インセンティブとは?意味や具体例、制度の導入手順を分かりやすく解説!

  • 公開日:2023.09.12

    更新日:2023.09.12

    インセンティブとは、従業員が目標を達成した際に支払われる報酬です。 自社の従業員のモチベーション向上を図るため、インセンティブ制度の導入を検討している方もいるのではないでしょうか。この記事では、インセンティブの意味や種類とともに、制度を導入すると得られるメリットなどについて詳しく解説します。

インセンティブとはなにか?

「インセンティブ(Incentive)」とは、「刺激」「動機」「奨励」などを意味する言葉です。ビジネスシーンでは、従業員の仕事の成果に対して支払う報酬という意味になります。

インセンティブが支払われる条件は目標の達成です。インセンティブに似た言葉である「歩合」は、仕事の成果や売上に応じてお金を支払うもので、契約により歩合率は異なります。

インセンティブ制度の導入が注目されている理由

世の中が大きく変化し、働き手の価値観も多様化しています。それにより、人材の流動性も激しくなってきました。そのため、自社にとって優秀な人材も流出しやすくなっています。インセンティブ制度は勤続年数にかかわらず成果を出せば評価される仕組みであり、中途採用で入社した優秀な人材の定着を促せるでしょう。

また、インセンティブとして金銭の報酬を与える方法だけでなく、自社株式を与える方法にも注目が集まっています。自社株式によるインセンティブには、企業価値を長期的に創造する効果も期待できます。

インセンティブと似ている用語

インセンティブと似ている用語として、モチベーション、ボーナス・賞与、歩合制などがあります。ここでは、インセンティブとの違いを解説します。

インセンティブとモチベーションの違い

インセンティブと同様、「モチベーション(Motivation)」も「動機」という意味です。モチベーションは行動のきっかけを表しており、「意欲」と言い換えられます。ただし、ビジネスにおけるモチベーションは、外部的要因と内部的要因のいずれによっても発生するものです。インセンティブは、外部的要因による働きかけによって行動の動機を生み出すとされています。

何が効果的なインセンティブになるかは、人によって異なります。すでに触れたとおり働き手の価値観は多様化しているため、外部的要因としてインセンティブを与えるうえでは慎重な判断が必要です。さまざまな価値観をもつ従業員に対して効果的なインセンティブを与えるには、複数の種類のインセンティブを用意して使い分けるとよいでしょう。

インセンティブとボーナス・賞与の違い

ボーナスや賞与は、基本給に加えて支払われる金銭的な報酬を意味します。労働基準法では、あらかじめ金額が決まっておらず、労働者の勤務成績に応じて支給されるものが賞与とされています。定期的に与えるだけでなく、臨時で与えることも可能です。

ただし、賞与は法律上の義務ではなく、企業が従業員に与えなくても問題はありません。賞与を支払う予定がある場合は、就業規則や雇用契約などで具体的な内容を決めておく必要があります。

インセンティブも従業員に与える報酬ですが、金銭以外の報酬も含んでいます。実際にはインセンティブとして金銭を与えている企業が多いため、インセンティブとボーナスや賞与を混同している人も少なくありません。

インセンティブ制度と歩合制の違い

歩合制とは、個人が取り組んだ業務の成果に応じて報酬が支払われる制度のことです。仕事で具体的な実績を上げたら、事前に決定している一定の割合で報酬が発生します。たとえば、1件の成約ごとに一定の金額の報酬が追加されます。

ただし、雇用契約を結んでいる従業員に対して歩合制を導入する場合、労働基準法に則り最低賃金の保障が必要です。完全歩合制にするなら、雇用契約ではなく業務委託契約を結ぶ必要があります。完全歩合制であれば、成果が発生しないと報酬も一切発生しません。

一方、インセンティブは、目標の達成度合いに応じて与える報酬です。たとえば、「目標を達成した場合に基本給に対して売上の1%が支給する」といった内容を設定できます。

インセンティブの種類

アメリカの心理学者であるアブラハム・マズロー氏は「マズローの欲求5段階説」を提唱しています。この理論では、人の欲求を低位な方から「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求・所属と愛の欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5つに分類しています。インセンティブの種類はこれらの欲求をもとに与えることが理想だといわれており、具体的には以下のとおりです。

