教育DXとは?必要とされる理由やメリット・課題・導入事例まで解説

  • 公開日:2023.07.11

    更新日:2023.07.12

    教育DXは、学校教育や教員の仕事などに変革を起こす施策です。デジタル技術を教育に活用することで、従来の全体教育から生徒1人ひとりへの教育を実現でき、教育現場の負担を減らせます。この記事では、教育DXの概要から必要な理由、メリット、課題などを解説します。ぜひ参考にしてください。

教育DXとは

教育DXとは、教育プログラムにテクノロジーを活用して、教育の在り方を変える取り組みを指します。DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、デジタル変革を意味します。教育DXは書類のデータ化のようなデジタル化とは異なり、教育の手法や教員の業務などに変革を起こすことです。

昨今、生徒たちはパソコンやインターネットがある環境で育っており、デジタル技術に触れてきた「デジタルネイティブ」と呼ばれています。今後、よりデジタル技術に囲まれた社会で生活を送るため、デジタル教育によって知識やスキルを身につける必要があります。

現在はデジタル技術が発展しているため、教育DXによって教育や教師の質の向上などにつなげ、従来の教育とは異なる学習環境を構築することが可能です。

教育DXの目的

教育DXの目的は、教育の個人最適化です。従来の教育は平均主義や減点主義を採用していましたが、今後は生徒に合わせた教育を実施することに焦点を当てています。デジタルを活用した教育を行う目的には、集団で行う授業ではなく、個人の習熟度に合わせて最適な教育を提供する狙いがあります。

教育DXが求められる理由

教育DXが求められる理由は、以下のとおりです。

  • ・文部科学省が教育DXを推進していため
  • ・遠隔の教育を実現するため
  • ・デジタルネイティブ世代に合った教育を実施するため

ここでは、それぞれの理由について解説します。

文部科学省が教育DXを推進していため

文部科学省は、新型コロナウイルス感染症に対応できる社会構造に変化させるため、仕事や教育などの幅広い分野でデジタル化を推進しています。教育のデジタル化においては、「教育におけるデジタル化の推進」「デジタル社会の早期実現に向けた研究開発」「『新たな日常』における文化芸術・スポーツ、行政DX」の3つの柱を掲げました。

GIGAスクール構想では、生徒1人に1台のコンピューターを提供しています。2021年4月には、全国の小・中学校の約9割の生徒へのコンピューターの提供を達成しました。教育DXの活動として、学校におけるICTの活用や教師のICT活用指導なども行われています。

※参考資料:4_文部科学省におけるデジタル化推進プラン|文部科学省デジタル化推進本部

遠隔の教育を実現するため

新型コロナウイルスの感染拡大によって、1つの教室で授業を行うことが困難になったため、リモートによる授業の必要性が高まりました。リモートの授業は学校内だけでなく、通勤や通学での感染予防も期待でき、感染のリスクを抑えて教育を提供できます。教師と生徒・保護者どちらにとっても、ストレスを感じにくい環境で学習ができる環境の構築が可能です。

生徒が遠隔で教育を受けられると、都市部と地方の地域差による教育格差の是正にもつながります。リモートの教育ですべての教育に対応できるわけではありませんが、リモート授業の実現や習熟度の可視化は、デジタル技術を活用するメリットです。

デジタルネイティブ世代に合った教育を実施するため

デジタル技術や情報は、生活の中でも使いこなせるスキルを身に付けておくことが重要です。教育にデジタル技術が求められる理由は、生徒が卒業した後を想定しているためです。仕事で使う機会も多く、より一層デジタル技術の活用が必要な社会になることが予想されます。

昨今、生活環境はインターネット環境に囲まれ、生徒はスマートフォンやタブレット端末などのデジタルデバイスを所持しています。さまざまな部分がデジタル化しており、今後はよりデジタル化した社会で生活しなければなりません。学校教育で最低限度のITリテラシーを学ばせて、デジタル技術を使いこなすスキルを身につけさせることが大切です。

