• 更新日:2023/07/06

キャリアアップを実現するための方法のひとつとして、資格を取得することがあげられます。行政書士は数ある資格の中でも人気がある資格です。この記事では、行政書士試験の概要、試験対策のポイントなどを解説します。行政書士試験を受験する際の参考にしてください。

このページを簡潔にまとめると・・・

  • 行政書士の試験内容は、大きく分けて法令等科目と一般知識等科目の2つ。
  • 法令等科目は、民法・行政法・憲法、行政書士に必要な法律知識、一般知識等科目は、政治・経済・社会などが出題される。
  • 試験対策のポイントは、過去問題や改正民法の対策、直前模試の活用、本番で使える実践力の養成など。
  • 効率的な学習のコツは「日常生活に当てはめて学習」「一般知識等科目の問題は基準点以上の獲得を目指す」 など。

行政書士の試験内容

行政書士の試験は内容が多岐に渡り出題範囲が広いため、「試験でよく出る分野」に絞って勉強することが、合格への近道です。

試験内容について、「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関連する一般知識等」に分けて詳しく解説します。

法令等

「行政書士の業務に関し必要な法令等」の試験科目について解説します。


基礎法学

基礎法学の分野では、法学全般の基礎知識が問われます。範囲が広いにもかかわらず、2問しか出題されないため対策が取りにくいです。テキストや過去問題集などで基礎知識を確認しておく程度でいいでしょう。ただし、基本的な法令用語や原則などはしっかり確認しておくことが大切です。


憲法

憲法の分野からは、5肢択一式の問題形式が5問、多肢選択式の問題が3問出題されます。難易度の低い問題が出題されることも少なくありませんので、しっかり点数を取りたい科目といえます。出題傾向もある程度決まっているため、過去問題集を参考にし、出題率の高いテーマを中心とした学習を行いましょう。憲法の問題は判例から出題されることが多いのでよく理解しておきましょう。


民法

民法の分野からは、5肢択一式が9問、記述式が2問出題されます。配点が76点と高い科目であるため、合格基準に達するための十分な対策が必要となります。民法の問題は長文を読解する能力が必要となるため、国語力も磨く必要があります。

特に、記述式問題の配点は2問で40点となるため、制限文字数内で要点を絞った文章が書けるように練習しておきましょう。民法が改正され、2020年4月1日から施行されたのに伴い、債権法を中心に見直しが行われました。民法改正は試験にも影響するので、改正に応じた試験対策が必要となります。


行政法(地方自治法含む)

行政法の分野からは、5肢択一式の問題が19問、多肢選択式が2問、記述式が1問出題されます。配点が112点と、300点満点のほぼ3分の1を占める重要な科目です。行政法の問題では、条文について細かい知識が問われるため、学習時間を十分に確保し、条文をしっかりと学習しておくことが大切です。単に暗記するのではなく、過去問題集などを解きながら理解を深めていく方がいいでしょう。


商法・会社法

商法・会社法の分野からは、5肢択一式の問題が5問出題され、そのうち商法が1問、会社法が4問になります。商法からは1問のみの出題となり、条文がストレートに問われることも多いため確実に点数を取りたい科目といえます。

商法の学習は、基本的にテキストや過去問題集を中心に行うといいでしょう。会社法は条文からの出題が多いため、学習時間を十分に確保し、出題の多いテーマに絞って、効率よく学習することをおすすめします。

一般知識等

行政書士の業務に関連する一般知識等の試験科目について解説します。


政治・経済・社会

政治・経済・社会の分野からは、7問程度が出題されます。出題範囲がとても広く、たとえば、政治では国内外の政治制度や日本の選挙制度、経済は財政問題や金融政策、社会では、社会保障などが出題されます。政治・経済・社会の対策としては、日頃からニュースや新聞などを活用して時事問題も意識しておきましょう。高校の授業で習う政治経済などの基礎知識も復習しておくといいでしょう。


情報通信・個人情報保護

情報通信・個人情報保護の分野からは、毎回4問程度出題されます。情報通信は、通信技術に関する知識や法律について問われます。個人情報保護では、個人情報保護法や行政機関個人情報保護法などが出題範囲となります。