マズローの欲求5段階説欲求に対するインセンティブの種類
生理的欲求金銭的・物質的インセンティブ
安全欲求金銭的・物質的インセンティブ
社会的欲求・所属と愛の欲求人的インセンティブ
承認欲求理念的インセンティブ
評価的インセンティブ
自己実現の欲求自己実現的インセンティブ
理念的インセンティブ
評価的インセンティブ
インセンティブの種類について、それぞれ解説します。

金銭的・物質的インセンティブ

金銭的・物質的インセンティブは、金銭や物品によるインセンティブです。最も一般的なインセンティブであり、「インセンティブ」と聞けば金銭的・物質的インセンティブをイメージする人が多いでしょう。金銭や物品を支給し、物質的な欲求を刺激して仕事に対するモチベーションを高める狙いがあります。

評価的インセンティブ

評価的インセンティブは、従業員の仕事ぶりを企業が評価するインセンティブです。評価されたいという承認欲求を満たし、従業員のモチベーションをアップさせます。たとえば、昇進や昇格なども評価的インセンティブです。また、社内表彰を行い、人前で実績を賞賛する機会を作ることも効果のある評価的インセンティブになります。

理念的インセンティブ

理念的インセンティブは、企業理念やビジョンに対する共感によってもたらされるインセンティブです。従業員が企業理念やビジョンに深く共感できれば、自社の社会的意義も感じられます。その結果、自分の日々の仕事に対しても高いモチベーションをもてるようになります。仕事に対して価値を見いだせるようになるため、従業員はより積極的に仕事に取り組むようになるでしょう。

人的インセンティブ

人的インセンティブは、良好な人間関係がもたらすインセンティブです。職場の人間関係は重要であり、人間関係が良好であれば職場の居心地もよくなり、仕事に対するモチベーションもアップします。
仕事のパフォーマンスも向上するでしょう。人的インセンティブとしては、たとえば、従業員自身が 一緒に働きたいと思うような上司がいる環境の整備などがあげられます。

自己実現的インセンティブ

自己実現的インセンティブは、仕事を通じて、従業員の夢ややりたいことを実現させるインセンティブです。自己実現により、従業員のモチベーションを高める狙いがあります。自己実現的インセンティブの内容は幅広く、スキルアップのための研修、キャリアアップにつながる仕事を任せる、働きやすい環境を作ることも該当します。

インセンティブ制度を導入するメリット

インセンティブ制度を導入するとさまざまなメリットがあります。ここでは、具体的にどのようなメリットがあるか解説します。

従業員のモチベーションアップにつながる

インセンティブ制度を導入すると、従業員の仕事に対するモチベーションが高まります。 仕事で成果を出せば報酬や評価を得られる環境であれば、従業員は目標を達成するために自ら努力しようとするでしょう。その結果、意欲的に業務に取り組むようになります。また、それにより自社の業績にも良い影響を与える可能性が高まります。

さらに、インセンティブを得られる基準に勤続年数は関係ありません。成果を出せば公平にインセンティブを得られるため、年功序列に対して不満をもつ従業員のモチベーションもアップさせられます。

組織の活性化につながる

インセンティブ制度の導入により各従業員のモチベーションが上がれば、組織全体も活性化します。同じ目標のために従業員同士が協力し合ったり、ときには切磋琢磨してより高い成果を出すために取り組んだりできます。組織全体で活発に業務を進められ、生産性の向上も実現しやすくなるでしょう。結果として、企業の業績の向上も期待できます。

評価に対して納得感を持てるようになる

公平なインセンティブ制度を構築できた場合、従業員は評価に対して納得感を持てるようになります。インセンティブ制度を設けるには、どのような場合にインセンティブを支給するか基準を設ける必要があります。明確で誰もが納得できる基準であれば、自分に対する評価を素直に受け入れやすくなるでしょう。

