行政書士とは、官公署に提出する書類の作成や提出などの手続きを代行する職業です。行政書士は英語で「Certified Administrative Scrivener」と呼びます。英語ができないと行政書士になれないのか、英語力は必要かなど不安に思っている人もいるでしょう。この記事では、行政書士における英語力の必要性を解説するため、参考にしてください。

行政書士に合格するために英語は必要なのか

行政書士は国家試験の1つですが、試験において英語力が必要になることはありません。行政書士の試験科目は以下のとおりです。

行政書士試験の法令科目

  • 憲法
  • 行政法
  • 民法
  • 商法および基礎法学

行政書士試験の一般知識等
  • 政治、経済、社会
  • 情報通信
  • 個人情報保護
  • 文章理解

このように、試験科目に英語に関するものは含まれていません。基本的には、憲法や民放などの法令科目、政治や経済などの一般知識などが問われます。文章理解については、日本語の文章の読解力があるかどうかが試されます。

問題文に英語が出てくることもないため、行政書士に合格するために英語力は必要ないといえるでしょう。英語力がない、英語が苦手という場合にでも資格試験には特に影響はありません。

行政書士としての仕事に英語は必要なのか

行政書士としての仕事にも、基本的には英語力は必要ありません。行政書士は、依頼を受けて官公署に提出する書類を作ったり、提出手続きを代行したりといった業務を担います。通常業務では英語が必要になるケースがあまりないため、英語力がなかったとしても問題はないでしょう。

英語が読めない、書けない、話せないといった状態であっても、日本国内で行政書士として活躍するには大きな影響はありません。ただし、ケースによっては英語が必要になることもあります。たとえば、国際結婚のサポートをするなど、外国人と関わるような業務にあたる場合です。英語ができない場合には、英語が堪能な行政書士にお願いするなどの対応が必要となります。

英語力を活かせる行政書士の仕事内容とは

前述したように、行政書士は英語を必要としない仕事も多いため、英語が苦手でも問題はないといえます。一方、英語力があることで仕事の幅が広がるケースもあります。そのため、英語力がまったく必要ないとも言い切れません。英語力があることでさまざまな業務に対応できるようになり、多くの経験を積めるようになります。

また、近年の外国人労働者の増加などを背景に、行政書士が英語を使う場面も増えつつあるようです。以下では、英語力を活かせる行政書士の仕事内容を6つ解説します。英語力を活かして行政書士の仕事をしたい、今後のために英語力を高めようか悩んでいるという場合には、ぜひ参考にしてください。

入管業務

まずは、入管業務です。入管業務とは、日本で働きたい、日本人と結婚して日本で暮らしたい、などの希望を持つ外国人のサポートをする業務です。外国人が日本で働きたいという場合には、入国管理国への申請が必要です。入国管理局へ申請をして在留許可を得ることで、日本で生活できるようになります。

入管法は頻繁に改正されるため、外国人がすべてを把握することは難しいでしょう。行政書士は入管法をしっかりと理解したうえで、依頼人からのヒアリングをもとにして、在留資格の要件を満たしているかどうかなどを判断、書類の作成などを行います。ヒアリングなどを行うため、英語力が必要になるでしょう。

また、本人に代わって申請する場合は、申請取次行政書士にならなければ、申請代行は行えません。

在留資格

在留資格とは、外国人が日本に在留する際に一定の活動ができる、もしくは一定の身分・地位を有する者として活動できることを示す資格のことです。行政書士には、依頼人が問題なく日本に在留するために、必要な手続きをサポートするという業務もあります。在留資格に関連する申請業務は以下のとおりです。

  • 在留資格認定証明書交付申請
  • 在留期間更新許可申請
  • 在留資格変更許可申請
  • 永住許可申請
  • 再入国許可申請
  • 資格外活動許可申請
  • 就労資格証明書交付申請
このように、さまざまな申請業務があります。また、これらの証明書や許可を得るための業務に従事するには、申請取次行政書士になる必要があるため、注意しましょう。


帰化

帰化とは、外国人が日本国籍を取得して日本人になることです。日本に帰化するための手続きに必要な書類は10種類以上と数が多く、書類の作成には手間がかかります。帰化する際には、申請者の所在地を管轄する法務局・地方教務局に、申請者本人が申請を行う必要がありますが、書類作成のサポートは行政書士が行います。

帰化の書類には、帰化を希望する理由を書くものもあるため、英語力があると業務がスムーズに進むでしょう。日本に帰化しようという場合には、依頼人が日本語を話せるケースもあります。しかし、細かい部分や複雑な説明などは、英語や依頼人の母国語の方が伝わりやすくなるため、コミュニケーションが取りやすくなります。

