Linuxの資格とは?「LPIC」と「LinuC」の概要と取得メリットを解説!

  • 公開日:2023.08.08

    更新日:2023.08.08

    IT業界では、日々新しい技術が生まれています。世界で通用する有能な人材を育てるには、従業員の努力だけではなく、企業の支援も必要です。 Linuxの資格取得は、社内の人材育成に役立ちます。この記事では、Linuxの代表的な資格試験の概要とメリットを解説します。資格試験の内容について詳しく解説するので、人材育成の取り組みを検討する際の参考にしてください。

Linuxの代表的な資格試験

Linuxの代表的な資格試験は「LPIC」と「LinuC」の2つです。それぞれの概要について、以下で解説します。

LPIC

LPIC(エルピック)の正式名称は「Linux Professional Institute Certification」です。Linux技術者認定試験の1つであり、Linuxプロフェッショナル認定資格、LPI認定資格とも呼ばれています。

LPICは、世界共通のIT資格として、多くの国で実施されている資格試験です。カナダに本拠地をおく非営利団体 LPI(Linux Professional Institute)によって運営されています。試験は特定のベンダーに依存していないので、Linuxに汎用的に通用する知識を要求されます。

LPICの種類は「LPIC-1」「LPIC-2」「LPIC-3」の3つです。それぞれの種類で、難易度が異なります。「LPIC-3」は2023年現在、4種類あります。以前は、300、303、304の3種類でしたが、304が305と306に分割されました。 

LinuC

LinuC(リナック)は、LPICよりも日本の市場向けに最適化されたLinux技術者認定試験です。「Linux技術者認定試験 LinuC」という正式名称で、LPI-Japanが独自に作成して、2018年から実施しています。

LPICが世界で標準化された試験なのに対して、LinuCは、国により市場や理想とされる技術者が異なることを意識し、市場ニーズに基づいた高品質で信頼性の高い技術者認定を目指しています。
LinuCは、試験の合格基準や合否判定、スコアなど、LPICでは開示されない情報が、受験生に提供されています。LinuCの種類は「LinuCレベル1」「LinuCレベル2」「LinuCレベル3」の3つです。それぞれの種類で、難易度が異なります。LinuCには、英語版もあるため、外国人であっても受験可能です。

LPICとLinuCの相違点

LPICとLinuCでは、世界と日本のどちらに向けて作成されているのかで異なります。LPICは世界的に認知されている資格ですが、日本語試験はグローバル基準に従い、英語版の試験内容を翻訳しています。LinuCは日本向けに最適化されており、日本語で設問が設定されています。

また、LPICが、世界のさまざまな国で活躍するITエンジニアに向けて作成されているのに対して、LinuCは、日本の市場に向けて作成されている資格試験です。LPICとLinuCは、運営団体が特定のIT企業に依存していない点で共通しています。

企業の人材がLinuxの資格を取るメリット

Linuxの資格は、従業員の人材育成に役立ちます。企業の人材がLinuxの資格を取るメリットは、以下の3つです。

Linuxに関する知識が身につく
世界に通用するスキルが身につく
キャリアアップに活かせる

Linuxに関する知識が身につく

Linuxの資格取得を目指す過程で、従業員は新しい知識を身につけられます。LPICとLinuCは、Linuxに関するあらゆる知識が求められる資格試験です。試験には実務的な内容が多く、業務に活用できるLinuxの知識を学べます。

世界に通用するスキルが身につく

LPICは、世界的に認められている資格です。資格を取れれば、日本にとどまらず、さまざまな場面でLinuxのスキルをアピールできます。Linuxの実務経験と共に、LPIC-2の資格があれば、人材の知識と技術が、より信頼性のある情報と証明できるでしょう。

キャリアアップに活かせる

Linuxの資格を取れば、社内の人材にLinuxを扱うスキルが身につき、キャリアアップに活かせます。企業のなかには、新入社員研修にLPICの試験レベルに合わせた研修を組み込んでいる場合もあります。

