宅建資格とは、不動産取引の専門家である「宅建士」になるために必要な国家資格です。一般的には不動産の領域で役立つ資格と考えられていますが、不動産以外でも宅建資格を活かせる分野があります。本記事では、不動産以外の分野で宅建資格を活かせる仕事を紹介します。宅建の資格を活かして、不動産業界以外で仕事をしたいと考えている場合は、ぜひ参考にしてください。

宅建士の仕事とは

宅建士は「宅地建物取引士」の略称で、不動産取引に関わるための国家資格です。宅建士の仕事には、重要事項の説明など、独占業務が含まれます。

宅建士の受験者数は毎年20万人前後と多く、知名度も人気も高い資格といえるでしょう。2021~2022年に実施されている宅建試験に関して、受験者数や合格者数・合格率を以下の表にまとめました。

実施年度 2021年10月 2021年12月 2022年
受験者数 209,749人 24,965人 226,048人
合格者数 37,579人 3,892人 38,525人
合格率 17.9% 15.6% 17.0%
  • 2020年・2021年には新型コロナウィルス感染症流行の影響で、試験の実施が2回に分けられていましたが、2022年には通常どおり年1回に戻されています。合格率はどの試験も、おおよそ15~18%です。

宅建資格の強みを解説

宅建資格には、以下のような強みがあります。

  • 宅建士しかできない業務がある
  • 不動産取引の事業所には設置義務がある
  • 就職すれば資格手当が支給される
  • 法令などの専門知識が身につく

それぞれ解説します。

1:独占業務がある

宅建士には、独占業務があります。独占業務とは、その資格の保有者しか行ってはならないと法的に定められた仕事です。つまり不動産の仕事のなかには、宅建士しかできない仕事、宅建士以外の人には禁止されている仕事があります。

宅建士の独占業務とは、たとえば、重要事項の説明、重要事項説明書への記名・押印、契約書面への記名・押印などです。不動産業界で宅建士が仕事をするなら、主立った業務はこれらの独占業務になることが多いでしょう。

2:設置義務がある

宅地建物取引業を営む場合、事業所には宅建士の設置義務があります。具体的には、事業所に在籍するスタッフのうち、5人に1人を宅建士にする必要があります。

この基準を満たさない場合、不動産業の営業ができません。したがって宅建士は常に高い需要を誇る職業であるといえます。

3:資格手当が支給される

宅建資格には、資格手当が支給されます。資格手当の金額は、企業によって異なるものの、資格保持者には毎月の給料+10,000円~25,000円支給されるのが一般的です。

月に数万円であっても、生涯年収に換算すると大きな違いが生まれます。男女関係なく、ほぼ確実に収入がアップすることは、宅建資格がもつ大きな魅力の1つであるといえるでしょう。

また、女性の場合、出産・育児でキャリアがブランクになることもありますが、宅建資格があれば仕事の復帰後に好待遇を狙えるでしょう。

4:専門知識が身につく

宅建資格を取れば、不動産に関連する専門用語や法令などを身につけられます。体系的に学べるため、実務で視野が広がりやすいのがメリットです。また不動産を借りたり、購入したりする際、専門知識が役立つこともあるでしょう。

宅建資格を不動産以外の業界で活かせる理由

宅建資格は、不動産業界以外の業界でも活かせます。分野の違った業界でも資格を活かせる理由には、以下が挙げられます。

  • 転職時に評価されやすい
  • 自己研鑽の努力が認められる

それぞれについて解説します。

転職では資格の有無が影響する

宅建士はレベルの高い資格であるため、転職の際に資格があるだけで有利になることがあります。

不動産業界への転職ではなくとも、資格を持っていない人よりも、持っている人の方が評価されやすいのが現実です。宅建の場合は国家資格に該当するため、宅建資格を持っているということは、国家資格を取れるだけの知識や根気のレベルがあるということを示しています。こうしたことから、宅建資格があると転職の成功につながりやすいです。

