• 更新日:2023/07/11

人生を最期まで穏やかに自分らしく過ごしたいと望む人も多いなか、看取りケアのニーズも増え、「終末期ケア専門士」という資格への関心も高まっています。そこで、本記事では終末期ケア専門士がどのような資格であるかについて、資格を取得するメリットや取得方法、試験の概要、勉強方法などとともにわかりやすく解説します。終末期ケア専門士の資格に興味のある人は参考にしてください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 終末期ケア専門士とは、終末期を過ごす人やその家族をサポートする、「臨床ケアのスペシャリスト」。
  • 終末期ケア専門士認定試験を受けるためには受験資格が必要。
  • 終末期ケアの基礎から学べ、看取りケア未経験者でも、スキルをしっかり身につけられる。
  • 試験の出題範囲である公式テキストや、終末期ケア専門士試験対策WEB講習会の受講で学習可能。

終末期ケア専門士とは

終末期ケア専門士とは、終末期を過ごす人やその家族をサポートする、「臨床ケアのスペシャリスト」です。主に医療や介護の従事者を対象とした民間資格で、患者や家族を、確かな根拠に基づいてケアできる人材の育成を目的として、一般社団法人日本終末期ケア協会(JTCA)により、2020年に設立されました。

終末期ケア専門士の資格を取得するメリット

終末期ケアの基礎から学べるため、看取りケア未経験者でも、スキルをしっかり身につけられる点が魅力です。確かな根拠に基づいたケアができるようになるほか、看取りケアに関する理解が深まることで、臨床ケアの専門性を高めることもできます。

専門的な知識があれば、患者にどのように向き合いケアすべきかを状況に応じて考えられるため、個々のケースに合った対応も取りやすくなるでしょう。さらに、実践的な資格の取得により患者やその家族、一緒に働くスタッフに安心感を与えられ、キャリアアップにもつながります。

終末期ケア専門士の資格取得を目指すことで学べる内容

一般社団法人日本終末期ケア協会では、資格取得に向けた学習教材として公式テキストを出版しています。試験は公式テキストから出題されるため、資格取得を目指すのであれば、公式テキストの内容は押さえておきましょう。

また、終末期ケアに必要な知識がまとめられている公式テキストは、試験対策だけではなく、看取りケアで役立つ実践的な知識や技術を学びたいときにも、活用できます。

下記の表で公式テキストの概要を目次に沿って紹介しているので、資格取得を目指す人や看取りケアについて学びたい人は、参考にしてください。

Ⅰ.概論 ・生と死
・終末期に関する定義と概念
・全人的苦痛とは
・わが国における看取りを取り巻く状況
Ⅱ.終末期におけるチームケア ・チームケアとは
・チームケアの実際
・よりよいチームとなるために
Ⅲ.日常生活を支えるケア ・加齢に伴う変化
・コミュニケーション
・食を支えるケア
・口腔ケア
・排泄ケア
・褥瘡ケア
・終末期リハビリテーション
Ⅳ.身体症状とそのケア ・痛みの治療とケア
・呼吸困難の治療とケア
・消化器症状の治療とケア
・全身倦怠感の治療とケア
・浮腫の治療とケア
・せん妄への治療とケア
・不眠の治療とケア
・抑うつの治療とケア
Ⅴ.意思決定支援 ・終末期の意思決定支援
・バッドニュースの伝え方
・終末期にまつわる倫理
・意思決定支援の実際
・意思決定支援で大切なこと
Ⅵ.家族ケア ・家族とは何か
・家族のアセスメント
・終末期における家族のニーズ
・家族ケアの実際
・終末期における家族への支援
Ⅶ.スピリチュアルケア ・スピリチュアルケアの成り立ち
・スピリチュアルペイン
・ケアのいとなみ
・ケアする人のケア
Ⅷ.グリーフケア ・グリーフとは
・悲嘆反応
・喪失と悲嘆の諸相
・悲しみへの配慮
・グリーフケアとしての遺族会
Ⅸ.看取り期のケア ・看取りケアの実際
・死亡確認と死亡診断書
・エンゼルケア
Ⅹ.終末期を取り巻く社会資源 ・社会資源とは
・社会保障制度
・社会保険制度
・社会福祉法
・障害者福祉制度
・公的扶助
・終末期における介護保険
・医療保険
・終末期を取り巻く現状と課題
Ⅺ.疾患別終末期ケア ・悪性腫瘍の終末期ケア
・認知症の終末期ケア
・脳血管障害の終末期ケア
・慢性閉塞性肺疾患の終末期ケア
・心不全の終末期ケア
・腎不全の終末期ケア
・神経難病の終末期ケア