Linuxの資格試験の内容

LPICとLinuCの試験内容を詳しく解説します。人材育成の手段として検討する際の参考にしてください。

LPICの試験内容

LPICは、全部で3段階のレベルに分かれています。LPICのレベルは、以下の通りです。

LPIC-1
LPIC-2
LPIC-3

LPIC-1

LPIC-1は、Linuxを使ったサーバー構築や運用、保守ができるエンジニアであると証明できる資格です。各レベルのなかで最も低い難易度になりますが、LPIC-1の資格を取れば、キャリアアップに役立ちます。LPIC-1には、2種類の試験があります。LPIC-1の2種類の試験は、以下の通りです。

101試験
102試験
LPIC-1の資格を取るには、101試験と102試験の2つに合格しなければなりません。

101試験

101試験の試験範囲は、以下の通りです。

システムアーキテクチャ
GNUとUnixコマンド
Linuxのインストールとパッケージ管理
デバイス、Linuxファイルシステム、ファイルシステム階層標準

102試験

102試験の試験範囲は、以下の通りです。

シェル、スクリプト
ユーザーの追加やアカウントの作成と管理
ユーザーインターフェースとデスクトップ
必須システムサービス
セキュリティ
ネットワークの基礎



LPIC-2

LPIC-2は、小規模から中規模のサーバーを自身のスキルで構築、運用できるエンジニアであると証明できる資格です。LPIC-2の資格を持っている人材は、IT業界で重宝されています。LPIC-2には、2種類の試験があります。LPIC-2の2種類の試験は、以下の通りです。

201試験
202試験
LPIC-2の資格を取るには、201試験と202試験の2つに合格しなければなりません。

201試験

201試験の試験範囲は、以下の通りです。

サーバーのキャパシティプランニング
システムの起動、ファイルシステムとデバイス
Linuxカーネル
ネットワーク構成
高度なストレージ管理
システムの保守

202試験

202試験の試験範囲は、以下の通りです。

ドメインネームサーバー
ファイル共有
Webサービス
ネットワーククライアントの管理
システムのセキュリティ
電子メールサービス



LPIC-3

LPIC-3は、LPIC-1、LPIC-2と比べて、大きく難易度が上がります。LPIC-3には、4種類の試験があります。LPIC-3の4種類の試験は、以下の通りです。

LPIC-3 300 Mixed Environment
LPIC-3 303 Security
LPIC-3 305 Virtualization and Containerization
LPIC-3 306 High Availability and Storage Clusters
LPIC-3は、上記4種類の内1つの試験に合格すれば、資格を取得できます。

LPIC-3 300 Mixed Environment

LPIC-3 300 Mixed Environmentの試験範囲は、以下の通りです。

Sambaの基礎
Sambaとアクティブディレクトリドメイン
Samba共有の設定
Sambaクライアントの設定
Linuxのアイデンティティ管理とファイル共有

LPIC-3 300 Mixed Environmentに合格すれば、LinuxやUnix、Windowsが混在する環境を設計、構築、運用・保守ができるエンジニアであると証明できます。

LPIC-3 303 Security

LPIC-3 303 Securityの試験範囲は、以下の通りです。

暗号化
ホストセキュリティ
Access Control
ネットワークセキュリティ
脅威と脆弱性評価

LPIC-3 303 Securityでは、セキュリティに関する知識を中心に問われます。

LPIC-3 305 Virtualization and Containerization

LPIC-3 305 Virtualization and Containerizationの試験範囲は、以下の通りです。

完全仮想化
コンテナ仮想化
VMのデプロイメントとプロビジョニング

LPIC-3 306 High Availability and Storage Clusters

LPIC-3 306 High Availability and Storage Clustersの試験範囲は、以下の通りです。

High Availability Cluster Management
HAクラスタストレージ
HA分散ストレージ
単一ノードHA

試験は、クラウド環境に関する内容になっています。

LinuCの試験内容

LinuCは、全部で3段階のレベルに分かれています。LinuCのレベルは、以下の通りです。

LinuCレベル1
LinuCレベル2
LinuCレベル3

各レベルの試験内容について、特徴や種類を解説します。

LinuCレベル1

LinuCレベル1は、Linuxシステムの構築や運用の基礎知識が問われる試験です。LinuCレベル1には、2種類の試験があります。LinuCレベル1の2種類の試験は、以下の通りです。

101試験
102試験
LinuCレベル1の資格を取るには、101試験と102試験の2つに合格しなければなりません。

101試験

101試験の試験範囲は、以下の通りです。

Linuxのインストールと仮想マシン・コンテナの利用
GNUとUnixのコマンド
ファイル・ディレクトリの操作と管理
リポジトリとパッケージ管理
ハードウェア・ディスク・パーティション・ファイルシステム