積極的に自己研鑽できる人だと評価される

宅建士の資格があると、自己研鑽に対して積極的な姿勢で取り組める人であると判断されます。宅建士は合格までに数百時間の学習時間が必要な資格です。つまり、宅建資格を持っていることで、自己研鑽できる人材だと判断されるケースもあります。自己研鑽のできる人を採用したいと考えている企業では、宅建資格がプラスに働き、採用につながる可能性は大いにあるでしょう。

宅建資格を活かせる不動産以外の仕事とは

宅建資格を活かせる仕事のうち、不動産以外の業界に属するのは、主に以下の2つです。

  • 金融業界
  • 保険業界

どのように宅建が活かされるのか、それぞれ解説します。

金融業界

金融業界では、不動産を担保にした取引が増えています。ローンの担保に不動産を利用するのはごく一般的なことです。また金融機関では、担保の物件を投資家に紹介し、売買取引を行うこともあります。

そこで金融業界でよく見られるのが、宅建資格を入社時、あるいは新入社員の推奨資格としているケースです。また、宅建を昇進の条件にしている企業もあります。実際、現在金融業界で働く人のなかにも、宅建資格を持っているという人が多いでしょう。

保険業界

保険業界では、ライフプランナーとして宅建資格の需要があります。

ライフプランナーは、現在から将来までの長期間にわたって必要になるお金や、出て行くお金を見える化し、貯蓄や入出金のプランを立てる仕事です。その過程で不動産が動けば、ローンでも、投資でも、大きくお金が動きます。したがってライフプランナーは住宅ローンや、不動産投資に関する問い合わせなどを受けることがあります。不動産取引に関連する資格があれば役立つでしょう。

コンサルティング業界

コンサルティング業界で働く際、宅建資格を保有していれば、不動産の知識を活かせます。出店場所の可否を判断したり、企業規模に対して事務所や店舗の賃料が適切かを診断したりできるでしょう。

また宅建資格の知識によって、資産としての土地の価値や、物件を売買する場合の価格が適正かどうかを判断し、経営に役立てることが可能です。都市再開発、店舗出店などを目指すクライアントのサポートができることで、より充実したコンサルティングとなるでしょう。

建設業界

建設業界では、自社で建物を建設するだけでなく、完成した物件の販売事業を手掛けている企業もあります。物件の販売を行う際は、宅建業の免許が必要となり、宅建資格をもつ従業員が業務に携わらなければなりません。つまり建設業界のなかでも、宅建資格があれば自分自身の高い評価につながります。

他にも、宅建業と建設業は重なる分野が多く、宅建資格が役立つ場面も多くあります。たとえば、都市計画、開発行為・許可など、宅建士の資格があれば業務をスムーズに進められることが多いでしょう。

地方公務員

地方公務員も、宅建と関係の深い部署があるため、宅建資格が大いに役立ちます。

たとえば、地域築計画、企業誘致、開発計画指導など、都市計画に携わる部署では、いずれも土地や建物に関連する権利関係や法令関係の専門知識が必要です。

こうした部署で働くと、建築関係のさまざまな業者とやりとりをしなければなりませんが、宅建資格をもっていると、相手が自分を信用してくれるため何かと動きやすいでしょう。また公務員として一定の成果を出し、転職を考えるようになった場合も、もちろん宅建資格が役立ちます。

その他の一般企業

一見して不動産業とは関わりのない一般企業でも、宅建資格が役立つ場面は多くあります。とりわけ多いのは、企業が不動産資産を所有しており、不動産取引や運用で利益を上げているケースです。

このように、本業のほかに不動産投資を行っている企業に就職すれば、宅建の専門知識を用いてアドバイスなどができます。自社のリソースで、より効果的な不動産取引を行いたいと考えている企業にとって、宅建資格のある従業員は価値がある人材であるといえるでしょう。

不動産業界以外で宅建資格を活用するためのポイント

不動産業界以外で、宅建資格を活用するためには、次のようなことを意識しておくのがおすすめです。

  • 親和性の高い資格を取得して専門性をアピール
  • 就職活動の際は企業にとってのメリットを具体的に伝える
  • 自宅購入の際などプライベートも宅建資格活用の場

