キャリア形成とは?企業が実施するべき支援内容やメリットを紹介

  • キャリア形成とは?企業が実施するべき支援内容やメリットを紹介

    公開日:2025.07.14

    更新日:2025.11.14

    キャリア形成とは、自分自身の将来の働き方や目標を見据え、計画的にスキルや経験を積み上げていくプロセスを指します。 かつては、年齢や勤続年数、経験年数に応じて自然とキャリアが積み上がると考えられていましたが、近年では従業員自身が主体的に「キャリア形成」を考えることが一般的となってきました。自分らしい働き方やライフプランに合わせて、キャリアプランを自ら設計する時代です。キャリア形成を進めることは、個人にとって成長や満足度の向上につながるだけでなく、企業にとっても人材の活性化や定着率の向上といったメリットがあります。本記事では、キャリア形成の基本的な考え方から、従業員と企業それぞれにとってのメリット、キャリア形成を具体的に進めるためのステップ、そして効果的な支援策や導入アイデアまで、わかりやすく解説します。

キャリア形成とは何か

キャリア形成とは、自分自身の将来の目標や働き方を見据え、計画的にスキルや経験を積み重ねていくプロセスを指します。
単に昇進や転職を目指すだけでなく、自分の価値観や強み、ライフスタイルに合った働き方を設計し、主体的にキャリアを築いていくことが特徴です。現代では年功序列や終身雇用といった従来の仕組みに依存せず 、自らのスキルや専門性を高めることが求められており、個々のキャリア形成が重視されています。キャリア形成を進める上では、目標設定・計画立案・実行・振り返りのサイクルを繰り返しながら、長期的な視点でキャリアを発展させていくことが大切です。

国のキャリア形成支援の施策例

年功序列や終身雇用制が廃止されつつある中、従業員が自らキャリア形成を進められるように、日本では様々な施策が打ち出されています。具体例として、次のような施策があります。
・人材開発支援助成金
・ジョブ・カードの活用
・教育訓練給付金
・リカレント教育の推進
・職業能力評価制度
国が実施している制度としては、人材開発支援助成金制度や教育訓練給付金が挙げられます。
これらは従業員の能力開発を積極的に行う企業に対し、条件を満たしていれば費用の補助や助成を行う制度です。またジョブ・カードを活用することで無料のキャリアコンサルティングが受けられる仕組みや、既存人材を対象とした生涯学習・リカレント教育(学び直し)なども推進しています。他にも、現代の成果主義に対応し、 職業能力や業務遂行能力に基づいて評価する職業能力評価制度も支援しています。このように、 国と企業が連携して従業員のキャリア形成を支援する仕組みを構築することで、人材育成と従業員の確保、組織力の強化などにつなげることが目的です。

キャリア形成が注目されている背景

キャリア形成が注目されるようになった背景には、3つの大きな変化が関係しています。どのような背景が関係しているのか、それぞれ詳しく紹介します。

年功序列・終身雇用制の変化

日本でキャリア形成が注目される背景には、年功序列や終身雇用といったこれまでの雇用慣行の変化が大きく関係しています。かつての日本では、年齢や勤続年数に応じて自然と昇進・昇給し、同じ企業で定年まで働き続けるのが一般的でした。そのため、年齢を重ねればある程度のキャリアアップが見込める一方で、若手社員はどれだけ努力しても評価されにくく、給与や役職に反映されにくいという不公平な状況も生まれていました。
こうした背景から、企業に依存するのではなく、自らスキルや経験を磨き、主体的にキャリアを築いていくことの重要性が高まり、多くの企業が年功序列・終身雇用制度を見直すようになりました。現在では、個人が自らのキャリア形成に責任を持ち、多様な働き方やリスキリング(学び直し)の機会を活用しながら成長していくことが求められています。このような流れにより、 企業も優秀な人材を確保・育成しやすくなり、社会全体が自律的なキャリア形成を支援する方向へとシフトしつつあります。

