• 更新日:2023/07/19

電気工事士とは、暮らしに欠かせない電気を支える仕事をする人のことです。電気工事や設備のメンテナンスを行うための国家資格である電気工事士を名乗るには試験に合格する必要があります。

この記事では、電気工事士試験の内容や受験資格などについて詳しく解説します。また、電気工事士の資格を取得するメリットも紹介するので、電気工事士試験の受験を考えている人はぜひ参考にしてください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 電気工事士は、住宅や工場・施設などの建物において、電気関連の工事や管理を行う仕事である。
  • 電気工事士には第一種と第二種があり、工事できる作業範囲や試験難易度が異なる。
  • 第一種電気工事士の方が難易度が上がるが、活躍の場が広がり、資格手当の金額も上がる可能性がある。
  • 試験は、過去問題と似たものが出題される傾向がある。工具や材料をそろえて技能試験対策をすることも重要。

電気工事士とは

電気工事士とは暮らしに必要不可欠な電気関連の工事を支える仕事で、住宅や工場・施設などのさまざまな建物や、電気が安全に使用できるように工事をしたり管理を行います

電気工事士として仕事を行うには、電気工事士法によって定められた国家資格が必要です。電気工事士法(および電気事業法)においては、電気工作物の種類によって、その電気工作物の保安の監督又は電気工事を行うのに必要な資格が定められています。

事業用電気工作物には、電気工作物の保安の監督者として電気主任技術者の資格が必要となります。
電気工事士の資格があれば、一般用電気工作物及び自家用電気工作物(最大電力500 キロワット未満の需要設備に限る。)の電気工事が可能となります。

電気工作物とは

電気工作物とは、電気を供給するための発電所、変電所、送配電線路をはじめ、工場、ビル、住宅等の受電設備、屋内配線、電気使用設備などの総称をいいます。


第一種電気工事士と第二種電気工事士の違いとは

電気工事士には第一種電気工事士と第二種電気工事士があります。第一種と第二種では、工事できる作業範囲や試験難易度が異なります。

工事できる作業範囲の違い

第一種電気工事士と第二種電気工事士がそれぞれ作業に従事できる電気工作物の範囲は以下のように定められています。

  • 第一種電気工事士:一般用電気工作物、自家用電気工作物(最大電力500キロワット未満の需要設備に限る。)
  • 第二種電気工事士:一般用電気工作物
第二種電気工事士が作業可能な「一般用電気工作物」は一般の住居や小規模の店舗に限られます。第一種電気工事士のほうが扱える電圧の幅が広く、工場やビルなどの大規模な現場にも対応可能です。第一種を取得することで、第二種の範囲もカバーすることが可能です


資格試験の難易度の違い

第一種電気工事士と第二種電気工事士で資格試験の難易度を比較すると、当然ながら扱える範囲の広い第一種電気工事士の方が難易度が高くなります
学科試験の合格率で比較すると、第二種電気工事士は約60%なのに対し、第一種電気工事士は約40%となっており、半分以上の方が不合格になっていることが分かります。

第一種電気工事士試験

ここでは、第一種電気工事士試験の出題内容や受験資格などの詳細について解説します。

出題内容

第一種電気工事士試験には、学科試験と技能試験があります。学科試験は四肢択一で、試験時間は140分と決められています。学科試験は、全部で9つの内容について出題され、出題内容は以下の通りです。

1)電気に関する基礎理論
2)配電理論及び配線設計
3)電気応用
4)電気機器・蓄電池・配線器具・電気工事用の材料及び工具並びに受電設備
5)電気工事の施工方法
6)自家用電気工作物の検査方法
7)配線図
8)発電施設・送電施設及び変電施設の基礎的な構造及び特性
9)一般用電気工作物及び自家用電気工作物の保安に関する法令

このように、出題範囲が非常に広いのが特徴です。しかし、試験時間140分と余裕があるため、間違えないように正確に解くことが重要です。

続いて、技能試験の内容です。技能試験では配布された配線図通りに、60分以内に完成させることが求められます。学科試験に合格した人、もしくは学科試験免除者が技能試験を受けられます。技能試験で求められる技術は以下の通りです。

1)電線の接続
2)配線工事
3)電気機器・蓄電池及び配線器具の設置
4)電気機器・蓄電池・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
5)コード及びキャブタイヤケーブルの取付け
6)接地工事
7)電流・電圧・電力及び電気抵抗の測定
8)自家用電気工作物の検査
9)自家用電気工作物の操作及び故障箇所の修理

受験資格

第一種電気工事士の試験には、受験資格の制限はありません。そのため、年齢などにかかわらず誰でも受験することが可能です。ただし、第一種電気工事士の免状は実務経験がなければ発行されないため、注意しましょう。