インセンティブ制度の導入によって従業員が抱えがちな不公平感を軽減できると、業務に対するモチベーションもそれまで以上に高くなります。

採用力の強化にも役立つ

インセンティブにはさまざまな種類があるため、インセンティブ制度の工夫次第で採用力も強化できる可能性があります。すでに多くの企業がインセンティブ制度を導入していますが、従業員にとって特に魅力的に映るインセンティブを設定すれば差別化になるでしょう。その結果、インセンティブ制度の内容をきっかけに自社への入社を前向きに検討する求職者が現れる可能性があります。

インセンティブ制度を導入するデメリット

インセンティブ制度の導入にはデメリットもあります。ここでは、どのようなデメリットがあるのか詳しく解説します。

社内の人間関係が悪化する恐れがある

インセンティブ制度を設ければ、従業員がそれまで以上に成果にこだわって働くようになります。場合によっては、社内の競争が激しくなり、人間関係を悪化させる恐れもあります。チームワークが乱れると、社内の業務が円滑に進まなくなるリスクもないとはいえません。インセンティブ制度を設ける際は、社内の人間関係にどのような影響を与えるか考慮しましょう。

従業員の収入が安定しなくなる

企業によっては、従業員の給料の大部分をインセンティブが占めているパターンもあります。その場合、成果によって給料が激しく変動します。思うように成果を出せないと収入が少なくなり、従業員が不安を感じる恐れがあるでしょう。結果として、離職や転職の理由になり得るため、注意が必要です。

プレッシャーを強く感じてしまう場合がある

インセンティブ制度がある企業では、従業員は常に成果を意識しています。従業員によっては、インセンティブ制度に対して強いプレッシャーを感じる恐れがあります。特に、自分が目標をなかなか達成できないにもかかわらず、同僚が高い成果を出している場合、従業員が自分自身を責める恐れがあるでしょう。それにより、仕事に対するモチベーションが低下する人もいます。

曖昧な目標設定・評価基準が不満を招く恐れがある

インセンティブ制度で報酬や評価を与えるうえでは、基準を設ける必要があります。 基準が曖昧であれば、従業員が不満を抱く可能性が高いです。たとえば、インセンティブ制度の基準となる目標が従業員ごとに異なれば、偏った評価により不利になる従業員が不満をもち、仕事に対するモチベーションも下がる恐れがあります。

インセンティブ制度が採用されることが多い職種

インセンティブ制度がよく採用されている職種の例をあげると、以下のとおりです。

  • ・営業職(不動産会社や保険会社など)
  • ・コールセンター(アウトバウンド)
  • ・販売職(アパレル)
  • ・ドライバー
営業職は仕事の成果が特に目に見えやすいため、インセンティブ制度が導入されているケースが多くみられます。具体的には、売上金額や契約件数などを評価基準とし、インセンティブが与えられています。

そもそも営業職は売上を作る仕事であり、企業の運営に対して直接貢献しています。魅力的なインセンティブを用意すれば優秀な営業職の人材が集まりやすくなるため、企業にとっても大きなメリットがあるでしょう。

インセンティブ制度の導入事例

インセンティブ制度は、実際にどのように導入されているのでしょうか。ここでは、インセンティブ制度を導入している企業の事例を紹介します。

フリマアプリ運営会社A

あるフリマアプリ運営会社では、従業員同士で感謝の気持ちを伝え合うインセンティブ制度を設けています。 従業員同士でリアルタイムに感謝の気持ちを伝えるだけでなく、それに合わせて一定額の報酬を贈る仕組みになっています。 他部署や多拠点との交流のきっかけにもなり、その後の仕事にもよい影響が出ているようです。

アウトソーシング・コンサルティングなどを提供する会社B

コンサルティングやシステム開発などを提供しているある会社では、残業ゼロの従業員に対してインセンティブを与えています。残業せずに高いパフォーマンスを発揮している従業員に対し、20時間分の残業代にあたる金額を報酬として支払っています。

インセンティブ制度の導入ステップ

インセンティブ制度を導入するには、さまざまな手順を踏む必要があります。ここでは、インセンティブ制度の導入ステップを順番に解説します。

1.導入目的を明確化する

インセンティブ制度を導入する際は、目的を明らかにするところから始めましょう。なぜインセンティブ制度を設けるのか改めて考え、具体的な目的を定める必要があります。インセンティブ制度の目的としては、たとえば従業員のモチベーションを高めたり、離職率を下げたりすることがあげられます。生産性の向上を目的としてもよいでしょう。