現代において看取りケア(ターミナルケア)の重要性が高まっている

現在、看取りケア(ターミナルケア)の重要性の高まりに併せて、終末期ケア専門士のニーズも増えています。

終末期のケアでは医師や看護師、介護士、そのほか終末期患者に関わる多職種の連携が重要となり、関わるすべての人に終末期ケアの知識が求められるからです。また、看取りや逝去後のエンゼルケアに限らず、残された時間を豊かに過ごしたい高齢者へのケアなどでも、終末期ケアの知識は役立ちます。

一般社団法人日本終末期ケア協会ではニーズの広がりを受け、身体的ケアのみならず精神的ケアにも対応できるよう、倫理観の育成にも力を入れています。

看取りケアに関する代表的な資格は2種類

看取りケアに関する資格には、ここまでに解説した「終末期ケア専門士」のほかに、「看取りケアパートナー」という資格もあります。看取りケアパートナーは、一般社団法人みんなのプライドによる認定資格です。指定講座を受け、認定試験に合格することで資格を取得できます。

講座や試験を受けるための要件や必要な資格はなく、受講を通して、脈拍測定などの日常介護の知識や精神的なサポートの方法など、看取りに必要なさまざまなスキルを学ぶことが可能です。

終末期ケア専門士には上位資格がある

終末期ケア専門士の資格取得後、より高いレベルのスキルを身につけたい場合には、上位資格の取得も目指せます。終末期ケア専門士で採用しているステップアップ制度では、終末期ケア専門士の合格から1年後に「終末期ケア上級専門士」、さらに1年後に「JTCAアドバンスインストラクター」の受験が可能です。

終末期ケア上級専門士は、組織や人の管理や運営を行える「育む人」を、JTCAアドバンスインストラクターは、病院などを含めた地域社会で、専門アドバイザーとなれる「伝える人」を目指す資格です。

終末期ケア専門士の資格を取得する方法

終末期ケア専門士になるためには、一般社団法人日本終末期ケア協会が実施する、終末期ケア専門士認定試験に合格しなければなりません。また、試験を受けるためには受験資格を満たしていなければならず、合格後には資格の認定登録が必要です。さらに、その後も3年ごとに既定の単位を取得し更新しなければなりません。

詳しい受験資格や受験の流れなどは、この後の試験の概要で解説します。

終末期ケア専門士の試験概要

ここでは、2022年に実施された試験の概要を紹介します。

試験日時 2022年10月11日(火)~2022年10月31日(月)
申込み期間 2022年4月1日(金)~2022年9月15日(木)
申込み方法 協会ホームページから申込みをし、受験料を支払うと、その後1週間前後で自宅に申請書類が届く。届いたら申請書類に必要事項を記入し、所定の封筒に入れて簡易書留で提出。
申請書類提出期限 2022年9月27日(火)
※期限を過ぎると自己都合によるキャンセル扱いになるため要注意
受験料 税込み11,000円
※配送料、各種手数料が別途必要
試験時間 90分
出題数 90問(問題は択一または択多形式)
出題範囲 ・協会認定の「終末期ケア専門士 公式テキスト」
・協会ホームページの「JTCAゼミ」に記載の時事問題など
試験方式 CBT方式(パソコンを使用した試験)。受験会場は全国のテストセンターから選択し予約
結果の通知 郵送
※結果通知投函予定日は2022年12月下旬
終末期ケア専門士の認定登録料 税込み11,000円
※配送料、各種手数料が別途必要
更新期間 3年
更新料 税込み5,500円
※「ココリンク」の利用者は更新料免除。(ココリンクは終末期ケア専門士の資格認定登録者が使用できる限定システム。月額500円で、継続学習のサポートを受けられる。講義動画の視聴やイベントへの参加などにより、資格更新に必要な単位の取得も可能)

なお、2022年の試験はすでに申込みが終了しているため、最新の情報は公式サイトで確認してください。

受験資格

受験には既定の免許の取得と、その免許における一定の実務経験年数が必要です。実務経験年数は、免許登録日または資格取得日を基準とし、申請書類提出日までを数えます。また、必要な実務経験年数は下記の表のとおり免許によって変わります。

実務経験3年以上必要 栄養士、准看護士、臨床心理士、音楽療法士、介護士
※介護士は実務者研修修了証のコピーの提出が必要。修了証の日付は問わない
実務経験2年以上必要 医師、歯科医師、看護師、保健師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床工学技士、歯科衛生士、管理栄養士、介護支援専門員、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床検査技師、公認心理師、救急救命士、放射線技師、介護福祉士
※介護福祉士は介護士の実務経験と合わせて3年以上あれば受験可