情報通信分野の対策としては、インターネットに関する用語を理解しておくことが大切です。個人情報保護分野では、重要用語を覚え、過去問題集を活用して理解を深めておくといいでしょう。


文章理解

文章理解の分野からは3問出題されます。国語の問題で、出題形式は並べ替えや空欄補充、文章要旨把握となります。毎年出題形式が決まっているため、対策が立てやすく、確実に点数を取りたい科目です。

一般知識等は56点満点で、24点以上という合格基準点があります。文章理解は12点満点なので、ここで点数を取ることには大きな意義があります。学習のポイントとしては、過去問題集を活用するのがおすすめです。

行政書士の試験対策のポイント5選

行政書士の試験対策にはいくつかポイントが!過去問題や2020年度施行の改正民法の対策、直前模試も不可欠です。

ここでは、試験に合格するための具体的な対策のポイントについて5つ解説します。2006年度に行政書士試験制度が大きく変化し、難易度が高くなっています。2020年度には改正民法が施行されました。行政書士の試験問題にも大きく影響することが予想されるため、十分な対策を立てることが大切です。

多肢選択式問題を解答するコツ

多肢選択式問題を解答するコツ 多肢選択式問題は、20個の選択肢の中から、正解を4つ選ぶ形式の問題です。多肢選択式問題は、3問出され合計24点の配点で、1問につき4つの穴埋めをします。1つの穴埋めに正解すると2点もらえるので、確実に点を取れるようにしましょう。

判例をもとにした問題が多く出題されるので、キーワードとなる単語を意識しながら判例を読むことをおすすめします。また、1つの空欄にあてはまる単語の関連用語の数は少ないので、消去法で解けば難しくないでしょう。

記述式問題を解答するコツ

行政書士試験の記述式問題は、3問出され1問20点の配点です。45マスの解答枠があり、40文字程度での記述が求められます。問題文をしっかり読み取り、何が求められているのかを把握し、余計なことを記載せず、45マスで納まるように記述することが重要です。

記述式問題では部分点がつくので、必要なキーワードを意識的に使うようにするのがポイントです。実際に問題文を読み、解答となる文章をまとめる練習が必要となります。漢字の誤記入などは減点対象になる可能性もあるので、記述式問題に慣れておくことをおすすめします。

行政法と民法を徹底的に学習する

行政法の配点が112点、民法の配点が76点と全体の約60%を占めることになるので、しっかり学習しておく必要があります。民法・行政法共に、具体的な事例に関連した問題が出題されるため、条文・判例を理解し、重要な用語は正確に暗記しておきましょう。

全体像をなんとなく理解しただけでは解答することが難しいため、細かく丁寧に知識を身につけることをおすすめします。全体像や出題形式に慣れることから始めるといいでしょう。

過去問題を繰り返し解いてみよう

行政書士試験対策として、過去問題を繰り返し解きましょう。過去問題で解答できなかった部分については、「なぜ解けなかったのか?」をしっかり理解しておくことが大切です。出題傾向を把握することで、効率のいい学習が進められます。

直前模試は必ず受けよう

本番の予行演習をすることは非常に重要なので、直前の模擬試験は必ず受けましょう。模擬試験を受けることで、自分の実力や足りない知識を正確に把握でき、試験本番までに復習すべきポイントがわかります。また、本番と同じ問題量を制限時間内に解くことで、問題を解くペースが身につきます。本番に備えて自分なりの戦略を立てられます。

行政書士試験の学習のポイント

行政書士試験の学習を効率的に進めていく学習方法のポイントには「自らの日常生活に当てはめて学習する」「わからない問題はあと回しにする」「一般知識等科目の問題は基準点以上の獲得を目指す」 「行政法と民法に力を入れる」などがあります。

「繰り返し学習」で法律の理解を深める

行政書士試験の問題に出てくるような法律や判例は、一度読んだだけで内容を理解したり、覚えたりすることは難しいです。過去問やテキストで繰り返し学習することで、法律の理解を深めていくことができます。確実に実力をつけていくためにも、最低でも3回以上繰り返し学習するようにしましょう