なお、インセンティブ制度の導入そのものを目的にするのではなく、あくまでも手段として捉える必要があります。 インセンティブ制度の導入により何を実現したいのか、よく検討してください。

2.対象者を決定する

インセンティブ制度を導入する目的を明らかにしたら、対象者も決定します。インセンティブは個人に与えるだけでなく、部署単位で与える方法もあります。インセンティブの種類や与え方は企業によって異なるため、自社の状況を考慮して検討する必要があります。社内のニーズを把握したうえで、適切に対象者を選定しましょう。

なかにはインセンティブを必要としていない個人や部署も存在するため、インセンティブ制度の構築にあたっては社内の状況をよく見極めるべきです。

3.インセンティブの条件・内容を決定する

インセンティブを付与する条件も、インセンティブの種類やニーズによってさまざまです。たとえば、ノルマを達成したときにインセンティブを与える場合もあれば、従業員自身がスキルアップを果たしたときにインセンティブを与える場合もあります。

また、インセンティブの条件を決めたら、与える報酬の具体的な内容も決めましょう。すでに触れたとおり、報酬の内容は金銭だけではありません。従業員にヒアリングを行ったうえで、ニーズを正確に把握して報酬の内容を決定する必要があります。

4.運用体制を構築して制度をスタートする

インセンティブ制度の内容が決まったら、運用体制を構築して制度開始の準備をしましょう。インセンティブをいつ与え、制度をどのように管理するか決める必要があります。

また、実際にインセンティブ制度を開始する際は、社内への周知も必須です。 正確な情報を発信し、従業員が正しい認識で制度を利用できるようにしてください。 運用体制の構築が完了次第、制度をスタートさせられます。

なお、インセンティブ制度の運用は、タレントマネジメントシステムを導入すると従業員が持つ能力・資質・才能、スキル、経験値などの情報を管理できるため、効率的です。

インセンティブ制度を効果的に運用するためのポイント

インセンティブ制度を運用するうえでは、さまざまなことを意識する必要があります。ここでは、運用のポイントを解説します。

制度設計の際は従業員の意見も参考にする

インセンティブ制度を導入するうえでは、従業員の意見も取り入れ、従業員の意欲を引き出す条件や内容を決めれば、不満が生じにくくなります。たとえば、全従業員に対してアンケートを実施し、なるべく幅広い意見を集めましょう。

定期的な調査を実施し改善を行う

インセンティブ制度は、運用を始めた後も内容や条件を見直す必要があります。定期的に従業員の意見を把握したり、運用体制に問題がないかチェックしてください。改善点を見つけたら、そのたびにブラッシュアップしていきましょう。それを繰り返せば、従業員にとってより魅力的で満足度が高いインセンティブ制度を構築できます。

インセンティブ制度を導入する際の注意点

インセンティブ制度を導入する場合、リスクへの対策も必要です。 たとえば、インセンティブ制度による従業員同士の過度な競争意識、評価への不満など、何らかの問題が生じる可能性があります。発生しうるリスクをあらかじめ想定しておき、どのような対策を講じれば効果的か検討しておきましょう。リスクを生まないためには、公平な目標設定の実現が必須です。

インセンティブ制度導入にあたり適切な目標設定を実現するには?

インセンティブ制度において公平で適切な目標設定をするには、上司やマネジャーが正しい方法を理解しておく必要があります。具体的な目標設定のポイントを学び、間違った目標設定にならないようにしましょう。

ユーキャンの「目標設定講座」では、目標設定の方法をオンラインで学べます。単に知識を得るだけでなく、ワークで理解を深められます。インセンティブ制度を効果的に運用するために、ぜひ活用してください。

まとめ

インセンティブ制度の導入は、従業員のモチベーションアップや採用力の強化などにつながります。目的や条件を具体的に定めて準備を整えたうえで、インセンティブ制度の導入を開始しましょう。公平で適切な目標を設定するには、正しい方法を理解しておくと効果的です。

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