外国人の起業

起業の手続きをサポートするのも行政書士の業務の1つです。外国人かどうかに関わらず、起業の手続きは煩雑でわからないことが多いです。日本で起業する外国人の数は増加傾向にありますが、すべての手続きを1人でこなすのは困難でしょう。その際に、行政書士のサポートが必要となります。

起業に必要な書類の作成や手続きだけでなく、ビザの取得などを行政書士に依頼するケースも増えているようです。英語力があれば、スムーズにコミュニケーションが取れるため、書類作成や申請のサポートなどもスムーズに進む可能性があります。

特定技能検定

特定技能検定とは、2019年4月に新設された在留資格のことです。14業種の雇用者が、特定技能の在留資格を持つ外国人を雇用できるようになるため、人手不足解消などにつながると期待されています。

特定技能検定は、日本語能力と取得分野の技能に関するテストに合格することで取得可能です。特定技能を取得した外国人は、特定技能ビザ申請を取得できます。特定技能ビザを取得するには多くの種類が必要となるため、行政書士によるサポートを依頼するケースも多いようです。英語ができる行政書士であれば、円滑にサポートできるでしょう。

国際結婚のサポート

国際結婚のサポートも、行政書士の業務の1つです。外国人と結婚して日本で過ごす場合には、「日本人配偶者等」というビザを取得しなければいけません。しかし、日本人配偶者等のビザは結婚すれば取得できるというわけではなく、手続きが必要になります。また、偽装結婚などを防止するという観点から、厳しい審査が行われます。

審査が厳重なため、確実にビザを取得するために行政書士に依頼する人も多いようです。この際、英語が堪能であればサポートもしやすくなるため、スムーズにビザの取得ができる可能性があります。

英語ができる行政書士の将来性とは

英語ができる行政書士には将来性があるといえます。なぜなら、在留外国人が増えつつあるからです。行政書士のサポートを必要とする外国人も増えているため、英語ができる行政書士の需要は高まると考えられるでしょう。ここでは、英語力の高い行政書士の将来性について、詳しく解説します。

  • 2021年末から2022年末の1年間で在留外国人が約30万人の増加
  • 東京都では12.2%の増加

在留外国人が増えつつある

日本では、在留外国人が増加傾向にあります。法務省のデータをもとにして、在留外国人の増減に関する表を作成しました。

在留外国人総数(人)
2019年末 2,933,137
2020年末 2,887,116
2021年末 2,760,635
2022年末 3,075,213

このように、新型コロナウイルスの影響によって外国人が少なくなった時期もありました。しかし、2022年後半にはある程度落ち着きを見せ始め、前年よりも在留外国人の人数が増加していることがわかります。また、2023年現在、在留外国人は微増傾向にあります。

特に都心部・人口密集地の在留外国人が増加

日本全体で在留外国人の人数は増加傾向にありますが、特に都市部や人口密集地では在留外国人の増加が顕著です。法務省のデータをもとにして、在留外国人が増えている都道府県を表にしてまとめました。

2022年 在留外国人数と前年増減率

都道府県 在留外国人数(人) 前年増減率
東京都 596,148 12.2%
愛知県 286,604 8.1%
大阪府 272,449 10.7%
神奈川県 245,790 8.0%
埼玉県 212,624 7.9%
千葉県 182,189 10.2%

このように、東京都や首都圏、愛知県や大阪府などの大都市では、在留外国人の数が増加傾向にあります。英語力がある行政書士からすると、大きなビジネスチャンスになりうるでしょう。

英語力がある行政書士には将来性がある

法務省のデータから、在留外国人の数は増加傾向にあることがわかります。在留外国人が増えるということは、さまざまなサポートを必要とする外国人が増える可能性が高いということです。サポートを受けようと思った場合に、英語ができる行政書士が選ばれる可能性が高く、ニーズは高いといえます。

 行政書士に英語力は必須とまではいえません。しかし、英語力があれば仕事の幅が広がります。ビジネスチャンスをつかむことにもつながるため、英語力があると将来的には有利になる可能性もあります。

まとめ

行政書士には、英語力が必ずしも必要とはいえません。しかし、英語ができることで得られる仕事もあります。将来性もあるため、英語を学習しておくのもいいでしょう。英語が必要かどうかで悩むよりも、まずは行政書士の資格取得を目指して学習することが重要です。

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この記事の監修者は生涯学習のユーキャン

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