また、覚えたことを忘れないためにも、間を空けて繰り返し学習を行うこともポイントです。

テキストを使って学習する

試験対策として、いきなり最初から六法全書を理解しようとしたり、暗記したりすることは難易度が高いです。まずは、読みやすく書かれたテキストを読んで理解することがポイントです。

ある程度学習が進んできたときに一番おすすめのテキストは過去問題集です。過去問を何度も解いていくことで、試験問題に対応できる知識をつけることができ、出題傾向も把握できます。また、解説が充実した過去問題集を選ぶことで、どこをどう間違ったのか理解を深められます。

自らの日常生活に当てはめて学習する

行政書士試験では、社会情勢や日常生活に関わる身の回りのことが出題テーマとなることがあります。一見、試験とは関係がなさそうなニュースやドラマ、漫画など、自分の興味があることを法律と結び付けて考えると、比較的、法律の内容を覚えやすくなります。試験の際にも、思い出すヒントになるため、おすすめです。

とくに、社会情勢に応じて出題内容が大きく変わる一般常識や民法等の科目は、自分の生活にあてはめて考えてみると理解しやすいでしょう。

わからない問題はあと回しにする

行政書士の試験は出題範囲が広く、わからない問題が出題されることも想定されます。そのため、わからない問題に焦ってしまうと、実力が十分に発揮できないということも考えられます。

試験でわからない問題が出たら、まずは落ち着いて考えてみることが大切です。ただし、考えてもわからない場合は、わかる問題から解くようにしましょう。時間配分のミスを防ぐためにも最後にわからない問題に取り組むのがおすすめです。

行政法と民法に力を入れる

行政書士の試験では、法令等科目で5割、一般知識等科目で4割クリアすることを前提として、総合点で6割の得点を取ることができれば合格できます。法令等科目では、244点中188点(77%)、総合点では、300点中188点(63%)を行政法と民法が占めています。したがって、行政法と民法だけで合格点をクリアできるほど、この2つの科目は重要です。

行政書士の学習では、ただやみくもに試験範囲を網羅的に学習するのは効率的ではありません。 行政法と民法に力をいれて効率的に学習を進めていきましょう

一般知識等科目の問題は基準点以上の獲得を目指す

試験の総合点や法令等科目で、合格ラインを突破しても、全体の合格基準に達しない可能性もあります。一般知識等科目で40%の基準点をクリアすることができずに、不合格になったというケースも少なくないのです。

出題数が多い法令等科目に重点的に力を入れることはいいのですが、一般知識等科目の学習もおろそかにはできません。過去の出題傾向を研究し、普段からニュースなどをチェックすることも大切です。一般知識等科目の問題は、基準点以上の獲得を目指すことを目標に学習を進めましょう。

記述式問題への対策

行政書士試験は、選択式のマークシート問題と記述式問題で構成されています。記述式問題を得点に結びつけるためには、正確な知識が必要です。記述式問題では、論文のような長い文章を書く必要はなく、問題文に対して40字程度で解答を作成する形式です。正確な知識を引き出すことができれば解答欄を埋めることができるでしょう。

対策として、学習した知識から解答に必要なキーワードを導き、組み合わせて解答を作るなど知識の使い方のトレーニングを行うことが大切です。

行政書士試験とは?

行政書士試験は、年齢や国籍、学歴などに関係なく誰でも受験可能!行政書士の業務に必要な知識や能力を見極めるための試験です。

行政書士試験とは、行政書士が業務を行うために必要な知識や能力の有無を見極めるための試験です。毎年1回、全国の会場で実施されています。行政書士の資格は国家資格であり、合格後は行政書士名簿に登録することで活躍できます。

行政書士の業務とは?

行政書士の主な業務は、官公署に提出する書類を作成することです。権利義務や事実証明に必要な書類などを作成します。クライアントから行政手続きや法律に関する相談を受けることもあります。業務の対象は企業だけでなく、個人の場合もあります。

試験概要

行政書士試験の試験日や受験資格などを解説します。


試験日

毎年11月の第2日曜日に実施されます。試験時間は午後1時~4時までです。


受験資格

年齢や国籍、学歴などに関係なく誰でも受験可能です。


試験科目

試験科目は、「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関連する一般知識等」の2つです。

行政書士試験の合格率とは?