ジョブ型雇用の広がり

日本でキャリア形成が注目されるようになった背景には、「ジョブ型雇用」の広がりも大きく関係しています。これまで多くの企業では、特定の職務内容を明確に定めず、長期的な雇用を前提とする「メンバーシップ型雇用」が一般的でした。メンバーシップ型では、業務内容や勤務地、勤務時間が柔軟な一方で、終身雇用を前提とした仕組みが支えとなっていました。
しかし 近年、専門性の高い人材を確保したいという企業の経営戦略のもと、「ジョブ型雇用」を導入する企業が増えてきています。 ジョブ型雇用では、職務や求められるスキルが明確に定義されており、従業員はその内容に応じて自らスキルや経験を高める必要があります。
このような変化により、従業員が自分自身のキャリアをどのように設計し、どの方向に成長していくかを主体的に考える「キャリア形成」の重要性が、これまで以上に高まっているのです。

キャリアデザインと個性の多様化

キャリア形成が注目される背景には、キャリアデザインと個性の多様性も関係しています。従来の年功序列・終身雇用制が変化し、正社員であっても、副業・転職・起業といった選択肢も広がり、個人の強みやライフスタイルに合ったキャリア設計が求められる時代になりました。さらにダイバーシティ推進により、国籍や人種、価値観などに関係なく、誰もが働ける社会へと変化しています。そのため自分の目標や価値観を明確にし、主体的にキャリアを形成する重要性が高まっており、自分だけのキャリアプランを持つことが当たり前となっています。そうした社会の変化の波が影響し、企業でも社員のキャリア形成支援の重要性が認識されるようになりました。

キャリア形成における変化

キャリア形成への意識は時代とともに変化しており、これまでのキャリアとこれからのキャリアには大きな変化があります。どのような違いが起きているのか紹介します。

これまでのキャリア形成

これまでの日本におけるキャリア形成は、企業が主導する形で進められるのが一般的でした。多くの企業では、年功序列や終身雇用を前提に新卒採用を行い、入社から定年まで長期的に勤務することを見越して、時間をかけて人材を育成する仕組みを採用していました。ジョブローテーションや社内研修、大切な業務を順に経験させることで、幅広い業務に対応できるゼネラリストを育て、将来的には管理職や経営層へとステップアップすることが一般的なキャリアパスとされてきたのです。
しかし、このようなキャリア形成のあり方では、年齢を重ねるほど職務経験が蓄積されるため、若い世代がキャリアアップしにくいという課題がありました。その結果、若手社員の早期離職が増え、企業には中堅やベテラン層ばかりが残る状況となり、生産性の低下や組織力の弱体化を引き起こす原因にもなっています。
さらに、企業主導で進めるキャリア形成では、従業員が自らのキャリアを主体的に考える機会が乏しくなり、企業への依存度が高いままになるという問題もあります。こうした背景から、個人が自律的にキャリアを考え、形成していく重要性が改めて見直されているのです。

これからのキャリア形成

近年の働き方や雇用形態の多様化に伴い、キャリア形成は企業主導から従業員主体へと大きく変化しています。従来の年功序列や終身雇用が崩れつつある中、企業に依存せず自分の強みや価値観に合ったキャリアを自ら考え、選択することが求められるようになったためです。またジョブ型雇用の導入や副業解禁、転職市場の活性化により、従業員一人ひとりが自身のキャリアパスを主体的にデザインし、必要なスキルを習得する意識が高まっていることも影響しています。企業もこの流れに対応し、キャリア支援制度やリスキリングの機会を提供しながら従業員の自律的な成長を促す傾向にあります。これからの時代は、自分の将来像を明確にし、自発的にキャリア形成を行うことが重要となるでしょう。