【学校】教育DXを導入するメリット

学校が教育DXを導入するメリットは、以下のとおりです。

  • ・生徒1人ひとりに合わせた教育ができる
  • ・教育の事務作業の負担を軽減できる

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

生徒1人ひとりに合わせた教育ができる

教育DXを導入することで、生徒の習熟度を把握しやすくなり、1人ひとりに合わせた教育を提供できます。対面授業で発言のない生徒の学習状況を把握できるので、個々の学習進度に合わせて最適な教育を実施できます。タブレット端末やコンピューターでテストを行った場合、自動採点や平均点などの算出も可能です。

従来の学校教育は、教師の感覚で生徒1人ひとりの学習の理解度を管理していました。デジタル技術で小テストやデジタルドリルなどを活用すると生徒1人ひとりの得意不得意を分析でき、最適で効果的な教育を行えます。

教育の事務作業の負担を軽減できる

教員がデジタル技術を活用すると、テストの採点や事務作業の負担を抑えられます。デジタル技術の活用によって、採点、集計、分析といった作業をを自動化できるためです。

教員の仕事は教育だけでなく、イベントの企画や準備、資料作成、配布、部活動の事務手続きなど、多岐にわたります。それぞれの業務には雑務が含まれるため、デジタル技術を活用して業務を効率化することは重要です。教育DXを導入することで業務効率化に成功しやすくなり、長時間労働の是正につながります。雑務の時間を短縮できると、教員が授業の研究に取り組む時間の確保もできます。

教育DXで得られるメリット

教育DXで得られるメリットは、以下のとおりです。

  • ・生徒が教育DXによって得られるメリット
  • ・保護者が教育DXによって得られるメリット

ここでは、それぞれのメリットについて解説します。

生徒が教育DXで得られるメリット

教育DXを導入すると、デジタル化に対応できる素養が養われます。早期教育からデジタル技術を活用した教材を利用すると、よりIT化した未来の社会に必要なITリテラシーを身につけることが可能です。学校教育でITリテラシーを学ぶと、個人情報を守る方法やSNSとの付き合い方などを習得できるため、デジタル技術を使ったトラブルから身を守りやすくなるでしょう。

教育DXのデジタル技術を活用した教育では、集まったデータを解析し、学習の進捗状況に応じた個別に最適化された教育に取り組めます。

また、リモートの授業を受けられるので、コロナウイルスなどの感染症や災害などによる影響がなくなり、生徒1人ひとりの学習の遅れを防止できます。どこにいても授業が受けられる教育体制は、遠距離から通学する生徒や体が不自由な生徒に、質の高い教育を提供する機会の創出にもつながるでしょう。

デジタルを活用した効果的な個別学習を実施することで、生徒1人ひとりの学力が向上しやすくなり、国内の学力向上も期待できます。
デジタル教材はテキストだけでなく、映像や音声、アニメーションなど、さまざまな媒体から情報に触れられるためです。

たとえば、授業中の口頭での説明で理解できない場合でも、視覚的な情報を加えて説明するとイメージしやすくなり、授業の理解を促進する効果を期待できます。テキストに各媒体の情報を紐付けることで、従来よりも情報量を増やすことも可能です。

保護者が教育DXで得られるメリット

教育DXを導入して習熟度を可視化するシステムを利用すると、生徒の授業の理解度を把握できます。保護者が子どもの授業の進捗を把握できるので、教育の場を任せやすくなります。子どもの学習の進捗だけでなく、成績の状況や学校の様子も共有が可能です。

家庭によっては保護者の仕事が忙しく、親子間のコミュニケーションの機会が減る場合があります。子どもが学校の様子を話してくれない場合でも、保護者に情報が届き、安心できるでしょう。学校と保護者との連絡はデジタルツールを使うため、欠席や遅刻といった場合でも連絡が取りやすく、急な事態にも対応が可能です。