102試験

102試験の試験範囲は、以下の通りです。

シェルおよびスクリプト
システム管理
ネットワークの基礎
重要なシステムサービス
オープンソースの文化
セキュリティ
102試験では、Linuxのシステム管理やセキュリティなどについて問われます。



LinuCレベル2

LinuCレベル2には、2種類の試験があります。LinuCレベル2の2種類の試験は、以下の通りです。

201試験
202試験
LinuCレベル2の資格を取るには、201試験と202試験の合格が必要です。また、合格までの期間が設定されており、LinuCレベル1の資格を取ってから5年以内に、LinuCレベル2に合格しなければなりません。

201試験

201試験の試験範囲は、以下の通りです。

システムの起動とLinuxカーネル
ネットワーク構成
ファイルシステムとストレージ管理
システムの保守と運用管理
仮想化サーバー
コンテナ

202試験

202試験の試験範囲は、以下の通りです。

ネットワーククライアントの管理
HTTPサーバーとプロキシサーバー
ドメインネームサーバー
電子メールサービス
システムアーキテクチャ
システムのセキュリティ
ファイル共有サービス



LinuCレベル3

LPIC-3には、3種類の試験があります。LPIC-3の3種類の試験は、以下の通りです。

LPIC-3 300 Mixed Environment
LPIC-3 303 Security
LPIC-3 304 Virtualization & High Availability
3つの試験は、それぞれで個別の認定を受けられます。

LinuCレベル3 300 Mixed Environment

LinuCレベル3 300 Mixed Environmentの試験範囲は、以下の通りです。

OpenLDAPの認証バックエンドとしての利用
OpenLDAP の設定
Sambaの基礎
Sambaのユーザーとグループの管理
Sambaの共有の設定
Sambaのネームサービス
Sambaのドメイン統合
LinuxおよびWindowsクライアントの操作

試験では、LinuxやUNIX、Windows、Sambaなどが混在する環境でのサーバー構築やトラブルシューティングに関する知識が問われます。

LinuCレベル3 303 Security

LinuCレベル3 303 Securityの試験範囲は、以下の通りです。

暗号化
アクセス制御
ホストセキュリティ
ネットワークセキュリティ

LinuCレベル3 303 Securityでは、セキュリティに関する知識を中心に問われます。

LinuCレベル3 304 Virtualization & High Availability

LinuCレベル3 304 Virtualization & High Availabilityの試験範囲は、以下の通りです。

仮想化
高可用クラスタ管理
高可用クラスタストレージ



LPICとLinuCの受験費用

LPICとLinuCの受験費用を解説します。受験費用は安価ではありませんが、人材育成に必要な費用といえます。

LPICの受験費用

LPICの受験費用は、1試験ごとに16,500円です。例えば、LPICレベル1を取るには、101試験と102試験に合格しなければならないため、合計で33,000円の受験費用が必要です。

※参考:Exam Pricing | Linux Professional Institute

LinuCの受験費用

LinuCの受験費用は、1試験ごとに16,500円です。以前、LinuCレベル3の受験費用は、1試験ごとに32,400円(当時の税率は8%)かかりましたが、現在は減額されており、多くの人が受験しやすくなりました。

※参考:LinuC(リナック)の受験ご案内|LPI-Japan - LinuC

LPICとLinuCの注意点

LPICとLinuCの受験における注意点は、以下の2つです。

LPICとLinuCでは、2科目の試験合格が求められるレベルにおいて、試験合格までの有効期限がある
不合格だった場合に、同一試験を受験する際、前回の受験日の翌日から起算して7日目以降(土日含む)でなければ受験できない

LPIC

LPICでは、2科目の試験合格が求められるレベルを受験する場合に、有効期限が設定されています。2科目の試験合格までの有効期限は、5年間です。例えば、LPIC-1を受験する場合、101試験に合格した日から5年以内を期限に、102試験の合格が必要です。

万が一、有効期限を過ぎても合格できなかった場合は、101試験の合格が無効になり、再度101試験から受験しなければなりません。受験費用も多くかかるため、注意が必要です。