キャリア形成による従業員のメリット

キャリア形成を促進することで、従業員にどのようなメリットがあるのかを紹介します。

自分の求めるキャリアや将来像が明確になる

キャリア形成を意識することで、自分の目指すキャリアや将来像が明確になるメリットがあります。 キャリア形成を考えることで自分の強みや価値観を見つめ直し、どのようなスキルを身に付けたいのか、どのポジションを目指すのかを具体的に描けるようになります。また将来像が明確になることで、日々の業務へのモチベーションが向上し、必要なスキルアップや経験の積み重ねが促進される点も重要です。 結果として、自分らしい働き方や理想のキャリアを実現しやすくなるでしょう。

個性や役割が差別化できる

キャリア形成に取り組むことで、自分の強みや得意分野を明確にし、他の従業員との差別化が図れるメリットもあります。自分に必要なスキルや知識を積極的に学ぶことで、専門性や独自性を発揮しやすくなり、組織内での役割が明確化されます。自分だけの役割を持つことで、チーム内での唯一無二の存在感が確立され、自分の付加価値を提供できるのが大きなメリットです。 結果としてキャリアアップや人事評価にもつながりやすく、仕事への自信やモチベーションが向上します。

仕事へのモチベーションアップにつながる

従業員がキャリア形成を意識することで、自分自身の目標や将来の姿が明確になり、日々の業務にも意味や目的を見出しやすくなります。その結果、「働くことが自分の成長につながっている」という実感が得られ、仕事へのモチベーションが高まります。モチベーションが上がることで、必要なスキルや経験を身につけるために、より主体的かつ積極的に行動できるようになります。そしてその姿勢が、チャレンジ精神を育み、自律した人材へと成長していくことにもつながっていくのです。

キャリア形成による企業のメリット

従業員のキャリア形成を促進することにより、企業にどのようなメリットがあるのかを紹介します。

従業員満足度やエンゲージメントが向上する

キャリア形成を支援することで、従業員は自分の成長や将来のビジョンを明確にし、実現しやすくなります。その結果、従業員満足度やエンゲージメントの向上が期待できる点が大きなメリットです。 会社がスキルアップやキャリアの方向性をサポートすることで、従業員は「自分は会社に大切にされている」と感じ、組織への帰属意識が高まります。
このような意識の変化により、従業員は日々の業務にも主体的に取り組むようになり、生産性の向上や離職率の低下といった効果が見込めます。企業にとっては、優秀な人材の確保や育成がしやすくなり、組織力の強化にもつながります。結果的に、企業は将来にわたって持続的な成長を実現できるようになるでしょう。

組織の活性化と生産性向上につながる

企業がキャリア形成を支援することで、従業員は自分の成長に関して前向きになり、主体的にスキルアップや業務改善に取り組む姿勢が強まります。これにより個々の能力が向上し、組織全体の生産性向上が期待できます。また従業員同士がお互いに刺激となり、新しいアイデアや改善案が生まれやすくなるため、組織の活性化にも効果的です。結果として、キャリア形成を推進することで、自律的に働ける人材が増え、企業の競争力と生産性が高まるという大きなメリットが得られます。

キャリア形成の流れ

キャリア形成までの流れについて、5つのステップで紹介します。

自分自身を理解する

キャリア形成の第一歩は、自分自身の強み・弱み、価値観、興味関心を自分自身が理解することです。自分を深く理解することにより、自分に合ったキャリアの方向性が見えやすくなります。自分を理解するとは、具体的には過去の経験や得意分野を振り返り「どんな仕事にやりがいを感じたか」「どんな環境で力を発揮できたか」などを考えることです。自分自身が面白い、またはやりがいがあると感じたことや、他の人よりもうまくできたことは強みとなることがあります。また自己理解を深めるために「Will(やりたいこと)」「Can(できること)」「Must(やるべきこと)」の3つの観点から考えてみるのも効果的です。他にも性格診断や適性検査を活用し、客観的に自分の特徴を分析するのもよいでしょう。自分のキャリアを考える際は、誰よりも自分を理解することで、無理なく成長できるキャリアプランを描く土台を整えることになります。