受験に関する主な流れ

受験の申込みから資格取得までの主な流れは下記のとおりです。

1.受験申込み 一般社団法人日本終末期ケア協会公式サイト内から申込む。受験料の支払いも行う
2.書類到着 自宅に受験の申込み書類が届く
3.必要書類の提出 必要事項を記入した申込み書類を本人確認書類のコピーとともに、簡易書留で一般社団法人日本終末期ケア協会へ郵送。
4. 受験資格該当審査 提出書類により審査委員会が受験資格該当審査を実施。
・受験資格が認められた場合…メールと郵送で、受験資格確定通知書とマイページのログイン用紙が届く
・受験資格が認められなかった場合…事務手数料以外の受験料が返還されるため、審査結果通知に同封された返金口座の手続き書類を提出
5.希望日時と受験場所の予約 届いたログイン用紙でマイページにログインして希望日時と受験場所を予約
6. 試験当日 予約した日時に予約した会場で決められた流れに沿って、パソコン試験を受ける
※試験当日は指定の身分証明書の提示が必要
7. 合否結果到着 合否結果が郵送で届く
8. 登録手続き 合格者は合否結果に同封されている書類で認定登録手続きを行う

合格率

2020年と2021年に実施された、終末期ケア専門士認定試験合格状況は下記のとおりです。

受験者数 合格者数 合格率
(第1回)2020年 2,310人 1,516人 65.6%
(第2回)2021年 3,775人 2,623人 69.5%

終末期ケア専門士の勉強方法

まずは、試験の出題範囲になっている、一般社団法人日本終末期ケア協会認定の公式テキストを購入し、しっかり読み込むことが必須です。さらに、同協会が試験対策のために開催している、終末期ケア専門士試験対策WEB講習会も受講するといいでしょう。高い合格率とはいえ対策は取ってしっかり勉強することが大切です。

ちなみに、2022年11月現在、公式テキストは税込み4,950円、Web講習会は税込み21,780円となっています(配送料や各種手数料は別途必要)。

まとめ

社会からのニーズが増えている終末期ケア専門士ですが、試験には実務経験などの受験条件があります。そのため、終末期ケアの知識を身につけたいなら、誰でも受験できて家族の介護や看取りにも役に立つ、看取りケアパートナーの資格取得を目指すのもおすすめです。

看取りケアパートナーは民間の通信講座を受講し、一般社団法人みんなのプライドが実施する認定試験に合格すると、取得できます。受験は自宅からでもでき、受講はユーキャンの看取りケアパートナー講座の利用も可能です。ユーキャンの看取りケアパートナー講座なら、3か月で資格取得を目指せます。受講開始後6か月間はすべてのサポートを受けられるため、仕事などでお忙しい方も安心です。

看取りケアパートナー講座について気になったら、まずは無料の資料請求をお試しください。

生涯学習のユーキャン
この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

1954年設立。資格・実用・趣味という3つのカテゴリで多岐に渡る約150講座を展開する通信教育のパイオニア。気軽に始められる学びの手段として、多くの受講生から高い評価を受け、毎年多数の合格者を輩出しています。
近年はウェブ学習支援ツールを拡充し、紙の教材だけでは実現できない受講生サポートが可能に。通信教育の新しい未来を切り拓いていきます。

よくある質問

看取りケアパートナーを学習するうえで必要な知識はありますか??

ユーキャンの看取りケアパートナー講座は「看取り」を初めて学習する方へ読んでいただきたい、幅広い教養を網羅しています。そのため、事前に必要な知識はございません。どなたでも学習いただける内容となっております。

あなたに向いている講座か相性診断でチェック!

あなたに向いている講座か相性診断でチェック!

看取りケアパートナー講座があなたに向いているのか相性診断でチェック!
80%以上の相性なら今すぐ申し込みして、人気の専門資格を手に入れよう!

看取りケアについて学ぶなら、ユーキャン!

当講座の「看取りケア」が対象とするのは、看取り介護やターミナルケアの対象となる期間だけでなく、家族が親の老いを心配するようになった時から、親の死を見送った後までの長い期間です。看取りを考える上で必要な、当人やそのご家族の心のケアから、利用できる国や地方自治体の制度、当人が亡くなった後の対応まで身につけていただけます。ユーキャンの「看取りケアパートナー講座」は試験実施団体が教材の執筆をしている講座。ユーキャンオリジナルの教材で、知識と技術が効率よく身につきます。テキストは図やイラストが豊富で、はじめての方にもわかりやすい工夫が満載。認定試験は在宅で受けられるので、家事や仕事で忙しい方もムリなく資格取得が目指せます。