学校に提出する書類はオンラインで送信できるので、仕事で忙しく時間が取れないなかでも、対応する際の負担を減らせます。従来は連絡網で電話したり、チャットなどで連絡を取り合ったりしていましたが、デジタル技術を活用すれば学校側からの一斉送信を受け取ることが可能です。

たとえば、コロナウイルスやインフルエンザなどで休校になった場合、学校と保護者の間で連絡を取り合う手間や負担が減らせます。また、台風をはじめとする災害時の学校からの緊急連絡もオンラインで受けられるため、自宅待機や登校の判断がしやすくなります。

教育DXを導入する課題

教育DXを導入する課題は、以下のとおりです。

  • ・教育者のICリテラシーが不足している
  • ・インフラの構築・整備に時間がかかる
  • ・セキュリティ対策が必要になる

ここでは、それぞれの課題について解説します。

教育者のICリテラシーが不足している

教育DXを導入する際は、システムを導入する学校側のITリテラシーを向上させる必要があります。学校教育にソフトやツールを導入して教育設備のICT化が進むと、ITの知識や経験のない教員が対応できなくなる可能性があるためです。デジタル技術を生徒に教える際は、まず初めに教員へのIT教育を行うことが重要です。

インフラの構築・整備に時間がかかる

教育DXを導入し、生徒がリモートで授業を受けるためには、デジタル端末だけでなく、インターネット環境の整備が必要です。定期的にデジタル端末やソフトウェア、機器のメンテナンスなども行い、デジタル教育に対応できる環境を構築しましょう。

セキュリティ対策が必要になる

教育DXを実施する際は、セキュリティリスクに備えることが重要です。
たとえば、生徒の個人情報、学校に保管するデータが盗まれる可能性があります。DX化は企業だけでなく、学校もサイバー犯罪の対象となる可能性があるため、高水準のセキュリティを導入することが求められます。

教育現場へのDXを導入する事例

教育現場へのDXを導入する事例は、以下のとおりです。

  • ・Classi
  • ・atama+
  • ・Google for Education

ここでは、それぞれの特徴について紹介します。

Classi(クラッシー)

Classiは、生徒の活動を記録するカルテのような教育ICTサービスです。Classiには生徒の学習記録や動向を一元で管理できる機能があり、生徒に関するデータを記録しやすくなります。教育だけでなく、コミュニケーションも含まれており、生徒の学校の活動全般をサポートしやすくなります。これにより、教員が指導する際の負担の軽減にもつなげられます。

Classiを使って連絡を取り合うことで、教員・生徒・保護者間の連絡事項や欠席連絡などがしやすくなり、それぞれのコミュニケーションが円滑になるでしょう。

atama+(アタマプラス)

atama+とは、AIが生徒の得意不得意を把握して、自分専用カリキュラムを作れるサービスです。atama+に蓄積したデータが生徒1人ひとりの習熟度を可視化するため、ミスする傾向や自分では気づかない弱点なども分析できます。

また、生徒の理解状況をリアルタイムで診断し、診断と講義を繰り返して1億2,036通り以上のカリキュラムの生成が可能です。同サービスは全国3,400以上の学習塾の教室で採用されており、個人に最適化した学びを実践して、生徒の弱点克服をサポートします。

Google for Education

Google for Educationは、Googleが開発した学習支援ツールです。教育現場を管理するツールが用意されており、学校全体のメールシステムや宿題のデータ管理、小テスト・アンケートの作成に対応できます。

同サービスは厳重なセキュリティ対策が特徴で、幼稚園・小学校・中学校・高等学校などの教育機関で使用されています。無料で利用できるだけでなく、広告が表示されない仕様になっており、学校で扱うデータを広告に利用されない点もメリットです。

まとめ

教育DXは生徒が社会で生活するうえで、必要な知識やスキルなどを身につけるために必要な施策です。生徒1人ひとりに合わせた教育の実現、教育現場の負担の軽減など、さまざまなメリットが得られます。文部科学省は教育DXを推進していますが、教育現場のITリテラシー不足や環境の構築など導入するには課題があります。

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