適切な目標を設定する

自分の特性を理解したら、次は明確で現実的なキャリア目標を設定します。適切な目標とは「5年後には管理職になる」「専門スキルを高めてスペシャリストを目指す」など、自分の価値観や強みを活かしながら、現在の自分が将来的に達成できるものです。そして目標を設定する際は期限を意識し、具体的かつ達成可能な目標にすることがポイントです。さらに可能なら、数か月以内に達成を目指す短期目標、2~3年以内に達成を目指す中期目標、5~10年ほどかけて達成を目指す長期まで設定しましょう。 適切な目標があることで、日々の業務一つひとつに意味を見出せるようになり、モチベーションを維持しやすくなります。 また目標設定が難しい場合は、ロールモデルを参考にするのも効果的です。ロールモデルとはお手本となる人材のことであり、社内・社外を問わず、参考にすることで働き方や考え方の見本となります。ロールモデルと自分を比較し、何が足りていないか、何をすべきかを考えると適切な目標設定がしやすくなります。

具体的な行動計画を立てる

目標を設定したら、それを達成するための具体的な行動計画を立てます。行動計画は目標を達成するために必要な知識やスキル、経験などを具体的に想定して考えましょう。例えば「資格を取得する」「特定のプロジェクトに参加する」「必要なスキルを学ぶためにワークショップに参加する」といった具体的な経験や内容を明確化します。そしてそれぞれ短期・中期・長期の視点で、いつまでに達成するかをスケジュール化することが大切です。資格を取得するという目標を設定しても、期限を設けなければ勉強への意欲が低下し、いつまでもスキルアップできない可能性があります。そのため、モチベーションを高め、効率的に学ぶためにも、行動計画に期間設定をしておくことが重要です。

計画を実行する

行動計画を立てた後は、日々の業務や学習の中で実行に移すことが重要です。まずは計画で決めた具体的な行動をうまくこなし、小さな成功体験を積み重ねることがポイントです。いきなり大きな行動変化を起こそうとしても、最初はできても長く続けていると疲労感につながってしまいます。そのためまずは着実に実行できるものから始め、成功体験を重ねていくなかでルーチン化し、無意識でも実行できるように体に覚え込ませましょう。また実行する中で困難や失敗があっても柔軟に対応し、粘り強く取り組む姿勢がキャリア形成において重要です。いきなり大きな変化や成功を狙おうとしても、自分の能力が不十分であったり、仲間からの協力を得られなかったりする場合があります。一歩ずつ成功へと近づいていくことを前提に、定期的に計画の進捗状況を確認し、修正しながら実行を続けることでキャリア形成につながります。

計画を見直す

キャリア形成は一度計画を立てたら終わりではなく、定期的な振り返りと見直しが必要です。ビジネス環境と社会情勢の変化、自分の価値観・スキルの習熟に応じて、目標や計画が現状に合っているかを定期的に確認することが大切です。知識やスキル、資格が早く身についた場合には、次のステップを早めたり、新たな目標を追加したりすることで、キャリア形成が促進できます。計画通りに進まない場合は、障害になっている原因を分析し、無理のない範囲で修正します。柔軟に計画を変更していくことで、無理なくキャリア形成へとつなげられるでしょう。

キャリア形成に必要な能力

これからの社会に適応し、キャリア形成を進めていくために必要な能力は何かを紹介します。

課題発見・解決力

キャリア形成において重要なのが課題発見・解決力です。 自分の成長やキャリア目標を達成するために、現在のスキルや環境にどんな課題があるのかを自ら見つけ出し、解決策を考える力が求められます。
例えば「今の自分にどのスキルが不足しているか」「どの経験が足りないか」を客観的に分析し、必要な研修を受けたり、上司に相談したりするなど行動に移すことが重要です。課題発見・解決力を高めることで、キャリア形成に必要な要素を主体的に考えることができ、キャリアプランの策定も効率的に進めることができます。

