キャリアパスとは
キャリアパスとは、個人が目指す職業上の目標や成長の過程を示す道筋のことを指します。例えば「一般社員 → チームリーダー → マネージャー → 部長」のような昇進の流れや、「営業職 → 商品企画 → 経営企画」などの職種の変遷もキャリアパスの一例です。明確なキャリアパスを描くことで、目標が明確になり、スキルアップやキャリアの成長につながります。
キャリアパスとキャリアプランとの違い
キャリアパスとキャリアプランは似た概念ですが、それぞれの意味には明確な違いがあります。まずキャリアパスは、職業上の成長の道筋や進むべき方向を示しており、キャリア全体の流れを指します。例えば「一般社員 → チームリーダー → マネージャー → 部長」のような昇進のステップや、異部門へのキャリア変化の流れもキャリアパスの一例です。一方のキャリアプランは、キャリアパスを実現するための具体的な計画を指します。例えば「3年以内にマネージャーになるために、マネジメントのスキルを習得する」「来年までに資格を取得する」などです。短期・中期・長期の目標を設定し、それを達成するための具体的な行動計画を立てることがキャリアプランとなります。そのためキャリアパスは目指す方向、キャリアプランはキャリアパス実現のための戦略と考えるとわかりやすいでしょう。
キャリアパスが注目される理由
日本のビジネスにおいてキャリアパスが重要視される背景には、年功序列制度や終身雇用制度の変化、多様性の尊重、人材確保の必要性の高まりが関係しています。かつての日本企業では年功序列制度や終身雇用制度が一般的で、長く働くことで自然と昇進し、安定したキャリアを築くことができました。しかし近年は市場競争力の激化や予測できない環境の変化から、成果主義・能力主義を重視する企業が増加しています。またダイバーシティ(多様性)の推進により、従来の一律的なキャリアモデルではなく、多様なキャリアパスを認める企業が増えている点も重要です。個別の従業員が自由にキャリアや働き方を選べるようになり、企業に求められるキャリアパスも多様化しました。さらに企業側にとっても、キャリアパスの明確化は優秀な人材の確保と定着に直結します。明確な成長の道筋が示されている企業は、従業員が将来の見通しを持ちやすく、モチベーション向上や離職率の低下につながります。このように個人が主体的にキャリアを築く時代において、キャリアパスの設計と支援が重要になったことがキャリアパスが注目される背景です。
キャリアパス制度導入による効果
キャリアパス制度を導入すれば、企業にはさまざまな効果・メリットが期待できます。どのような効果があるのか、具体的に紹介します。
従業員のモチベーションアップ
キャリアパス制度を導入すれば、従業員は自分の将来の成長イメージを明確にすることができ、モチベーションの向上につながります。キャリアの道筋が明確でない企業では、従業員は「このまま働き続けて成長できるのか」「どのようなスキルを身につければよいのか」といった不安を抱えることになります。しかしキャリアパス制度によって、昇進・スキルアップの基準や必要な経験が明確になると、目標を持って主体的に働けるようになります。また定期的なキャリア面談や研修の機会を提供することにより、従業員が成長の実感を得られ、さらなるモチベーション向上につながり、結果として組織全体の生産性も高まるでしょう。
離職率の低下
キャリアパス制度の導入により、従業員は自分の成長や昇進の道筋を明確に描くことができ、離職率の低下につながる効果も期待できます。将来のキャリアが不透明な環境では、従業員は「このまま働き続けても成長できるのか」「別の企業の方がキャリアの選択肢が広がるのではないか」と考え、転職を考える人が増加します。しかしキャリアパスが明確に示され、昇進やスキルアップの機会が用意されていれば、従業員も企業内での成長やキャリアアップを実現可能です。その結果、企業は優秀な人材の流出を防ぎ、長期的な組織の安定と成長を実現できます。
優れた人材の定着・獲得
キャリアパス制度の導入で、企業は優秀な人材の定着と新たな人材の獲得がしやすくなります。キャリアアップの道筋が示されている企業は、スキル向上や昇進の機会が明確で、優秀な人材が活躍しやすい環境が整っているため、競争との差別化につながります。さらに採用活動においても「成長できる環境がある企業」としてアピールできるため、競争率の高い新卒・中途採用の市場においても、求職者を引き付けやすいです。結果としてキャリアパスに魅力を感じた優秀な人材が集まり、企業全体の競争力向上につながります。
キャリアパス制度を導入する手順
キャリアパス制度を導入する場合、制度導入に向けた正しい手順で進めることにより、自社の環境に合わせたキャリアパス制度が完成します。どのような手順で進めるのがよいのか、詳しく紹介します。
現状分析と課題の把握
キャリアパス制度を導入するためには、初期段階で現状の人事制度や従業員のキャリアに関する課題を把握することが重要です。まずは組織内のキャリアの進め方や昇進基準がどのような規定になっているかを確認し、従業員が将来の成長を描きやすい環境かどうか分析しましょう。また従業員へのアンケートやヒアリングを実施し、キャリアに関する不安や期待を把握することも重要です。例えば「昇進の基準が不明確」「専門職として成長できる道がない」といった課題が上がる可能性があります。従業員が納得感を持てる制度設計にするため、課題となるものは一通り洗い出し、解決すべき優先順位づけを行うことも必須です。さらに競合他社のキャリアパス制度も参考にし、自社に必要な仕組みを検討することにより、独自のキャリアパス制度が設計できます。