それぞれ詳しく解説します。

関連資格を取得する

宅建資格と親和性の高い資格を追加で取得するのも、宅建資格を活用する手段の1つです。宅建に関連する資格には、たとえば、FP、行政書士、マンション管理士などがあります。

これらの資格があると、より専門的な知識を持っていることを対外的に証明できるのがメリットです。FPの場合は、宅建資格があることで不動産関連の資金の流れに信憑性が持てます。行政書士・マンション管理士では、より充実した不動産の法的知識をアピールできるでしょう。

不動産業界でも、その他の業界でも、複数の資格をもっていることで、より多方面での活躍が期待できます。

企業に採用メリットを伝える

就職や転職の際、企業が自分を採用した場合にどのようなメリットがあるか伝えると、採用につながりやすくなります。

宅建資格があれば、たとえば「すでに基礎的な知識は身に付いているため、不動産関連の研修は最小限でスムーズに実務に携われる」というケースや、「入社直後でも重要事項の説明業務を担当できる」というケースなどが考えられます。

こうした企業にとってのメリットを具体的にリストアップし、言葉にして明確に伝えることで、希望する企業に就職しやすくなるでしょう。

プライベートで活用する

宅建資格は、「一生に一度の大きな買い物」である不動産購入の際に知識が活かせる資格です。仕事の場面だけではなく、自分の人生を左右するプライベートな場面でも活用できるのが、宅建の大きな強みといえます。

また、自分自身が購入した不動産を売る際にも役立つことがあるでしょう。不動産取引は宅建資格がなければ、不動産業者に任せきりにするしかありません。しかし、自分で不動産取引のルールが理解できていれば安心です。このように、重要な取引を自分自身の専門知識のもとに行うことができるのも、メリットの1つです。

まとめ

宅建資格は、就職や転職においても、またプライベートにおいても利用価値が高い、人気の国家資格です。不動産業界以外でも宅建資格が強みになる場所は多く、取得すれば一生ものの資格として大きなメリットがあるでしょう。

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よくある質問

宅建士と行政書士では、どちらが難しいですか?

一般的には、宅建士試験に比べて行政書士試験の方が難しいとされています。近年の合格率では、行政書士が10~15%、宅建士が合格率は15~17%と、宅建士のほうが合格しやすい試験といえます。

宅建試験は独学でも目指せますか?

独学で宅建試験の合格を目指すことは可能ですが、出題範囲が広いため、学習方法に工夫が必要です。
効率的な対策には、優先順位をつけ、配点・出題数が多い科目を優先的に学習します。特に出題範囲も広く配点も多い「宅建業法」を優先して取り組み、十分に対策することがポイントです。
勉強の進め方は、参考書を読み全体を把握し、試験に出題される4科目の特徴を理解します。過去問対策や模試の活用も重要です。

宅建試験の5点免除とは?

宅建試験の5点免除とは、50問ある試験問題のうち46~50問目が免除になる制度です。
この制度の利用には、国土交通大臣が指定する講習を受講し「登録講習修了者証明書」の交付を受ける必要があります。登録講習の受講には「宅地建物取引業に就いている」「従業者証明書を持っている」の2つの条件があります。
合格率は一般受験が約15%前後、5点免除が約20%前後と、5点免除の方が合格率が高く、本試験に合格できる可能性が高まります。宅建の本試験は合格基準点に1~2点の不足で不合格になるケースがよくあるので、5点免除には大きなメリットがあるといえます。

試験で間違えやすい、35条書面・37条書面の有効な対策方法とは?

宅建試験では宅建業法が大きな得点源で、50問中20問も出題されますが、中でも、特に35条書面・37条書面の違いは間違えやすい要素の1つで、よく出題される傾向があります。
35条書面・37条書面の違いを理解し、確実に得点できることがポイントです。対策は、条文を単に暗記するのではなく、共通点や違いなどを分類・比較したり、実際の仕事の場面をイメージして学習することが有効です。

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