計画立案能力

キャリア形成において、計画立案能力も欠かせない要素です。自分の将来像や目標を達成するために、どのようなスキルや経験が必要かを整理し、具体的な行動計画に落とし込む力が求められます。例えば「1年以内に資格取得」「3年後にマネージャーを目指す」といった短期・中期・長期の目標を設定し、スケジュールや優先順位を明確にすることがポイントです。計画立案能力があることで、迷わず着実にキャリアを積み重ねていくことができます。

コミュニケーション能力

キャリア形成において、コミュニケーション能力は非常に重要です。自分の意見や考えを上司・同僚に的確に伝え、信頼関係を築くことで、キャリアのチャンスを広げることにつながります。またキャリア面談やフィードバックの場面では、自分の目標や課題を明確に伝える力が必要であり、その点でもコミュニケーション能力が欠かせません。加えて相手の意見を尊重し、柔軟に対応する姿勢も求められます。円滑なコミュニケーションを通じて周囲と協力し、自身の成長に必要な環境を整えることがキャリア形成成功の鍵です。

柔軟性・適応力

キャリア形成を進めるうえで柔軟性・適応力は必要な能力です。現代のビジネス環境は変化が激しく、計画通りにキャリアが進まないことも珍しくありません。そのため 新しい業務や異動、職場環境の変化に対して前向きに対応し、自分の強みを活かして柔軟に適応する力が求められます。
また状況に応じて目標や行動計画を見直し、自ら学び直す姿勢も大切です。このような柔軟性と適応力を持つことで、予期せぬチャンスを活かし、キャリアを継続的に発展させることができます。

自己研鑽する力

キャリア形成を進めるには、自己研鑽する力も高める必要があります。変化の激しい現代においては、現状に満足せず、自ら必要なスキルや知識を積極的に学び続ける姿勢が求められています。例えば資格取得や新しい業務への挑戦、リスキリングを通じた自分の市場価値の向上など、自分の能力を高めることが重要です。また定期的に自身の成長を振り返り、足りない部分を補う努力を継続することで、長期的なキャリアの安定化や目標達成につながります。主体的な学びの姿勢を持つことで、キャリア形成を支える土台となります。

キャリア形成を成功させるポイント

キャリア形成を成功させるための3つのポイントを紹介します。

他人のキャリアと比べない

キャリア形成を成功させるには、自分のキャリアと他人のキャリアを比べないことが重要です。
人は無意識に他者と比べてしまい、うまくできないことをネガティブに捉えがちです。しかしキャリアには人それぞれの個性があり、他人と同じキャリアを歩む必要は全くなく、あえて比べる必要もありません。同期や同じ職場の同年代のキャリアを見て、自分との違いに落ち込むこともあるでしょう。あくまでも「自分は自分」という意識でキャリア形成を目指すことで、自分にしかできないキャリアが見えてきます。他人と優劣をつけるのではなく、「自分と他人でキャリアを差別化するにはどうすべきか」という思考にシフトするとキャリア形成が進みやすくなります。

具体的な計画を立てて行動する

キャリア形成を成功させるには、具体的な計画を立て、それに従った実行することも大切です。キャリアアップを目指すにしても「30歳くらいで管理職になる」という漠然とした内容では、どのように行動すればよいかが具体化できません。まずは 明確な目標を設定したうえで、目標を達成するまでの過程を逆算し、具体的な計画を立てましょう。
自分の強みや価値観、専門性、スキルなども踏まえて、どのようなキャリアが目指せるのか、そこに至るために何が必要かを考えます。さらに期限も設定することで、より具体的なキャリアプランを設計でき、効率的にスキルアップや知識の習得が目指せます。

継続的な振り返りと修正を行う

キャリア形成で立てた計画は、その通りに実行しただけで終わりとはなりません。行動計画の通りに実行しても、途中で計画とは違ってくるケースや別のキャリアを目指す可能性もあります。そのため計画を実行したら定期的に振り返りを行い、必要に応じて修正を加えましょう。ビジネス環境や自分自身の変化に合わせて、柔軟に計画を修正することでキャリア形成がスムーズに進みます。