キャリアパスの設計と共有
現状分析ができたら、従業員が将来の成長を具体的にイメージできるようにキャリアパスを設計し、暫定的な内容の決定、共有化を進めます。まず部署・職種・区分ごとにどのようなキャリアの道があるのかを整理し、職位ごとの役割や必要なスキル・経験を明確にしましょう。キャリアパスには管理職だけでなく、専門職としてスキルを高める道やグローバルなキャリアの選択肢を用意することで、ダイバーシティを意識した多様な働き方に対応できるようになります。さまざまなキャリアパスを用意することで、従業員は自分に合ったキャリアを選択しやすくなります。さらに設計したキャリアパスを社内の資料やポータルサイトで公開し、誰でもアクセスできる状態にすることが重要です。暫定的なものであっても、キャリアパスを社内全体で共有することにより、従業員から新たな意見や視点が生まれ、制度の改善につなげられます。
評価基準および研修制度の整備
効果的なキャリアパスを実現するためには、昇進やスキルアップのための評価基準を明確にし、対応した教育・研修制度を整備する必要があります。まず昇進の基準や役職ごとの要件を定め「どのようなスキルや成果を達成すればキャリアアップできるのか」を明確にしましょう。例えば次のような基準や要件が挙げられます。
・マネージャーへの昇進には「チームの目標達成」「部下の育成経験」「リーダーシップの発揮」などの基準を設ける
・専門職は経験年数に応じて、スキルアップ研修を受講する。
また従業員がスキルアップしやすいように、研修プログラムやOJT、資格取得支援制度を整えることも重要です。例えば管理職向けにはリーダーシップ研修、専門職には技術講習を提供することで、各キャリアパスに応じた成長の機会を提供できます。さらに定期的なキャリア面談を実施し、従業員のキャリア・スキルアップの進捗を確認しながら、フィードバックを行う仕組みを整えることで、従業員がキャリアアップに前向きになれるでしょう。
制度運用と継続的な改善
キャリアパス制度は一度導入して終わりではなく、従業員の成長や組織の変化に応じて継続的に改善していくことが重要です。制度の運用状況を定期的に確認し、従業員がキャリアパスを正しく活用できるかどうか確認しましょう。また従業員の意見を取り入れ「昇進基準が厳しすぎる」「スキルアップの機会が不足している」といった課題があれば柔軟に改善を行います。さらに制度を社内で浸透させるために、キャリアパスに関する情報発信を定期的に行い、従業員が常に自分のキャリアについて考えられる環境を整えることも欠かせません。さまざまなキャリアパスの情報に触れる中で、従業員も「このキャリアに関心がある」「新しいキャリアに挑戦したい」と考える機会が増えるからです。そして継続的な改善を行うことで、キャリアパス制度が形骸化せず、企業と従業員の双方にとって有益な仕組みとして発展していくでしょう。
キャリアパスの具体例
企業のキャリアパスはその企業の業種や特性により、独自の制度設計となるのが一般的です。ここではキャリアパスの具体例として、営業職や開発職のキャリアパスを紹介します。
営業職
営業職は企業の商品やサービスを顧客に売り込み、業績向上につなげるのが役割です。営業職のキャリアパスでは、そのまま営業職として専門性に特化するだけでなく、その他にも描けるキャリアがあります。
・スペシャリストコース:営業職から経営コンサルタントまで、専門性の高いスキルを磨いて大手の取引先との契約を担当するハイパフォーマーになる
・マネジメントコース:営業職からリーダー、管理職と昇進し、チームのマネジメントや営業戦略の立案・実行を行うマネージャーになる
・転向コース:営業職の経験・知識を活かして、市場分析能力と顧客データを踏まえたマーケティングや商品企画、販路拡大など別の分野でキャリアアップを図る
開発職
開発職は商品開発やシステム開発など、自分の知識・スキル・経験に応じてさまざまなキャリア選択が可能です。非常に専門性の高い職種であるため、システムや技術的な面から経営に携わるキャリアも選べます。
・管理職コース:エンジニアからプロジェクトマネージャー、開発部長、CTOなど開発部門の管理と技術戦略のマネジメントを行う立場になる
・スペシャリストコース:システムや商品開発など特定の専門性を高め、より最適化されたシステム設計や魅力ある商品開発に向けた研究を行う
・転向コース:開発の知識を活かして、技術的な側面からマーケティングやコンサルタント分野でキャリアアップする
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まとめ
キャリアパスが注目される理由やキャリアパス導入による効果、導入の手順などを詳しく解説しました。成長やキャリアアップを重視する従業員にとって、キャリアパスの有無や制度設計は非常に重要なポイントになります。キャリアパス制度があることで、優秀な人材の確保や個人のスキルアップ、仕事へのモチベーションアップなどさまざまな恩恵が得られます。組織に独自のキャリアパスがない場合は、キャリアパスについて学ぶために、研修実績の豊富なユーキャンにご相談ください。