行政書士試験の合格率は、直近5年間では10~15%と高くはありませんが、しっかり対策すれば、初心者でも合格が可能です。

過去に行われた行政書士試験の合格率を紹介します。

直近5年間の合格率

以下の表は、行政書士試験の直近5年間の合格率をまとめたものです。

回(実施年月日) 受験者数(人) 実受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
2017年度 52,214人 40,449人 6,360人 15.7%
2018年度 50,926人 39,105人 4,968人 12.7%
2019年度 52,386人 39,821人 4,571人 11.5%
2020年度 54,847人 41,681人 4,470人 10.7%
2021年度 61,869人 47,870人 5,353人 11.2%

直近5年間の合格率を見ると、ほぼ10~15%の間で推移しています。行政書士試験の合格基準は、300満点中180点以上の得点を取得することとなっており、幅広い法律の分野をいかに効率的に学習するかが重要になります。合格率はあまり高くはありませんが、しっかり対策をすれば、初心者でも合格が可能となります。

まとめ

行政書士試験の試験内容としては、大きく分けて法令等科目と一般知識等科目の2つがあります。法令等科目は、民法・行政法・憲法などがあり、行政書士として知っておくべき法律知識についての問題が出題されます。一般知識等科目には、政治・経済・社会などがあり、基準点に達しない場合は不合格となるためこちらも十分な学習が必要となります。

学習の対策を立てるためには、試験で出題される問題の形式と解答方法を事前に把握しておきましょう。過去問題集や直前模試を活用して、本番で使える実践力を身につけることがポイントです。

行政書士試験の対策としては、効率的に学習できる通信講座の受講もおすすめです。ユーキャンの行政書士講座では、優先順位の高い民法と行政法から効率的に学習していきます。行政書士試験対策として重要な過去問題について非常に丁寧な解説を行っています。これから行政書士を目指す人は、ぜひ検討してください。

この記事の監修者は海野 高弘(うみの たかひろ)

東京都出身 
東京都行政書士会文京支部理事
趣味は、資格試験短期合格法の研究、野球、釣り、旅(判例現場巡り&寅さんロケ地巡り)
2000年 行政書士試験受験、翌年合格
2004年 ユーキャン行政書士講座 講師
2012年 ユーキャン行政書士講座 主任講師
モットーは、「夢なき者に成功なし」「短期合格は第一歩がすべて」「法律は暗記ではなく思考力」

★ユーキャン行政書士講座 公式YouTubeチャンネル

よくある質問

行政書士には、どんな人が向いている?

行政書士の適性は、責任感があり、正確でスピーディーな事務処理能力や営業力、コミュニケーション能力の高い人が向いているといわれています。

行政書士の資格はどんなところで活かせますか?

行政書士の資格が活かせる場は、士業事務所、建設業や不動産業、一般企業の法務部や総務部など、多岐に渡ります。行政書士の求人は「未経験の有資格者でも可」「独立前提」など雇用形態の幅が広く、将来性ある仕事といえます。
行政書士の就職活動では、動機と就職希望先のマッチングの他、キャリア形成や将来性、代表との相性なども重要です。

行政書士は何ヵ月で取れる?

行政書士の試験対策に必要な学習期間は、1日の勉強時間を平均でどれほど確保できるかによって変わります。行政書士の合格に必要な学習時間は800時間ほどが目安といわれますが、その場合、1日当たり平均で2.5時間とすると約10ヵ月となります。1日当たり平均が4時間なら約7ヵ月、5時間なら約5ヵ月の学習期間となります。

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資格取得後は、法律関連の業務全般について、書類作成業務や官公署への書類提出手続き代理業務、契約書等代理作成業務など、気軽に市民の目線で相談できる「頼れる法律家」に。扱える書類は数千種類もあり、業務範囲の広い国家資格です。独立・開業して社会に役立つことはもちろん、企業への就職・転職にも有利になります! また近年は、行政書士法改正で「代理権」が付与され職域が拡大したこと、行政書士法人の設立が可能となる改正法の施行など、時代の流れはまさに追い風となっています。
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