企業のキャリア支援のアイデア

企業が従業員のキャリアを支援するために、どのようなアイデアがあるのかを紹介します。

自己啓発・資格取得支援制度の導入

自己啓発・資格取得支援制度の導入は、従業員が自主的にスキルアップを目指す際に、企業が費用や時間面で支援する制度です。
具体的には、業務に関連する資格取得費用の補助、外部講座や通信教育の受講料の一部または全部負担、受験日当日の特別休暇付与などが挙げられます。この支援制度により、従業員は自身のキャリア形成に必要な知識・スキルの習得に向けて金銭的・時間的にも計画を立てやすくなり、成長意欲やモチベーション向上が期待できます。企業側にとっても、社員のスキルアップによる生産性向上や優秀な人材の定着につながるといったメリットが得られるでしょう。

ジョブローテーションの強化

ジョブローテーションの強化は、従業員にさまざまな部署や職種を経験させることで、幅広いスキルや視野を養い、キャリアの幅を広げるキャリアアップの施策です。従業員の異動を計画的に実施することで、特定の業務に偏ることなく、多様な業務経験を積むことが可能になります。従来のゼネラリスト型育成との違いは、ローテーションを通して自分のキャリアプランに活用しやすい点です。ジョブローテーションにより、従業員は自分の適性や強みを再発見し、将来のキャリアパス設計に特定の業務経験を組み込み、主体的にキャリアプランを設計できます。企業側にとっても、幅広い状況に柔軟な対応ができる人材の育成や組織の活性化、適材適所の人員配置を促進する効果が期待できます。

独自のキャリアパスの提示

独自のキャリアパスの提示は、企業が従業員に対し、自社内でどのような成長の道筋があるかを明確に示す施策です。職種ごとや職位ごとに、必要なスキルや経験、評価基準を具体的に明示することで、従業員が将来のキャリアイメージを描きやすくなる効果があります。キャリアパスを用意する際は「専門職としてスキルを極める道」「マネジメント職を目指す道」など、多様な選択肢を設けることが重要です。自分だけのキャリアパスを見つけることで、従業員の成長意欲やモチベーションが高まり、企業への定着率や生産性向上にもつながります。

リスキリングプログラムの提供

リスキリングプログラムの提供は、企業が従業員に対し、新たなスキルや知識を習得する機会を提供し、キャリアの幅を広げる施策です。特にデジタルスキルやAI、データ分析、語学力など時代の変化に対応したスキルを中心にプログラムを設計します。 ベテラン社員がリスキリングプログラムを受講することにより、将来の業務変化や新たなポジションにも対応しやすくなり、自律的なキャリア形成が目指せます。 企業側としても、従業員一人ひとりの競争力を高め、組織全体の生産性向上やイノベーション創出につながる効果があることから、重要な支援施策となるでしょう。

メンター制度の導入

メンター制度とは、メンター(経験豊富な先輩社員)がメンティー(若手社員やキャリア形成に悩む従業員)を継続的にサポートする仕組みです。メンターとメンティーは定期的な面談や日常的な相談を通じて、業務スキルの習得だけでなく、キャリアの方向性や働き方について助言を行います。メンター制度により、指導を受ける若手社員は不安を解消しやすくなり、自信を持って業務を遂行するとともに成長できる環境が整います。またメンター側も指導経験を通じてリーダーシップやコミュニケーション力を高め、業務内容に対する理解も深められるため、双方にとってメリットが大きく、組織の活性化や定着率向上にも効果的です。

モチベーションサーベイの実施

モチベーションサーベイの実施は、従業員の仕事への意欲やキャリアに対する意識を可視化する施策です。アンケートやオンラインツールを用いて、従業員の満足度、キャリアへの期待、不安要素などを調査し、具体的な数値として把握できます。モチベーションサーベイにより、企業は従業員ごとの課題やモチベーション低下の要因を早期に発見し、必要なキャリア支援策や職場改善策を講じることができます。また個別面談の際の参考データとして活用することで、より的確なフォローやキャリア形成支援につなげることも可能です。モチベーションサーベイを定期的に実施することで、従業員の定着率向上や生産性アップに貢献する施策となります。