LinuC

LinuCは、LPICと同じく、2科目の試験合格が必要なレベルを受験する場合に、有効期限が設定されています。2科目の試験合格までの有効期限は、5年間です。例えば、LinuCレベル1を受験する場合、101試験に合格した日から5年以内を期限に、102試験の合格が必要です。

万が一、有効期限を過ぎても合格できなかった場合は、101試験の合格が無効になり、再度101試験から受験しなければなりません。

LPICとLinuCの再受験に必要な条件

LPICとLinuCには、再受験ポリシー(リテイクポリシー:再受験規定)があります。再受験ポリシーには、同じ試験を再受験する場合は、前回の受験日の翌日から起算して、7日経過しないと実施できないと記載されています。(土日含む)

Linux資格取得のための勉強法

Linux資格取得に役立つ勉強法は、以下の3つです。

各資格試験の認定パートナー制度を利用する
オンライン学習サイトを活用する
参考書や過去問題集で知識を深める

それぞれの勉強法について、詳しく解説します。

各資格試験の認定パートナー制度を利用する

LPICとLinuCには、認定パートナー制度があります。認定パートナー制度は、資格試験に向けた勉強の支援が受けられる制度です。制度を活用すれば、勉強の効率化に役立ちます。認定パートナー制度の名称は、LPIが「トレーニングパートナー制度」、LinuCが「LPI-Japanアカデミック認定校制度」です。

オンライン学習サイトを活用する

LPICとLinuCの試験勉強を効率的に行うには、オンライン学習サイトの活用がおすすめです。オンライン学習サイトはさまざまな団体や企業が提供しています。サービスのなかには、無償で利用できるものもあるため、費用を抑えたい場合に便利です。オンライン学習サイトであれば、通勤中や通学中のすき間時間を有効活用して、勉強を効率的に進められます。

参考書や過去問題集で知識を深める

LPICとLinuCには、参考書や過去問題集が販売されています。参考書と過去問題集を使って勉強を進めれば、実際の試験を受ける感覚で問題を解けるため、自分の現在のレベルを詳しく把握できます。参考書と過去問題集を選ぶ場合は、受験する試験に対応したテキストを選びましょう。以下で紹介するテキストを確認して、試験勉強の参考にしてください。

1週間でLPICの基礎が学べる本(インプレス)


「1週間でLPICの基礎が学べる本」は、Linuxの初心者でも、円滑に勉強を進められる入門書として役立つテキストです。練習問題を解きながら、試験の合格に必要な基礎知識を身につけられます。また、LPICの模擬問題や試験情報も載っているため、試験に向けた実践的な勉強も可能です。Linuxを扱った経験がない人でも、安心して勉強ができます。

※参考:1週間でLPICの基礎が学べる本 第3版 (1週間シリーズ) | 中島 能和 |本 | 通販 | Amazon



Linux教科書 LPICレベル1 スピードマスター問題集(翔泳社)


「Linux教科書 LPICレベル1 スピードマスター問題集」は、LPIC-1に対応したLPICの認定テキストです。101試験と102試験の対策問題が掲載されており、LPIC-1の試験範囲を網羅的に勉強できます。また、対策問題には、正答に関する解説が用意されているため、間違った部分や知識不足について確認できます。

※参考:Amazon.co.jp: Linux教科書 LPICレベル1 スピードマスター問題集 Version5.0対応 : 山本 道子, 大竹 龍史: 本



Linux教科書 LinuCレベル1(翔泳社)


「Linux教科書 LinuCレベル1」は「あずき本」とも呼ばれており、参考書のなかでも有名なテキストです。LinuCレベル1の試験範囲を網羅的に勉強できます。各章の終わりに掲載された練習問題を使って、理解度を確認できる点も特徴です。掲載の内容には、学習のためだけではなく、実務の参考書としても活かせる内容が含まれています。

※参考:Linux教科書 LinuCレベル1 Version 10.0対応 | 中島 能和, 濱野 賢一朗 |本 | 通販 | Amazon

まとめ

Linuxの代表的な資格には「LPIC」と「LinuC」があります。LPICが、世界中で活躍するITエンジニアに向けて作成されているのに対して、LinuCは、日本の市場に向けて作成されている資格試験です。 企業はLinuxの資格取得に向けた支援をして、人材育成に活用しましょう。

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