物を選んだほうが活用できる機会は得やすくなります。貨物が対象とする車両はトラックのみであり、内容を比較的覚えやすい点も魅力です。
ここでは、運行管理者試験の合格の可能性を高めるために意識したい勉強方法のポイントについて解説します。
運行管理者試験の内容は、年を追うごとに難しくなっているといわれています。そのため、資格取得を目指すなら、なるべく早めに受験したほうが有利です。基礎講習を受けてから時間がたつと、法律の改正により学んだ内容が古くなる可能性もあります。その場合、新しく勉強し直す必要があるため手間がかかります。基礎講習を受けたら、すぐに試験を受験しましょう。
ひととおり勉強して知識を身につけたら、過去問題や模擬試験に取り組みます。実力を試すことで、自分のレベルを把握できます。苦手な部分がわかったら、重点的に対策しましょう。過去問題や模擬試験を解くと実際の試験を意識しやすくなり、本番に即した勉強ができるようになります。
運行管理者の試験は分野ごとに必要な正答数を満たした上で、満点の60%以上得点できれば合格なので、確実に得点できそうな問題から解いていきましょう。優先順位をつけ、それぞれの分野で最低限必要な正答数を意識しながら解いていくことが重要なポイントです。試験時間の配分も考慮しながら、効率的に問題を解いていきましょう。
ここでは、運行管理者の資格を取得することのメリットについて紹介します。
自動車運送業を営んでいる事業者は、保有している車両の台数に応じて運行管理者を配置する義務があります。そのため、有資格者を求めているケースが多いです。資格があれば、ドライバーからキャリアアップして幅広く活躍できる可能性があります。
運行管理者運送会社などの社内で管理する役割なので、基本的にはデスクワークです。ドライバー業務より体の負担が少なく、50代や60代になっても安定して働きやすいということもメリットです。長く働くために将来を見越して資格を取得するということも賢い選択です。
自動車運送業者で働く場合、運行管理者の資格があると有利に働きやすいです。特に、貨物の資格は役立つ場面が多いので、まずは貨物の運行管理者の資格取得を目指してみることをおすすめします。
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1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。
ドライバーが過労運転とならないようなシフト作成や、安全な運行を実現するための教育や指導、ドライバーの健康状態の確認、さらにはドライバーの休憩所や睡眠をとる施設の管理、補助者への指導や監督、事業者への助言など、業務内容は多岐にわたります。
運行管理者の資格を取得するためのルートは2通りあります。1つは、運行管理者試験に合格することです。試験を受けるには、1年以上の実務経験を積んでいること、もしくは、実務経験と同等の講習を修了していることといった受験資格を満たす必要があります。2つ目は、一定の条件を満たすことで、5年以上の実務経験があることと、基礎講習や一般講習を修了していることのどちらもクリアしていれば、一定の条件を満たしていると判断され、運行管理者の資格を取得できます。
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