試験日程

第一種電気工事士の試験は、年に2回実施されています。例年のスケジュールは次の通りです。


上期試験

願書申込期間:2月上旬~2月下旬
学科試験:CBT方式4月上旬~5月上旬、筆記方式なし
技能試験:7月上旬


下期試験

願書申込期間:7月下旬~8月中旬
学科試験:CBT方式9月上旬~9月中旬、筆記方式10月上旬
技能試験:11月下旬

詳細な日程については、試験実施機関のWebサイトで確認しましょう。


  • 2023年度(令和5年度)の試験より、筆記試験は名称が学科試験に変更となります。学科試験にはCBT方式が導入され、筆記方式とCBT方式のうち、どちらかを選択して受験します。CBT方式でも出題形式はこれまでと同様です。技能試験の形式に変更はありません。

第一種電気工事士の合格率・難易度

第一種電気工事士の学科試験の合格率は、例年40%程度です。国家資格の中では合格率は比較的高く、難易度は中程度だといえるでしょう。また、技能試験の合格率については60%程度と、学科試験よりも高いことが特徴です。技能試験は事前に問題が公表され、対策をとることが可能です。

第一種電気工事士の合格率の推移

学科試験 技能試験
年度 受験者 合格者 合格率 受験者 合格者 合格率
平成30年度 36,048 14,598 40.5% 19,815 12,434 62.8%
令和元年度 37,610 20,350 54.1% 23,816 15,410 64.7%
令和2年度 30,520 15,876 52.0% 21,162 13,558 64.1%
令和3年度 40,244 21,542 53.5% 25,751 17,260 67.0%

第二種電気工事士試験

第二種電気工事士試験の概要について、詳しく紹介します。

出題内容

第二種電気工事士の試験も、第一種と同様に学科試験と技能試験があります。学科試験は四肢択一で、試験時間は120分です。出題内容は以下の通りです。

1)電気に関する基礎理論
2)配電理論及び配線設計
3)電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具
4)電気工事の施工方法
5)一般用電気工作物の検査方法
6)配線図
7)一般用電気工作物の保安に関する法令

第二種の出題内容は7項目で、第一種電気工事士試験よりも出題範囲は狭いです。基本的な内容が出題されるため焦らずに解くことが大切です。

技能試験は、配線図に従い基本的な配線作業や施工を行います。試験時間は40分で、学科試験に合格した人、もしくは学科試験免除者が受験可能です。第二種で求められる技術は以下の通りです。

1)電線の接続
2)配線工事
3)電気機器及び配線器具の設置
4)電気機器・配線器具並びに電気工事用の材料及び工具の使用方法
5)コード及びキャブタイヤケーブルの取付け
6)接地工事
7)電流、電圧、電力及び電気抵抗の測定
8)一般用電気工作物の検査
9)一般用電気工作物の故障箇所の修理

受験資格

第二種電気工事士の試験には、受験資格の制限はありません。そのため、年齢や経験などにかかわらず、誰でも受験できます。出題内容は基本的な内容が多いため、未経験者でも取り組みやすいでしょう。

試験日程

第二種電気工事士の試験は、年に2回実施されています。例年のスケジュールは次の通りです。


上期試験

願書申込期間:3月中旬~4月上旬
学科試験:CBT方式4月下旬~5月中旬、筆記方式5月下旬
技能試験:7月下旬


下期試験

願書申込期間:8月中旬~9月上旬
学科試験:CBT方式9月下旬~10月中旬、筆記方式10月下旬
技能試験:12月下旬

詳細な日程については、試験実施機関のWebサイトで確認しましょう。


  • 2023年度(令和5年度)の試験より、筆記試験は名称が学科試験に変更となります。学科試験にはCBT方式が導入され、筆記方式とCBT方式のうち、どちらかを選択して受験します。CBT方式でも出題形式はこれまでと同様です。技能試験の形式に変更はありません。

第二種電気工事士の合格率・難易度

第二種電気工事士の学科試験の合格率は例年60%前後で、技能試験の合格率は70%前後です。半数以上は合格しているため、国家資格の中では難易度は低い部類だといえます。また、第一種電気工事士と比較した場合でも、合格率は高くなっています。しっかり勉強すれば、未経験者でも合格は難しくありません。

第二種電気工事士の合格率の推移

学科試験 技能試験
年度 受験者 合格者 合格率 受験者 合格者 合格率
令和2年度(下期) 104,883 65,114 62.1% 66,113 48,202 72.9%
令和3年度(上期) 86,418 52,176 60.4% 64,443 47,841 74.2%
令和3年度(下期) 70,135 40,464 57.7% 51,833 36,843 71.1%

合格するための対策

第二種電気工事士試験に合格するための対策について解説します。


学科試験

学科試験は、計算問題と暗記問題で構成されています。暗記問題は暗記すれば点数が取れますが、出題数が多いため、暗記系から勉強し始めましょう。過去問題を繰り返し解いて出題傾向を掴むことが重要です。


技能試験

候補問題が公表されるため、事前に何度も作ってみるといいでしょう。工具は自分で用意する必要があります。持参できる工具は指定されているため、確認したうえで準備しておきましょう。

