生涯学習のユーキャン

なぜ脳科学の点で、
折り紙が認知症予防に良いと言われているのか?

超高齢社会に突入した日本の高齢化はさらに進み、2060年には全人口の約40%が65歳以上になると予測*されている。世界トップクラスの平均寿命を誇る日本だが、同時に進む少子化の波は、高齢者を支える若者の負担を増やしている。そこで、これからの社会において重要となってくるのは、自立した生活を送ることのできる「健康寿命」を延ばすことではないだろうか。一方で、高齢者に多く発症する認知症は、自立的な生活の大きな妨げになっており、いかに認知症を発症させないか、が鍵となっている。

迫りくる認知症の波

厚生労働省の調査によると、2015年におよそ260万人だった認知症を有する高齢者人口は、2025年には約700万人に達する見込みだ。今後さらに増加する認知症に対して、国も「認知症施策推進総合戦略(通称:新オレンジプラン)」を掲げ、取り組みを始めている。

今後の社会において、認知症を未然に防ぐことが、急務になってきている。

認知症と折り紙の関係

たとえば、物忘れや言葉がスムーズに出てこないといった、特に認知症の初期段階においてお勧めなのが、折り紙だ。

認知症の予防となる脳のトレーニングは毎日コツコツ続けることが症状を悪化させないためのコツだが、準備や後片付けに時間がかかってしまったり、やってもなかなか成果が見えなかったりする場合、三日坊主で終わってしまいがちだ。

しかし、折り紙は多くの日本人に馴染みがあり、準備に時間もかからないことから気軽に始められる。さらに短時間、短期間で完成させることができるため、成果が見えやすい。こういった手軽さや種類の豊富さが、人々が折り紙をストレスなく続けられる理由となっている。


また、ただ折るだけでなく、色や紙質を変えたり、知らない折り方に対してどうすれば折れるか考えたりするなど、折り紙を通して創意工夫の機会を得ることができる。

人は他の動物と違い、学習し、工夫を重ねることで進化をしてきた。創意工夫ができることが、人が人たる所以であり、逆にできなくなることこそが認知症の始まりなのだという。

つまり、日々何かしらの創意工夫の機会があれば、認知症の予防につながるのである。

脳研究から見た折り紙の効果

脳研究の観点からも折り紙は効果があることが分かっている。
「脳を活性化させるには、指と口を動かすことが重要です」
そう語るのは、杏林大学名誉教授の古賀良彦先生だ。

今回お話を伺った、杏林大学名誉教授の古賀良彦先生

古賀先生は日本ブレインヘルス協会理事長などを務める医学博士・精神科医で、脳科学の観点から、折り紙をはじめ様々な研究を行い、その著書も多い。


指と口を動かすとはどういうことか。
「指を使って折ることで、3次元的にものを捉える訓練をしていることになります」と先生は言う。

折り紙を折る時、目の前の紙と展開図を見比べて考える。指先を使って次はどのように折るのか頭を働かせる。さらにそこからどう展開していくのか、脳の司令塔である前頭葉を中心に脳全体を使い、立体的に考えることができるのだと言う。

この3次元的にものを見る「空間認知」が、認知症予防につながるのだ。


それでは口を動かすとはどういうことだろう。
「折り紙を完成させたら、その作品を誰かに見てもらいたいとか、プレゼントしたいという気分になります。実はそれが脳にとっては大事なのです」

折り紙は、一人で折る孤独な作業だと思われがちだが、その後、作った作品を中心にして家族や親しい友人とのコミュニケーションが生まれる。そういう点において、折り紙は手軽に始められ、頭を若く保てる高度な趣味なのである。

折り紙で新たなコミュニケーションを

通信講座のユーキャンは、10年以上前から折り紙講座を開講し、多くの受講生にさまざまな作品の折り方を紹介している。日本折紙協会認定の折紙師範が監修した数々の作品を、自分のアレンジを加えながら作品を作ることができる。

ユーキャンの折り紙講座で実際に作られた作品

ユーキャンの折り紙講座の受講生からは、様々な折り方を学べたといった声だけでなく、娘や孫と一緒に楽しめる、作った作品を近所の方に配って話をするのが楽しい、といった声が多く寄せられている。

「脳を活性化させるために何より大事なのは、楽しむこと」と古賀先生は言う。効果を出すためには毎日継続して行うことが重要だが、義務感を伴っては本末転倒だ。折り紙を折る楽しさ、折り紙を通して誰かとコミュニケーションを取る楽しさを実感することが、何より大切なのだ。

健康とは、カラダだけでなく、脳も同時に問題のない状態をさす。そうした健康を、子供の頃から馴染みのある折り紙が支えてくれるかもしれない。


※出典:公益財団法人長寿科学振興財団