企業のキャリア支援の成功事例

実際に企業でキャリア支援を実施して成功した事例を紹介します。

株式会社リコー

株式会社リコーでは「人を愛し・国を愛し・勤めを愛す」という創業からの精神である「リコーウェイ」を基盤に、社員が自ら取り組み、学べるようなキャリア支援の施策を行いました。具体的にはビジネスリーダー・新規事業創造リーダー・スペシャリストなどの7つの人材タイプを分類し、それぞれのタイプ別育成とキャリア開発支援の仕組みを構築しました。例えばプロジェクトマネージャーの場合、PMコンピテンシー認定制度(PMC)により、社内基準に基づいて社員を認定し、新たなキャリアへの道筋を明らかにしています。また社員のキャリアと育成に重点を置いた「目標統合プログラム」というマネジメント手法により、モチベーションアップと能力開発のPDCAサイクルを実現しています。これらの施策により、社員のキャリア意識の変化や人材育成の効率化だけでなく、女性管理職の増加にもつながりました。

参考:厚生労働省 キャリア支援企業表彰 株式会社リコー

東京海上日動火災保険株式会社

東京海上日動火災保険株式会社(以下「東京海上」)は、人材育成の基本としてOJTを重視し、マネージャーと部下がキャリアを振り返る機会を設けています。具体的には、「役割チャレンジ制度」を導入し、上司と部下が対話を通じて目標を設定し、年4回の面談でそれぞれの強みや課題、期待をすり合わせる仕組みを整えました。この制度により、社員は将来の具体的なキャリアビジョンを描けるとともに、上司からの支援やアドバイスも受けられる体制が築かれています。
さらに、47歳の全従業員を対象に「キャリアデザイン47研修」を実施し、自身のキャリアを見つめ直す機会を提供しています。また、マネージャー層のスキル向上と人材育成力の強化を目的に、人材育成の重要な8つの教訓や社内で長く受け継がれてきた暗黙知を形式知化する取り組みも進めています。
これらの施策により、社員が自らのキャリアを意識して見直す機会が増え、キャリアデザインへの関心が高まるとともに、女性活躍の推進も進んでいます。

参考:厚生労働省 キャリア支援企業表彰 東京海上日動火災保険株式会社

組織活性化のための研修ならユーキャンへ

ユーキャンの研修では、ビジネスシーンで必要なスキルや組織活性化に不可欠な知識まで幅広く提供しています。集合研修や、eラーニングなど企業のニーズに合わせた多様な実施形式を用意しており、受講後のサポート体制も完備しています。またユーキャンではキャリア形成に役立つ各種研修に加え、eラーニングなど目的別の豊富な研修を提供している点も特長です。関連講座として、 ※ストレングスファインダー(R)研修 ※セルフマネジメントトレーニング研修 、キャリアデザイン研修などもご用意しています。さらにユーキャンの研修では知識のインプットだけでなく、演習やテストを通した知識・スキルのアウトプットと経験の蓄積にも重点を置いています。ヒアリングを通して企業課題を明確化し、担当者との綿密な相談のうえで最適な研修カリキュラムを提案させていただきます。

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まとめ

キャリア形成について、その概要や近年の変化、メリット、進め方のポイントなどを詳しく解説してきました。VUCA(変化の激しい)時代においては、従業員のキャリアが企業の想定通りに進むとは限りません。だからこそ、従業員自身が主体的にキャリア形成に取り組める仕組みを整え、企業はそれを支援する立場を取ることが重要です。そうすることで、企業と従業員の双方が納得し、満足できるキャリアの実現につながります。従業員が前向きにキャリアを築いていけるよう、企業側も魅力的な支援策や将来のキャリアパスを積極的に提示していく努力が求められます。

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