電気工事士試験の勉強方法とは

電気工事士試験に臨む際には、どのような勉強をすればいいのでしょうか。ここでは、電気工事士試験に挑むための勉強方法を紹介します。

必要な学習時間

第一種電気工事士試験の合格に必要な勉強時間は、およそ300時間必要だといわれています。勉強時間については個人差があります。出題範囲が広く、試験も年に2回しかないため、時間をかけて準備することが重要です。短期間で勉強しようと思うと理解が不足する分野も出てくるため、スケジュールを立てて計画的に進めましょう。

また、第二種電気工事士試験は、第一種と比較すると少ない勉強時間で対応できます。しかし、復習のために余裕をもって取り組むことが重要です。

効果的な勉強方法

効果的に勉強するにはどうしたらいいのでしょうか。ここでは、効果的な勉強方法をお伝えします。


過去問題に取り組む

過去問題に取り組むことで、出題傾向をつかむことができます。電気工事士試験は、過去問題と似たものが出題される傾向があります。過去問題を繰り返し解くことで、試験内容が把握できるでしょう。また、自分が苦手な分野の把握にも役立ちます。間違えやすい問題を知り対策をとりましょう。


工具や材料をそろえて技能試験対策をする

技能試験に関しては、練習を積み重ねることが重要です。実際に試験で使う工具や材料をそろえて、公表されている候補問題を完成させる作業を繰り返しましょう。正確さも重要ですが、試験時間内に終わらせることも大切です。


配点の大きいところから優先的に学習する

出題範囲が広いため、勉強の順番もポイントです。多く出題される分野から優先的に取り組むことで、効率よく勉強でき、点数を取りやすくなるため合格に近づけます。

電気工事士の資格を取得するメリットとは

電気工事士を取得することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。3つのメリットを紹介します。

転職に有利

電気工事士の資格を取得することで、転職に有利になります。電気工事士は履歴書に記載できる国家資格です。資格取得は、電気工事士という仕事への意欲の高さややる気のアピールにもなるでしょう。転職市場では、第二種よりもさらに第一種が優遇される傾向があります。

活躍できる職場が多くある

電気工事士は、さまざまな職場で活躍できることもメリットの一つです。例えば、電気工事士の職場として工事現場があります。しかし、それだけではありません。電気設備や機械がある場所、他にもビルのメンテナンスや食品メーカーの工場など、活躍できる場所は多岐にわたります。

第一種のほうが行える作業が多いため、職場の選択肢の幅も広がるでしょう。

資格手当がつく場合もある

企業によって異なりますが、電気工事士の資格を取ることで資格手当がつく場合があります。金額は企業ごとにさまざまですが、一般的には、第一種のほうが第二種よりも手当が多い傾向です。

電気工事士の仕事内容

電気工事士の仕事は電力を受電する設備の新築・増改築時に、配線図通りに屋内配線を行い、コンセントの設置やアース施工などを電気にまつわる工事を行うことです。

第一種電気工事士と第二種電気工事士では仕事の幅が異なり、第二種電気工事士の場合、工事できる範囲は住宅や店舗など600V以下に限られます。

第一種電気工事士であれば活躍の場が広がる

第一種電気工事士であれば、ビルや工場など高圧以上で受電している自家用電気工作物のうち、最大電力500kW未満の需要設備の電気工事が行うことも可能です。
また、第一種電気工事士は太陽光パネルの設置などを請け負う街の電気屋さんや、市役所や官公庁といった公共施設の電気工事などを行う電気工事士として活躍することもできます。

関連情報

電気工事士の年収・給料

ここでは、電気工事士の年収・給料について厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の電気工事従事者の値を元に解説します。

平均年収は400万~500万円

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査 」によると、電気工事士の平均年収は例年、400万~500万円程度となっております。男女別では、男性の方が少し高くなっています。

現場の規模・経験でも大きく変わる

電気工事士の平均年収400万~500万円程度が一つの目安になりますが、現場の規模や業務の範囲などでも違いがあり、中には年収600万円以上の求人もあります。
また、経験によっても差があり、「賃金構造基本統計調査 」によると経験年数が0年と15年以上の方の年収を比較すると2倍近く差があります。

年収・給料をアップさせるには?

電気工事士で年収・給料をアップさせるには、電気工事士の中で最上位資格である第一種電気工事士資格を取得するといいでしょう。
また、「ボイラー技士」「危険物取扱者」「電験三種」といった関連資格を取得することも有効です。

まとめ

電気工事士は国家資格のひとつで、さまざまな現場で活躍できます。受験資格は必要ないため、誰でも受験できることもメリットでしょう。

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この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

電気工事士の年収は?

電気工事士の年収は400万~500万円です。ただし、現場の規模・経験・資格などで大きく変わり、中には年収600万円以上の求人もあります。

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第二種電気工事士とは、住宅や店舗など600V以下で受電する設備の新築・増改築時に、配線図どおりに屋内配線、コンセントの設置、アース施工などを行う専門技術者のことです。これらの作業で不備があると、感電や火災など、事故の原因となる危険があるため、有資格者でないと作業ができません。そのため、ニーズが高く、好待遇で働ける、安定した収入を期待できるといったメリットが考えられます。履歴書に堂々と書ける国家資格で、就職・転職も有利!
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